読書『大いなる遺産』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『大いなる遺産』(新潮文庫)チャールズ・ディケンズ著

写真は昨冬訪問したロンドン。

どんどん続く「読んでいなかった名作を」シリーズ。読んでいなかった名作、というよりは、あまたある名作の数を考えれば「わたしはそのほとんど読んでいなかった」と言わざるを得ない(笑)と実感する今日この頃です。それはつまり、これからもいくらでも読むべきものがある!という嬉しい現実でもあり。

ディケンズの自叙伝的要素も含む物語と言われていますが、ストーリーのなかに現れる偶然の出来事(設定)の数々には、いかにも出来すぎている感もあります。だからこそ「お話」としての面白さが盛り上がるのはもちろんですが。「そことそこまで繋げちゃう!?」的な、ばらまかれた伏線を残らず拾っていく感じがありました。

ともあれ劇的で、最近読んだ他の名作同様、『大いなる遺産』もまた映画に舞台にと引っ張りだこなのが理解できます。物語の時代は英国産業革命初期。「資本家」と「労働者」が生まれ、「都会」と「田舎」の対比が大きくなっていく、まさにその時代の葛藤が描かれています。

最近『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)、『<英国紳士>の生態学』(講談社学術文庫)で英国の階級社会についての分析を読んでいましたが、その時代に生まれた物語を読むことで、よりその事実が生々しく伝わってくる感じがしました。物語のなかに入って自分自身の感情の動きを通した方が、時代背景を理解しやすいこともありますね。

今回わたしが読んだのは新潮文庫版でしたが、とてもわかりやすく面白く読めました。これもまた各出版社から多様な訳者の方の翻訳で出ていますので、いろいろ読み比べてみるのもいいですね。