福岡市美術館の教育普及プログラムを活用した「知識要らずの美術鑑賞」―講座受講生の声。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福岡市美術館の教育普及プログラムを活用した「知識要らずの美術鑑賞」―講座受講生の声。

福津市民のための生涯学習システム「郷育カレッジ」で、今年も「知識要らずの美術鑑賞」講座を開催いたしました―とお伝えしたのは、つい先日のことでした。

当日参加してくださった受講生の皆さまからの声が届きました。郷育カレッジでは、講座の品質向上のために、それぞれの講座の後に、必ず受講生にアンケートの記入をお願いしています。そのアンケート結果が、講師にフィードバックされます。実は今回、そのアンケートだけでなく、わざわざ個別にメールでご感想を送ってくださった受講生の方がいらっしゃいました。とても嬉しかったので、それもあわせて、こちらに備忘。


  • いろんな角度から美術品を見学できて面白かった。
  • 何もわからない展示物を前にして、ボランティアの方がいろいろ質問で意見を引き出してくださって、わかりやすくて楽しかった。
  • 新発見があり面白かった。もっとたくさんの作品を見たかった。
  • 美術館に行ってもなかなかじっくり見ることがなかったので、いい経験になった。
  • ひとつの作品をゆっくり見ることができてよかった。
  • ボランティアの方や学芸員の方に説明していただき、とても良かった。
  • 美術館はだまって見ないといけないと思っていたが、皆さんと話したり、ガイドさんのお話で理解が深まった。
  • またゆっくり美術館に来たいと思う。
  • おしゃべりしながらの鑑賞は、本当に楽しかった。
  • 今まで美術館は一人で出かけることにしていたけれ度、これからは気の合う人と一緒に出かけたいと思った。
  • 楽しい時間でした!

「知識要らずの美術鑑賞」2024年9月6日開催分アンケートより抜粋


「ゆっくりみることができた」「時間がもっとあったらよかった」というご意見が、何人もの方から複数ありました。今までとは違った美術鑑賞が出来たこと、もっとたくさん鑑賞したい!と思っていただけたことが伝わってきて、とても嬉しいです。

参加してくださった受講生の皆さま、ご協力いただいた福岡市美術館の教育普及担当の皆さま、いつも講座運営を支えてくださる福津市郷育推進課の職員さんに、心より感謝申し上げます。今年もありがとうございました!

郷育カレッジ「知識要らずの美術鑑賞」講座を開催いたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

郷育カレッジ「知識要らずの美術鑑賞」講座を開催いたしました。

福津市民のための生涯学習システム「郷育カレッジ」で、今年も「知識要らずの美術鑑賞」講座を開催いたしました。2021年の第一回目から、4年目となった今年も、たくさんの受講希望者の方が集まってくださいました。

昨年に引き続き今回も、福岡市美術館の教育普及プログラムにお世話になりました。福岡市美術館の常設展示を活用し、美術館ボランティアの方々が「対話型鑑賞」をナビゲートする、というものです。福岡市美術館の教育普及プログラムのなかでも「アウトリーチ」と呼ばれる、いわば「出前美術館」は、どうしても福岡市内での提供が原則優先となりますが(福岡市の公立美術館なので)、こちらから館に出向く分には、福岡市内外からの訪問に関わらず、充実したプログラムサービスを享受することが出来ます。

まずは福岡市美術館まで皆でバス移動です。移動時間が1時間ちょっとありますので、その時間を使って、ウォーミングアップです。「美術とウェルビーイング(心身の健康)」の最新の知見を、いくつかご紹介。参加者の皆さんの、日頃の「美術」「芸術」との関りについてご意見を聞きながら、日常的にできる美術の楽しみ方を共有いたしました。

美術館に到着後は、福岡市美術館の教育普及担当学芸員さんにバトンタッチ。そこからさらに、美術館ボランティアさんにバトンが渡されます。3つのグループに分かれて、それぞれに対話型鑑賞スタート。対話型鑑賞の「肝」は共有されていますが、各グループで進行を担当するボランティアさんによって進め方は少しづつ異なり、それもまた面白いところです。

約1時間かけて3つの作品を鑑賞。どのグループからも楽しそうな声が聞えてきました。最初は遠慮しがちだったのが、時間が経つにつれ、積極的に自由な会話が発生するようになります。鑑賞している皆さんの表情も生き生きしてきます。そういう変化を拝見していると、美術の力をつくづくと感じます。

グループワークが終わったら、30分の自由鑑賞時間。福岡市美術館の常設展のチケットは当日再入場が可能ですので、めいめいに「もう一度見たい」と思ったものを観に行ったり、ミュージアムグッズのショップを見たり、「美術館そのもの」を楽しむ時間です。キース・へリングの特別展もまだ期間中でしたので、30分で特別展に足を運んだ受講生の方もいらっしゃいました。

自由にアクティブに楽しむ美術館。受講生の方々からは「もっと時間があったら」というお声も聞こえましたが、帰りのバスでは皆さんの満足そうな表情を拝見して、ほっと安心いたしました。

今回もお世話になりました福岡市美術館の皆さまに、心より感謝申し上げます!

続・まるっと一日、福岡市美術館デー:美術館使い倒しのススメ。

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続・まるっと一日、福岡市美術館デー:美術館使い倒しのススメ。

開催中の「キース・へリング展」を見て参りました、と書いたのは昨日のことでした。

「クールシェアスポット」という言葉がだんだんと広まってきましたね。環境省のサイトによると、「公園や図書館などの公共施設を利用することで涼をシェアする、など1人あたりのエアコン使用を見直すことがクールシェアの考え方」だそうです。ということは、美術館・博物館も、そのシェアスポットとして最適な空間ですね。クールシェアを意図したわけではありませんが、わたしの「まるっと一日、福岡市美術館デー」は、まさに酷暑のこの夏にぴったりの行動だったのかもしれません。

福岡市美術館は9時半開館。福津市にある花祭窯を朝8時過ぎに出て、電車とバスを乗り継ぎ、9時半過ぎに美術館に到着しました。博多駅からは、地下鉄または西鉄バスを使うことになります。わかりやすいのは地下鉄です。地下鉄大濠公園駅で降りたら、大濠公園内を歩いて15分ほど。お堀の周りをぐるりと約半周で、気候が良いときは最高のお散歩コースです。博多からバスを使う場合は、福岡市美術館への最寄りバス停は、路線により「福岡市美術館東口」「赤坂三丁目」「福岡城・NHK放送センター入り口」と三つあります。初めはややこしく感じるかもしれませんが、慣れるととても使い勝手が良く、バス停から美術館への距離も徒歩3~5分なので、できるだけ歩きたくない場合は、バスがおススメです。

到着したらまずは、特別展のキース・へリング展へ。人気の高い特別展も、平日の朝一番に入ると比較的混みあわず、見やすいことが多いです。キース・へリング展も、人が増えてくる前に、三往復することが出来ました。特別展を出たら、所蔵品を展示する常設展示室、まずは2階にある近現代美術の「コレクションハイライト」へ。6月に展示替えが行われたということで、前回観たときとはまた少し顔ぶれが変わっていました。美術館というと特別展が注目されやすいですが、常設展示も見どころがたくさんありますので、見逃せません。

ここまで見終わったら時計はもうすぐで12時というところ。混みだす前に、お昼ご飯にすることに。福岡市美術館のなかには、レストランとカフェが入っています。今回はゆっくりしっかりご飯を食べたかったので、レストランへ。ニューオータニ博多が運営するレストランは、お値段もそれなりですが、まずその場所が美術館内で最も眺望の良い場所にあり、贅沢な気分を味わうことが出来ます。緑豊かな景色を眺めながらいただくランチは、とっても美味しかったです。ここは予約もできますので、特に週末など混みあいそうなときは、あらかじめ予約をしておくと安心ですね。

ゆっくり時間をかけてお昼を頂いたあとは、1階にある古美術の常設展示室へ。「松永記念館室」では「表具のキホン」のタイトルで書画の名品を観て学び、企画展示室では「田中丸コレクション 華やかなる九州の桃山茶陶」のタイトルで、土ものの名品を拝むことが出来ました。松永記念館室も、企画展示室も、定期的に入れ替えがあるので、訪れるたびに見応えがあります。東光院仏教美術室ではいつもの「阿吽」を見上げ、十二神将像を愛で、こちらも大満足。

そのあとは二階にある「美術情報コーナー」で書籍や雑誌を物色。気になる記事を読み、調べることが出来ました。このような図書や資料のコーナーの規模や使いやすさで言うと、同じく福岡市が運営する福岡アジア美術館の充実ぶりに俄然軍配が上がりますが、いずれにしても、「美術館で図書サービス」は活用したいおススメサービスです。

最後は、ミュージアムショップへ。何かを買いたいというわけではありませんが、どのようなものが並んでいるのかを見るだけで、美術を取り巻く世の中の動きが見えたり、その美術館が持っている特徴や「押し」が見えてきたりするのは、面白いことです。美術関連の本が並んでいるのも楽しいですね。わたしが出かけた当日は、海外からのお客さまが多くミュージアムショップにもおられたので、その方々がどのようなグッズに興味を示すのかが伝わってきて、なるほどと思いました。

さて美術館を満喫して気がつけば、時刻はもうすぐ16時というところでした。ほんとうに一日よく遊びました(笑)。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その2

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読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その2

原題は『YOUR BRAIN ON ART How the Arts Transform Us』。わたしにとっては、齋正弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』、元資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた『美 「見えないものを見る」ということ』、そして山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』に続く、アートエデュケーターとしての指針盆になりそうです。先日「その1」をまとめたところでした。

続き、本日は第3章から備忘。


  • 落書きやぬり絵、思いのままに絵を描くことは、いずれも前頭前野皮質を活性化させる。
  • 「絵を描いているときはいわゆる単調な状態になる。いつもとは違う頭の部分が働いているんです。普段はスイッチが入っているところがオフになります。そしてオフになったときは、自分の感情について、というよりあらゆることについて会話をしやすくなる。(後略)」
  • 絵を描くことは脳波の活動を変化させ、前頭部への血流を増やし、精神の回復力にプラスの影響を与えることが明らかになっている。
  • アートが瞑想に近い状態を引き出し、生理機能の自己調節を促す
  • アートを利用して瞑想に近い状態を育む
  • 創造しては手放すというこの工程のなかに(中略)、無意識へと入り込む道(がある)
  • (粘土)手でリズミカルな反復運動を行うと脳内でセロトニン、ドーパミン、オキシトシンの分泌が促されることが報告されており、そのため気持ちが少し楽になった
  • 年度は両手を同じように器用に動かして取り組む数少ない創作材料の1つであり、意識と無意識のどちらにも働きかけることができる。
  • 書くことで個人的で感情的な物語にあえて入り込むことは、心身の不調を軽減する効果がある
  • 書く行為を通して、自分の心の位置付けを把握する方法を学びとり、書き終えたときには自分がどのように感じ考えているのか、より多くの情報が得られるようになっている。
  • 肉体的な感覚を経験することにより、頭で考えることから抜け出し
  • アートが完成したら共有する場を設け、(中略)完成させたものの意味を説明できるようにする。
  • これはアートの「出来栄え」を評価することが目的ではない
  • 生活にアートを取り入れる機会が年に1、2回だとしても、死亡リスクは14%下がる。
  • 生涯にわたり美術館やコンサート、劇場に足を運ぶといったアート活動を行うと、加齢に伴う認知機能の低下を遅らせる効果もある。
  • 美やアートは高尚なものではない。人生の基礎である。
  • アートや美が教育や仕事、生活に統合されたとき、私たちの学ぶ能力が強化される
  • 持続的幸福
  • 「この絵のなかで何が起きているでしょう?」「ほかに気づいたことはありませんか?」
  • ただ目の前の柄を解釈すればよい
  • 好奇心は進化に必要なものとして、人の脳に織り込まれてきた。
  • 進化の目的は、予測不能な世界で最善の判断をできるように適応すること
  • アートは内省のきっかけとなり、それぞれが自分なりの洞察を得て、他者の視点を理解し
  • 人が普遍的に美しいと感じる現象がある
  • 美の認識の多くの部分は個人に依存する
  • 感嘆
  • 積極的に畏怖の念を経験している人々は、自主規制をあまり求めず、不確かさに対する耐性が比較的高い。
  • 創造性―「自分が大切にしているもの」を取り戻す
  • フロー
  • ある活動そのものに完全に没頭している状態。自我は消失、時間は飛ぶように過ぎる。そして新たなアイデアが生まれる
  • 内なる台本を書き換えるために舞台に立つ
  • 「正常」なものの外に出て、あっと驚く
  • 自分以外の誰かのケアにあたるときは、あなたには自分自身をしっかりと労わるための追加的な手段があり、自分の心身の健康を回復することは習慣になっている。そしてアートと美のツールキットは大いに頼りになる。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳 より


今回も十分に長くなってしまいましたね(笑)。わたしは「美術」の観点から読んでいるので、そちらに偏った備忘メモになっていますが、本書では美術以外の芸術…音楽や演劇やダンスやいろいろ、とのかかわりについてもたくさん述べられています。なので、ご興味のある方は、ぜひ本書を読んでみることをお勧めいたします。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳

キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

9月に郷育カレッジで講座を担当する「知識要らずの美術鑑賞」のために、福岡市美術館での打ち合わせ。打合せは午後からでしたので、午前中から足を運んで、開催中の「キース・へリング展」を見て参りました。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)

そもそもは、昨年の学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」でのこと。山梨県にある「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんによる「社会課題と向き合う美術館活動」の実践報告の発表を聴いてディスカッションするという、稀有な機会に恵まれました。そのときに「来年は福岡市美術館で展覧会があります」と聞いて、楽しみにしていたのでした。

キース・へリングが向かい合った(’80年代当時の)社会課題と、彼の社会活動の「いかに」がバンバンと伝わってくる展覧会でした。展示を通して響いてきたのは、思っていたよりも「もっと重く、もっと切実」な、キースの叫び。「イコンズ」と名付けられた、ポップでカラフルなアイコニックな作品が、キース・へリングを印象付けるものとして有名ですが、その奥にある危機感が迫ってきました。

会場は一部展示室を除いて、写真OK(フラッシュ撮影や動画はNG)でしたので、今回のわたしに響いた「これ!」を、以下にちょっぴりお裾分け。写真NGの部屋は、1988年来日の際の東京でのイベント資料を展示したものでした。ちなみにダンナは当時東京でグラフィックデザイナーをしていて、「生キース・へリング」をその時に見ていたとのこと。そんな話を聞くと、自分たちの少し先を走っていた方なのだなぁと、実感します。

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展@福岡市美術館

わたしは、表面的に社会的な課題をちりばめた「現代アート(コンテンポラリー)」と呼ばれているものに懐疑的なのですが、今回の展覧会を見て、これこそが「いわゆる現代アート」なのだと分かりました。考えさせられ、見応えのある展覧会でした。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)は、会期残すところちょうどあと一か月9月8日(日)です。おススメです。

山梨県にある「中村キース・へリング美術館」にも、そのうちぜひ行ってみたいと思います。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

原題は『YOUR BRAIN ON ART How the Arts Transform Us』。こんな本を待っていた!というところです。帯に『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』の著者・山口周さんが「答えは本書にあります」と推薦コメントを寄せていますが、まさに、科学的・実証的エビデンスでその答えを明示したと言えるのかもしれません。

400ページ越えを二日間かけて読了しました。わたしのアートエデュケーションの原点となる本ベスト3は、齋正弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』、元資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた『美 「見えないものを見る」ということ』、そして山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』なのですが、それに本書を加えなければなりません。

さっそく以下、備忘。


  • 神経美学
  • 感覚的に豊かな環境では学習の効率が高まり、記憶の定着率が高い。
  • 『20分間のアート』
  • あなたは脳だけでなく、身体全体で世界を取り込んでいる
  • 環境的経験に応じて動物の脳に構造的変化が生じる
  • 脳が生涯にわたって環境的な刺激に反応し、物理的に回路を書き換え、新たな経路を生成する
  • 究極に豊かな環境は自然である。自然は最も美しい場所であり、それはわたしたちが生まれた場所であるからにほかならない。
  • 文化、経歴、生きている時代や場所といったことのすべてが、物事をどのように受け止め、反応するかを特徴づける。
  • あなたが美しいと認識する経験がある。その経験は、あなたと、あなたの生物学的特質と環境に特有の要素が混ざり合ったものから成り立っているが、同時にあらゆる人々が美しいと思わずにはいられない普遍的な要素も含んでいる。
  • 「アートでも建築でも、人が創造したものはその形になってからほんの数千年しか経っていない」
  • 美しさはいかなるときも、見る者の目のなかにのみ存在している。
  • どこで生まれ、どのように育ち、それぞれどのような経験をしてきたのかといったことが重なり、なにを美しいと感じるかが決まる。
  • (アートと美は)人間のありとあらゆる経験に感情的に結びつくことを可能にする。
  • (アートは)本来ならば難解で不快な考えや概念に向き合うための媒体となる。
  • アートには(中略)感情を解放させる作用がある。
  • あなたの知覚は、あくまでもあなたにとっての現実にほかならない。
  • DMN(デフォルトモード・ネットワーク)はあなたが美しいと思うもの、記憶すべきだと思うもの、意味があると思うものを、それ以外のものと区別するフィルターであり、アートと美を私たち1人ひとりにとって、きわめて個人的な体験にする役割を担っている。
  • 「形は感情を模倣する」
  • 私たちが意識的に考えることと、生物学的な感覚は必ずしも一致しない(「オシャレ」と思った部屋が、本当に心地いいとは限らない)
  • 周囲に対する自分の美意識は、(中略)先入観や偏見、長年の考え方にとらわれていないか?
  • アートとは自分の身体状況あるいは感情の状態を変化させ、幸福感を高める活動である。
  • アートの創作に長けている必要も無ければ、得意である必要すらない。
  • わずか45分間アートの創作に取り組むだけで、田尾藩の人々において、スキルや経験の有無とは一切関係なく、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの低下が見られた。簡単な材料などを用意して、出来栄えを気にせずに取り組めば、誰でも自宅で同じことができる
  • 週に1回以上アート活動を行うか、少なくとも年に1、2回は文化的な催しに参加する人は、そうでない人よりも生活の満足度が優位に高い
  • ストレスとは気分屋感情ではなく、感情に対する生理的な反応だ。
  • 20分間ほど色をぬるという単純な行動によって不安やストレスが和らぎ、充足感が高まり、気持ちが落ち着く
  • ぬり絵は体系的な作業なので、混沌とした暮らしに秩序をもたらす効果がある。
  • 「小さな創造性」の活動
  • マンダラはひじょうに複雑なため、不安や頭に付きまとう思考から注意を切り替えなければならないほど高い集中力が求められ、それが気持ちを落ち着かせる構造と方向性を与える
  • マインドフルネス・アートセラピー
  • 自然は究極の美的経験
  • ストレス症状を和らげるには、自然の本質的な美に根差した空間を意識的に整えることが効果的
  • 「社会的処方」
  • 社会的処方では、(中略)ニーズに合わせて文化的活動を勧める。
  • こうした(文化的)活動は日常生活に取り入れられることが大切で、時間やコストが多くかかるものである必要はない。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳 より


ここまでで全7章のうちの第2章までです。わたし自身のアンテナがこの1-2章に特に集中したということでもあるのですが、思っていた通り長くなりましたので、続きはまた次にいたしましょう^^

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳

郷育カレッジ開講式2024―今年度も郷育カレッジがスタートしました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

郷育カレッジ開講式2024―今年度も郷育カレッジがスタートしました!

週末土曜日は、令和6年度郷育カレッジの開講式でした。

『郷育カレッジでは、福津の「ひと、もの、こと」を題材に、ふるさと、健康福祉、環境、生きがいなど、さまざまな分野の講座を開催しています。
令和6年度は、7月から令和7年3月までに100講座を開催予定です。
小学生以上で市内に在住、通勤、通学をしている人ならどなたでも入校できます。』

福津市公式サイトより)

今年のオープニングイベントは、神興小学校5年生による「へらそう!食品ロスプロジェクト~活動報告~」の発表と、おなじく神興小学校2年生による合唱でした。例年通り「名誉郷授」と「学位認定者」の表彰に続いて、オープニングイベント、その後第2部の公開講座となりました。

公開講座は今年も放送大学とのコラボレーション。放送大学客員教授・九州大学大学院農学研究員教授の佐藤匡央先生の「“One World, One Health”(一つの世界、一つの健康)における栄養学の役割」のお話がありました。わたしは運営委員として受付担当でしたので、残念ながら講座をお聴きすることが出来なかったのですが、ラッキーなことに、講座が始まる前の待ち時間に先生とおしゃべりできるタイミングがありました。とても視点が面白く、そのうえ今日の講座に合わせてでしょう、福津市とその近隣の市(宗像、古賀)について下調べをしてくださっていたようで、雑談の中でたくさんの示唆をいただくことが出来ました。役得です。

郷育カレッジの開講式は、毎回集客に課題が残ります。今回ももっとたくさんの人に聴いていただきたい内容だったのですが、力及ばずな感じで、先生には申し訳ありませんでした。講座を聴いた皆さんの帰りの様子から、満足度がとても高そうだったのが嬉しかったですが、そうであれば尚のこと、もっとたくさんの人に来ていただくようにしなければなりませんでした。もったいない。参加してくださった市議の方からも、同様のご意見をいただきました。来年に向けての最優先反省事項です。

ともあれ今年も郷育カレッジが無事スタート。これから三月末まで、100講座が皆さまをお待ちいたしております!

郷育カレッジ2024(令和6年度)講座一覧と申込はこちらから
※受講できるのは、福津市内にお住まいの方と福津市内に通勤通学の方のみです。

「わたし(の仕事)は○○です」を、簡潔にわかりやすく伝える方法。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「わたし(の仕事)は○○です」を、簡潔にわかりやすく伝える方法。

上の写真は、ロンドンのシャーロックホームズミュージアムで手に入れた、シャーロック・ホームズの名刺です。肩書の「Consulting Detective」は、DeepL翻訳の直訳によると「探偵」「顧問探偵」というところ。

これまで名刺に載せる「肩書」については、頭をひねらせたことがありましたが、その名刺を手渡しながら、自分が何者なのかをわかりやすく説明する努力をサボっていました。名刺交換を儀礼的な作業に終わらせてしまっていたのです。名刺を作るのにいくら工夫をしても、渡すときに機械的で無機質な挨拶をしていたら、相手の印象に残るはずもなく、せっかくの機会が水の泡です。

尊敬するお友だち「展示会活用アドバイザー」大島節子さんのブログで、今更ながらそのことに気づきました。彼女がブログを書き続ける姿に影響を受けて、わたしはブログを書き続けています。いわば「師」的存在。その彼女のブログの先日のタイトルが、『あなたは「何屋さんですか?」』で、「仕事内容を端的に言語化できていますか?」と問いかけられました。

できていません…!

これは、言語化せねば!と思いました。大島さんに直接たずねてみたところ、時間にして10秒前後・文字数に変換すると50文字程度を目安に考えるといいですよ、とのこと。大島さんが今一番使っておられる挨拶が「展示会活用アドバイザーの大島です。中小企業向け展示会セミナーの講師とコンサルタントをしています。」ということで、字数が句読点含めて48文字、読んでみたら9秒と、その通りでした。

ということで、さっそく考えてみました。


「花祭窯おかみ」の10秒挨拶

  • 花祭窯の藤吉と申します。主人が陶芸作家・彫刻家で、そのマネジメントと、キュレーションをしています。(51字/9秒33)

「花祭窯おかみ」の10秒挨拶 ちょっと長いバーション

  • 花祭窯の藤吉と申します。主人が陶芸作家・彫刻家で、そのマネジメントと、キュレーションを担当しています。国内外のギャラリーでの個展を中心に活動していて、わたしの仕事は、作品制作以外のほぼ全部です。(98字/15秒62)

「アートエデュケーター」の10秒挨拶

  • アートエデュケーターの藤吉と申します。フリーランスの学芸員で、美術を活用した研修や講座の企画・講師をしています。(57字/9秒75)

「アートエデュケーター」の10秒挨拶 ちょっと長いバージョン

  • アートエデュケーターの藤吉と申します。フリーランスの学芸員で、美術・美術館を活用した研修や講座の企画、講師をしています。ビジネスマンや経営者向けに観察力・創造力・表現力を養うプログラムなども行っています。(102字/16秒70)

「わたし(の仕事)は○○です」第一弾は、まずはこんな感じです。実際にしゃべるときは、その都度時間が変わりますし、言い方も変わりますが、このひな形が身に付いたら、とても楽になりそうです。ストップウォッチで測りながら思ったのは、意図的に少しゆっくり話してもいいかな、ということ。話し言葉では、場面や相手に合わせて変わっていくのが当たり前ですので、いろいろな場面で使っていくうちに、もっとスマートな表現や言い方に改良されていくはずです。

英語でアート!マンツーマンレッスン最終回。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

英語でアート!マンツーマンレッスン最終回。

昨年11月からスタートした『英語でアート!』(マール社/佐藤実・宮本由紀共著宮本由紀さんによる期間限定のマンツーマンレッスン。最終回の四回目が終わりました。展覧会の際にギャラリーでクライアントから聞かれやすいことや、アーティストトークなどの機会に寄せられる質問項目などを想定して、それらに対する受け答えをブラッシュアップすることを目的としたレッスンでした。

その最後は、キュレーター、マネージャー、エージェント的な立場にある「わたし」への質問でした。質問項目は、先日ブログでご紹介しておりました。

レッスン前にこれらの質問に対する回答を考えていたのですが、まず自分自身について英語で語ることがほとんどなかったことを、あらためて痛感しました。特に難しかったのは「How has your role evolved over time, and what have you learned from the experience?」に対する答えで、これはまず日本語できちんと文字にしたこともありませんでしたので、そこからのスタートとなりました。わたしにとっては、自分自身を説明する方法を考える、良い機会となりました。

今後は、この4回(4時間)で学んだことを、自分の言葉として落とし込めるように、練習します。すらすらと口から出てくるように、繰り返し声に出していくのが一番ですね。レッスン中のおしゃべりでもアドバイスいただいたのですが、想定される質問に対して、あらかじめ英文章を作って答えを準備しておくことは、とっても良いこと。準備しておくことで、想定外の質問があったときにも、準備していたなかから組み合わせて回答をすることも出来る場合がありそうです。

宮本由紀さんのアート英語講座 アートを通して英語を学ぶ Art Alliance

再々読書『色の秘密』(文春文庫PLUS)野村順一 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

再々読書『色の秘密』(文春文庫PLUS)野村順一 著

文春文庫のサイトに「色彩学のバイブル的著書」と書いてあります。わたしが持っているのは「文春文庫PLUS」ですが、文春文庫PLUSのロングセラーが文春文庫版として再び刊行されていましたので、リンク先は「文春文庫版」となっています。なるほど名著ということですね。

藤吉憲典の創作活動において、書画を含めた壁面作品が増えてきたことに伴い、空間装飾について考えることが多くなってきています。久しぶりに手に取りました。わたしが前回読んだのが2020年のことで、そのときも再読でしたので、一番最初に本書を読んだのはいつだったことやら。単行本は1994年刊行となっていましたので、30年前の本ですが、今読んでもなお学びの大きい本です。

文春文庫版の紹介ページに「現代人への快適色彩生活のすすめ」とあります。わたしが今回本書を開いたのも、まさに「生活空間における色彩」について学び直しをしたかったから。本書をヒントに、色の心身への影響を配慮した室内のカラーコーディネートと、差し色としてのアート作品の組み合わせを考えることが出来ます。

わたしたちはふだんから、色に対して無意識かつ直感的・感覚的に反応しています。もとから好きな色、嫌いな色がある人もいらっしゃると思いますが、多くの場合では、状況や環境によって、心地よく感じたり居心地悪く感じたり。本書はそこに論理的(科学的)な理由付けを与えてくれるものです。

これから生活空間におけるアートの提案をしていく際に、これらの知識的な裏付けがあることで、お客さまの生活空間をより心地よいものにするお手伝いができると思います。これからもことあるごとに読み直す本になりそうです。

『色の秘密』(文春文庫PLUS)野村順一 著 ※文春文庫版のリンクに飛びます。