読書『POP FICTION ポップ・フィクション』(文藝春秋)堂場瞬一著

読書『POP FICTION ポップ・フィクション』(文藝春秋)堂場瞬一著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『POP FICTION ポップ・フィクション』(文藝春秋)堂場瞬一著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。今年はなんとなく、小説の読書数がここ数年よりペースダウンするのではないかと感じていたのですが、1月の間に2冊目の読書記録を上げることが出来ましたので、ブログにアップしていないものも含めると、さほどスローペースではありませんね。

表紙のおしゃれで明るい雰囲気、まさにPOPな陽気に惹かれて手に取りました。堂場瞬一さんは、わたしは今回初めましてだったのですが、著作200冊というベテラン小説家さんなのですね。文藝春秋のサイトに上がっている著作タイトルを拝見したら、見覚えのあるタイトルがたくさん並んでいたので、おお!と思いました。ほんとうに、新人ベテラン関係なく、まだ読んだことのない作家さんがたくさんです。

さて『POP FICTION ポップ・フィクション』。文藝春秋サイトのキャッチコピーは『堂場瞬一流「エンタメの流儀」が詰まったお仕事小説』となっています。わたしは内容を全く知らずに読みはじめましたので、表紙を見て勝手に抱いていたイメージとはかなり異なる重厚な内容(と私には思えました)に、まず驚きました。大正時代、出版黄金期の雑誌出版に関わった人たちの物語。そこに名前の出てくる作家や文化人は、実名の方々もあり、へぇ~!と思いながらの読書でした。登場人物たちの熱量の大きさ、今なら「ブラック」「ハラスメント」と一発で批判されてしまいそうな働き方が、一時代の文化を作ってきたことを思いました。

物語のお終いの方で、雑誌出版の黄金時代の勢いに、「ラジオ」という新しいメディアが登場することへの危機感がちらりと見えます。今なら、ラジオ、テレビをさらに通り越して、インターネットメディア隆盛への危機感というところ。なるほど、こうしてメディアの役割と媒体が移り変わってきたのだよね、という感慨もありつつ、それでも新聞や雑誌というオールドメディアがまだどうにか生き残っていることを思いました。大正の時代を描きながら、現代への眼差しが強く感じられる一冊でした。

『POP FICTION ポップ・フィクション』(文藝春秋)堂場瞬一著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。