こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)細尾真孝著
2021年度選書ツアーで蔵書に追加していただけることになった6冊のうちの1冊です。12月に入ってから、今年のベスト候補に上がりそうな本を立て続けに読んでいます。
京都は西陣織の12代目であり、国内外で伝統工芸を広める活動をなさっている著者の、初めての著書。「国内外で伝統工芸を広める活動」をしている人は、これまでにもたくさんいらっしゃいましたが、細尾さんの視野の広さ深さは、これまでの様々なアプローチとまったく違うというのが、読後の感想です。読みながら頷くこと多数。とても励まされる一冊でした。上の写真は藤吉憲典の展覧会図録で、伝統工芸・アートの担い手としての見解を書いているページ。考え方の重なるところがたくさんあります。
以下、備忘。
- 工芸とは、上手い下手には関係なく、自らの手や身体を使って、美しいものをつくり出したいという、人間が本能的に持っている原始的な欲求に忠実であることなのです。
- 「手で物をつくる」ことこそ人間の創造性の原点である
- 本来、日本のものづくりは独自の美意識によって発展してきました。
- 日本では、自然に近い状態こそが、最も美しいのです。
- 美意識は育つ
- 手の中に脳がある
- 五感を総動員して体験することが、美意識を磨くことにつながる
- 常識はすぐに変わる
- 言葉にすれば、波紋は必ず広がっていく
- 風呂敷は大きく、広く
- やらなくて良いことを、やりたいからやる
- 美意識を妥協してはいけない。
- 対等なコラボレーション
- 美への投資
- 美しい物を使う/本物の美に触れる
- 使う物に責任を持つ
- 触れる
- 美の型を知る/先人の美意識を身体化させる
- 作品に対する美の気配なくして、作品を判断することはできない
- (日本におけるアートは)鑑賞者と物が空間において調和するなかで、初めて成立
- 美しいものを創造している人は幸せになれる
- 自分の中に深く落とし込むためには、自らお金を払う必要がある
- つねに日常で、仕事で、美意識を感じながら生きる
- 創造にとって大事なのは、常に背伸びをして、挑戦を続けることで、自分の美意識を打ち破っていくこと
- 創造の根幹は工芸にある
- ゴシック様式には「精神の力と表現」がある/ゴシック様式の建築には、職人たちが自ら考え、手を動かした結果がある
- 新しいルネサンス/「美意識を持った創造的活動」という原点に立ち返ること
『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社) より
伝統工芸に直接携わっている方はもちろん、伝統工芸を取り巻くお仕事についている方々にも、ぜひ読んでいただきたい本です。
また、上の「備忘メモ」には書きませんでしたが、本書中に現代アートの問題点を指摘する例のひとつとして、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」についての著者の感想・解釈が出てきます。騒動の最中からその後まで、わたしがずっと疑問に思っていたことが代弁されているような内容で、「そう!そのとおり!」とすっきりしました。少しでもアートに携わる人は、あの騒動でいろいろと考えたと思います。気になる方は、ぜひ読んでみてください。