こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書:奥田英朗著2冊-『家族のヒミツ』(集英社)、『罪の轍』(新潮社)。
SNSのおかげで、読書家のお友だちがいることがわかるのは、とても嬉しいことです。皆さんがアップしている読書記録を拝見して広がる本の世界が、多々あります。奥田英朗氏は、そんなお友だちの一人から教えていただいた作家さんです。
まず一冊目『我が家のヒミツ』は、短編いや中編かな、6本です。いずれも、日常に起こりそうな出来事に見えつつ、冷静に考えるとまあ滅多に無いだろうな、というちょっとした事件をとりまく家族の右往左往を描いていて、その「日常感」が絶妙です。「家族小説」なるジャンル。「なんとなくわかる、経験したことは無いけれど共感できる」という距離感。展開にドキドキしながら読んでも、読後にはふっと笑みが漏れる終わり方で、サクサクと面白く気持ちよく読みました。
二冊目『罪の轍』は、打って変わって「社会派ミステリー」。東京オリンピック前年の昭和38年という時代設定で、本書は著者の早い時期の作品なのかと思いきや、2019年8月の発刊でした。「小説新潮」に連載されていたのが2016~2019年ということで、いずれにしても近年の作品。2019年刊行といえば、翌年に二度目の東京オリンピックがあるという年ですから、これは意図したものかもしれませんね。わたしは昭和44年東京生まれで、本書の時代よりも少々後にはなりますが、理解できる描写が多々あり、古いモノクロ写真を見ているような、タイムスリップしたような気分で読みました。
著者を教えてくれた方が、「この人は、腹抱えて転げまわるほど面白い小説と、とんでもなくシリアスな小説の両方書くので毎回楽しみです」とおっしゃっていたのですが、たった2冊読んだだけでも、ほんとうにそうだと感じました。まだまだたくさんの著書がありますので、また楽しみが増えました。ただ『罪の轍』は、続きが気になってなかなか本を閉じることが出来ませんでしたので、読み出すタイミングを注意しなければなりません(笑)。幸いご近所図書館に著作がたくさんありましたので、ゆっくり読んでいきたいと思います。