こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『最果ての子どもたち』(早川書房)ニコラ・マチュー著/山木裕子訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。フランスの権威ある文学賞「ゴンクール賞」をとった作品だということで、そういえば先日読んだ本は「ゴンクール賞ノミネート」と紹介してあったような、と思い出しました。やはりカメリアステージ図書館新刊棚から借りた『小さな嘘つき』がそうでした。どちらも早川書房さんからの刊行です。
さて『最果ての子どもたち』読み始めてすぐに、いつの時代の話かが気になりました。1990年代の話だと分かり、納得すると同時に漠然とした暗い気持ちになりました。主人公は、かつて製鉄で栄えた「限界都市」に生まれた少年アントニー。彼が14歳のときからの8年間の青春を描いています。いわば思春期から大人へと成長を遂げていく期間。昔読んだ中島らもの本のなかに「息をするだけでも恥ずかしい」自意識過剰なお年頃、というような表現があったのですが、まさにそんな感じです。そこに出自のコンプレックスが加わって、登場人物それぞれの苦悩、痛々しさが読んでいる間中付きまといました。
『最果ての子どもたち』は、早川書房の公式サイトによると「青春小説」のジャンルですが、「青春」の文字の清々しさはまったくありませんでした。読みながら、少し前に読んだ『テスカトリポカ』を思い出しました。これも「貧困(富)」と「格差」が起点となるストーリー。現在の世界を覆う資本主義の仕組みに対する問題提起をする小説が、このところよく目に留まります。こうした本に出合えるのも、カメリアステージ図書館新刊棚のおかげです。