商業個展の展覧会を作る仕事。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

商業個展の展覧会を作る仕事。

2023年7月19日(水)から開催の博多阪急さんでの藤吉憲典個展に向けて、準備のやりとりがそろそろ賑やかになってきています。

今回の博多阪急さんでの個展は、展示計画をこちらで主導する形になるのが、通常の藤吉憲典の個展と異なります。ふだんは作品を送るだけでギャラリーさんに任せっぱなしの仕事を、博多阪急の担当者さんと、設営業者さんとやりとりをしながら、一緒に進めています。

会場となる博多阪急3階にある「特別室」は、ふだん藤吉が個展でお世話になっているギャラリーさんと比べると広めになります。加えて、入口から本会場へのアプローチとなる通路も展示スペースとして活用できるので、より会場全体を楽しんでいただくために「何をどこにどう展示するか」は、頭のひねりどころです。

展示のためにどのような什器を用いるのか、どのような配置が効果的か、阪急さんでの多種多彩なイベントを手掛けておられる設営業者さんが、これまでの知見からさりげなくアドバイスをくださるので、たいへん助かっています。おかげさまで、選ぶ・決める場面でもほとんど迷うことなく、スムーズに進んでいるのが現在のところ。

今回の個展がふだんのギャラリーでの個展と大きく異なるのは、キャプションボードや動画を活用すること。作家の略歴だけでなく、肥前磁器の歴史年表、工房のある津屋崎と肥前磁器のかかわりなど、作品の背景となる文字情報を展示することで、これまで肥前磁器に馴染みの無かった方々にも、より深く展示作品を楽しんでいただける空間にしたいと思っています。まさに博物館学芸員(キュレーター)の仕事のひとつ「展示活用」。そしてその点は、2021年に福岡アジア美術館で開催した藤吉憲典個展での経験を、そのまま生かすことが出来ています。

そのうえで、商業個展は物販が主目的となるのが、美術館の展覧会とは大きな違いです。観ていただいて、「いいね」と言っていただいても、売上につながらなければ、成功とは言えません。そのシビアさがあるからこそ、たいへんだけれども面白くもあります。

イベント告知から会場設営、そして会期中の対応まで、博多阪急さんでの個展は、いわばチームで進めている感じがあります。わたし的には、これまでにあまりなかったケースなので、とても楽しく学びの多い仕事となっています。

ぜひご来場くださいませ。

藤吉憲典個展 博多阪急

藤吉憲典個展 陶芸彫刻書画

会期:7月19日(水)~7月25日(火)
時間:10時~20時(最終日のみ17時閉場)
場所:博多阪急3F特別室(フロアマップは下記URLでご覧いただくことが出来ます)
https://www.hankyu-dept.co.jp/hakata/floor/3f.html

今年も学芸員研修会が開催されます。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年も学芸員研修会が開催されます。

九州産業大学の緒方泉教授が事務局を務める学芸員研修会が、今年度も開催されるとご連絡いただきました。2013年に博物館学芸員資格課程を修了し、2016年度の研修に初めて参加してから、もう8年目になります。当時(今もですが)どこの美術館・博物館にも所属していない身で、ダメで元々と申し込んだところ、快く受け入れてくださったのが最初のご縁でした。上の写真は、一連の学芸員研修会のなかで、最もインパクトを受けた出会いとなった、日本での美術教育(アートエデュケーション)の第一人者・齋先生の講座での成果物。

コロナ禍下ではオンラインでの「語り場」形式での研修もスタートし、オンラインとオフラインの両方で研修を継続してくださったのは、ほんとうにありがたいことでした。今年も両方での開催です。

  • 博物館を活用した「健康寿命」増進プログラム開発のための学芸員研修会
  • 博物館リンクワーカー人材養成講座 オンライン語り場「地域住民の健康を支える方法を考える」

各研修会の詳細・最新情報は、九州産業大学美術館ホームページの「お知らせ」からご覧いただくことが出来ます。研修会への参加対象は、博物館関係者、医療・福祉従事者、大学教員、学芸員有資格者、博物館学を学ぶ学生等となっています。美術(館)と健康・福祉のかかわりに関心のある方におすすめです。

↓これまでにわたしが参加した研修の様子は、こちらでご覧いただくことが出来ます↓
ふじゆりスタイル 学芸員研修

再読書『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

再読書『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著

再読書。本書に出会ったのは、5月の連休中のことでした。一度目はさらっと通して読みましたが、刺さる部分が多くて、これはあらためて要点箇条書きしておきたい!と思ったのでした。

以下、備忘。


  • 日本の美術教育はこうした実技、つまり「お絵かき教育」に偏重しており、欧米と違って美術鑑賞や美術史を教えることがほとんどない
  • 元来、美術というものは(中略)言語と同じく、ある程度の素養が必要であり(中略)こうした知識は日本の学校教育では得られないが、美術館に足を運び、適切な美術書を読むことによって培うことが出来る。
  • 古今東西を通じて造形文化が存在しない社会や文明は無い。美術は分け隔てなくあらゆる人間に作用するものである。
  • 美術は美術館にあるものばかりではない。かたちあるものすべてが美術になりうる。
  • 個人的な趣味ではなく、ある造形物が社会的・文化的・歴史的な意味や価値を持つとき、それは美術作品となり、そのうちでとくに質が高くて力のあるものが多くの人に見られ、語られることによって、名画や名作になるのである。
  • 美術は文字と同じく知性を動員してみて考えるべきものである。
  • 西洋では古来、美術は文化の中心とみなされてきた。そのため多くの国では、日本とちがって、美術をどう見るかという美術史が義務教育に組み込まれている
  • 小型のものを愛する日本人の美意識
  • 名画は公共のものであり、人類の遺産として本来すべての人に鑑賞されるべきである。しかし、ほんとうに価値の分かる個人に大事に所蔵され、愛される方が名画にとっては幸福ではないのか
  • そこ(博物館や美術館)に行けば、その地の文化や歴史についての概略を手早くつかむことができる
  • ミュージアムの真価は、情報よりも本物のモノに出会わせてくれることにある。
  • 情報を得るにしても、モノと対面することは、書物や映像から得られるのとはちがう臨場感とある種の緊張感を伴うものだ。
  • ミュージアムの文脈とは、その地域の歴史や美術史、民族史や自然観といった、西洋の近代的な価値観に基づいた思想である。
  • ミュージアムを必要としないということは、モノが本来の環境で生きているということ
  • 当初の空間にある方が美術館の明るい空間よりもよく見えるのが当然である。
  • 大事なのは、ミュージアムの文脈だけでモノを見ないで、当初の環境の中でとらえること
  • ロンドンのナショナル・ギャラリー(国立絵画館)は、世界一バランスの良い美術館
  • 感覚を麻痺させる酒は、日常と非日常、人間と神とを媒介する手段であった。
  • 天才が酒によって詩作したということが称えられるのは、きわめて東洋的である。
  • (西洋では)彼らの作品が酒の力によって生まれたと考える者はいないし、それを称賛する言説もないだろう。
  • 日本人の自然観や美意識は、花や紅葉に彩られた恵まれた自然だけでなく、こうした美術の名品の数々によっても培われてきたのである。
  • 彼ら(狩野派)の古典学習は徹底しており、雪舟や南宋水墨画をはじめとする膨大な古画を忠実に写し取っていた。(中略)そして彼らが室町や中国の古典をどん欲に吸収して後世に正確に伝えたことによって、日本の絵画伝統が受け継がれ、その質が長く保たれたのである。
  • 日本的な枯淡の美やわびさびの美意識とは対極にある、見ようによっては悪趣味でキッチュなもの(中略)こうした過剰な美こそが、現代の美意識に合致するようになったのかもしれない。
  • 西洋や中国とちがって、日本の伝統的な山水画の多くは、人間と融和した平和で親密な自然を表現するものであった。
  • 実物と対峙する重要性
  • 通常の展覧会であれば、作品群が撤去された後の展示室は、そこにあった絵画や彫刻の気配や、展示風景の記憶を濃厚に留めている。
  • 作品のある空間に身を置いて作品と対面する体験がどれほど大切か
  • 宗教は美術の母体
  • 広く民衆に働きかけていた壁画芸術や民族芸術の生命力
  • そもそも世界遺産という制度自体が、欧米の価値観に基づく一元的なものにすぎない
  • 美術作品は文脈によって意味が与えられる
  • 芸術も永遠ではない。人類の芸術は三万年ほど前に遡るが、今後また三万年もたてばほとんどの芸術は忘れ去られ、跡形もなく消え去っているにちがいない。優れたものが残るとは限らず、すべて偶然の作用次第である。
  • 出会うべき人間は人生のしかるべきときに会っており、(中略)そして美術館や展覧会で出会う美術作品もそうである。
  • 最後に見たい絵というものがあるとすれば、何がよいだろうか。
  • 美術は宗教と同じく、根本的な救いにはならないものの、ときに絶望にも寄り添うことが出来る存在(中略)ある種の美術にはそんな力があるはずだ。

『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著より


ずいぶん長くなってしまいましたが、わたしにとっては響く示唆の多い一冊でした。上の写真は、本著で「世界一バランスの良い美術館」と評されたロンドンのナショナルギャラリー。

読書『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著

本屋さんぶらぶらでタイトルに惹かれ、パラパラとめくったところ著者がカラヴァッジヨの研究者であるらしいことが判明したので、即買いした一冊です。

サブタイトルに「美術の力II」とついていたので、ということは「I」があるということよね、と思い探しましたが、残念ながら書棚には在庫が無く。ネットで探したところ、同じ光文社新書で『美術の力』を発見、これが「I」のようです。「II」がとても面白かったので、遡って読もうと思います。

さて著者の宮下規久朗氏は、美術史家・カラヴァッジョ研究者として、たくさんの著作があるようです。本書はエッセイ風で読みやすいですが、その中身はとっても充実しています。知識的にも思想的にも、学ぶこと考えさせられることが、たくさんでした。カラーで絵がいくつも載っているのも嬉しいです。

第一章 名画の中の名画、第二章 美術鑑賞と美術館、第三章 描かれたモチーフ、第四章 日本美術の再評価、第五章 信仰と政治、第六章 死と鎮魂

いずれの章も読みごたえがありました。なかでも「第二章 美術鑑賞と美術館」は、自分が今やっていること、やろうとしていることと関連しても、考えさせられること多々でした。また章立てに関わらず随所にカラヴァッジョのエピソードが入ってくるところが、個人的にはツボでした。カラバッジョ好きは執着が強いというイメージを勝手に持っていますが、著者もそうなのかもしれないと思いつつ。

サブタイトルについている「美術の力」という言葉こそ、著者の言いたいことなのだと、しっかりと伝わってきました。

春の福岡は美術展が熱い!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

春の福岡は美術展が熱い!

振り返れば先月は、3つの展覧会に足を運んでいました。アートエデュケーションを仕事にしている者としては、決して多い回数ではありませんが、「ついでに」ではなく、その展覧会を観ることを目的に足を運ぶときは、それなりにエネルギーも必要です。古今東西、作家が自分自身をかけて全力で作った仕事に向き合う、というのは、そういうことだと思います。思いがけずフットワークよく動くことができたので、「わたしもようやくコロナ禍下の行動パターンから意識が抜け出しつつあるのだな」という確認になりました。おかげさまで、良いインプットになりました。

さて新年度。4月スタートの福岡の美術館・博物館での特別展も、熱いです。もちろん個人的な好みはありますが、おそらく大人気だろうな、という展覧会が3つ。ここに記録することで、観に行くぞ!の決意表明です。

古代エジプト美術館展 福岡アジア美術館

年初めに『おとなのOFF 2023年絶対見逃せない美術展』をチェックした際、観に行きたい展覧会ベスト3に入れていたものです。

先ほどあらためて展覧会の特設サイトをチェックしていましたら、展覧会の「学術協力」のところに、近藤二郎氏のお名前発見。この方の著書『古代エジプト解剖図鑑』を図書館で見つけて面白く拝読したのは、ちょうど2年前のことでした。ますます、展覧会への期待が高まります。

ミュシャ展 福岡市美術館 
◆アール・ヌーヴォーのガラス 九州国立博物館

ほぼ同じタイミングで、県内でこの二つの展覧会が開催されることの不思議。どちらも観て「アール・ヌーヴォー」にどっぷりと浸かる、ことを促されていると考えざるを得ません。この時代のデザインに惹かれる日本人は、とても多いですよね。2018年~2019年に開催した福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!」の講座でも、アール・ヌーヴォー、アール・デコの時代は、大人気だったのでした。

展覧会の告知チラシを見ただけでも、ワクワクしてきます。福岡市美術館のミュシャ展も、九州国立博物館のアール・ヌーヴォーのガラス展も、全作品写真撮影OK(ただしフラッシュ撮影、動画撮影は禁止)ということで、昨今の流れではあるものの、嬉しい限りです。

福岡にお住まいの方、福岡方面お越しの方、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか^^

郷育カレッジ “ふくつ散歩” シリーズは、目玉講座。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

郷育カレッジ “ふくつ散歩” シリーズは、目玉講座。

小雨の土曜日、福津市の生涯学習「郷育カレッジ」 “ふくつ散歩”「神郷(じんごう)編」に参加して参りました。

年間100講座近くある講座のなかでも、福津市内の各小学校区それぞれの自治組織「郷(さと)づくり」が案内を担当してくださる「ふくつ散歩」シリーズは、人気講座です。最初はひとつのエリアからスタートしたお散歩講座も、今では8つの郷づくりすべてで講座を開催していただけるようになりました。いずれのエリアでも毎回定員を上回る応募があり、わたしもこの講座に参加(当選)したのは久しぶりでした。

さて当日、まずはこのエリアの特徴を座学で学びます。散歩マップや、カラー写真を盛り込んだ資料を準備してくださっていて、これから廻るコースの見どころを確認。ふくつ散歩シリーズの良いところは、なんといっても地元の方々が自らそのエリアの見どころをガイドしてくださること。シビックプライドが伝わってきます。

小雨降るなかスタート。千鳥伝説の祠、熊野神社、中川松太郎の碑などを途中の目的地とし、参加者の方々とおしゃべりしながら、おおよそ4kmを歩きました。出発は住宅地でしたが、山手の方に歩くとすぐに田園風景が広がり、とても気持ちの良いお散歩コースでした。

熊野神社のあたりは椿がきれいに咲いていました。小雨のなかでしたが光が射しこみ、神々しい雰囲気に。

ふくつ散歩 神興 椿

大漁桜と呼ばれる早咲きの桜並木は、1週間前が満開だったということで、葉桜ではありましたが、なかなか見応えがありました。

ふくつ散歩 神興 葉桜

足元の悪いなかではありましたが、お一人も脱落することなく、無事お散歩終了。

2023年度の郷育カレッジ講座でも、ふくつ散歩シリーズは目玉講座として開催予定です。現在カリキュラム作りも大詰め。福津市民の皆さん、ぜひ楽しみにしてくださいね。

充実の東京出張二日間。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

充実の東京出張二日間。

暖かく晴れた二日間、桜の開花宣言が出た東京でお勉強&お仕事でした。上の写真は、今回の訪問エリアの中間点、東京ミッドタウン内。ここはサントリー美術館のあるフロアですが、静かでゆっくり休憩できる場所が随所にあって、とてもいいですね。隙間時間の仕事もはかどります。

初日は朝から夕方まで、JETRO東京本部にて「中小企業海外ビジネス人材育成塾」のフォローアップ研修。JETRO会場集合組とZoom参加組のハイブリット開催で、半年の研修を締めくくりました。

運営してくださったJETRO職員の皆さん、研修ファシリエーターと講師を務めてくださった外資系コンサル・マーサージャパンの方々と、顔を突き合わせて研修に臨んだのは大きかったです。研修中ずっと、ざっくばらんな会話の応酬で、たくさんの課題やアイデアを検討することが出来ました。皆さん初対面でしたが(画面越しには会っていましたが)遠慮はまったく無く、お互いの事業に対するストレートな問答が楽しく面白くて、ずっと笑っていたように思います。雑談が止まらず、別途「雑談時間」をとってもらうことになるほど。やっぱ「リアル」大事!ですね。この研修ではスタッフ・参加者とも魅力的な皆さんとご一緒でき、ほんとうにラッキーでした。

二日目は、朝一番に美術館。サントリー美術館の木米展を観て参りました。

美術鑑賞で英気を養ったあとは、今年6月に藤吉憲典陶展を予定している、西麻布の桃居さんへ。オーナーの広瀬さんと久しぶりにお会いし、たくさんお話することができました。6月の展示内容について、課題に思っていた点をご相談して、すっきり解消。広瀬さんとお話すると、いつも確信を持てる解を導くことが出来るので、安心します。

続いて、アート作品を取り扱っていただいている、神宮前のインポートインテリア・ドーノさんへ。オーナー桐子さんとは、検討中の新しい取り組みをどのような形で進めるかを、しっかり詰めることが出来ました。少し時間はかかるかもしれませんが、とても楽しみなプロジェクトです。

最後は南青山の百福さんへ。オーナーの田辺さんとは「作家物の器」のこれからについて、根本的な課題を共有することが出来ました。「何をどうする」というところはこれからですが、今後わたしたちが取り組んで行くべき使命が一つ明らかになりました。ひとりで進めるには荷の重いテーマですが、同じ課題を共有できたことで、チームとしてできることがあるという発見に至ったのは、大きな収穫でした。

やっぱり自分の足で動くの大事ですね♪

「没後190年 木米」@サントリー美術館、観て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「没後190年 木米」@サントリー美術館、観て参りました。

上の写真は、「撮影厳禁」の会場内で唯一のフォトスポット。前回サントリー美術館で観たのは「智積院の名宝」でしたが、その時にチラシを発見し、足を運べたら嬉しいなぁと思っていた「木米展」に来ることが出来ました。

江戸の文人・木米。文人とは、中国から伝わった概念であり、中国文人は「詩書画三絶」つまり「詩」と「書」と「画」において優れていることを理想としたとされています。木米に置き換えてみれば、「陶芸」「書」「画」の三絶ということになるのかしらと、木米展の展示キャプションにあった「詩書画三絶」の文字を、検索してみたところ、以下の解説を見つけました。

詩と書と画に優れることを意味する詩書画三絶は中国文人の理想であった。書画と併称されるように絵画は書と密接な関係があり、書と画は根本的に一致すると考えられてきた。詩文は直接的に画題を絵画に提供する場合もあるが、両者は情景描写という点で共通することから、画を「無声詩」、詩を「有声画」と呼んできた。

(人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要より 藤田 伸也氏「南宋画院の詩書画 : 三絶の視点から」の一部を引用)

    この通りに理解すれば、画を嗜むことはすなわち詩を嗜むことと同意ともいえそうです。

    ともあれ「陶工であり画家」という木米の生きた道は、今まさに磁器作家・藤吉憲典が突き進もうとしているところであり、たいへん興味深い展覧会でした。木米が書画を本格的に発表し始めたのは50代後半ということで、この辺りの共通点も面白く。

    展覧会の感想としては、陶芸にしても書画にしても、木米の作品から伝わってきたのが、生真面目さと努力の跡であったということです。きっちり一生懸命にやってきたことが伝わってくる作品群をみれば、木米は天才とはとても言えないと思いました。展示作品を見る限り、文人のイメージに漂う浮世離れした感じはまったくなく、書画の線の細さと余白の無さは、生真面目な性格を思わせました。

    会期は残すところあと10日ほど、3月26日(日)まで。ちょうど東京出張に合わせて足を運ぶことが出来、ラッキーでした。

    「没後190年 木米」サントリー美術館

    熊本市現代美術館で「博物館浴」 実証実験のお知らせ。

    こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

    熊本市現代美術館で「博物館浴」 実証実験のお知らせ。

    ここ数年、学芸員としての研修のなかで、美術・美術館が心身の健康に寄与できること、医療や福祉との連携について学んでいます。


    その学びの師で、「森林浴」ならぬ「博物館浴」を提唱する九州産業大学の緒方先生が、熊本市現代美術館で実証実験を行います。一般の方が参加できる貴重な機会です。このテーマに関心があり時間が取れる方は、参加をご検討してみてはいかがでしょうか。下記の熊本市現代美術館のサイトから、直接申し込みが出来ます。(※先着順だそうですので、すでに定員締切となっていたらごめんなさい!)かく言うわたしは、参加できるか否か、現在スケジュール調整中です。


    3月29日(水)熊本市現代美術館で開催中の展覧会に合わせ、「博物館浴」 実証実験開催。
    https://www.camk.jp/exhibition-event/9520/

    美術鑑賞が心身に良い影響を与えるということは、感覚的には頷けても、やはり社会に広く受け入れてもらうには「エビデンス」なるものが必要。その実証実験を、国内各地の館のご協力を仰いで、地道に積み重ねておられます。

    カナダをはじめ、先進的なエリアでは既に始まっていますが、日本でも処方箋に「美術鑑賞」と書かれる社会がすぐ目の前に迫っているような気がします。

    「アーティスト&アート関係者のための英文メール講座」でお勉強♪

    こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

    「アーティスト&アート関係者のための英文メール講座」でお勉強♪

    書籍『英語でアート』(マール社)の一読者としてスタートした、株式会社アート・アライアンス 宮本由紀先生とのご縁。「これぞ、今のわたしに必要な本!」に出会ったのは、2018年2月のことでした。

    福岡で開催された出版記念講座に参加したのが、同年4月。ここでお会いして直接お話を伺い、ますますファンになったのでした。

    その後、対面・オンラインでの美術英語関連講座やアートエデュケーションの講座に参加したり、コロナ禍前には藤吉憲典のメディエーターをご相談したりと、たいへんお世話になっています。「著者と一読者」としてスタートしたご縁ですが、由紀先生のお人柄で、このようにお付き合いが続いていることを、ほんとうにありがたく思います。

    さて、由紀先生の講座に参加するのは久しぶりでした。「アーティスト&アート関係者のための英文メール」と、ピンポイントです。このように目的を絞った英語学習機会を得ることは、日々のビジネス英語をどうにかこうにか遣り繰りしているわたしにとって、実務的に大きな助けとなります。書籍『英語でアート』でもその内容は充実しているので、わたしはデスク上に常備して、いつでもすぐに手に取れるようにしています。今回の講座ではさらにパワーアップするということで、期待満々で参加いたしました。

    まずは講座前日に送られてきたレジュメにびっくり。60枚以上に及ぶボリュームで、内容もぎっしり詰まっていました。この資料だけでも、受講料をはるかに上回る価値があります。由紀先生の講座は毎回中身がぎっしりで、いつも「今お話しできることを全てお伝えします」というスタンスなのです。

    以下、備忘。


    • SNSチャットではなくメール。保存性、検索性。
    • 美術館スタッフ≠ギャラリースタッフ。メールの書き方も変わる。
    • 相手が答えやすい、答えたくなるメールとは?
    • 話し出す前に、書き出す前に、まずは「英語マインド」への切り替え。
    • 結論ファースト。
    • どこ(国・地域)宛か?→災害等の有無確認→前置きでお見舞い。
    • 「1 mail, 1 question」「1 mail, 1 subject」。
    • yes or noで答えられるようにする=具体的な提案で文章を作る。
    • 添付ファイル×、画像埋め込み◎。
    • レジュメ、ポートフォリオのテキスト部分はメール本文に載せてしまう。
    • 印刷物◎、CD・DVD・USB等×。
    • 催促メールは出して良い。
    • could would may = polite English
    • 「件名」でできる限り要件を伝える。
    • 実際に会う=信頼関係。
    • 写真を添えたメールで近況報告、掲載誌の郵送、クリスマスカード等グリーティングカードの送付。
    • サイズ表記:cm (mm)とin 併記。
    • パブリックドメインに入っている画像は気にせず使える。
    • 美術館のダウンロードフリー画像を使う。
    • 最近の傾向としてメール末尾に「Pronouns」記載。例)Pronouns : she/her/hers

    アート・アライアンス 宮本由紀先生「アーティスト&アート関係者のための英文メール講座」より


    とまあ、備忘的にまとめるとこのようになりましたが、なにしろ60ページ分/約2時間半の講座でしたので、ここに書ききれないのがほとんどです。今回も即日役立つ内容てんこ盛りで、大満足でした。ありがとうございました!

    アート・アライアンス 宮本由紀先生の講座情報は、フェイスブックページから最新情報をご覧いただくことが出来ます。

    https://www.facebook.com/artalliance.tokyo