染錦梅に鶯文蕎麦猪口(藤吉憲典)

読書『わたしの好きな季語』(NHK出版)川上弘美

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『わたしの好きな季語』(NHK出版)川上弘美

川上弘美さんと言えば『センセイの鞄』。考えてみたら、ちゃんと読んだのはこの一冊だけでした。著書は読んでいないもの、新聞や雑誌などで時折見かける川上弘美さんの文章は、やわらかそうに見えながら独特のほの暗さがあり、それが自然であざとくないのが好きだなぁ、と感じていました。

春・夏・秋・冬・新年に分けて、俳句の季語を紹介しているエッセイ。もとは雑誌に連載されていたのですね。言葉の選び方が楽しくあるいは美しく、さすが言葉を生業にする人だなぁ、と思いました。上の写真は、冬の季語「探梅(たんばい)」にちなみ、梅に鶯の描かれた蕎麦猪口(染錦梅に鶯文蕎麦猪口 藤吉憲典)。

本書のなかでしばしば登場する「歳時記」。その素晴らしさをあらためて感じました。我が家にも分厚い歳時記辞典があります。俳句を読む人には季語を知るための歳時記。わたしにとっては、もっぱらやきものの文様の意味をより深く知るための辞典です。歳時記を引くたびに日本の四季の美しさや、それを言葉に残してきた人々の感性に感謝の念が沸いてくる、不思議な書物です。

川上弘美さんの『わたしの好きな季語』は、俳句を嗜む人ではなくとも、その文章自体が面白く読める一冊でした。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。