こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『世界は贈与でできている』(NEWS PICKS PUBLISHING)近内悠太
本書も、ご近所のマイ図書館「福津市カメリアステージ図書館」の「新書棚」で発見。禅問答のような面白さで、一日で読了しました。ずいぶん哲学的な文章だなぁ、と思ったら、著者は気鋭の若手哲学者でおられました。さらにこのタイトル、どこかで見たことがある気がしていましたが、メールマガジン「ビジネスブックマラソン(BBM)」で以前に紹介されていたことを思い出しました。書評を拝見して気になったものは、やっぱり頭の片隅に残るものですね。
一日で読了と書きましたが、その実、非常に読みごたえがありました。前半(第1章「お金で買えないもの」の正体、第2章 ギブ&テイクの限界点、第3章 贈与が「呪い」になるとき、第4章 サンタクロースの正体)までは、自分の実体験に照らしてもよくわかり、納得しながらどんどん進みました。特に、お金で買えるものになったとたんに価値が下がってしまう現象の正体や、親子の愛情(関係性)を「贈与」の概念で解説するくだりは、すんなりと理解できるものでした。
後半(第5章 僕らは言語ゲームを生きている、第6章「常識を疑え」を疑え、第7章 世界と出会い直すための「逸脱的思考」、第8章 アンサング・ヒーローが支える日常、第9章 贈与のメッセンジャー)は、前半で出ている結論を強化する論考が、あの手この手で並んでいる印象でした。そのために登場するのが『サピエンス全史』であり、マルクスであり、映画「ペイ・フォワード」、フロイトの理論をもとにした岸田秀の「親からの呪い」論、「鶴の恩返し」、サンタクロース、ウィトゲンシュタインの言語ゲーム、シャーロック・ホームズ、カミュ、小松左京…などなど。
この後半については、正直なところ、一度読んだだけではよくわからないところもあり、わたしには再読が必要です。何度も読み返しながら、自分の考えをまとめていきたいと思える本でした。
ともあれ、久しぶりに「哲学的な問い」に向き合う本となりました。個人的にこういう問答は嫌いではないことを、再確認しました。時代の大きな転換期にあると思われる今のタイミングで、出会う(読む)ことができたことが嬉しい一冊です。