こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『キリギリスのしあわせ』(新潮社)トーン・テレヘン著、長山さき訳
オランダから届いたお話。読後にまず思ったのは「読後感」に既視感があるということ。とてもやさしくて、ちょっぴり切ない、そんな気持ちなのですが、過去にもそんなことがあったような。すぐにその理由がわかりました。『くまのプーさん』です。でも、キリギリスのお話の方が、プーさんのお話よりも、切ない感じ、不条理感がちょっぴり大きいかな。あくまでも個人的な感想ですが。
くまのプーさんは、石井桃子さんの訳が素晴らしくて、さらに大人になって原著を読んだら、石井桃子さん訳のイメージにぴったりの語感の英語が並んでいて、とても嬉しかったのです。本著『キリギリスのしあわせ』も、長山さきさんの訳が素晴らしいからこその、この読後感なのだと思います。ただ、原著はオランダ語になりますので、語感の確認は私には難しいですが。
『キリギリスのしあわせ』 にはいくつものお話が入っています。「なんだかちょっぴり不条理」な感じのお話も。とてもいいな、と思うのは、それらのお話から、教訓めいた説教臭い感じが一切してこないこと。同じストーリーでも、教訓めいた雰囲気が出た途端に、鼻白んでしまいますので。「ただ、そうなんだよ」というお話を書くことの方が、もしかしたら難しいのかもしれませんね。そう考えると、貴重な出会いです。
著者の『ハリネズミの願い』(新潮社)が2017年に本屋大賞の翻訳小説部門賞を受賞しているということでした。まったく存じませんでしたので、これはぜひ、遡って読んでみようと思います。