津屋崎浜

読書『緋の河』(新潮社)桜木紫乃著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『緋の河』(新潮社)桜木紫乃著

カルーセル麻紀さんをモデルとした小説。新刊棚にあった『孤蝶の城』を読み終わったのは、つい1週間ほど前のことでした。

読み終わってあとがきを読んで、それが『緋の河』の続編であり完結編であったのだと知り、さっそく「その前」である本書を借りて参りました。読みたいときに読みたい本が手に入る、ご近所図書館のありがたさです。

『緋の河』良かったです。『孤蝶の城』も面白かったですが、それを超えて面白かった。図らずも順番を逆にして読んでしまいましたが、これがまたわたしにとっては良かったです。『孤蝶の城』で出てくる回想風景の原風景を『緋の河』のあちらこちらに見つけることが出来たのは、宝探しに似た面白さがありました。それにしても、前編にあたる『緋の河』を読まずに後編である『孤蝶の城』を読んでも、まったく違和感がなかったことを、あらためて思いました。すごいですね。

主人公・秀雄(カーニバル真子)の少女時代(少年時代?)を紡ぐストーリーは、切ないながらも凄みを感じました。あとがきで著者が、カルーセル麻紀さんの物語は「ほかの誰にも書かせたくなかった」と書いていて、その執念が書かせた本だと思えば、凄みがにじみ出るのも当然かもしれないな、と思いました。

カルーセル麻紀さんがモデルではありますが、登場人物の構成や出来事は、ほとんどが虚構であるといいます。モデルその人の壮絶な人生の物語と、小説家ならではの想像力が爆発した小説です。前編部分を読み終えて、もう一度後編を読みたくなりました。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。