こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『小さな嘘つき』(早川書房)パスカル・ロベール=ディアール著/伊禮規与美訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。いつの間にか「早川書房さんからの海外ノベル」は、わたしのなかで一定の位置付けになってきたようで、気になって手に取ったものに「早川書房」と書いてあると、勝手に信頼して期待して、中身をチェックせずに借りてくることが増えてきました。
本書はフランスのジャーナリストでありコラムニストであり小説家であるという著者の一冊。もちろんわたしは「初めまして」の作家さんです。読後にチェックした早川書房の公式サイトには、法廷記者であり、フランスで最も権威のある文学賞のひとつ「ゴンクール賞」にノミネートされたと書いてありましたが、それ以外にあまり著者情報が載っていませんでした。社会の、無意識の偏見に対する鋭い視点は、法廷記者というお仕事からのものだったのだろうな、と解釈しつつ。
さて物語は、5年前に15歳だった少女が被害者となった裁判結果が、実はその少女の「嘘」によるものだったという、かなりびっくりな展開からはじまります。その「元少女」を弁護することになった女性弁護士を語り手として、ストーリーが進みます。少女が嘘をついた理由、嘘をつくような状況に追い込まれていく様子は、解き明かされるほどに苦々しくも心あたるものでした。読者であるわたし自身もまた、ある種の思い込み(あるいは偏見)を持って小説を読み進めていたからこその「びっくりな展開」だったのだと突き付けられました。
なぜ彼女はそのような嘘をつかざるを得なかったのか。15歳、思春期真っただなかの中学生というのは、自意識が強く、自分の立ち位置を守ることに必死で、とても生きづらい年代だったと思います。そのうえ「こうであるはず」という大人の偏見や周囲からの無意識の期待にさらされたら、どうすればよいのか。自分を守るためについた嘘が、結果として他者を貶めることになるのは、彼女の例に限ったことではなく、いろいろなことを考えさせられました。