花祭窯でお抹茶

再読書『The Book of Tea 茶の本』(IBCパブリッシング)岡倉天心

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

再読書『The Book of Tea 茶の本』(IBCパブリッシング)岡倉天心

『読書大全』からリストアップした「2022年に読みたい本」のなかに、鈴木大拙著『禅と日本文化』があります。1936年にアメリカ、イギリスの大学で行われた講義「禅と日本文化」をまとめたもの。これを読もうと思ってふと思い出したのが、本書・岡倉天心の『茶の本』です。どちらが先だったのかしらと思って確認したところ、『茶の本』が1906年で、先なのですね。というわけで『禅と日本文化』の前にこちらを再読することに。

以下、まとめ。


  1. 茶は「生の芸術」であり、「現在」と向き合うもの。
  2. 茶において、自己の超越(=無)が起こりうる。
  3. 茶を通じて「不完全」を学ぶ。
    すべてを仕上がったものとはみなさず、そこにいくばくかの想像力を補って臨む。
    目の前に見える景色が不完全であるからこそ、そこに無限の創造力が働く。
心の器
  • 茶道は日常の俗境のなかに美を見出し、それを賛美する心に基づいたもの。
  • その根本は「不完全なるもの」を敬う心。
茶の流派
  • 日本人にとっての茶は、生きる術を教えてくれるもの。
  • すべての動作は単純で自然に行われる。
  • 茶の湯の目標は、主人と客が一体となってこの世の無上の喜びを創り出すこと。
  • 茶室はこの世におけるオアシス。茶室で藝術を享受することによって癒される。
道教と禅
  • 茶道のなかには、人生と芸術についての道教の思想が具体化されている。
  • 「道」は「移り行く経過」にある。
    神と自然が出会うところも、昨日と明日が分かれるところも、我らのうちにある。「現在」とは、移動する「無限」である。
  • この世に生きる術は、(中略)この世をありのままに受け入れ、(悲しみや苦しみの)世の中に美を見出そうとすること。
芸術
  • 偉大な傑作は、何も言わないでおくところに、見るものに考えを完成させる機会を与える。
  • 考えることによって、見るものは自分も実際にその作品の一部になったかのように思わせられる。
  • そこには見る者の美的感情を受け入れ、極限まで満たせるような「虚」がある。
  • 禅:ありふれた日常のことが、精神的なことと同じくらい重要である。
  • 茶:茶道の一切の理想は、人生の些細な出来事の中に、偉大なものを認識することである。
茶室
  • 数寄屋:好き屋:個人の美に対する欲求を満たす空間。
  • 露地:待合と茶室を繋ぐ露地は、瞑想の第一段階。
  • 茶室はこのうえない平和の場所。
  • 躙り口(にじりぐち):謙譲の精神。
  • 茶室の概念:物質に対して、精神が優位でなければならない。
    藝術の活力が生まれる原則にかなうものでなければならない。
    現在の生活にあてはまり、現在をより楽しむものでなければならない。
  • 過去の創造を無視するのではなく、それを自分達の意識のなかに吸収していく。
禅の教え
  • 不完全を完成させたもののみが、真の美を見出すことが出来る。人生や藝術の力は、それが成長する可能性を秘めている点にこそある。
  • 茶室では、自己との関係において、全体の効果を完成させることが、客の想像に任されている。
  • 茶室の簡素さや邪悪なものを遠ざけた佇まいは、浮世から離れた聖域。茶室でのみ、なにものにも邪魔されることなく、美を愛でることに没頭できる。
  • 茶室は休息の場であり、美の精神を自由に交感できる唯一の場。真の風雅を味わうことのできる場。それが難しくなってきている現代こそ、われわれは茶室を必要としている。
芸術鑑賞
  • 芸術の価値は、われわれに訴えかけてくるものがどれほどあるかで決まる。我々が時と場所を超えて心に感じることができれば、芸術は普遍的な言語だと言える。
  • 藝術と考古学を混同してしまうという間違いをおかしてはならない。時代の重みに負けて、美的感覚をないがしろにしてはならない。
  • 現代の日本人は、生活のなかの美を破壊することで、芸術をも破壊している。
活花
  • 無用と思っていたものに多少の使い道があると気づいたとき、人は芸術の領域に入る。
  • 葉と花をあわせて扱う。植物全体の美しさを表現することがその目的だから。
  • 茶人による活花は(中略)意図しておかれた場所から動かされてしまうと、とたんにその意味を失ってしまう。
茶人
  • 芸術では、現在こそが永遠である。芸術を真に理解できるのは、芸術から日々影響を受けるものだけ。
  • 芸術家は芸術家であることを超え、芸術そのものに近づこうとする。それこそが禅の美学である。

『The Book of Tea 茶の本』(IBCパブリッシング)岡倉天心より


読むたびに新しい発見があります。自分が少しでも成長すれば、同じ本から得られるものも、どんどん増えていきますね。次はいよいよ、鈴木大拙著『禅と日本文化』に取り組みたいと思います。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯(はなまつりがま)の内儀(おかみ)であり、Meet Me at Artを主宰するアートエデュケーターでもある、ふじゆり のブログです。