こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
2021年度学芸員研修「美術館 de やさしい日本語」勉強してまいりました。
いつもたいへんお世話になっている博物館学芸員技術研修会。なかでも個人的に今年度一番楽しみにしていたカリキュラムが開催されました。コロナ禍で延び延びになっていましたが、難しい状況のなか、Zoomではなくリアル開催を決定してくださった事務局の九州産業大学緒方先生に心より感謝いたします。
久しぶりのリアル研修会は、休館日の福岡市美術館で。丸一日の研修会は、ふだん家でマイペースで仕事をしている我が身には長すぎるか!?と思いきや、一瞬も目を離せない内容で、あっという間の7時間でした。
「文化芸術事業における多文化共生・多言語アクセシビリティを考える」。今どきの言い方をするとこんな風になりますが、要は、美術館に来た人たちにいかに楽しんでいただくか。そのためのツールのひとつとしての「やさしい日本語」です。「やさしい日本語」は、在留外国人の方々への配慮として近年広がってきています。わたしは常日頃ラジオでLOVE FMを聴いているのですが、そのなかに「やさしい日本語」のコーナーがあります。実のところ日本語を母国語とするわたしたちにとっても「やさしい」ものになります。
講師をしてくださったのは、国内では最も取り組みの進む東京都で事業をけん引しておられる生活文化局都民生活部職員の村田陽次さんと、多文化共生プロジェクトに取り組みたくさんの実践事例を積み上げておられる多摩六都科学館研究・交流グループリーダーの高尾戸美さん。
以下、学び備忘。
- 東京都では芸術文化施設における「やさしい日本語」への取り組みが進んでいる。
- 文化事業における取り組みが重視されているのは、地域でリーダーシップをとる施設(都の場合は東京都美術館)の存在が大きい。
- 文化事業と多文化共生(多言語アクセシビリティ)の目指すものは親和性が高い。
- 正解はそれぞれ。まずやってみる。
- トライ・エラー・フィードバックの繰り返しが「やさしい日本語」の取り組みを進め・広げる推進力になる。
- 「覚悟」を持って取り組む&一人でも多くの理解者を巻き込んでいくことが大切。
- 「やさしい日本語」は方法のひとつ。
- 根っこにあるのは「社会的包摂」の理念。
- 言語以外のコミュニケーションの役割。図説・ピクトグラムやボディランゲージなど、いろいろな方法がある。
- いずれも根底にやさしい気持ちと「伝えたい」という熱意があってこそ。
- 対象者の反応に応じて修正していく継続性が要。
- 作品解説を「やさしい日本語」で作成する過程をとおして、言葉を選ぶことはその言葉の受け取り手をイメージして心を配ることだと理解。難しいながらも楽しい作業。
- 自分が「やさしい日本語」だろうと考えているものと、ガイドラインの評価とでは、かなり食い違う恐れがある。
- だからこそ、チェッカーの存在は重要。
- 専門用語は専門用語(固有名詞)として残すこと、見て分かるものは、そのイメージを表す言葉として理解してもらうことなど、方法は単純に「やさしい言葉遣いにする」だけではない。
- 「やさしい日本語」による内容と目的を明示することによって、外国人向け、子ども向けというように対象を限定しなくても、それを必要とする人々が美術鑑賞に興味を持つきっかけを提供できる。
これはひとつでも多く実践していくことでしか、その技術を習得する道はありません。この講座をきっかけに、「やさしい日本語」での鑑賞ワークショップの可能性が見えてきました。