読書『中原中也全詩集』中原中也(角川ソフィア文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『中原中也全詩集』中原中也(角川ソフィア文庫)

久しぶりに中原中也。初めて中原中也の詩にふれたのは、小学生低学年の頃だったと思います。おそらく教科書に詩が載っていたのだと思うのですが、今となっては定かではなく。ただただ「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」にノックアウトされたのが、最初の出会いです。

その後、中也に執着していたわけではありませんでしたが、進学した大学が「湯田温泉」にありましたので、どうしたって「中原中也」の影が見え隠れするのです。まあ、それを言ったら「種田山頭火」もそうなのですが。30年ほど遡る当時「金子みすゞ」は実は現在ほどメジャーではなく。これは、金子みすゞについての本を読むとどういうことかすぐにわかりますので、また別の機会に。とにかく湯田温泉の街を歩いていると、中也や山頭火の気配がするというのは、面白いものでした。山口という場所はとても不思議なところで、わたしは大好きです。

さて大学を卒業後はまたしばらく中也のことは忘れていましたが、思い出させてくれたのが、息子の誕生。『にほんごであそぼ』です。NHKのEテレ子ども向け大人気の同番組。そのなかに「サーカス」「よごれちまった悲しみに」など、中也の詩がいくつも出てきて久しぶりに再会したのでした。

と、個人的に十数年周期で中原中也の詩を読んできたところへ「全詩集」があるという話を聞いて、飛びついたのがつい先月のことでした。上の写真は、中也の写真としてはあまりにも有名なもので、本書の表紙です。それにしても、いつ見てもアップに耐える美形ぶり。肝心の「全詩集」は厚さ3センチを超えるずっしりとした文庫で、まあ、読みごたえもばっちりです。

ざっと全編読んでみて思ったのは、わたしにとって響く詩は、昔も今もあまり変わらないということ。「サーカス」「汚れちまった悲しみに…」「生ひ立ちの歌」「早春の風」「湖上」「一つのメルヘン」「また来ん春…」「月夜の浜辺」。

未発表の詩もたくさん載っているのですが、これはどうなのかな、と思いました。この手のモノを読むときにいつも思うのですが、故人には選択権が無く、ただ、まだ出すべきでないから未発表だったのではないかしらと思うと、読んではいけないような気がするのです。と思いつつ、目を通してしまいましたが。

巻末の大岡昇平による「中原中也伝」が読み応えありました。