こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)高瀬隼子著
連続で高瀬隼子さん。すばる文学賞受賞作『犬のかたちをしているもの』に続いては、
芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』。こちらの主人公は、会社でそこそこ仕事ができる女性。女性であることに加えて、「無理をしてでもやろうとしてしまう、できてしまう(ある意味真面目)」気質であること、「これっていいことよね」とされる同調圧力にひそかに反感を抱いていることが、同僚女性への嫌悪を生み、その嫌な感じがどんどん澱となって溜まっていく様子が、淡々と描かれています。
どうもわたしは高瀬隼子氏の著書を表する際に「淡々と」という言葉を使い過ぎているようにも思うのですが、読中・読後に湧き上がってくる感触が、そのものなので仕方ありません。そして、「淡々と」の下には登場人物のどろどろとした感情がある。その描き方こそが、わたしが彼女の著書に惹かれる部分なのだと思います。
それにしても、わたしには主人公の「ムカつく」が手に取るようにわかりました。わかるけれど、その感情がいまや時代遅れであり、現代ではそれを口に出してしまうと、嫌な人・常識外れな人になってしまうということも。小説のエンディングでは、結局、「弱い人」が勝ちます(勝つという表現が正しいかどうかは別として)。読みながら、弱いって最強だよね?と悪態をつきたくなる自分の性格の悪さに向き合わされる一冊でした。
けれども、本書が芥川賞を受賞し、たくさん読まれているということは、主人公のような感情を持つ読者がまだまだいるのかもしれません。そう考えて、なんだか少しホッとしている自分がおかしくなりました。