こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『雲を紡ぐ』(文藝春秋)、『犬がいた季節』(双葉社) 伊吹有喜 著
大量に本を読んでいる友人の存在はとてもありがたく、そういう師匠的な友人が何人も周りにいる…と書いたのは、つい先日のことでしたが、本日ご紹介する2冊、著者の伊吹有喜さんもそんなお友だちから教えていただいたのでした。伊吹有喜さんのことは存じませんでしたので、初読み♪
読みはじめてすぐに、どうにも時代背景の描き方に親近感があり著者紹介を探したところ、道理で生まれ年が一緒でした。舞台となる地域については、これまでに縁の無いところばかりでしたので、新鮮な気持ちで読みつつも、同時代の親近感というのは濃いものですね。
『雲を紡ぐ』でも『犬がいた季節』でも、高校生から大人へと成長していく道のりでの葛藤が、登場人物を通して描かれています。その一方で、『雲を紡ぐ』では伝統工芸の手仕事、『犬がいた季節』では美術が、大切な要素として物語を支えていました。著者自身の趣味・興味として、伝統工芸文化や美術があるのでしょうね。そんなところにも、わたしが読みながら親近感を持った理由があったのかもしれません。
いずれのストーリーも、学校の問題、進路の問題、家庭の問題など、登場人物たちはそれぞれにシビアな現実を抱えています。それにもかかわらず、ストーリーは最初から最後までやさしい雰囲気に包まれていると感じました。具体的に説明するのは難しいのですが、あたたかいというよりは、やわらかい感じ。
読む人が自分の高校生時代から社会人に至るまでの来し方を考えたときに、人によっては大きく共感して切ない気持ちがこみ上げるのかもしれません。残念ながらわたしには共感できるストーリーがありませんでしたが、それでも読んでやさしい気持ちになることが出来ました。ふだん自分が選んで読んでいた小説は、どちらかというと攻撃的な空気感を持ったものが多かったのかもしれないと、気づかされた読書でした。
こういう発見があるから、お友だちからのおススメはありがたいです。やさしい気持ちになりたい人、特に50代あたりの皆さまにおススメです。伊吹有喜さん、同世代の作家さんですので、これからも緩やかに追っかけてみたいと思います♪