こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『おもみいたします』(徳間書店)あさのあつこ著
あさのあつこさん=『バッテリー』。わたしはテレビドラマも映画も観ていませんし、本も読んでいませんでしたが、それでもすぐに連想できるほどに、イメージが定着しています。なので、本書『おもみいたします』の表紙を見たときにまず「時代小説!?」の意外性を感じました。ところが、ちょっとググってみてびっくり、2006年に『弥勒の月』という時代小説を出して以来、何本も書いていらっしゃったようです。そもそも『バッテリー』に限らずあさのあつこさんの著書を読むのは、これが初めてでした。
江戸の庶民文化・生活を垣間見るような物語は、読むうちに『鬼平犯科帳』やら『御宿かわせみ』やらの世界観と重なりました。時代小説は、その主人公を中心としていくつもの物語を展開し、シリーズ化しているものが数多くありますが、『おもみいたします』の主人公である「天才的揉み師」お梅もまた、そのような主人公となり得そうな、魅力的なキャラクターでした。連続テレビドラマ化できそうな感じがします。
目の見えない揉み師はお梅は、視覚以外の感覚に優れていて、その感覚を軸に物語は広がっていきます。お梅を守る存在として、妖怪というか、精霊というか、異世界との間に存在するものが側にいることが、単なる時代小説ではなく少々ファンタジーな味付けとなっていました。それがあくまでも非現実的な味付けとはならず、さらっと受け入れられる辺りが、物語の力なのだと思います。
触ることでしか見えないものもあるという感覚、「見えない=かわいそう」ではないのだという当事者の想いは、全盲の人類学者・広瀬浩二郎先生の研修を受けたときに少しばかり体感的に理解しましたが、本書では物語だからこそ伝わってくるものもありました。
そういえば現在公開中の映画『藤枝梅安』は、鍼灸師。あん摩や針灸がこの時代に民間療法として人々の生活に根付いていたことが伺えます。