読書『ジェイムズ』(河出書房新社)パーシヴァル・エヴァレット著/木原善彦訳

読書『ジェイムズ』(河出書房新社)パーシヴァル・エヴァレット著/木原善彦訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ジェイムズ』(河出書房新社)パーシヴァル・エヴァレット著/木原善彦訳

西日本新聞書評コーナーで見つけて気になり、本書を読むために、マーク・トゥエインの『ハックルベリー・フィンの冒険』を遡って読んだという、こんなふうに、ある種の手続きを踏んでまで読んでみようと思った作品は、久しぶりでした。というわけで、期待大!で読み始めましたが、その期待を上回る読書となりました。

『ジェイムズ』は、米国文学『トム・ソーヤーの冒険』で知られるマーク・トゥエインが書いた『ハックルベリー・フィンの冒険』を、語り手(主人公)を変えて書いた小説です。『ハックルベリー・フィンの冒険』は、主人公である、貧困層に生まれた白人ハックと黒人奴隷ジム(ジェイムズ)の冒険物語。もともとはハックの視点で描かれた物語を、『ジェイムズ』ではジムの視点で描き直しています。著者は、アフリカ系アメリカ人作家のパーシヴァル・エヴェレット氏。

興味を持ったものの、わたしは『ハックルベリー・フィンの冒険』を読んでいませんでしたので、まずは『ハックルベリー・フィンの冒険』を読むところからスタートしたのは上述の通りです。あらすじが頭に入ったところで、いざ『ジェイムズ』へ。『ハックルベリー…』もそうでしたが、冒険小説というよりは、社会小説。そして「アイロニー(皮肉)」という意味では、『ジェイムズ』の過激さは『ハックルベリー…』の比ではないと感じました。読み手たる自分のなかにあった無意識の思い込みと、甘さ・浅さを突き付けられる、ハードな読書体験となりました。

本書の著者パーシヴァル・エヴェレット氏の著書は、日本ではあまり刊行されていないようですが、米国では20作以上の長編を発表していらっしゃり、高く評価されているとのことです。俄然興味がわいてきました。ほかに訳書が出ていないか、ちょっと探してみたいと思います。

『ジェイムズ』(河出書房新社)パーシヴァル・エヴァレット著/木原善彦訳

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ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。