津屋崎浜より

読書『アフリカの瞳』(講談社)帚木蓬生著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『アフリカの瞳』(講談社)帚木蓬生著

帚木蓬生さんの追っかけ継続中です。長編が多く、一冊読み終わるのに時間を要するのではありますが、毎回テーマが興味深く、引き込まれています。本書のテーマは、アフリカのエイズ問題。小説とは言いながら、現実的な社会問題としてイメージできるものであり、少し前に読んだ、ルポライターの三浦英之さんによる『沸騰大陸』(集英社)を思い出しました。

個人が問題意識を持ったところで、相手が大企業だったり国だったりと大きな権力を持った存在の場合、無力感に苛まれ諦めてしまうことは責められないと、50年以上生きてきた今のわたしは考えています。声を上げなければ何も変わらないと言われたら、たしかにそうかもしれませんが、では声を上げればどうにかなるのか。せめて自分にできることをコツコツと、抵抗にもならないかもしれない抵抗をするしか、無いのではないかと。本書には、そんな無力感をものともしない正義感に突き動かされる登場人物たちが何人も出てきて、その姿にスカッとしたものを感じました。

本書は2004年が初出ですが、政治と製薬会社についての話は、つい先般のコロナ禍下でも同様のことが起こっていた(あるいは現在進行形かも)のだろうなぁと、思わせられるものがありました。わたしは昔、一年ほどの短期ですが製薬会社の仕事をしたことがあり、MR(医薬情報担当者)さんたちのお仕事ぶりを眺めていましたので、いろいろと想像できることも多々ありました。

ところで本書は、著者の過去作『アフリカの蹄』の続編的なものだそうで、本書の中でもそのエピソードが度々登場しました。『アフリカの蹄』を読んでいなくても、まったく問題なくストーリーに入り込むことができましたが、遡って読みたいと思います。

『アフリカの瞳』(講談社)帚木蓬生著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。