次なるお題は「葉巻」。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

次なるお題は「葉巻」。

長年のお付き合いのあるお客さまから、新しいテーマをいただきました。磁器作家・藤吉憲典の作品と人となりを理解して下さり、そのうえで面白いテーマを投げかけてくださるので、毎回取り組み甲斐があります^^

さて、葉巻。新しいテーマが上がってきたら、いつも最初は本屋さんや図書館で資料集めです。が、今回は足を運んでもネットで探しても、使えそうな資料をほとんど見つけることができませんでした。

助け舟を出してくれたのは、親しいお友だち。「葉巻だったら、〇〇さんが資料たくさん持っているはず!」ということで、共通の友人の名前があがり、そういえばそうだった!とさっそく相談。こういうとき、頼りになるマニアックなお友だちがさまざまな分野にいるのは、心強い限りです。

その友人、ありがたいことに、隣県から車を飛ばして、たくさんの資料を持ってきてくださいました。ほぼすべて洋書で、資料だけ見てもわからないことも多いからと、素人のわたし達にわかるよう、詳しく解説してくださいました。約3時間、みっちりと知識のレクチャーを受けました。

どうやら、葉巻もまた奥深い文化を持つもののようです。たしかに藤吉の磁器作品で、葉巻を取り巻くアクセサリー類をつくったら、素敵なものができるだろうなぁ、とイメージが湧いてきました。

知識のレクチャーのあとは、体験型のお勉強。北九州市に西日本随一のシガーバーがあると聞いて、近々ダンナはお勉強に出かけることになりました。それにしても、地方でありながら比較的近場に、このような文化の場がある幸運。福岡はいろいろな面で恵まれた場所だなぁ、と思います。

まだ資料集めの段階ですが、成果物ができあがるのがとても楽しみです。実際にモノを見ることができるのは、年内ギリギリになりそう。毎回面白いテーマをくださるお客さま、いろいろな分野で力になってくれるお友だちに、心より感謝です。

念願の蕎麦猪口棚!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

念願の蕎麦猪口棚!

ついに手に入れました。100客以上の蕎麦猪口を一覧できる蕎麦猪口棚。蕎麦猪口コレクションを販売するようになってから20年来、ずっと憧れていた景色です。

この専用棚をフルオーダーでつくってくださったのは、お友だちの大川家具ドットコムさん。福岡・大川は家具の産地。大川家具ドットコムさんでは、腕の良い信頼できる家具職人さんとタッグを組んで、業種に合わせたフルオーダーものもいろいろと手掛けておられます。

大川家具ドットコムさんに蕎麦猪口棚を作っていただきました。

陳列棚としての美しさはもちろん、種類別の在庫が一目瞭然となる機能性。空いているマスは埋めたくなるのが人情ですから(笑)、このところ慢性的に在庫不足状態の蕎麦猪口も、徐々に充足していくはず…というわけで、在庫管理にもばっちりです。棚の裏側は、バックヤードスペースになります。

大川家具ドットコムさんに蕎麦猪口棚を作っていただきました。

それにしても、さすがプロですね。制作前に現場を実際に見なくても、ここまできちんと汲み取っていただけるものなのだなぁ、と感嘆しました。オーダーの際は、設置場所と周りの写真を送り、こちらの要望を図と言葉とサイズで説明して、という簡単なやりとりでしたが、ばっちりでした。

大川家具ドットコムさんに蕎麦猪口棚を作っていただきました。

設置には、棚を制作した職人さんが一緒に来てくださり、制作にあたり、特に重視してくださったポイントなどを、直接伺うことができました。こちらが指定した設置エリアの高さ・広さとマスの数に対して、使う板の厚さをどう考えるか。家具が主張するのではなく、展示した器が主役として美しく見えるよう、仕切り板の厚さをミリ単位で調整すること。そのうえで、十分な強度を持たせること、そのバランスなどなど…。とにかく丁寧なお仕事ぶりで嬉しくなりました。

大川家具ドットコムさんに、花祭窯の蕎麦猪口棚を作っていただきました。

元からそこにあったかのように馴染んでいながら、空間のインパクトが格段にアップしました。お願いして、ほんとうによかったです。

今回お世話になった大川家具ドットコムさんのサイト。

実はもう一つ、フルオーダーで作っていただきたいものがあります。近々実現できるといいな、と思いつつ。

読書『クリスマス・キャロル』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『クリスマス・キャロル』(新潮文庫)ディケンズ

続々と、読んでいなかった名作シリーズ。『大いなる遺産』からディケンズ作品に興味が湧き、季節外れですが『クリスマス・キャロル』。これもまた、映画になっていたのですね。写真はロンドン・パディントン駅のクリスマスツリー。

「幽霊が三人出てくる話」と聞いていましたが、幽霊の話ではなく、人間の話。「過去」「現在」「未来」にいざなう幽霊が主人公スクルージに見せたものと、スクルージの悔恨。訳者の村岡花子さんがあとがきで、毎年クリスマスがめぐってくるごとに読むと書いておられ、その気持ちがわかるような気がしました。

ディケンズは10代から働きに出ながら、独学で勉強を続け新聞記者になり、ついには文豪と呼ばれるようになった人。その目線で眺めたロンドンの街と人々とが、背景として大きいことをこの本でも感じました。

作品のあらゆるシーンに涙と笑いが同居しているのは、先日自伝を読んだチャップリンに通じるなぁ、と思いました。時代的には、ディケンズが少し先で、そのあとにチャップリンです。これも訳者の村岡花子さんが書いているのですが、「つまるところ、彼は役者であり、彼の演劇の終局の目的はヒューマニズムであったのだ」に、大きくうなずきました。

チャップリンが自伝で「芸術作品には、歴史書などよりずっと多くの貴重な事実や詳細が含まれている」と書いていました。ディケンズの小説もまさにそんな芸術作品のひとつだと思いながら読んでいます。

誕生日だったので^^

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

先週末は誕生日だったので^^

何歳になっても誕生日は嬉しいものですね。久しぶりに大好きなFRANCE YAさんに家族で行って参りました。食事の際にスマホを手元に置く習慣が無いので、いつもお料理を撮りそびれます。上の写真はFRANCE YAさんのパンフレット。

テイクアウトのコースやフランスの伝統的な煮込み料理などで、外販にも力を入れておられるFRANCE YAさん。ここ最近の自粛期間中は、「お家で贅沢フレンチ」の美味しさに何度もお世話になりました。

が、やはりお店でいただくのは格別ですね。席に着いたときの落ち着く雰囲気、美しい盛り付け、お料理ごとに変わるカトラリー。そしてサービスのプロによる、絶妙のタイミングでの料理提供は、お店ならではです。

ほんとうにおいしいと感じるものを食べると、思わず笑ってしまう藤吉家。最初のひと口からダンナ・息子と顔を見合わせて声を出して笑ってしまいました。「おかわり」をオーダーしたくなる美味しさ(笑)。

旬のおいしさ、地元素材のおいしさ、そして丁寧なお料理のおいしさ。FRANCE YAさんでお食事をするときは毎回そうなのですが、ソースを一滴たりとも残すまいと、パンが大活躍です(笑)もちろんそのパン自体もとても美味しく。

シェフの舩越さんと、近況報告のおしゃべりをすることもできました。わたしの知っている飲食業の方々は、自粛期間中もそのあとも、さまざまな創意工夫をなさっています。お店とお客さんとの信頼関係をとても大切になさっていることがわかります。「ずっと、そこにあって欲しいお店」で食事できる幸せを感じる、いいお誕生日でした^^

時代屋さんがやってきた!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

時代屋さんがやってきた!

時代屋さんは、わたしが常々お世話になっているリサイクル着物屋さん。長年、宮地嶽神社の参道でお店をなさっていたのですが、このたびご近所・津屋崎千軒内に移転してこられました。

時代屋さんのフェイスブックページ

お茶を習い始めて着物が必要になった時に、なにもわからず時代屋さんに駆け込んだのがお付き合いのはじまりでした。どんなものが必要かも、わたしのサイズはどれぐらいかも、すっかり理解してくださっているので、すっかりお任せして安心しています。着物はもちろん、小物、履物も。リサイクルショップといいながら、新品も扱っておられます。着物まわりで困ったことがあったときは、すぐ時代屋さんへ。いわば駆け込み寺です。

津屋崎に移転してこられて、一住民として楽しみなのは、着物や浴衣のレンタルもなさっていること。予約をしていれば、着付もばっちりお願いできます。津屋崎千軒は、着物や浴衣姿でそぞろ歩くのに似合うスポットも点在していますから、和装を楽しむ人たちの姿が増えていくかも!と期待しているところです。

なかでも時代屋さんの新店舗は、地域の神様「波折神社」からすぐのところ。七五三や地域のお祭り、初詣などの機会に、時代屋さんで衣装をお借りして、気軽におめかししてお参りできるのは、地域の人たちにとって、ちょっとした嬉しい贅沢となるはずです。

これから、着付け教室などもスタートなさる予定とのこと。またひとつ、文化的なスポットが津屋崎千軒に誕生しました。嬉しい^^

読書『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』(新潮文庫)チャールズ・チャップリン著

チャップリン自伝の後半。前半の読書『チャップリン自伝 若き日々』はこちら。写真はロンドントラファルガー広場。

成功を手に入れてからのチャップリンです。本書の最初の方で、「わたしはあまりにも急に成功を掴んだので、いまだに追いつけないでいるのです。」と話す場面があり、自分自身の「栄光と波瀾の日々」を遠くから眺めているチャップリンの姿を感じました。

前半は、やや冗長です。ハリウッドでの成功=アメリカン・ドリームの体現者としての日々が綴られているのですが、セレブやスキャンダル話には興味のない読者としては、少々退屈を感じました。ただ、業界も国も超えた、その時代の寵児たちとの交流が垣間見られたのは、興味深く。

ともあれ、中盤からラストにかけてが「栄光と波瀾の日々」の読みどころでした。政治に巻き込まれつつ、政治の問題ではなく人間の問題として、口を閉ざさず、正面から向き合った態度に、強さと美しさを感じました。映画『独裁者』での結びの演説の書き起こし文が引用されて載っているのが、必見です。

さいごに、一番心に残った文章をひとつ。

「最近起きた出来事でさえ大幅に歪められてしまうことを考えると、わたしは、歴史そのものに懐疑的になる。その反面、詩的な解釈なら、その時代の全体的な雰囲気を伝えることができる。何といっても芸術作品には、歴史書などよりずっと多くの貴重な事実や詳細が含まれているのだ。」『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』より。

小説を読んだり、絵画を見たりすることは、その時代を知るための貴重な手がかり。まずはチャップリン作品を腰を据えて見なければと強く思いました。

The beauty of Japanese porcelain ; The works by Kensuke Fujiyoshi (003)

Good morning! This is Yuri. I am a wife/manager of Ceramic Artist Kensuke Fujiyoshi. Kensuke is an artist of fine porcelain.

A set of stacked boxes,
ICHIMATSU checked design,
under glaze blue

We started showing the beauty of Japanese fine porcelain through the artworks of ceramic artist Kensuke Fujiyoshi. All of his works are based on the traditional techniques of Hizen jikiHizen jiki which is known as Old Imari is one of the traditional Japanese crafts kogei which has been handed down over 400 years, since Edo period (1615-1868).


A set of stacked boxes, ICHIMATSU checked design, under glaze blue (2019)
Kensuke Fujiyoshi
H. 7.5 (3.5 each), W. 7, D. 7 (cm)

染付市松文二段重箱 藤吉憲典
染付市松文二段重箱 藤吉憲典
染付市松文二段重箱 藤吉憲典

We think that the real value of the Japanese crafts include their beauty and their usefulness. What would you like to put in the Box? I’d like to put some Japanese seasonal sweets in it.

We can use facebook messenger. Please feel free to ask me in English if you have any question about the work.

肥前磁器の美:藤吉憲典の器「金襴手(きんらんで)珈琲碗皿 “木漏れ日”」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

肥前磁器の美:藤吉憲典の器「金襴手(きんらんで)珈琲碗皿 “木漏れ日”」

磁器作家・藤吉憲典がつくる肥前磁器の美しさを伝えるシリーズ。「美しさ」には「用途の美」を含みます。使い勝手の良さも含めて「美しい」と言えるもの。そこにこそ、江戸時代から400年続く肥前磁器の価値があると思っています。

ふだん作品に名前を付けるときは、「技法+文様+形」にすることが多いです。今回のコーヒーカップは、金彩を施した「金襴手」。江戸後期から明治期にかけて、輸出用につくられた肥前磁器には、金襴手の品のある華やかさが人気の名品がたくさんありました。当時の陶工たちへのオマージュを込めた作品。

藤吉憲典 金襴手珈琲碗皿
藤吉憲典 金襴手珈琲碗皿
藤吉憲典 金襴手珈琲碗皿

金を使っているというだけでなく、つくりも絵付も素晴らしく凝った珈琲碗皿です。カップの持ち手は造形の美しさもさることながら、指にあたる感触の柔らかさと程好い大きさ、持ち上げたときの絶妙な重量など、細部まで行き届いています。

そして、なんといっても絵付の妙。光と影を思わせる木立の葉っぱのデザインは、藤吉憲典が独立当初から長年得意としているオリジナル文様のひとつです。金が入るとまたさらに陰影の美しさが際立ち、琳派を思わせます。

読書『チャップリン自伝 若き日々』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『チャップリン自伝 若き日々』(新潮文庫)

チャールズ・チャップリン著。写真は、昨年ロンドンに行ったときのもの。

読みはじめてまず「そういえばチャップリンは英国人で、ロンドン生まれだったのだ!」と、衝撃を受けました。なにを今更と、チャップリンファンから怒られてしまいそうですね。ハリウッドの印象はありましたが、かといって米国人だとは思わず…つまり「よく知らなかった」ということです。

なにげなく図書館で手にした本書。このところ英国の階級・格差を扱った本を読むことが多かったのですが、図らずもそのことを一番考えさせられる本となりました。

「若き日々」と「栄光と波瀾の日々」の二巻からなる自伝。分量的には、幼少期から米国に渡るまでの「若き日々」が全体の三分の一で、米国で成功を手にしてからの「栄光と波瀾の日々」が三分の二というところです。

さてチャップリン。名前はもちろん知っているし、映画は子どものころにテレビ放送されたものを何回か見たことはありましたから、チャップリンと聞いてぱっと頭に浮かぶ映画のシーンはいくつかあります。でも、ちゃんと腰を据えて観たことが無かったな…と思い至りました。

彼に対してわたしがずっと抱いていた印象は、「目が悲しそう」というもので、「喜劇王」の呼称がしっくり来ていませんでした。今回「若き日々」を読んで、その印象の理由がわかったような気がしています。小さなチャップリンが置かれた厳しい現実を読んでいくのは、苦しさを伴うものでした。「お話」ではなく、当事者の言葉で綴られた自伝だからこそ、ですね。

「若き日々」は、ディケンズの少し後で、シャーロックホームズのブーム到来とほぼ同時代。これらの本を読んでいたことが、時代背景への理解に多少なりとも役立ったように思います。

努力は報われるんだな、って。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

努力は報われるんだな、って。

本日は、ごく個人的な話題です。

先週末は息子の陸上競技の最後の大会でした。今年は全国的に、小学校も中学校も高校も、年度初めからあらゆるスポーツの大会が中止になりましたね。ここ福岡県もご多分に漏れず。例年開催される競技会や記録会はなりましたが、先生方が頑張ってくださり、代替となる地区大会を開いてくださいました。

突然の休校から部活動が再開されるまでの約2か月半は、毎日自主練習。幸い近所には海に山にと、人気(ひとけ)を避けてランニングやトレーニングができる場所がたくさんあり、恵まれた環境ではあります。一人で淡々と走りに出かける姿に、「走るの好きなんだなぁ」と思っておりました。

競技大会で上位をとれる位置にはない息子。1年生の時から、大会のたびに目標にしていたのは「自己記録を少しでも更新する」。その目標通り、毎回必ず少しでもタイムを縮めているのを、報告を聞くたび秘かに誇らしく思っておりました。

「見に来なくていいよ(=来ないで)」と言われ続けていた競技大会。最後だからと観に行って参りました。美しい走り姿でした。最後スパートをかけて、前に出ることができました。タイムも、自身の記録を更新。本人も納得できたようで、最後の大会でそんな走りができたのがなによりでした。

競技大会が終了し解散するときに、息子を迎えに行ったダンナに顧問の先生がおっしゃった言葉が「努力は報われるんだな、って、今日の彼を見て思いました」の一言だったそうです。

ずっと「僕は(上位がとれないから)期待されていないから」と息子は言っていました。たしかに一度も上位に入ることはできませんでしたが、先生はちゃんと見ていてくださったようです。

「努力は報われる」って、そういえば久しぶりに聞きました。昨今「努力したら報われる、とは限らない」という論調が多く、実際そういう側面も大いにあると思います。でも、報われる努力もあると信じることも大切だし、その方が楽しいよね、と思った週末でした。