読書『浮世の画家』(ハヤカワepi文庫)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『浮世の画家』(ハヤカワepi文庫)

カズオ・イシグロ本、追っかけ継続中です。写真は、本の内容とはまったく脈絡なく、我が家の画家の図。

『浮世の画家』。 読みながら「これ、どこかで読んだことがある」という、デジャブ=既読感を感じました。初めて読んだので、別の本で同じ気持ちになりながら読んだということです。それが昨年読んだ『充たされざる者』(カズオ・イシグロ著)だったと気づくのに時間はかかりませんでした。

『充たされざる者』の読後ブログはこちら。

『充たされざる者』の舞台はあるヨーロッパの町、『浮世の画家』の舞台は戦前(回想)から戦後の日本。『充たされざる者』の主役は音楽家、『浮世の画家』の主役は画家。『充たされざる者』は全948ページ、『浮世の画家』は278ページ。

舞台も設定も本のボリュームも、ずいぶん異なります。ストーリー展開も、もちろんまったく違います。 にもかかわらず、「読んだことがある」という気がしました。

わかりやすく似ているところと言えば、主人公が「芸術家」的職業であることぐらいでしょうか。かといって芸術家的な職業であるということに、確固たる必然性があるとも思えませんでした。芸術家的な気質であるということは前提になっていたのかもしれませんが。

この既視感の理由は、それぞれの本に書いてあった内容自体に対するものではなく、おそらく書いてあった内容からわたしが個人的に受け取ったことに共通なものがあったのだな、ということがわかるのに、少し時間がかかりました。

うーん。深いです。無意識に、ずいぶん深いところで受け止めているのかもしれないという気がします。カズオ・イシグロ作品、次もますます楽しみになってきました。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。