こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『シネマ&フード 映画を食卓に連れて帰ろう』(KADOKAWA)CUEL(料理)/小泉佳春(写真)
小説や絵本に登場する料理やお菓子をメインに据えたレシピ本は、近年たくさん出ています。文章主体のエッセイ的なものもあれば、再現した料理の写真をきれいに撮影した、眺めるだけでも楽しいものも。その映画版かなと手に取りましたが、その予想は大きく外れました。
映画の写真と、映画にまつわるエピソードと、その映画から連想した料理の写真と、レシピ(作り方)で構成されています。けれどもパラパラとページをめくれば、すぐによくある「本に出てくるお料理のレシピ本」などと趣が異なるのは一目瞭然でした。その一番の理由は、映画の選び方。あまりにもとんがっているのです。
とんがっている理由は、前書きを読んですぐにわかりました。80年代バブル全盛期に渋谷に開館したという単館映画館シネマライズ。「単館系」の潮流を造ったその本家だそうです。「ぶっ飛んでいるけど踏み外してない」という審美眼で映画を選び上映してきた創設者の方々が、当時から映画のパンフレットに「料理を作って写真を載せる」という試みをしていたといい、その写真やレシピを使って再編集し直したのが本書。
料理は、映画に登場したものというわけではなく、映画を観て受けたインスパイアから、作ったものということで、独創的な雰囲気が満ち満ちています。美味しいのだろうな、とは思ったものの、読み終わったときのわたしの頭のなかは、「あの料理作ってみよう」ではなく、「あの映画観てみよう」でした。
実のところ、本書内で取り上げられている映画のなかで、封切り当時はもちろん、あとからビデオやDVDで観たことがあるものも、ごくわずかでした。でも、そのごくわずかから考えただけでも「ぶっ飛んでいるけど踏み外してない」という表現の意図はよくわかりました。『イレイザー・ヘッド』『トレインスポッティング』『ムトゥ踊るマハラジャ』『アメリ』『ピンポン』…という感じ。上の写真は、その目次。気になりつつ観ていなかったものも多数ありましたので、少しづつ遡って観てみたいと思います。紹介されている映画は、現在も視聴できるものを選んでくれているのが、親切です。
『シネマ&フード 映画を食卓に連れて帰ろう』(KADOKAWA)CUEL(料理)/小泉佳春(写真)