こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『世界はさわらないとわからない ユニバーサル・ミュージアムとはなにか?』(平凡社)広瀬浩二郎著
博物館学芸員技術研修会でお世話になっている広瀬浩二郎先生の最新著書を、偶然見つけました。発行日は2022年7月15日。今年の学芸員研修会「触文化とユニバーサル・ミュージアム」を受講したのが、7月26日でしたので、直前に出ていた著書です。
読みながら、研修会での広瀬先生がおっしゃったこと、語り口がそのまま蘇ってきました。お話を聞き、実技指導を受けたうえでの読書でしたので、理解も深まったように思います。以下、備忘。
- 失明得暗
- 得暗によって「できる」ことで勝負していた歴史(がある)
- 目の見えない者は、目に見えない物を知っている
- 既存の枠組みそのものを変えるのがユニバーサル
- 非接触社会から触発は生まれない
- さわるとわかる=さわらないとわからない
- 博物館とは見る場所だという固定観念
- 視覚を使わない解放感
- 創・使・伝は手を介してなされる
- 外に伸ばした手は、内へと返ってくる。さわることによって外と内が融合する。
- 触察
- 物にさわるとは、創・使・伝を追体験する文化ともいえる
- なぜさわるのか(作法)、どうさわるのか(技法)
- 自分の(想像)力で「画」を動かす。
- ユニバーサル・ミュージアム=誰もが楽しめる博物館
- 行き方(情報入手法)と生き方(自己表現法)
- (健常者・障害者ではなく)見常者・触常者
- 身体感覚を伴わない情報共有は浅薄で危うい
- 文化相対主義
- 人々の生活の中で生きている文化
- (美術品なども)もともとは人々の日常生活を支えるものとして、実用的機能と美しさを併せ持つものであった
- 生活の中での文化の厚み
- 陳列棚に入ると生活から離れてしまい、何かが抜け落ちていく
- (茶道・華道・書道・食文化などの)生活文化
- 我々の生活から離れた特別なものではなく、生活とともにあるもの
- 作品の制作・鑑賞は、自己の内面との対話である
- 視覚を使わない自由
- (能)花=舞台上の魅力
- 花と面白きとめづらしきと、これ三つは同じ心なり(「風姿花伝」)
- 触覚の「美」
- 目に見えないものをごく自然に受け入れていた江戸時代以前の世界観
『世界はさわらないとわからない』(平凡社)広瀬浩二郎著より
本書前半は、先般の講義のなかで学んだことの復習でした。後半では、各分野の方々との対談やインタビューをもとにした内容が載っていて、これらは広瀬先生の講義のなかでは伺うことのできなかったことでもあり、とても良かったです。