こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『あきらめる』(小学館)山崎ナオコーラ著
山崎ナオコーラさんといえば『人のセックスを笑うな』と、タイトルがすぐに出てきますが、実はわたしは本書が初めましてでした。『人の…』も読んだことはありません。にもかかわらず、お名前に対して親近感があるのは、ペンネームの妙ゆえですね。これって、さりげなくすごいことだと思います。
さて『あきらめる』。小学館のサイトでの紹介文冒頭にあるのが、本書内から引用されている下の文言です。
登山で頂上まで行く? 途中で降りられる?
小学館『あきらめる』https://www.shogakukan.co.jp/books/09380129
「『あきらめる』って言葉、古語ではいい意味だったんですってね。『明らかにする』が語源らしいんです」
火星移住がはじまった近未来が舞台のSFチックな小説とはいいながら、物語の展開自体は、とても身近な家族の問題、個人の生き方の問題として、心あたるところ多々で、頷きながら読みました。最後に登場人物はめいめい「自分の嫌なところ」をあきらめて受け入れる、そんな境地に辿り着きます。その考えはなるほどと思えるのですが、そのように開き直るには、まずは「自分の嫌なところ、ダメなところ」を、自覚して認めないといけません。それが「(自分自身に対して)明らかにする」ということですね。たぶん、それが難しいのだな、と。
最後の方で、途中で降りることが出来た自分が誇らしい、というようなセリフが出てきます。上へ上へとてっぺんを目指して登っていくばかりがすべてではないことに、そろそろ気づくべき時が来ていると、そんなことがストレートに、あたたかく伝わってくる本でした。