読書『ケインとアベル』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ケインとアベル』(新潮文庫)ジェフリー・アーチャー

巻末の訳者による解説で「小説アメリカ現代史」とありましたが、まさにその通りでした。アメリカのみならず第一次大戦前から現代につながるヨーロッパの情勢も含んだ、近現代史を知るのに、とてもわかりやすい小説でした。

ストーリーの面白さはもちろんで、なかなか読む手を休めることができませんでした。それだけでなく、わたし個人的には、これまでぼんやりと理解していたものが、この本のストーリーを通してよりはっきりしたという、学びの大きい本でもありました。

そのひとつは、第一次大戦・第二次大戦を通じたヨーロッパ諸国とソ連(当時)・アメリカの位置づけ・関係をうかがい知ることができたこと。当時の「新世界」アメリカの存在価値。世界史(近現代史)に出てくるできごとが、実体としてどういうものであったのか、その一端を垣間見ることができたと思いました。

もうひとつは、アメリカ的資本主義の考え方、株式・投資・恐慌というものが、ようやく理解できたように思います。わたしは経済学部出身ですので、その手の話は授業でも何回も学んだはずなのですが、どうにも実感を伴わず、字面上の理解にとどまっていました。でも、本書の中に何度となく出てくる、株式売買のシーンとその背景にあるもの、株価大暴落の前後のストーリーを読むことによって、ようやく腑に落ちたような気がします。

事実だけを並べた教科書よりも、ストーリーに載せた小説で読むほうが理解が進むことを、ここ数年の読書で思います。なるほど「漫画日本史」とか「漫画世界史」とかが売れるわけですね。もちろん小説ですから、それが史実・事実と合っているかどうかは、自分で見極める必要がありますが。

それにしても、あらためて、ジェフリー・アーチャーは政治家としても、実業家としても、栄華を体験している人なのだなぁと、思わず嘆息しました。まだまだ読んでいない本がありますので、これからも楽しみです。

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ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。