続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その1)。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その1)。

↓うっかり前置きが長くなってしまいました↓

以下、『いちばん親切な西洋美術史』より、彫刻部分を抜粋&まとめ。「その1」では、エジプト・メソポタミア文明からエーゲ・ギリシャ文明まで。


エジプト・メソポタミア文明(紀元前40世紀~紀元前4世紀)

  • エジプト=来世思考。副葬品。
  • メソポタミア=シュメール文明。楔(くさび)形文字。人類最古の文字文明。
  • 有翼人面牝牛像:新アッシリア時代。首都カルフの城門を守る石像。
  • ネフェルティティ(人間=肖像=写実性)とツタンカーメン(神像=定型的神々しさ)。

エーゲ文明・ギリシャ(紀元前30世紀~紀元前1世紀)

  • エーゲ美術=キクラデス美術(初期青銅器時代)、クレタ美術(中期青銅器時代)、ミュケナイ美術(後期青銅器美術)。
  • キクラデス美術:極端に抽象化された石偶(大理石)。
  • ギリシャ美術=西洋美術の基礎。巨大神殿建築。西洋建築の基準となる建築様式・装飾・構成。
  • 彫刻文化:直立不動(アルカイック期)→自然な立ち姿をとる「コントラポスト」(クラシック期)へ。
  • 絵画:陶器製の食器の表面が主要な画面となる。
  • 陶画家(陶芸家であり絵付師)の活躍:陶器画=黒像式→赤像色。
  • アルカイック:アルカイック期。アテナ神に捧げることを目的に制作。アルカイック・スマイルは生命感の表現。
  • コントラポスト:クラシック期。「対置」の意味。より開放的に。まだ一定の方向からのみ見られることを想定。
  • ヘレニズム美術=古代ギリシャ彫刻の完成形。
  • 「神々」だけでなく「王や個人」のための美術が生まれる。美術が大衆化された時代。
  • 激しい動きが特徴で。多方向から見られることを意識した表現。空間的な広がり。
  • ミロのヴィーナス、ラオコーン、サモトラケのニケ。

『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)より


書き出しはじめたら、思いのほか分量が多くなりそうなことがわかりました。「その2」へ続きます。

2021年度学芸員研修「美術館 de やさしい日本語」勉強してまいりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2021年度学芸員研修「美術館 de やさしい日本語」勉強してまいりました。

いつもたいへんお世話になっている博物館学芸員技術研修会。なかでも個人的に今年度一番楽しみにしていたカリキュラムが開催されました。コロナ禍で延び延びになっていましたが、難しい状況のなか、Zoomではなくリアル開催を決定してくださった事務局の九州産業大学緒方先生に心より感謝いたします。

久しぶりのリアル研修会は、休館日の福岡市美術館で。丸一日の研修会は、ふだん家でマイペースで仕事をしている我が身には長すぎるか!?と思いきや、一瞬も目を離せない内容で、あっという間の7時間でした。

「文化芸術事業における多文化共生・多言語アクセシビリティを考える」。今どきの言い方をするとこんな風になりますが、要は、美術館に来た人たちにいかに楽しんでいただくか。そのためのツールのひとつとしての「やさしい日本語」です。「やさしい日本語」は、在留外国人の方々への配慮として近年広がってきています。わたしは常日頃ラジオでLOVE FMを聴いているのですが、そのなかに「やさしい日本語」のコーナーがあります。実のところ日本語を母国語とするわたしたちにとっても「やさしい」ものになります。

講師をしてくださったのは、国内では最も取り組みの進む東京都で事業をけん引しておられる生活文化局都民生活部職員の村田陽次さんと、多文化共生プロジェクトに取り組みたくさんの実践事例を積み上げておられる多摩六都科学館研究・交流グループリーダーの高尾戸美さん。

以下、学び備忘。


  •  東京都では芸術文化施設における「やさしい日本語」への取り組みが進んでいる。
  •  文化事業における取り組みが重視されているのは、地域でリーダーシップをとる施設(都の場合は東京都美術館)の存在が大きい。
  •  文化事業と多文化共生(多言語アクセシビリティ)の目指すものは親和性が高い。
  •  正解はそれぞれ。まずやってみる。
  •  トライ・エラー・フィードバックの繰り返しが「やさしい日本語」の取り組みを進め・広げる推進力になる。
  •  「覚悟」を持って取り組む&一人でも多くの理解者を巻き込んでいくことが大切。
  •  「やさしい日本語」は方法のひとつ。
  •  根っこにあるのは「社会的包摂」の理念。
  •  言語以外のコミュニケーションの役割。図説・ピクトグラムやボディランゲージなど、いろいろな方法がある。
  •  いずれも根底にやさしい気持ちと「伝えたい」という熱意があってこそ。
  •  対象者の反応に応じて修正していく継続性が要。
  •  作品解説を「やさしい日本語」で作成する過程をとおして、言葉を選ぶことはその言葉の受け取り手をイメージして心を配ることだと理解。難しいながらも楽しい作業。
  •  自分が「やさしい日本語」だろうと考えているものと、ガイドラインの評価とでは、かなり食い違う恐れがある。
  •  だからこそ、チェッカーの存在は重要。
  •  専門用語は専門用語(固有名詞)として残すこと、見て分かるものは、そのイメージを表す言葉として理解してもらうことなど、方法は単純に「やさしい言葉遣いにする」だけではない。
  •  「やさしい日本語」による内容と目的を明示することによって、外国人向け、子ども向けというように対象を限定しなくても、それを必要とする人々が美術鑑賞に興味を持つきっかけを提供できる。

これはひとつでも多く実践していくことでしか、その技術を習得する道はありません。この講座をきっかけに、「やさしい日本語」での鑑賞ワークショップの可能性が見えてきました。

読書『美術展ぴあ2022』(ぴあMOOK)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『美術展ぴあ2022』(ぴあMOOK)

今年もスタートして既に2月半ばということで、少々出遅れ感はありますが、2022年の美術展チェック。毎年末、翌年の美術展の予定や見所を紹介する雑誌がいくつも発行されていますが、ここ数年は『日経おとなのOFF』から出る美術展本を手に取っていました。先日久しぶりにゆっくり歩いた本屋さんで、今年はまだチェックしていなかったことを思い出し、数冊を比較検討。今回は「ぴあMOOK」版をゲットしました。

ぴあMOOK版の何が気に入ったかというと、誌面の紙質です(笑)。「そこ!?」と言われそうですが、全ページカラーで美術作品の写真がいくつも載っているとなると、わたしにとって「紙質」はけっこう大切な要素。

それではさっそく『美術展ぴあ2022』から、わたしが個人的に「今年ぜひ観に行きたい!(足を運べるかどうかは別として)」と思っている美術展5つをご紹介。


1.フランソワ・ポンポン展

磁器彫刻家・藤吉憲典と「動物彫刻」という共通点があるポンポンの展覧会。よくぞ日本で開催されたと思います。既に二か所での展覧会が終了しており、残るチャンスは、千葉の佐倉市立美術館か山梨県立美術館。

2.特別展「ポンペイ」

ポンペイに行ってみたい!です。でもいつ行けるかわかりませんので、まずはポンペイ遺跡の至宝の数々を見ることのできる機会はありがたいです。なかでも楽しみなのはモザイクとカメオ・ガラス。幸い九州国立博物館に来てくれますので、足を運べそうです。

3.スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨人たち

英国エディンバラにあるスコットランド国立美術館からマスターピースの数々が来日。秋に北九州市立美術館に巡回予定なので、これはぜひ足を運びたい。そして次回渡英の際は、エディンバラに足を延ばすことが出来たらいいなぁ、と。

4.日本画オールスター

足立美術館は、特別展に関わらず足を運びたい場所のひとつ。庭園散策と美術鑑賞だけを目的にゆっくり訪問したいところです。至福の旅行計画を立てたいですね。

5.森村泰昌:ワタシの迷宮劇場

京都市京セラ美術館の開館1周年記念展です。京セラ美術館もまた、特別展に関わらず足を運びたい場所のひとつ。わたしにとって森村泰昌氏の作品は「これぞ現代アート」です。面白さがあり、美しさもあり、そしてちょっぴりもの悲しさもあり。


このほかに、展覧会(特別展)に関わらず足を運びたいなぁと思っているのは、この2月にオープンした大阪中之島美術館。大阪に住んでいたころに大好きだった中之島界隈。レトロな建物の街並みが素敵なのはもちろん、図書館や東洋陶磁美術館も嬉しく。そこへまたまた素晴らしいスポットが誕生とあり、訪問するのがとっても楽しみです。大阪といえば、あべのハルカスの美術館にも行きたいです。

こうして「おススメ」していながら、振り返ってみたら、昨年はほとんど「展覧会」を観に行けていませんでした。今年はゆっくりじっくり観覧する時間をとりたいと思います。

以下は、どれにしようか物色した美術展ガイド3種。

学び続けることに定年はない。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

学び続けることに定年はない。

干支の寅、気になってるのよ。わたし、寅だから。」と、ご近所さん。「年女なんですね。おめでとうございます!」と言ったあと、ふと思いました。「あれ?お幾つだったかしら?」と。たしかお仕事を定年退職なさってから、今取り組んでおられるいろいろな地域活動をスタートしたとお聞きした覚えがあって、それからもう何年も経っているから、還暦は過ぎておられる…ということは!?

地域のこと、歴史や観光に関わること、現在の地域のこと、それらに関連して広がるいろいろなこと。さまざまな勉強会やセミナーで、その方のお顔を拝見することや、お名前を見聞きすることがとても多いのです。ご近所で出合い頭にちょこっとおしゃべりをするたびに、この方の「学ぶ姿勢」に感嘆させられます。そして学んだことを、実際の地域での活動や課題に落とし込もうとしておられること、ひとつひとつに対してしっかりとご自身の見解もお持ちであるのも、とても魅力的なのです。

わたしは博物館学芸員資格を取得する過程で、生涯学習や社会教育について初めて体系的に学びました。そして福津市の生涯学習の仕組みである「郷育カレッジ」の運営に関わるなかで、その知識や考察を実際の活動として地域に落とし込むことができるようになりました。そうした社会教育の場でお会いする方々は、皆さんいつも学び続けています。

昨今の流行りに「リカレント教育」なる言葉がありますが、そんな言葉がはやる以前から、社会に出た後も学び続ける人・学び直す人はたくさんいるように思います。仕事をリタイアした人だけでなく、仕事をしながら学校に通っている友人もたくさんいます。かく言うわたしも、学芸員資格を取得したのは、40歳からの大学編入でした。

ともあれ「リカレント教育」という言葉に伴い、世代を超えて学びの機会が増えているのは、とてもありがたい傾向です。何のために学ぶのか、ではなく、学ぶこと自体が目的であって良いと思うのです。手段としての学びではなく、学びたいから学ぶ。そしてそれができることは、とても幸せなことだなぁなんてことを、冒頭の会話から連想して考えていた午後でした。

2022年仕事始め。本年もよろしくお願い申し上げます!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2022年仕事始め。本年もよろしくお願い申し上げます!

旧年中は、たくさんの皆さまに、たいへんお世話になりました。ほんとうにありがとうございました。花祭窯は本日が仕事始めです。本年もよろしくお願い申し上げます!

2年ぶりに「車窓から初日の出♪」で、お正月を迎えました。長崎本線特急かもめ車内から、花祭窯創業地の最寄り駅「肥前山口駅」でのご来光。偶然ではありましたが、素晴らしい場所・タイミングで初日の出を拝むことができました。津屋崎に移転するまでの15年間は、どこへ行くにもこの駅からスタートしていたのです。

今年も家族揃ってお正月の景色を迎えることができたことに感謝です。

玄関先にはダンナが投げ込み。
鏡餅
お仕事デスクにも鏡餅。
ご近所さんからお正月用に蝋梅をいただき、花生け完了。
床の間には「暫」と鏡餅。
年中活躍の市松の花入れは、お正月が良く似合います。

この6月に花祭窯は25周年を迎えます。最高のスタートを切ることができました。今年も一年間面白く頑張ります!

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第6回。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第6回。

2021年度学芸員研修の6回連続講座の最終回でした。第1回目からの報告は下記の通り。

最終回は、福岡市美術館から「アート活動で高齢者と美術館をつなぐ」と題した発表があり、その後グループに分かれての意見交換。多様な立場の皆さんのお話を伺うことで、気づかされ、励まされました。

以下備忘。


  • 例えば「梅と桜」のように、わかりやすく普遍的なテーマ設定ができれば、いろいろな作品が鑑賞法(回想法を含む)の題材となりえる。
  • 肝はテーマ設定。「どの資料を使うか」よりも「何をテーマとするか」。
  • ギャラリートーク(解説・対話型など)→ブレイクタイム(お茶・おしゃべり)→簡単な制作→制作物を自分に届ける。
  • 制作物を後日(1日後、1週間後、1か月後、1年後など)自分に届ける=今やっていることを未来(の楽しみ)につなげる。
  • どこでも美術館=アウトリーチ。
  • 子ども(学校)向けだけでなく、高齢者(施設)向け、そのほかすべての「美術館に来にくい、来れない人」へ。
  • レプリカ、持ち出し用の(持ち出し可能な)ほんもの。
  • 認知症対応マナー研修。
  • 美術館・博物館→社会教育施設→生涯学習拠点。
  • 文化施設=いかにして社会的に頼られる存在になれるか、その使命。
  • 実物(ほんもの)+オンライン。
  • そのプログラムは、自分が参加して楽しいと思えるプログラムか。自分が作ったプログラムに、将来的に自分が参加することを想定して考える。

アートエデュケーターとしての取り組みに今後取り入れていきたいことが、具体的たくさん出てきた全6回の研修でした。すぐにできること、長期的に周りに働きかけるべきこと、来年度以降に取り入れていけるもの。九州産業大学の緒方先生が中心となって開催してくださる学芸員の研修事業は、学究的である以上に実践的であることが、毎回特徴的です。今年もとても勉強になりました。ありがとうございました!

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第5回。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第5回。

2021年度学芸員研修の6回連続講座の5回目でした。「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回と、第4回目の報告は↓こちら↓。

今回は「回想法」。わたしが初めて回想法の講座を受講したのは、2018年「博物館で回想法」でのこと。今回は宮崎県総合博物館での取り組みを学びました。これは、前回の講座で同じグループだった福祉施設関係のスタッフの方が宮崎県総合博物館と連携して取り組んでおられる事例であり、継続的な取り組みが発展・進化している様子を拝見することができました。

以下、備忘。



  • 博(博物館)福(福祉)連携。
  • テーマ別回想法(座学)、コース別回想法(展示室観覧)。
  • テーマ別では、一つの題材を中心に、座ったままで回想法を展開することが可能。
  • コース別では、解説委員による解説を入れながら、展示スペースを動きながらの回想法が可能。
  • 昭和時代のモノだけでなく、さまざまな所蔵品や資料が、回想法の題材として使える。
  • 参加者それぞれの思い出話につなげ、話題を盛り上げるには、題材からどのようなテーマを決定し導くかが大切。
  • 各コースは定期的に開催。年度ごとに開催スケジュールを作成→支援団体(サービス利用団体)を公募。
  • 博物館に来れない方に向けては「貸出キット」によるアウトリーチ。
  • 貸出キットの貸出先は、福祉施設・学校・図書館等の社会教育施設が中心。
  • 現状では「貸出キット」は資料・史料のみで、人材(解説委員・学芸員)の派遣は無し。
  • 昔の道具などは参加者である高齢者の方々から用途や使い方を教えてもらうことができる=相互学習。参加者がお互いに「役に立っている」と実感できる。

宮崎県総合博物館では、取り組みのためのマニュアルがすでに出来上がっており、また毎月定例で開かれる福博連携の会議で細かく状況を共有する仕組みができているのが秀逸でした。「連携」のためには、とにかく働きかけ続けることが大事であり、そうしているなかで、志を同じくする方々とつながり、事業を推進していくことができると教えられました。

読書『ミュージアムグッズのチカラ』(国書刊行会)大澤夏美著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ミュージアムグッズのチカラ』(国書刊行会)大澤夏美著

あちらこちらの美術館・博物館で、ミュージアムショップがどんどん魅力的になっています。正直なところ、わたしはミュージアムグッズをたくさん購入する方ではありませんが、展覧会や常設展示を見たあとに、ついつい立ち寄る場所でもあります。上の写真は、福岡市博物館のミュージアムショップで手に入れた絵葉書。

本書には、グッズの商品開発に関わる学芸員さんや研究員さんデザイナーさんなどへのインタビューが載っていて、そこが一番の読みどころだと思いました。どのような思い・使命感をもって取り組んでおられるのか、並々ならぬ熱量を感じました。本書を読み終わったとき、自分のなかでのミュージアムグッズの位置付けが大きく変わっていました。

ミュージアムショップはミュージアムの入り口であり出口である、ということが、本質的に理解できました。有料の展覧会であっても、ミュージアムショップに入るには入場料はふつう要りません。そういう意味では誰でも入りやすく、敷居の低い入り口です。そして展覧会を観覧した後に、その余韻を持ち帰るひとつの方法としてグッズが並んでいる場所ですから、ある意味展覧会の一番最後の展示スペースであり、出口。

「はじめに」にある一文が、とても響きました。いわく「ミュージアムショップはただの売店ではないですし、ミュージアムグッズはただの雑貨ではありません。博物館での思い出を持ち帰るための大切なツールであり、博物館の社会教育施設としての使命を伝える手段でもあります。」(『ミュージアムグッズのチカラ』大澤夏美)。

とくに「社会教育施設としての使命を伝える手段」であるというところに、ハッとしました。わたしはアートエデュケーターとして「美術の教育普及」を仕事にしていますが、その立場・役割の目線でミュージアムグッズを見たことが、これまでありませんでした。でも、思い返してみれば、たしかに教育普及として活用できる側面がものすごくあることは明らか。「アウトリーチ」の究極の形ともいえるかもしれません。ミュージアムグッズを見る目が、がらりと変わりました。

各館が力を込めた魅力的なミュージアムグッズが、写真と解説入りでたくさん載っています。「このグッズが欲しいからこの美術館に行ってみる」もありですね。それこそ美術館への入り口そのものです。

福津市歴史資料館企画展『埴輪から見た津屋崎古墳群』見て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福津市歴史資料館企画展『埴輪から見た津屋崎古墳群』見て参りました。

福津理歴史資料館、正式名称は「福津市複合文化センター歴史資料館」で、歴史資料館・図書館・ホールの複合施設のひとつです。カメリアステージ図書館の1階が歴史資料館で、2階が図書館なので、ふと歴史資料が見たいと思ったときに「ついでに見る」が可能な、素晴らしい立地。企画展は歴史資料館エリアの一角で展示されます。決して広いスペースではありませんが、だからこそ、ピンポイントで学ぶことができます。

令和3年度の企画展テーマが『埴輪から見た津屋崎古墳群』だと聞いて、まず思ったのは「あれ。新原奴山の古墳群からは、埴輪はあんまり出てなかったと思うんだけどな」でした。とはいえ、発掘調査がずっと続いているのも知っていましたので「もしや、新しい発見があったとか!?」と、ワクワク。

展示ケースに寄ってみると、並んでいるのは「円筒埴輪片」ばかり。うん、やっぱりそうよね、と思いつつ、キャプションパネルの解説を拝読。結論としてはやはり、古墳全体として埴輪の出土はとても少なく、出土しているものも小型の円筒片がほとんど。「いかにも埴輪!」という感じのものは見当たりません。これまでにすでに出土しているなかに「馬形」や「人物形」があり、これらは常設展示してありますが、あらたに大きな発見は無いようでした。

それでも、企画展示コーナーの埴輪のひとつに「形象埴輪」と呼ばれる、竹菅の組み合わせによる刺突文様のついたものがあり、思わず「おお!」とテンションが上がりました。文様、絵画的なものが残っている遺物を見ると、ワクワクします。解説に寄れば、熊本県南部にある大型前方後円墳からの出土例にある形象埴輪に、まったく同じ文様があることから、当時の地域間交流が伺えるということでした。

さて『埴輪から見た津屋崎古墳群』企画展資料の解説の結論としては、「宗像地域では埴輪祭祀が流行しなかった!」というものでした。やっぱりそうかぁ…と思いつつ、その結論がわかっていながら、あえてタイトルに『埴輪から見た』と入れるあたり、学芸員さんの「攻める姿勢」が見えて、思わずニンマリ。

15分ほどの短い鑑賞時間でしたが、なんとも充実した時間でした。身近にある世界遺産である古墳について、ゆっくりじっくり思いを馳せることができる、身近な歴史資料館。このコンパクトさが、とっても良いのです。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第4回。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第4回。

2021年度学芸員研修の連続講座4回目。「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回の報告は↓こちら↓。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回。

第4回目は「認知症高齢者と社会教育施設をつなぐ」のタイトルで、福岡県大牟田市の取り組みを、大牟田市中央地区地域包括支援センターの竹下一樹さんから学びました。地域での連携を考えるうえで、とても心強い取り組み事例。

毎回、各館での取り組みのボトルネックとして出てくる課題に、「横展開」をいかに広げていくかというものがあります。社会教育施設と福祉。それぞれの強みを組み合わせ、連携していく関係性を築いていくには、とにかくコツコツと粘り強く働きかけていくこと。そして人と人とのつながりこそが、キーポイントとなることを確認する時間となりました。

以下、備忘。


  • ○○のために、ではなく、○○とともに。
  • 当事者ミーティング。
  • 本人は、どうしたいのか?どう感じているのか?
  • 横展開。
  • 一人では足を運び難くても、仲間がいることで足を運ぶことができる。
  • 誰かの役に立ちたい、地域のために役立ちたい。
  • 民間との連携=企業戦略としての「高齢者にやさしい街」。
  • 福祉施設側や行政の福祉担当から、受け入れ施設(社会教育施設)に、必要最低限のマニュアル(認知症に対する基礎知識など)を共有する。あるいは研修を受ける。
  • 横のつながり、情報共有。
  • すでにあるそれぞれの活動を、つなげていく。
  • 予防的活用。
  • 誰もがいつかは通る道=当事者。
  • まずは受け入れる。

この連続講座では、毎回講座後半に設けられる「語り場」での意見交換が、とても効いています。昨年の春からZoomを使い始めて、会議や研修など様々な場面で利用してきていますが、この講座でもあらためてその便利さと恩恵を感じています^^