こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『オリバー・ストーン オン プーチン』(文藝春秋)オリバー・ストーン著/土方奈美訳
オリバー・ストーン監督と言えば、わたしは『プラトーン』が真っ先に浮かぶ世代です。ベトナム従軍の体験から、いくつもの反戦作品を作っている社会派のイメージ。本書は2015~2017年にドキュメンタリー用に行われた、プーチン大統領へのインタビューを書き起こしたものです。米国内で放映されたそのドキュメンタリーは、「まるでロシアのプロパガンダ映画のようだ」と米国主要メディアから酷評されたとか。
今、このような世界情勢になって、自分がソ連・ロシアの近現代についてほとんど何も知らないこと、自分の頭で考えるための地力・知識が足りないことに焦りを感じています。これを少しでも補うためには、近現代史をもっと知らなければ、と。もちろん本を少々読んだからといって、一朝一夕に理解が進むものではありませんが、少なくとも複数の視座があることがわかるのではと思っています。
そのような手掛かりを求めて読んだ本の1冊が、先日ご紹介した『グッバイ、レニングラード』(文藝春秋)でもありました。それまでにロシア関連の本で読んだことのあるものと言えば、トルストイやドストエフスキーなどの古典小説以外では、元外務省主任分析官である佐藤優氏の『十五の夏』(幻冬舎)ぐらいだったと思います。
あくまでも個人的な考えですが、史実を知りたいと思ったときに、学術的な書籍ではないからこそ書けることもあると考えています。ルポルタージュ、エッセイ、小説など、取材者・執筆者の主観が大前提であったり、フィクションだからこそ紛れ込ませて書ける事実もあるように思います。もちろん、そうした文章のなかから、いかに真意や文脈を読み取ることができるか、が問われますが。
さて『オリバー・ストーン オン プーチン』。ロシア側から見た世界、の視点です。巻頭に「日本語版のための手引き」が載っており、インタビューの内容を理解するために必要なキーワードが解説されています。上の写真はそのなかの一頁。このキーワードをたどっただけでも、知らないことがどれだけたくさんあるかと思いました。逆に言えば、これらのキーワードをいくつか知ることで、少し見えてくるものもあります。同時に、ますますわからなくなることも出てきますが。
プーチン大統領の言葉で語られる国際情勢。インタビューで語られていることがすべて事実であるという保証はありません。また仮に事実であったとしても、だからといって現在の軍事的な出来事を肯定できるものでは一切ありません。そのうえでも、自分が「無意識のうちにアメリカ側の世界観を内部化しがちな日本の読者」(訳者あとがきより)であることに気づき、別の視座もあると知ることは、大切だし必要なことだと思いました。
本書内でオリバー・ストーン監督は「私は母国(アメリカ)を愛している。(中略)私は反アメリカでも、親ロシアでもなく、親・平和だ。(中略)世界の先行きに不安を感じるのは、母国(アメリカ)の平和への姿勢に不安を感じるからだ。」と書いています。今、どのような思いでこの状況を見ているのでしょう。すべての国・人が「親・平和」を謳える世になることを願います。