こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回。
九州産業大学美術館、地域共創学部の緒方泉先生が中心となって開催してくださる、文化庁事業「学芸員技術研修会」。学芸員技術のブラッシュアップの場であり、最新の知見を得ることができる貴重な場です。多様な立場で活動しておられる学芸員の皆さんと、さまざまな課題を考察したり意見交換できる機会でもあります。館に属さずフリーランスで活動しているわたしにとっては、ほんとうにありがたい機会で、2016年から毎年参加しています。
美術館等での研修の現地開催が悩ましい昨年から今年は、講座への参加に地域別の条件が付いたり、講座自体が中止になったりと、運営する事務局の皆様方のご苦労はいかほどかと頭が下がります。そんななか今年度は、オンライン開催による連続講座のご案内をいただきました。
「博物館リンクワーカー人材養成講座」では、美術館博物館をはじめとした社会文化施設が、地域住民の健康・福祉にどのようにかかわっていくことができるか、がメインテーマ。「博物館浴」の実現性と、そのための人材養成を探っていきます。思えば、2018年に受講した連続講座「2025年問題に向けた高齢者の健康と博物館の役割」から、「博物館浴」への動きはスタートしていました。
連続6回で構成される講座の3回目までが終了し、折り返し地点です。前半第1回から第3回までの、備忘的メモ。
第1回「博物館浴研究の最前線」
緒方先生のお話「博物館浴研究の最前線」。自分が漠然と考えていたよりも、ここ数年でエビデンス(医学的根拠)を積み上げていく取り組みが、世界各地でかなり進んでいるということがわかり、嬉しい驚き。英国、カナダなどが先進的なほか、3回目で報告のある台湾の取り組みも要注目。
グループワーク「オンライン語り場」では、全国各地からの参加者の皆さんのこのテーマに対する関心の高さが伝わってくる。どの地域でも同様の課題があることがわかる。またコロナ禍下で、課題の緊急度が高まっていることも伝わってくる。
個人的には「美術(美術館)はもっと使える」を実現する方法のひとつとして、具体的なアプローチが見えてくる予感大。「博物館健康ステーションのリンクワーカーとして働く」ことが、職業選択の際に現実的な選択肢として生まれる場になりそう。
第2回「オンライン博物館浴プログラムの実際」
身体を動かすことの意味・効果を、ふだんとは違った角度から眺める。2018年に参加した音楽療法講座での体験が、そのさらに先の展開につながっていることを理解できた。拝見した高齢者施設での事例はまだまだ発展途上の感があったものの、だからこそ今後どのように展開・進化していくか、期待が膨らむ。
実際にプログラムに合わせて体を動かしてみて、フィジカルなアプローチでの美術鑑賞法の可能性が広がることを実感。これまでは主に子ども向けのプログラムとして考えがちであった、美術と身体的エクササイズの組み合わせは、子どもに限らず楽しめるものであり、かつ心身のリフレッシュに有効であることが体感できた。例えば、エクササイズ×絵画、エクササイズ×仏像、エクササイズ×彫刻、エクササイズ×埴輪…など、組み合わせは資料により無限大。
第3回「台湾の博物館処方箋プログラムの動向」
台湾では既に手引書ができ平準化されつつあることに、嬉しい驚き。「処方箋に博物館と書く」動きがどんどん進んでいる。昨年来読んできた、台湾IT相オードリー・タン氏関連の著書にあったとおり、社会課題に対して国(政治)が真摯に市民の声を聞く仕組みができており、そのうえで官民共同があるからこそ(例えばコロナ対応しかり)、必要な施策をスピード感をもって実行できる。博物館浴への先進的な取り組みもまた、そうした成果のひとつであろうと思えた。
医療(医者)との連携、福祉(施設)との連携、行政の各分野(縦割り)との連携。どこを窓口として、いかに横のつながりを構築していくかが、実務を考えていくうえでの現実的な課題になるであろうとの共通認識。
後半のプログラムは12月。今からとっても楽しみです。