こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『第七問』(白水社)リチャード・フラナガン著/渡辺佐智江訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。このところ近現代を舞台とした良書にたくさん出会っています。「新刊棚」はとても小さなスペースですが、訪れるたびに興味深い新刊に出合えるので、探す手間が省けて、自分以外の人の選書を楽しむことができるのが、とても魅力的です。
さて『第七問』。読み始めてしばらくして「???」となりました。ひとつには、いくつかのストーリーが章毎に新たに立ち現れてくること、そしてもうひとつには、「語り手」と著者が重なること。手掛かりを求めて裏表紙の説明書きを読んだところ「ベイリー・ギフォード賞」受賞とあり、どんな賞なのかを調べました。これは英国で選定される英語のノンフィクション図書賞だそうで、なるほどノンフィクションだったのね!とわかり、少々混乱が収まりました。
著者のお父さんの日本での捕虜労働につながる話、著者の母国オーストラリア・タスマニアの歴史にまつわる話、『宇宙戦争』で知られるSF作家H・G・ウェルズの『解放された世界』にまつわる話、著者自身がボートの事故で死に直面した話、と、一つだけとっても重厚なテーマが、次々と立ち現れます。最初は「???」だったそれらが、次第にひとつの方向に向かってまとまっていくさまを読むのは、わたしにとってすごい読書体験となりました。
後半に向かって、読者に投げかけられ続ける鋭い「問い」は、古今東西の「わたしたち」に向けられた痛烈な批判であり、出口の無いしんどさを感じさせられました。著者は小説でもブッカー賞をとっており、フィクションでもノンフィクションでも卓越した作品を書いている、稀有な作家のようです。タイトルの『第七問』の意図するところは、とても哲学的で、わたしにはよく考えることができませんでした。著者の別の作品=小説も読んでみたいと思います。
