ロンドンパディントン駅

読書『クリスマス・キャロル』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『クリスマス・キャロル』(新潮文庫)ディケンズ

続々と、読んでいなかった名作シリーズ。『大いなる遺産』からディケンズ作品に興味が湧き、季節外れですが『クリスマス・キャロル』。これもまた、映画になっていたのですね。写真はロンドン・パディントン駅のクリスマスツリー。

「幽霊が三人出てくる話」と聞いていましたが、幽霊の話ではなく、人間の話。「過去」「現在」「未来」にいざなう幽霊が主人公スクルージに見せたものと、スクルージの悔恨。訳者の村岡花子さんがあとがきで、毎年クリスマスがめぐってくるごとに読むと書いておられ、その気持ちがわかるような気がしました。

ディケンズは10代から働きに出ながら、独学で勉強を続け新聞記者になり、ついには文豪と呼ばれるようになった人。その目線で眺めたロンドンの街と人々とが、背景として大きいことをこの本でも感じました。

作品のあらゆるシーンに涙と笑いが同居しているのは、先日自伝を読んだチャップリンに通じるなぁ、と思いました。時代的には、ディケンズが少し先で、そのあとにチャップリンです。これも訳者の村岡花子さんが書いているのですが、「つまるところ、彼は役者であり、彼の演劇の終局の目的はヒューマニズムであったのだ」に、大きくうなずきました。

チャップリンが自伝で「芸術作品には、歴史書などよりずっと多くの貴重な事実や詳細が含まれている」と書いていました。ディケンズの小説もまさにそんな芸術作品のひとつだと思いながら読んでいます。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。