犬香合 藤吉憲典

読書『犬のかたちをしているもの』(集英社)高瀬隼子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『犬のかたちをしているもの』(集英社)高瀬隼子著

先日初めて読んだ著者の『うるさいこの音の全部』が面白かったので、いつものカメリアステージ図書館で、既刊本をまとめて予約。ありがたいですね、図書館♪

『犬のかたちをしているもの』は、すばる文学賞受賞作。主人公は卵巣手術を経験した女性。そのことに加え、心理的な要因もあって、ふつうのカップルのようになれない自分の状態を客観的に眺める在りようが、不思議なほど淡々と描かれていました。「愛情」とはなにかを自分のなかで問答していくその基準が、愛犬に対して抱いていた無条件の(と思える)愛との比較で繰り返されるのは、犬と暮らしてきたことのある身には、なんとなく理解できるものでもありました。淡々と描かれているのですが、彼女とその彼氏との関係性のなかで起こることは、ちょっと尋常ではないことで、その尋常ならざる出来事に、これまた淡々と巻き込まれてしまう感じが、シュールです。

読み終わって思ったのは、ふつうってなんだ?ということ。どんどん変化していく世の中にあって、愛情の在り方に対してもいろいろな選択肢があるはずで、あるいは夫婦や家族の在り方にだって、正解はない。そのはずなのに、相変わらず何かに勝手に縛られている自分たちを「あるある!」と感じる小説でした。女性であること、妊娠・出産という事柄が起こりえることをテーマにしていて、かつ不思議なアプローチが、昨年読んだ『空芯手帳』とを思い出させました。

高瀬隼子さん、面白いです。次は直木賞受賞作品を読んでみます^^

『犬のかたちをしているもの』(集英社)高瀬隼子著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯(はなまつりがま)の内儀(おかみ)であり、Meet Me at Artを主宰するアートエデュケーターでもある、ふじゆり のブログです。