こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『落日』(角川春樹事務所)湊かなえ著
わたしが「湊かなえ著作を読む」デビューしたのは、今年の三月のことでした。その後、図書館の「湊かなえ」さんの棚にずらりと並んだなかから、ときどき借りてきては読んでいます。まだまだ今から読める既刊がたくさんあるので、嬉しくなります。
『落日』は2019年発刊の書下ろし。『告白』を読んだときと同じような、ざわざわした感じが、読みながら胸の内に広がりました。幾重にも張り巡らされた伏線がどこにつながるのか、推理しながらの読書は、頭の体操にもなったような気がします。半分以上読んだあたりで、「真実はこうなのではないか」とつながったあとは、それが正解かどうかを確かめるための読書となりました。
主要な登場人物が脚本家と映画監督であり、フィクションとして事件を描くために、事実をできるだけ明らかにしていくというスタンスが、読んでいるわたしにとっては新しい視点でした。事実と真実との違いというのは、最近よく耳にしたり目にしたりするテーマですが、言葉での説明というよりも、このストーリー全体を通して、なるほどと理解できたような気がします。
ところで一番上の写真は、わたしの夕方散歩コース・津屋崎浜から海に沈む夕陽。『落日』のなかでは、「海に沈む夕日」が象徴的なイメージとして登場します。わたしにとっては、海に沈む夕日はここ津屋崎に住みはじめて以来、日常的に見ることができる当たり前の景色となっています。当たり前ではあっても、毎回その美しさに感動するのには違いありませんが。それでもこの場所から離れることになったとき、離れたあとに、自分にとってもっともっと特別な景色になるのかもしれないなぁと、思いながらの読書となりました。