こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
学芸員技術研修会2020「ユニバーサル・ミュージアム」
今年度は開催が無理なのかもしれないな、と思っていた矢先、「学芸員技術研修会」の案内が届きました。研修を主催する事務局・先生方に心より感謝いたします。
今だから尚更お話を聞きたいと思い申し込んだのは、国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎先生による「ユニバーサル・ミュージアム」。ユニバーサル・ミュージアムとは「誰もが楽しめる博物館」のこと。「ハンズオン(さわる展示)」による博物館教育を積極的に取り入れる館が、ここ数年増えています。わたしもまた鑑賞法の一方法として「さわることによる鑑賞」について学びたいと思っていた研修会でした。
蓋を開けてみれば、単に鑑賞法として以上に「アートの意味」「触ることの意味」を深く考えさせられる研修となりました。接触、さわることが避けられるようになった今年、自称「濃厚接触のプロ」である全盲の広瀬先生のお話を聞くことができたのは、これ以上ないありがたいタイミングであったと思います。
「世界をつなぐユニバーサル・ミュージアム-“触”の大博覧会から2025大阪万博へ-」と題された広瀬浩二郎先生のお話より、以下備忘。
- 触文化、見常者、触常者、拒触症、濃厚接触
- 触覚とは、手だけではなく全身の感覚。身体感覚を総動員して体感すること。
- 見てわかること、さわってわかること。
- 気配=気配り
- なぜハンズオン(さわる展示)?あらためてミュージアムにおける「触る」の意味、「さわるマナー」の意義を考える。
- なぜさわるのか=作法、どうさわるのか=技法
- さわろうとしない人たち=「見る場所」として刷り込まれている。「見ればわかる」という思い込み。
- 見ただけでは(画面越しでは)伝えられない情報って何だ!?
- 点字力=したたかな創造力、しなやかな発想力。点字には「さわる」の要素がすべて集約されている。
- さわる展示の多様性=視覚優位・視覚偏重の価値観・人間観に対する異議申し立て。
- 目が見える人も「触常者」になれる。
- 今「万博」をやる意義=国や地域による違いではなく、個人の世界観の違いに注目する展覧会にできる(かも)。
さわることが奪われた今だからこそ、その意味、価値を深く考えるチャンスにしなければ、という広瀬先生の強い想いの伝わるお話でした。今回は時節柄座学による講座でしたが、来年度以降、ワークショップも含めた「ユニバーサル・ミュージアム」に必ず参加したいと思います。