読書『W・チャーチル 我が半生』(中央公論新社)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『W・チャーチル 我が半生』(中央公論新社)

写真は、イギリスではありませんが、お日さまの名残りが美しい、夕刻の津屋崎浜。

少し前に読んだサッチャーさん『マーガレット・サッチャー 政治を変えた「鉄の女」』(新潮選書)から時代をさかのぼり、チャーチルさんへ。こちらは自伝でした。

「はじめに」にあたる冒頭部分が「現代イギリスの自伝として」と題した解説になっているとおり、1874年の生誕から、19世紀終盤の四半世紀を経て20世紀前半へというチャーチルの半生は、大英帝国の大きな転換期に重なっているのですね。読んであらためてわかりました。

特に本の前半で思い出したのは、カズオ・イシグロの書いた『日の名残り』。貴族の館で政治の重要なことが決まっていった時代への憧憬と、その終焉へ向かう時代の空気。『W・チャーチル 我が半生』の、行間に漂う当時の英国の思想と、階級社会の上から目線(笑)な文章がまったく鼻につかないと言えば嘘になりますが、それもまた時代と小説的文体のなせる業なのかもしれません。

そう、チャーチルの自伝記でありながら、気がつけば小説を読んでいるような気分になっていました。それもそのはずですね。チャーチルさんはそもそも文筆家でもあり、たくさんの著書があったことを、今回初めて知りました。

本書は自伝でしたので、次は客観的に書かれたチャーチルさんの本を読んでみたいと思います。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。