こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
再読書『蔦屋重三郎 江戸を編集した男』(文春新書)田中優子著
NHK大河のおかげで一躍有名人になりつつある、蔦屋重三郎。かくいうわたしは、こんな人がいるとは、数年前までまったく知りませんでした(笑)。急に関連本が目につくようになって、昨年までに何冊か読んだ関連本のなかで、個人的に一番「彼がやったこと=江戸文化の編集・キュレーション」を考える糸口になったのが、本書でした。江戸時代といえばこの方!な、田中優子先生の著書です。
もう今から8年も前のことになりますが、当時法政大学総長であった田中優子氏の講演会「グローバリゼーションと江戸時代」が福岡のオータニで開催されて、法政大学の公開講座で誰でも聴講できるとあって、そのテーマに惹かれてそそくさと出かけてきたのでした。1時間と、さほど長くない時間ではありましたが、お話の面白さと語りの格好良さにファンになりました。
今まさに、シルクスクリーン作品という「版画作品」に取り組むにあたり、「版画作品ならではの価値」を突き詰めるヒントを得るべく、読み直しです。
- 集め、結合し、見立て、競わせ、俳諧化する
- 絵画の媒体(メディア)が大きく変わったのだ。絵画は屏風や襖や掛け軸といったインテリアに使われるものから、本や一枚絵や組絵になった。
- 大きな家に暮らしていなくとも、たとえ長屋住まいであっても、手元に置いて眺められる絵になった
- 複製芸術であるから値段も安くなった。つまりは芸術が庶民のものになった
- 技術(わざ)と編集
- 極めて微細で微妙な線で描くので、高度な技術の絵師と彫師と摺師が必要になった。
- 色を使わない空摺り
- 絵画に引けを取らない上質の分野
- 単に絵が繊細で上手いだけではなく、彫り、摺りという版画技術への限りない敬意
- その経緯とは、自分の筆で描いたその極めて繊細な線を、必ず実現してくれるという信頼
- 「編集」とは(中略)単に、売れることだけを計算して企画することでもない。
- 「何を世に出したいか」
- 編集者は自分が何を見たいか、何を読みたいか、の視線が明確でなければならない。
- 蔦屋重三郎が江戸文化を編集する手際は、その知識に人々を導くことではなく、その核心に触れてもらい、楽しみ、それぞれの想像力に火をつけること
- 編集の究極がディレクション、つまり方向を指し示し、ヴィジョンを見せることである
再読は「何に目を向けて読むか」によって、得られるものが変わってくることを認識する機会になります。欲しい答えや、欲しい答えにたどり着くためのヒントがたくさんの読書となりました。