平凡社『浮世絵八華4 写楽」より

読書『稀代の本屋 蔦屋重三郎』(草思社)増田晶文著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『稀代の本屋 蔦屋重三郎』(草思社)増田晶文著

来年度のNHK大河の主人公・蔦屋重三郎。わたしが「蔦屋重三郎」の存在を知ったのは、昨年たまたまいつものカメリアステージ図書館新刊棚で見つけた本によるものでした。そのときは2025年のNHK大河の主人公とは知らずにいたのですが、今考えると、時勢を読んだ司書さんが新刊棚に並べてくださっていたのだろうと思います。わたしの読書は、情報感度の高い図書館司書さんにも大いに支えられています^^

その後、あちらこちらで「蔦重」こと蔦屋重三郎の話題が取り上げられるようになり、その存在が世間に知られるようになってきたように思います。かくいうわたしもだんだんと興味が募り、今回の本書は図書館で「指名借り」。

さて『稀代の本屋 蔦屋重三郎』、いわば江戸時代の本屋・出版人の話ではありますが、単純に「本屋」と片付けられるものではなく、今風に言えば「アーティストのキュレーター、プロデューサー」とでも呼ぶべき存在であり、彼の仕事への取り組み姿勢、業界への態度、作家を取り巻く様々な職人仕事の描写などが、非常に興味深いものでした。登場人物のセリフのなかに、芸術表現の本質に迫るものがいくつもちりばめられていて、思わず書き写しました。

読了後つくづく思ったのは、現代の日本でこれほどの情熱を持ったキュレーターがいるのだろうか?ということ。まあ、現代に限らずそのような人はめったに見当たらないからこそ「稀代の」という冠がつき、その生きざまがドラマになるのだとは思いますが。でも現代の日本にもどこかにいたらいいな、そういう人との出会いがあると、表現者としては嬉しいしラッキーだよな(たぶん)、と、ついつい作家目線で見てしまいました。

登場人物の生き様だけでなく、当時の江戸の文化・風俗を垣間見るに絶好の読み物です。時代は江戸中期、重商主義を掲げた田沼意次のイケイケドンドンな時代から、バブル景気をはじけさせる質素倹約の松平定信の時代へ、なるほどそのような時代だったのね、と。

蔦屋重三郎を取り上げた本は他にもいくつかありそうですので、また読んでみようと思います。

『稀代の本屋 蔦屋重三郎』(草思社)増田晶文著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。