読書『二都物語』(新潮文庫)チャールズ・ディケンズ著/加賀山卓朗訳

読書『二都物語』(新潮文庫)チャールズ・ディケンズ著/加賀山卓朗訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『二都物語』(新潮文庫)チャールズ・ディケンズ著/加賀山卓朗訳

久しぶりのディケンズ、で『オリバー・ツイスト』を読んだのは今月初めのことでした。

つづいての「勝手に課題図書」指定であった『二都物語』を読了しました。

いやぁ、手強かったです。もともと上下2巻で出ていたものが1冊になった新潮文庫の新訳版。ディケンズの長編のなかでは短い方だと言われているそうですが、650ページを超えるボリュームで、しかも文学的表現の記述がてんこ盛り。独特の言い回しに、文字を追う目と頭がやっと慣れたのは、三分の一ほども読み進めた頃でした。本書が2014年刊行の新訳版であったことを考えると、その前に出ていたものは、もっと手強かったのだろうと思います。新訳版を出してくれた新潮文庫に感謝。

「ディケンズの代表作のひとつ」という以外には、まったく前情報を入れずに読書を開始しました。フランス革命(パリ市民革命)時代の話であること、「二都」がパリとロンドンを指し示すことをきちんと理解したのは、これもまた三分の一ほど読み進めた頃。そこから先は、これまでに読んできたフランス革命もの、藤本ひとみさんの『マリー・アントワネット』やら『アンジェリク』のイメージが背景に浮かんできて、読みやすくなってきました。「国王側」から描いたのが『マリー・アントワネット』、「国王ではないもの」の目線から描いたのが『アンジェリク』でしたが、『二都物語』では「市民革命」の「市民」が描かれています。

訳者あとがきによると、『二都物語』はディケンズの「ダーク」サイド全開の一篇ということですが、個人的には『クリスマス・キャロル』よりも『オリバー・ツイスト』よりも、読みごたえがありました。ラストは思いがけない展開となり、結末が見えない(想像するしかない)部分もありましたが、それもまた魅力的でした。今後また何度も読み返す本になりそうです。

『二都物語』(新潮文庫)チャールズ・ディケンズ著/加賀山卓朗訳

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ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。