佐賀七山

読書『水神』(新潮社)帚木蓬生著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『水神』(新潮社)帚木蓬生著

帚木蓬生さん追っかけ継続中。いつものカメリアステージ図書館の蔵書から借りて参りました。本書を開いてまず文体でおや?と思いました…時代ものもお書きになるのですね。上下巻にわたる、長編歴史小説です。新田次郎文学賞受賞作ということで、賞の説明を確認したところ「小説・伝記・エッセイなど形式を問わず、歴史、現代にわたり、ノンフィクション文学、または自然界(山岳、海洋、動植物等)に材をとったもの」ということでした。現在、上巻を読み終えたところ。

舞台は筑後川流域の村々。江戸時代の久留米藩、稲田の渇水に苦しむ百姓たちのために、治水事業に命を懸けた庄屋の物語です。今だけの対処療法ではなく、将来の子々孫々にも恵みをもたらす事業。そうわかってはいても、人手もお金もかかり、村々のなかには事業に反対するところもある困難のなか、これを貫くことは並大抵のことではありません。

静かな筆致のなかに、登場人物たちの事業に賭ける熱い思いがあふれていました。帚木蓬生さんの著書をよく読んでいる友人が「文章がとてもきれいな人」と評していましたが、ほんとうに、目線がやさしくて、慈愛にあふれているのを感じます。だからなのかわかりませんが、気が付いたら、登場人物に感情移入しています。

「暴れ川」の異名も持つ筑後川は、もちろん現在も福岡県民にとって大切な水源の一つ。花祭窯のあるここ福津市は、地理的に近いとは言えませんが、上水道の一部は筑後川水系の恩恵によるものです。本書内に登場する地域の名前には聞き覚えのある所が多く、他人ごとではなく読み進めました。下巻も楽しみです。

『水神』(新潮社)帚木蓬生著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。