読書『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

ご存じ『怖い絵』シリーズ中野京子さんの最新作です。

ドイツ文学者であり、絵画をテーマにした書籍を、大量に生み出しておられる中野京子さん。西洋絵画史に伝わる名品の数々を、現世のわたしたちにぐっと身近にしてくれる本の数々は、誰でもが気軽に絵画を楽しめるようになる、大きなきっかけになっていると思います。と同時に、美術界にとっても大きな貢献になっているのは間違いないでしょう。実のところ、わたしはまだ読んでいない本がたくさんありますが、これまでに読んだなかでは『名画で読み解く 王家12の物語』シリーズが、とても興味深かったです。

さて『名画と建造物』。『怖い』シリーズとはまた少し異なる角度からの、絵画へのアプローチで、図書館で発見して期待が高まりました。『怖い絵』シリーズから続く、独特の重厚感ある文章まわしによるエピソードが、安定の面白さでした。もともと雑誌の連載であったものを編集し直したとのことでしたが、対象となる絵画と、そのなかに描かれている建造物の「今」の写真が加わり、歴史と今を比較しながら見ることが出来ます。絵と写真はいずれもオールカラーという贅沢さ。なので、文章を読むのが面倒でも、ビジュアル的な要素で十分に楽しめます。

個人的には巻頭の、エドワード・ホッパー『線路脇の家』(=映画「サイコ」の家)の解説がツボにハマり、そこから一気に読み込みました。読者それぞれに、心に響く絵、建造物、エピソードを見つけることが出来ると思います。本書を片手に、美術館と建造物を巡る旅行するのも楽しそうですね。

『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

美術と建築は密接な関係にあるものですから、相性が良いことは間違いありません。最近開いていませんでしたが、わたしの本棚には『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』があった!と、引っ張り出してきて復習しました。この第2章が「美術のなかの建築」の特集になっています。西洋史をベースにした中野京子さんのアプローチと、建築を専門とする五十嵐太郎さんのアプローチ。どちらも面白いです。

ロンドンSladmoreのクリスマス・ショウ、スタートしました!

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ロンドンSladmoreのクリスマス・ショウ、スタートしました!

The Christmas show will run from now until 22nd December! とメールが届いて、そうだった、クリスマス・ショウだ!とあらためて12月を認識。作品が完成して写真を撮ったのも、ロンドンへの発送作業も10月でしたので、なんとなく自分のなかでは完了したような気になっていましたが、いえいえ、ショウは今からです。

Sladmoreに所属する作家がクリスマス・ショウのために作った新作が並びます。いわばグループ展。藤吉憲典は今年は10個ほどの新作を送りました。ギャラリーでの展示とともに、電子カタログにもなりますので、ロンドンに足を運べない方もご覧いただくことができます。下のSladmore公式サイト「Contact」ページ下方にある「Newsletter Sign Up」からメールアドレスを登録すると、展覧会の最新情報が届きます。ちなみに藤吉憲典(Kensuke Fujiyoshi)情報を得るには、「Department」から「Contemporary」を選ぶと、他の現代作家さんの情報とともに展覧会情報が届きます(の、はず!)。

大きなサイズの彫刻を手掛ける作家さんが名を連ねるSladmoreで、Kensukeの作品は贈り物にちょうど良いサイズだと言っていただけます。今年も、自分自身や大切な人へのクリスマスプレゼントとして喜んでいただけると嬉しいな、と。

藤吉憲典の龍-来年の干支「辰」の盃が出来ました!

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藤吉憲典の龍-来年の干支「辰」の盃が出来ました!

一昨年までの一周(12年)は干支の置物(箸置き)を作っていましたが、その前の一周は干支の盃を作っておりました。満を持して(!?)盃に回帰、とでも言いましょうか。

もともとは、ふだんお世話になっているご近所の方々にお年始としてお礼かたがたお届けするために作り始めた「干支もの」。長らく販売用ではありませんでした。それが、次第に「販売してほしい」という声が増えてきて、お分けするようになり。

今年は珍しく12月の頭には完成しました。このところずっと年末ぎりぎりだったり、年明けてからだったりしたので、「おおー!」という感じです。お買い求めくださるお客様のことを考えれば、11月下旬から12月初めごろには出来上がっているのが、一番よいのだと思いますが、そこは作り手のペースに委ねているもので。

干支辰 藤吉憲典 龍盃

東京は南青山の百福さんで、お買い求めいただくことが出来ます。
百福さんの公式サイト https://www.momofuku.jp/

大阪阿倍野の暮らし用品さんでは、12月9日(土)~19日(火)の酒器展に並びます。
暮らし用品さんの公式サイト https://www.kurashi-yohin.com/

花祭窯のギャラリースペースでは、プラス二種類ご用意。

干支辰 藤吉憲典 龍盃

干支辰 藤吉憲典 龍盃

吉祥の霊獣「龍」。縁起を担いで良い一年を迎えたいですね♪

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その2。

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博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その2。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023、前回は甲賀市教育委員会事務局歴史文化財課の佐野正晴氏による『「歴史文化財課 佐野さんの民具図鑑」の作り方』でした。

今回は、山梨県にある「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんによる「社会課題と向き合う美術館活動」のお話。キース・へリングのコレクションを持ち、キース・へリング財団から日本で唯一認証されている美術館ということで、個人的には今年度の連続講座のなかで一番興味を持っていた回です。上の写真は、中村キース・へリング美術館のサイトから。https://www.nakamura-haring.com/

31歳という早逝のキース・へリングですが、ニューヨークでブレイク後、日本では1983年の初来日以降なんども展覧会が開かれ、本人も来日しています。ダンナ・藤吉憲典は、高校卒業後に上京して東京で最初に観た展覧会が、キース・へリングだったとのこと。この時は、へリング本人も来日していました。そんなふうに、我々世代にとっては、とても親近感ある存在です。

以下、中村キース・へリング美術館「社会課題と向き合う美術館活動」のお話より、備忘。


  • キース・へリングが向かい合った(’80年代当時の)社会課題➜美術館としてその意思を継いで「今日的」な社会課題に向き合う。
  • キース・へリング=アーティストであり、アクティビスト(政治的・社会的活動家)。
  • 「展覧会活動」と「社会活動」の両軸。
  • リスペクト&インクルーシヴ。
  • 著作権から生じる利益➜財団➜社会活動資金:本人が没したのちも継続できる社会活動基盤の仕組みを作り上げた。
  • ↑↓キース・へリングの作品は、既に社会に溶け込んでいる
  • ↑例えば…各種ブランド等とのコラボ商品➜コピーライト商品によるのアートの拡散。
    パブリックアートの大量設置➜「見たことがある!」機会の大量提供。
  • Art is for Everybody.
  • アートを見るために足を運んでもらうのではなく、日常の中にアートを出していく。
  • 大切なのは、アートに興味のない人の「目に触れる」こと、「足を止める」こと。

↓中村キース・へリング美術館の取り組み↓

  • 美術分野の専門家だけでなく社会課題に携わる専門家へのインタビュー、共同プロジェクト。
  • 狭い分野の専門家から、個々の声を拾い上げ、発信する。
  • 作家年表・世界史年表・日本史年表(+美術館として起こしたアクション)を一覧➜作品が生まれる裏にあった社会の動きが見え、作品・作家への理解が深まる。

↓「語り場」から↓

  • 身近なところから取り組める社会活動がたくさんあり、そうと意識していないだけで、すでに取り組んでいる社会活動がたくさんある。
  • 各館の取り組みをもっとアピールしていく必要性。
  • 近年格段にやりやすくなってきている情報発信。継続的に取り組むには、まずは発信する側が楽しんでいるか。
  • 資料・情報をどう見せるか、どう伝えるか。
  • 社会課題と美術館をどうつなげていくか➜どの館にも必ず身近な社会課題との接点があり、それほど難しいことでは無い。

アートエデュケーターとしてだけでなく、現代にアーティストをプロデュースする立場としても、ものすごく考えさせられ、勉強になりました。山梨にある館に、足を運ぶ機会を必ず作りたいと思います。

コラージュ(切り貼り絵)講座@郷育カレッジ、今年も開催いたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

コラージュ(切り貼り絵)講座@郷育カレッジ、今年も開催いたしました。

もともとは数年前に、郷育カレッジに美術系の講座がほとんど無いよね…というところから、これではイカンと始まった講座のうちの一つです。美術の教育普及ワークショップメニューのひとつですが、「心の健康」へのアプローチを意図しています。コラージュ制作を通じて、自分の内側を可視化し、客観的に受け入れていくことで、心のリフレッシュを図る。わたしはこのワークショップを「Meet Me at コラージュ(=コラージュ制作を通じて自分に出会う)」と名付けています。

今回の講座では、コラージュ制作に時間をかけるだけでなく、グループワークの時間をたくさんとることが出来ました。毎年、ご参加の方々の特徴がそれぞれにあるのですが、今年はまずご参加の皆さんの集中力の高さに驚かされました。15分ほどのインストラクションを経て、「では実際に作ってみましょう」で作業をスタートしてすぐに、会場がシーンとなったのです。今までの経験からするとかなり珍しいことでした。作業時間が進むにつれて静かになっていくパターンは多いのですが。

皆さん黙々と手を動かしはじめて、すぐに制作の世界に没入されたので、予定時間通りにスムーズに進みました。あとから何人かの方にお話を伺うと、「自分が形にしたいもの」のイメージが既になんとなく自分のなかにあった、という方が少なからずおられました。もしかしたら、受講に合わせてイメージトレーニングをしてきてくださっていたのかもしれません。皆さまの意欲を感じました。

以下、受講者の皆さまからのご感想から。


  • たいへん楽しい講座でした。
  • 初めての体験でしたが、とても楽しかったです。自宅でもやってみようと思います。
  • 毎年参加しているが、自分を振り返る大事な時間になっています。
  • 切り貼り絵、参加してみて楽しかったです。またこのような機会があればと思います。
  • 初めての体験で、あっという間に時間が経ちました。ありがとうございました。
  • 初めてでしたが楽しかったです。自宅でもまた作ってみたいと思います。
  • 他の人の作品を見せてもらって、思いを話していただいたのが楽しかった。

初受講の方が楽しんでくださったこと、二回目以降の方が自分の振り返りの機会にしてくださっていることに、まずは講師としてはホッとしています。そして「自宅でもやってみる」と思ってくださった方が、何人もいらっしゃったのも、とても嬉しいことでした。そうなんです。簡単なので、ぜひ気が向いたときにやって欲しいのです。と言いつつ、自分自身そんなに定期的にできているわけではありませんが。

まずはコラージュ制作自体を「楽しい!」と思っていただけることが、一番大切です。その次の段階として、コラージュから読みとれる「自分」に関心を持って向き合うことの大切さを、じわじわと伝えていけたら良いな、と思います。美術的コラージュの良さを存分に生かしつつ、くつろいで対話を楽しめる場になるように、エデュケーターとして心がけて参ります。

読書『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)サヴィヨン・リーブレヒト、ウーリー・オルレブほか著/母袋夏生編訳

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読書『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)サヴィヨン・リーブレヒト、ウーリー・オルレブほか著/母袋夏生編訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。表紙の装丁の文様が気に入ったのと、やはり「イスラエル」が気にかかりました。これまでにイスラエルの作家が書いた小説を読んだことがあるかどうか、定かではありません。おそらく無いのでは、と思います。

古今のいろんな作家さんによる、短編・掌編サイズの物語の傑作選。一つ一つの作品の後に作家の略歴解説がついているのが、とても親切でした。どのお話をとっても、イスラエルという国の地理的な位置づけ、歴史的な位置づけを強く意識させられました。そのような周辺情報無しでもストーリーそのものを味わえますが、少しの知識を足すことで解釈が進み想像力が喚起される側面があるのも事実です。最初の一話を読んで、まずはイスラエルの位置を確認し直し。上の写真は、我が家の壁に貼ってある世界地図から。こういうときにすぐに確認できるので便利です。

前半に集められた、いわば現代の小説家の方々による短編が、とても興味深かったです。それぞれのストーリーに横たわる、それぞれに独特の世界観は、いずれも彼の地で生きる厳しさを考えさせるものでした。日本という国でぬくぬくと生きてきた自分には、生み出すことのできない世界観。あからさまな残酷さや、現実的な悲惨さというよりは、じっと動かずにある諦観と怒り、そのなかを生きる強さなどがないまぜになったパワーを感じました。

海外の書籍を翻訳したものを読むといつも思うのですが、翻訳して届けてくださった出版社や翻訳者の方に、今回も「感謝」の一言でした。世界に目を向けなければ、というときに、その方法の一つとして、その国に生きる人が書いた本を読むことは、とても有用だとわたしは思っています。もちろん新聞を読んだり、テレビやインターネットから流れてくるニュースを見たり聞いたりすることも、その一つかもしれませんが、政治によって簡単に情報が操作され、フェイクニュースがはびこるなかでは、創作された小説から読みとり推し量ることによって得られた印象の方が、事実に近いこともあるような気がしています。

本書の翻訳・編集者の方からは、並々ならぬイスラエルへの執着を感じました。こういう方がいらっしゃるからこそ、我々は、知らない世界を少しづつ垣間見ることが出来ます。これを機会にイスラエル作家の小説、気にかけていきたいと思います。

『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)サヴィヨン・リーブレヒト、ウーリー・オルレブほか著/母袋夏生編訳

師走!でカレンダーめくったら、仙厓さんから肩透かしを食らわされた。

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師走!でカレンダーめくったら、仙厓さんから肩透かしを食らわされた。

ここ何年も、わたしの仕事場のカレンダーは出光さんの仙厓さんカレンダーです。朝から「いよいよ師走!」とカレンダーを勢いよくめくったら、出てきたのが、これ。

仙厓さんカレンダー

もうね、一気に脱力です(笑)

タイトルは「三福神虎渓三笑画賛」。「寿老人 大国夷子 虎渓の三笑ノ 狂言スル」とあります。カレンダーに記された解説によると、「虎渓三笑」は中国の故事で、笑い話のようです。それを三福神が特別の演目として演じ大笑いしている、という、福々しく笑顔あふれるおめでたい画。

おかげさまで好い具合に肩の力が抜けました。気忙しくなってくる十二月ですが、皆皆さまもどうぞごゆるりと参りましょう。

仙厓さん、大好きです♪

読書『英国女王が伝授する70歳からの品格』(KADOKAWA)多賀幹子著

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読書『英国女王が伝授する70歳からの品格』(KADOKAWA)多賀幹子著

「英国王室ジャーナリスト」多賀幹子さんによる、エリザベス2世の写真集というか、名言集というか、という本です。世の中には「王室好き」とか「皇室好き」の方々がかなりの数いらっしゃって、そういう「追っかけ」の方々に向けて、けっこうな数の書籍や雑誌が発行されているということに気づいたのはここ数年のことです。

わたし個人は単純に英国の文化や歴史に興味があって、そのなかでエリザベス2世の生きざまに興味が出てきた、という感じです。が、ブログの過去記事をチェックしてみたら、思っていた以上に英国王室関係の本を何冊も読んでいました(笑)。そういえば写真展も観に行っていましたし、

映画も観に行っていました。今年の初めにはミュージカル『エリザベート』も観たし…と考えると、かなり英国王室を「追っかけ」ていますね。ただ、もちろん知っているのは、あくまでもメディアから垣間見えた姿でしかありません。だとしても、わたしはそのイメージの中のエリザベス二世が大好きなのだと思います。

さて『英国女王が伝授する70歳からの品格』。写真を見ているだけでも、気持ちがなんだか引き締まって明るくなります。英国王室の仕事は「君臨すれども統治せず」の言葉に代弁されるそうですが、それがどういうことなのか、わかりやすく伝わってくる本でした。エリザベス2世の言葉はもちろん、彼女について語った人たちの言葉もたくさん出てきます。それらを読みながら、またイメージが膨らんでいきます。なかでもトニー・ブレア元首相のことばは、本質をついているように思いました。

本書を読み終わって思ったことは、自分が住んでいる国(日本)の皇室についても、同じぐらいの熱心さで本を読んだり情報を集めたりしたら、もっと彼らがどのようなことを行い考えているのか、そしてこの国でどのような役割を果たしているのか、身近に感じられるのだろうな、ということでした。そういう意味では、わたしが一番興味があるのは、雅子妃です。皇室に入る前から、入ってこれまでに、雅子妃が何を考えどう行動しておられるのかが、とても気になります。ちょっと本を探して見ようかな。

『英国女王が伝授する70歳からの品格』(KADOKAWA)多賀幹子著

読書『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社)坂本龍一著。

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読書『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社)坂本龍一著。

本書が発売されていることは、もちろん知っていましたが、なんとなくこれまで避けておりました。が、いつものカメリア図書館新刊棚で、目の前にあったので、これはもう借りるしかないと手を伸ばしました。熱狂的ファンとは言えないけれど、YMOからスタートして小学生の頃から好きだった坂本龍一。音楽、ファッション、思想…無意識に受けた影響は少なからずでした。幸宏さんが亡くなり、後を追うように教授が亡くなり、漠とした喪失感がありました。

さて『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』。その前に、半生を振り返った『音楽は自由にする』が出ていて、それは読んでいませんので片手落ちかもしれませんが、早すぎる晩年を迎えた教授が、何をしてどんなことを考えていたのかが、赤裸々に伝わってくる本でした。読んでいてしんどくなるページも多々で、読み終えたときにはホッとしました。

何かのインタビューで、教授が「僕は本気で世界の戦争を止めることが出来るかもしれないと思っていた」と言うのを読んだことがあり、「思っていた」というのは「けれども、それは無理だった」とつながるのであり、「諦観」の文字が浮かんだことがありました。世界各地で「知っている日本人の名前を挙げ挙げて」と質問したら、上位で名前の挙がってくる「坂本龍一」でもそのように絶望するのなら、我々にできることなど…という感じです。

そういえば東京青山のワタリウム美術館で開催された「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」を観たのは、昨年夏のことでした。上の写真はその展覧会の時のチラシ。

↑この報告ブログ↑には書いていませんでしたが、この「禅」の展覧会で、坂本龍一のインスタレーション展示をした部屋があったのでした。前情報を持たずに出かけていたので、思いがけず「坂本龍一」の名前を発見し、喜び勇んで展示室へ。ところがそのときは、そのインスタレーションが何を伝えようとしているのか、展示を観てもキャプションを読んでもさっぱり推し量ることが出来ず、残念な気持ちをもって会場を後にしたのでした。

本書を読み終わった今は、「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」に展示されていた坂本龍一のインスタレーションが、何を言おうとしていたのか、自分なりに解釈を持つことが出来ます。現代アートが言葉を必要とする表現であることを、あらためて感じました。そしてまた、観たときにはさっぱり「???」な状態でも、自分のなかに引っかかりが残っていれば、今回のようにあらためて解釈を持つことが出来るのだということも。

個人的には、本書のなかでまったくあっこちゃん(矢野顕子)のことが出てこなかったのことに、違和感がありました。もしかしたら前作『音楽は自由にする』には書かれていたのかもしれませんね。読んでみないといけません。

『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社)坂本龍一

読書『堀江貴文のChat GPT大全』(幻冬舎)堀江貴文・荒木賢二郎著

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読書『堀江貴文のChat GPT大全』(幻冬舎)堀江貴文・荒木賢二郎著

タイトルの『堀江貴文の…』の前に赤字で「今やらないヤツはバカ!」と書いてあります。さすがホリエモン。煽り系の乱暴な語り口に、熱意と愛を感じます。メディア(本にしてもテレビにしてもインターネットにしても)を通して見るたびに、どうしてわざとこんな風な言い方にするのかなぁ、と思いますが、実はとても親切な方だと思います。あ、上の写真は、本文とは全く関係ありません。

さて『堀江貴文のChat GPT大全』、ホリエモンはじめ18名の「Chat GPTを自分の仕事(あるいは生活)にどう生かしているか?」が載っています。職業がそれぞれにバラバラな、いろんな方が、ご自身の言葉で「Chat GPTとは?」を書いています。ほんとうに事例がさまざまで、書き方も統一されていません。なのでむしろ、自分の感覚に近い方が見つかると思います。一方的な「こんなにすごい!こう使うべき!」論ではなく、とっつきやすいとわたしは感じました。

Chat GPTはご存じの通り生成AIのひとつなわけで、以前このブログで話題にしたのはちょうどひと月前のことで、「わたし自身はまだ手を出していません」と書いておりました。が、本書を読んでようやく「うん、まずは使ってみよう」と思えました。

ちなみに「あ、なるほど」とわたしが一番胎落ちしたのは、まぐまぐ創業者の大川弘一氏の章でした。具体的な方法論は一切書いておられません。本書のなかでこの部分だけ読んだら、訳が分からないかもしれません。が、「自分の仕事のなかでどう使えるか」が一番イメージしやすかったのが、大川氏の書いた部分でした。

わたし自身は、Chat GPTを含めた生成AIを、誰もがすぐにでも始めるべきだとは思いません。けれども、スマホ文化がそうであったように、好むと好まざるとにかかわらず、生成AIが当たり前に生活の中にあるという状況が、もうスタートしつつあるのだということが、よく分かりました。なので、気になっている方には、本書はおススメです。

『堀江貴文のChat GPT大全』(幻冬舎)堀江貴文・荒木賢二郎著

ところでローカルネタですが、じり貧(といわれている)の在福岡(北九州)ラジオ局 cross FMにホリエモンが入ったので、感謝するとともにとても期待しています。