ご近所のゴールデンウィークの様子―津屋崎浜とあんずの里。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ご近所のゴールデンウィークの様子―津屋崎浜とあんずの里。

連休後半はお天気に恵まれています。青い空青い海。朝早くから海の上を目指すボートや遊漁船の方々が集まってきているようです。

朝から近くの農産物直売所「あんずの里市」に買い物&散歩。桜の花も杏の花も終わり、新緑が美しいです。海の方を見れば、鯉のぼりがはためいていて、テンションが上がりました。水の張られた田んぼ、その先に青い海。眼福です。10分ほどお散歩をして、直売所の店内へ。人の多さに、連休を感じました。お野菜類も、連休前に比べると量・種類ともに多めで、嬉しくなります。

あんずの里

帰途に就くと、対向車線は宗像方面に向かう車の列ができていました。ふだんほとんど混まない道路なので、あまり見ない風景でしたが、おそらく道の駅宗像を目指している方々かな、と。ともあれこの495号線は、片側に新緑、反対側には海と、とても気持ちの良い道路なので、ドライブにも最適です。

花祭窯の前から歩いて海の方へ散歩に出れば、威勢の良い掛け声がして、海の上に視線が向かいます。近所の水産高校のカッター部の練習風景は珍しくありませんが、いつも以上に気合が入っているように見えるのは気のせいでしょうか。統率された動きが美しかったです。写真を大きくすると、その美しさを見ていただけます。

津屋崎浜

海の色も、夏が近づいてきていることを感じさせます。この透明感、この青さ。そのまま歩いて津屋崎浜から宮地浜へ向かえば、天気の良さと気温の上昇につられた人々が、服のまま海に入っているのが見えてきました。と思ったら、なかにはビキニスタイルの水着でばっちり海水浴を楽しんでいる人も。

やはり人がいつもより多いので、避けながらの砂浜散歩。楽しんでいる人たちをウォッチングしながらの散歩は、思わずこちらまで笑顔になります。

今日までは青空が続く予報。皆さま、引き続き良いお休みを♪

最近お気に入りの、購買行動パターン。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

最近お気に入りの、購買行動パターン。

とっても個人的な話ですが、自分の購買行動パターンの変遷が面白いなぁと思っています。インターネットで買い物をするのが当たり前になった昨今ですが、わたし自身がネットショップで買い物をしていたのは、20年前~10年前が一番多かったように思います。2000年からオンラインショップの運営を始めたので、その勉強を兼ねて、他店での買い物をすることが多かったことと、当時は佐賀花祭=山のなかに住んでいたので、ネットで注文して宅配で届くという恩恵が、とても大きかったのです。

もともと物欲があまり無いといいましょうか、ウインドウショッピングが苦手です。買いたいものがあるときは、お店のそのモノのところに直行直帰してしまうタイプ。ですので、ピンポイントで検索してモノを購入できるネットショッピングは、わりと性に合っていました。ただそうすると、極端に視野が狭くなり、世の中の動き・流れのようなものが見えにくくなるという感じもあります。だんだんと、買い物の機会にはできるだけ「売り場を歩く」をすべきだと思うようになりました。

そんなわけでここ数年は特に、指名買いでお店(ネットショップ)が決まっているもの=そこでしか買えないときや、どうしてもその人から買いたいときはネットショップを使いますが、そうでない場合は、実店舗でモノを見て買うことを意識するようになっています。佐賀の山奥から、博多まで1時間弱の立地に移ってきたことも、大きく影響しています。実店舗への足の運びやすさ、ですね。結果、年々オンラインでの買い物頻度が減ってきています。

そして最近のお気に入りの購買行動パターンは、「ネットで注文、リアル店舗で受取り」。「マスト」なものを確保したうえで、リアルの売り場にも足を運ぶことになりますので、「その周辺のもの」も視野に入れることが出来ます。お店が混雑していたり、自分が急いでいるときは、受け取ってサッと帰ることも出来ます。両方のいいとこどりです。

このパターンでわたしが最近比較的よく使うのは、紀伊國屋書店、無印良品、ヨドバシ、エディオンなど。自分の足を運ぶ範囲にリアル店舗が無ければなりませんので、大手流通になりがちではありますが、「ネットで注文、リアル店舗で受取り」が出来るお店は、どんどん増えているような気がします。注文時に実店舗に無くても、取り寄せが出来るケースがほとんどなので、それも助かります。

それにしても、こうして買い方を選択できる世の中になったのは、すごいことですね。恩恵を享受しつつも、できるだけ無駄のない購買行動をしていきたいな、と思います。

佐賀の小城羊羹(おぎようかん)が美味しい。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

佐賀の小城羊羹(おぎようかん)が美味しい。

連休期間に入り、ご来店のお客さまがなんとなく続いております。そんななか、先日佐賀方面からお越しのお客さまから、大好きな小城羊羹を手土産にいただきました。

佐賀に住んでいた頃は、週末になると家族で「羊羹や巡り」をしておりました。花祭窯の創業地から小城羊羹の街までは車で10分ほど。有名どころの村岡総本舗、村岡屋、八頭司伝吉のほか、小規模な羊羹やさんがたくさんありました。かなり足を運んだ気がしていますが、それでもまだ行ったことのない羊羹やさんがあります。

さて、お土産にいただいたのは、むら雲堂本舗さんの村雲羊羹。実は、小城羊羹巡りをしていた頃、一番おいしいと思ったのが、村雲の白練り羊羹でした。久しぶりに村雲の白練りをいただいて、豆の味に感動。とっても贅沢な気分になりました。

今も佐賀に窯業材料を仕入れに行ったり、花祭の手入れをしに行ったりするときには、だいたい小城羊羹を買って帰ります。小城の高速入り口に近い村岡総本舗の本店が便利なので、そこで外側が砂糖の結晶でザクザクになる昔羊羹を買うのが定番になっています。上の写真は、その「昔羊羹」。安定の美味しさで、迷わずサッと買えるのがよいのですね。でも冷静に考えたら、むら雲堂本舗さんもすぐ近くにあるのですから、たまにはそちらで購入するという選択があっても良いのです。

ゴールデンウィークが明けたら、佐賀出張(というほど遠くではありませんが)の予定がありますので、久しぶりに別の羊羹やさんで買ってみようかな、と思いました。

小城観光協会のホームページには、小城羊羹のお店リストが載っています♪

むら雲堂本舗

村岡総本舗

自分のなかに無意識にある「スケール感の標準」を突破するには、外からの働きかけが一番。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。このところなぜか、ブログのタイトルが長くなりがちです(笑)上の写真は、最近生で観て「でかっ!」と思ったラクダのはく製。この展覧会の会場で、このサイズのものに出会うと思っていなかったところに現れたので、かなりびっくりしました。

自分のなかに無意識にある「スケール感の標準」を突破するには、外からの働きかけが一番。

ダンナ・陶芸作家藤吉憲典の制作における話なのですが、このタイトルを書き終わった時点で、「これって何事においてもそうかも」と思いました。そもそもは、長年のお付き合いの料理人さんからご相談があったことがきっかけです。この方は昔から、いろいろなチャレンジを藤吉憲典に投げかけてくださってきています。

今回は、藤吉憲典がこれまで作ってきたものから考えると「かなり大きなもの」にチャレンジすることになりました。もともと「小さいもの」が好きだし得意な藤吉憲典。食器についても、尺皿・尺鉢あたり=直径30cm前後のものが最大かなぁ、というサイズ感が無意識に標準になっていたと思います。それだってしょっちゅう作るものではなく、文字通り「手のひらサイズ」の作品が多かった、というのがこれまででした。

ところが今回、藤吉作品としては珍しく大きな「尺越えサイズ」のものを作ることになり、手を動かして取り組んでみると、案外すんなりうまく行くことが判明。これまで磁器作家として、多様な技術と経験を積んできているのですから、それらを動員すれば当たり前といえば当たり前なのですが、それも実際に手を動かしてみないと分からないことです。結果、ほんの数日で、それまでは「大きくてたいへん」だと思っていたサイズが、作家にとって「作れるサイズ」の新基準になりました。要は単に、これまでやっていなかっただけということですが、嬉しい変化(進化)です。

先日作家が内覧してきた銀座黒田陶苑さんの新しい展示室が、かなり広く、大きなものが映える空間ということでしたので、グッドタイミングに七月の個展で「これまでよりも大きめの、藤吉憲典作品」をご覧いただける機会になりそうです。もちろん、大きなスペースに小さいものをたくさん並べたらどう見えるかも面白いところですから、これまで通りのサイズのものもたくさん並ぶ予定です。

結局自分の作るもののサイズにライン(制限)を引いていたのは、自分自身だったということで、本人が納得できる(そして面白がって取り組める)機会さえあれば、あっけなく取り払われるものでした、というお話。そしてそれは、誰にでも、なんにでも当てはまることがありそうですね。わたしも無意識の「要らん制限」は、どんどん取り払っていけたらいいなと思います。今回、ダンナに機会を提供してくださった料理人さんに、心より感謝です^^

通常運転でお仕事と言いつつ、連休中に読みたい本を図書館で大量に借りて参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

通常運転でお仕事と言いつつ、連休中に読みたい本を図書館で大量に借りて参りました。

いつものカメリアステージ図書館。ふだんは運動不足解消を兼ねて、徒歩か自転車で足を運びます。徒歩で15分、自転車で6-7分といったところでしょうか。今回は車で出たついでに寄りました。車で行った=重さやかさばり具合を考えることなく本を借りてくることができる、ということで、爆買いならぬ爆借り。ちなみにダンナは毎回、分厚かったり大きいサイズだったりする資料系の書籍を借りることが多いため、近所の図書館にも車で行くことがほとんどです。

今回の内訳は、最近気になっている「水煮缶」関係の料理本を数冊と、『告白』で読者デビューした湊かなえさんの著書を遡って文庫で数冊と、いつもの新刊棚から目に留まったもの(結果的に海外作家さんの小説多め)を数冊。料理本はパラパラとめくるので借りてきたその日にすべて目を通してしまい、湊かなえさんの著作は本を閉じることが出来ずにまず一冊一気読みし、と、連休二日目にして既に借りてきた三分の一が読了しております。まあ、もし早々にすべて読み終わってしまったら、また図書館に向かえばよいことですね。ちなみに上の写真は数年前にやはり図書館で「爆借り」してきた時のもの(笑)

ところで福津市のカメリアステージ図書館では、図書館カードだけでなく、交通系カードやお財布機能のあるスマホでも、貸し出し登録ができるようになっています。図書館の新機能はできるだけ体験しておきたいワタクシ、さっそく年明けに交通系カードを図書館カードとして登録したところ、これがまあ、予想していた以上に便利です。というのも、これまでは図書館カウンターで毎度ガサゴソとカード入れを取り出していたのが、交通系カードだけはふだんからすぐに出せるようにしているからなのですが。ちょっとしたことも、快適につながりますね。

連休明けには、毎年恒例「選書ツアー」があります。これまでは夏休みに催行していたのが、今年は気候の良い時期にということで、5月に設定してみたということです。4月30日現在、参加者を絶賛募集中のようですので、福津市図書館利用カードをお持ちの方は、ぜひご検討ください♪

福津市カメリアステージ図書館の選書ツアー募集中。

長年のお付き合いの料理人さんのご活躍が、とっても嬉しい。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

長年のお付き合いの料理人さんのご活躍が、とっても嬉しい。

連休二日目は、遠方から長年藤吉の器をご愛顧くださっているお客様がお見えになりました。長年のお客さまも、はじめましてのお客さまも、連休中だからこそ足を運ぶことができたとおっしゃっていただくと、通常営業にしておいてよかったと嬉しくなります。

長年藤吉憲典の器を使ってくださっているお客さまの、器についての考えをお聞きする機会はとても貴重です。実際にお使いになるなかで、藤吉の器のどこを気に入っていただいているのか、料理の提供において「もう少しこうだったら」という点があるのか、それらを踏まえて次はどのような器をオーダーしたいと思っているのか。作り手に敬意を払いつつ、率直な意見を言ってくださるお客さまは、ほんとうにありがたいです。

今回は、新しい店舗オープンに合わせての、食器のご相談でした。花祭窯で器を見ながら、どのようなお店になるのかを教えていただき、そこで使いたい器のイメージを共有し、ときに骨董や古い書籍などの資料を持ち出して具体的にどのように制作していくかを検討するのは、とても楽しい時間です。SNSが便利に使える世の中ですので、写真のやり取りや、テキストのやり取りである程度のことは決めていくことが出来ますが、やはり顔をあわせて実際に一緒にモノを見ながらいろいろなことを決めていくことが大切だなぁと、あらためて感じました。

実際にお会いして同じ空間の中で検討していくからこそ、新しいアイデアが出てきたり、小さな疑問点をやり過ごさずに案を詰めていくことが出来ました。イメージの共有において思い違いを防ぐのにも、やはり対面での検討が有効だと思いました。お店の設えがあり、料理があり、器があり、その器の中でも何人もの作家さんが参加するなかでの仕事。染付磁器はすべて藤吉さんにお任せしますとご指名いただくと、作り手ともども意気に感じます。

新店オープンのお知らせは、まだ少し先のことになりそうですが、またこのブログでもご案内いたしますね^^

黄金週間もほぼ通常運転です―花祭窯へお越しの際は必ず事前にご連絡くださいね♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

黄金週間もほぼ通常運転です―花祭窯へお越しの際は必ず事前にご連絡くださいね♪

この週末から連休に突入している方々も多いのではないでしょうか。人出の多いときに出歩くのが苦手なの我が家は、今年のゴールデンウィークも、通常運転でお仕事です。というか、ダンナは制作予定がぎっしりなので、お休み気分には程遠い感じでもあり。ちなみに去年は何をしていたかしら?と調べてみましたら、英国の雑誌『Homes & Antiques』から藤吉憲典へのインタビューの依頼があって、わたしはずっと英語と格闘していました。やはり連休=集中仕事、が向いているようです。

カレンダーより早めに連休に入られた方々もいらっしゃるようで、花祭窯へのご来店のお問い合せをふだんより多くいただいております。お越しをご検討中の皆さまは、ぜひお早めに電話にてご相談くださいませ。ゴールデンウィーク中のお問い合せへの対応は、花祭窯へのお電話、フェイスブックのメッセンジャー、インスタグラムのDM、メールの順に、確実性が高いと思います^^

昨日お越しくださったのは、若い二人組のお客さま。聞けば「窯のことも作家のことも知らなかったのだけれど、たまたまグーグルで見つけて」お電話で問い合せ下さいました。ちょうどタイミングよく接客のできる状態でしたので、ゆっくりご覧いただき、お買いものも楽しんでいただくことが出来ました。

基本的に一度に一組のお客様だけで、気兼ねなくご覧いただけるようにしております。ギャラリースペースは、アポイントに合わせて開けるようにしていますので、用事で留守にすることもございますし、工房で仕事をしていても、中に入っていただけないこともございます。アポ無しですと、せっかく遠方からお越しいただいても、玄関先でお帰り頂くことになってしまい、こちらとしてもたいへん心苦しいです。なので、必ず事前にご連絡をくださいますよう、お願いいたします。

ともあれ皆さま、どうぞ安全第一で良い休日をお過ごしくださいませ♪

ダンナ、十二種類の向付(むこうづけ)を一挙制作中。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ダンナ、十二種類の向付(むこうづけ)を一挙制作中。

たまには、ダンナ=肥前磁器作家・藤吉憲典の仕事ぶりをご紹介。おかげさまで夏に向かって仕事が重なっています。七月は銀座黒田陶苑さんでの個展と、博多阪急百貨店さんでの展覧会、八月の北京個展への納品、その間に親しいお客さまへの大もの納品。そんなわけで年明けから三月のギャラリー栂さんでの個展をはさんで、怒涛の制作が続いています。

制作における新しいチャレンジもいろいろあります。何年キャリアを重ねても、チャレンジはずっと続きますね。作家自身の内側から湧き出てくるものと、お客さまとのコミュニケーションの中から生まれてくるもの。まさに「あれも、これも」の状態です。そのなかでも、今まさに取り組んでいるのが、十二種類の向付の制作。向付はこれまでにもいろいろと作ってきていますが、新作をまとめて十二種類一気に作るというのは、初めての試みですので、制作の様子を見ているだけでも、なかなか面白いです。

向付とは、懐石料理に用いられる器のひとつで、お刺身など酒の肴(「お向こう」と呼ぶそうです)になるものを盛り付ける器です。形やサイズはさまざまで、浅いもの、深いもの、いろいろあります。お膳の向こう正面に配置されることから、向付と呼ばれれているようです。お食事の最初の方に、正面にどんと登場する器ですから、その役割はなかなか重要です。

作り方としては、向付の完成イメージ(形)を粘土で形づくり、それをもとに石膏を流し込んで型を作り、出来上がった石膏型を使って生地をかたどり、ひとつひとつ削って形を仕上げ、足を取り付けるなどの加工を施し、生地が乾いたら素焼きし、下絵付(染付)を施し、釉薬をかけて本窯焼成し、赤絵(上絵)をつけて、赤絵窯で焼成して、ようやく完成です。赤絵は、文様により絵付と焼成(窯)の工程を複数回繰り返すこともあります。

下の写真は、現在制作している十二種類の中の一部。上に紹介した工程のなかで、削りで仕上げを施した生地の状態です。十二種類ぜんぶ並ぶと、なかなか壮観です。この写真を撮った後、素焼きの窯に入っています。

藤吉憲典 向付

藤吉憲典 向付

藤吉憲典 向付

工程が多く、手間と時間がかかる仕事ですが、それだけにイメージ通りに出来上がったときの嬉しさと満足感は大きいものです。そして実際に料理屋さんで使っていただいている場面を見るのも、とても楽しみです。完成形を見ることができるのはまだ先になりますが、ワクワクしています。

藤吉憲典の制作活動のようすは公式インスタグラムで!https://www.instagram.com/ceramicartist_kensukefujiyoshi/

読書『あきらめる』(小学館)山崎ナオコーラ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『あきらめる』(小学館)山崎ナオコーラ著

山崎ナオコーラさんといえば『人のセックスを笑うな』と、タイトルがすぐに出てきますが、実はわたしは本書が初めましてでした。『人の…』も読んだことはありません。にもかかわらず、お名前に対して親近感があるのは、ペンネームの妙ゆえですね。これって、さりげなくすごいことだと思います。

さて『あきらめる』。小学館のサイトでの紹介文冒頭にあるのが、本書内から引用されている下の文言です。

登山で頂上まで行く? 途中で降りられる?
「『あきらめる』って言葉、古語ではいい意味だったんですってね。『明らかにする』が語源らしいんです」

小学館『あきらめる』https://www.shogakukan.co.jp/books/09380129

火星移住がはじまった近未来が舞台のSFチックな小説とはいいながら、物語の展開自体は、とても身近な家族の問題、個人の生き方の問題として、心あたるところ多々で、頷きながら読みました。最後に登場人物はめいめい「自分の嫌なところ」をあきらめて受け入れる、そんな境地に辿り着きます。その考えはなるほどと思えるのですが、そのように開き直るには、まずは「自分の嫌なところ、ダメなところ」を、自覚して認めないといけません。それが「(自分自身に対して)明らかにする」ということですね。たぶん、それが難しいのだな、と。

最後の方で、途中で降りることが出来た自分が誇らしい、というようなセリフが出てきます。上へ上へとてっぺんを目指して登っていくばかりがすべてではないことに、そろそろ気づくべき時が来ていると、そんなことがストレートに、あたたかく伝わってくる本でした。

『あきらめる』(小学館)山崎ナオコーラ著

読書『家庭用安心坑夫』(講談社)小砂川チト著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『家庭用安心坑夫』(講談社)小砂川チト著

先日読んだ『猿の戴冠式』がツボにはまったので、図書館で著者名検索。蔵書にありましたので、すぐに手に取ることが出来ました。ありがたいですね、図書館。本書は群像新人文学賞受賞作だそうです。

さて『家庭用安心坑夫』。『猿の戴冠式』もずいぶん不思議で独特な世界でしたが、ファンタジーっぽくもSFっぽくも解釈できるものでした。ところがこの『家庭用安心坑夫』は、とても現実味があって、それゆえに狂気的な怖さを感じました。

主人公の行動と、主人公の記憶にある母親の行動やセリフは、ちょっと視点をずらせば大笑いできそうなコメディ的要素がありながら決してそうはならず、ジワジワと切迫感が押し寄せてきます。一気に読み上げたあとは、本書のタイトルの秀逸さに、ため息が出ました。小砂川チトさん、これからも読んでいきたいと思います。

上の写真は講談社bookのサイトから。『家庭用安心坑夫』も『猿の戴冠式』も、独特の表紙絵のインパクトが大きかったので、少しネットで調べてみました。装画は榎本マリコさん、装幀が岡本歌織さんという、どうやら今とても人気のあるクリエイターさんのようです。「顔の無い人物」の画は、いろいろな想像を掻き立てるテーマ性を感じますね。

『家庭用安心坑夫』(講談社)小砂川チト著