本をきっかけに。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

本をきっかけに。

好きになること・もの、ありませんか?

美術鑑賞の座学講座をするにあたって、最近わたしがよく使うのは、アンリ・ルソーの絵画なのですが、ルソーの絵に興味を持ったのは、実は小説がきっかけだったと、講座の準備をしながら思い出しました。

原田マハさんの『楽園のカンヴァス』です。この本を読んで、まず家にある画集からルソーを引っ張り出してひきこまれ、ロンドンではナショナルギャラリーで虎の絵(タイトル「Surprised!」)に釘付けになり、ルソーの「夢」を見るためだけにでもニューヨーク近代美術館MoMAに行かねば!と思っています。

小説に登場する絵や音楽は、しばしばそのストーリーとの相乗効果で強く心に響いてくると感じます。もちろん大前提として、そのもの(絵や音楽)自身の力があるからこそ、の響きなのですが。

わたしの場合、小説のおかげでルソーの絵に関心が向きました。もちろん同じ画家が描いたものでも、響くもの響かないものあります。ルソーの絵も例外ではないのですが、惹かれるものが多いと感じています。

わたしは絵を見る時に、極力文字情報を排除するのですが、文字情報のかたまりである小説から影響を受けて、好きな絵に出会うこともある。なんだか面白いなぁと思います。

西洋名画コレクション展@みぞえ画廊

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/アートエデュケーターふじゆりです。

西洋名画コレクション展@みぞえ画廊

みぞえ画廊さん、現在本社は東京にある田園調布ギャラリーになっていますが、もともとは福岡でスタートなさっているアートギャラリーさんです。

物故巨匠から現代の作家まで扱っておられます。福岡市内にもアートギャラリーはいくつもありますが、なかでもみぞえさんは「美しいもの」を大切に扱おうという意思が強いギャラリーさんだと、勝手にわたしは感じています。延長された会期終了間際に伺うことができてラッキーでした。

よかったです!

ギャラリー空間で絵画を拝見する嬉しさは、なんといっても作品との距離の近さ。離れて見たり、最接近して見たり、角度を変えて見たり。特に気に入った絵の前で、時間の許す限りじっくり見てまいりました。

出品作家名には、ピカソ、アンリ・マティス、ジャコメッティ、シャガール、モネ、ユトリロ、カンディンスキーとそうそうたる名が並んでいましたが、個人的には、シャガールの作品四つが特に良かったです。

美術館の展覧会では無い空間で良い絵画に向き合う機会を、ここ福岡ではなかなか見つけられずにいたので、とてもありがたい時間でした。

【告知】アート×ビジネス@博多阪急

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/アートエデュケーターふじゆりです。

【告知】アート×ビジネス@博多阪急

先日対話型鑑賞講座」を開催した朝日カルチャーセンター福岡さんからのご縁で、博多阪急さんのイベントでお話をする機会をいただきました。メンズ売り場の催事でのイベント。これからのビジネスパーソンにもアートの感性が必要だよね、ということで。

これからのビジネスパーソンに必須の教養、
その第一歩を美術鑑賞で!

時間が45分と短めなので、まずは「なぜ今アートなのか」という諸説の紹介と、諸説への理解を深めるための方法(本や講座など)の紹介、すぐにスタートできるアートとの関わり方など「概論」を中心にお話する予定です。時間に余裕がありそうだったら、ビジュアルシンキングのワークもとり入れたいところですが、さて。

博多阪急の担当者さんと「これからは絶対に必要ですよね!」と盛り上がっているこの企画。時間帯が平日昼間ではありますが、参加費無料でお得です。ぜひお気軽にお申込み下さい。

これからのビジネスパーソンに必須の教養、
その第一歩を美術鑑賞で!

「自分のこと」としてアートを考える人が一人でも増えると嬉しいな、と思いつつ。

【開催報告】福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!第6回アールヌーボー」

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/Meet Me at Artふじゆりです。

【開催報告】福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!第6回アールヌーボー」

株式会社藤井設計室藤井昌宏氏を講師に迎えての「世界史を建築家の視点で学ぶ!」シリーズ第6回目は「アールヌーボー」テーマでした。前回に引き続き、講師出題による「意見交換テーマ」に沿っての講座の振り返りを採り入れ、今回も白熱した楽しい時間となりました。

個人的には、つい先日見てきた「ラファエル前派展」からつながる時代であり、絵画や家具壁紙などのデザイン製品をはじめとした展示イメージが鮮明に残っていたところでもあり、非常にタイムリーでした。

以下、キーワード備忘。


  • アール・ヌーボー=フランス語で Art nouveau=新しい芸術
  • イギリス産業革命→都市化→近代のはじまり
  • ごついもの固いものから洗練されたものへ
  • 「デザインやってますよ」の意図的アピール
  • 辰野金吾がイギリスに留学した時代
  • 植物的・生物的装飾
  • 工業化・工場主・成金
  • 個人的な感情を表現してよい時代
  • 大量生産=代替可能
  • 鉄筋、コンクリート
  • アーツアンドクラフツ運動・モリス商会・デステイル運動・バウハウス・セセッション

今回の「意見交換テーマ」は「アールヌーボーの時代を経て、20世紀のこの社会になって、わたしたちの暮らしは変わりましたか?何が変わったのでしょうか?何によって変わったのでしょうか?」というものでした。このテーマによって、これまで見てきた歴史が自分事に置き換わりました。

次回は「歴史シリーズ」の最後、「モダンスタイル」です。現代の直前ですね。これまたとっても楽しみです。

あらためて、読書『美 「見えないものをみる」ということ』(PHP新書)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

あらためて、読書『美 「見えないものをみる」ということ』(PHP新書)

先日銀座の資生堂ギャラリーで「福原信三の美意識」を意味する言葉・表現にたくさん出会いました。福原信三氏は、資生堂創業者の三男で資生堂の初代社長。資生堂文化の礎を築いたといわれる方です。わたしがその美意識に触れ影響を受けたのは、現資生堂名誉会長福原義春氏のこの著書からでしたので、あらためて本書を読み直してみました。

以下、備忘。


  • 今の世の中では、(中略)本当に美しいものが、美しいというふうに評価されているだろうか。
  • 自由に使える一日。好きな本を読む時間。美しいものに触れるひと時。
  • 文明は文化を駆逐する
  • 自然への畏敬の念
  • 文化の本質の要素には、もともと「ムダ」や「遊び」がある
  • いまの作品は、百年後、二百年後に生き残れるか
  • 寒さを寒さとして引き受けるような感性
  • 本歌取りと模倣の違い
  • 「人の型を踏むな」「芸術は無窮を追え」という(岡倉)天心の言葉
  • 五感のすべてで対象を感じる
  • 自然を魂に入れて生きる。
  • 「原典を尋ねる」
  • 複線人生
  • 自然に触れること、美に触れること、そして本物に触れること
  • 作品を買うことで、自分と作家との関係性が変わってくる
  • 自分の趣味に合うものを、その時々に使えるお金の範囲で手に入れる
  • 過去の知的資産に触れることの目的は、(中略)何よりも、未来を考えるためだ。
  • 「ものごとの真贋を見分ける目」「美しいものを美しいと感じ取る感性」を復活させる
  • 実際に見なければわからないこと
  • 芸術とは、時代ごとの文化を背景にした成果物のこと。
  • 知識イコール教養ではない
  • 一〇〇メートルをいかに速く走るかよりも、いかに美しく走るか

『美 「見えないものをみる」ということ』(PHP新書)より


このところ「アート×ビジネス」関連の書籍がたくさん出ていますが、そのいちばん最初に読んで欲しい本です。わたしにとっては、何度読んでも勇気づけられる本です。

読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)その2

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 著 その2

以下、備忘。書き留めておきたい内容のボリュームがあったので、その1(はじめに・1章~3章)と、その2(4章~)に分けてレポート。 その後半分。


  • 「一瞬でも本物の経験をするとそれまで学んだ知識が全部つながって大きく飛躍する」
  • 「対話による意味生成的な美術鑑賞」(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 美術はそういう「かけがえのない自分」が成立する時間
  • 美術作品は「私」を映す鏡
  • そのとき、豊かな鑑賞経験があると、ただそこにきれいな絵がかかっているだけでは終わらない。 (帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 「新しい私」が生まれるためには、鑑賞の方法を知ることも必要 (帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 絵の中に入って、五感で鑑賞する(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 風景を選び取る力、技術や物を組み合わせる力、計画する力などが統合されて一つの絵になっていく。(中略)名品はそれが高度なレベルで統合されている上に、文脈みたいなものまで背負っている
  • 「来館者を来館したときと同じ状態で帰しては意味が無い」(テート美術館の学芸員)
  • 美術館に行って、「私」の見方や考え方、「私」を取り巻く世界への理解、さらには「私」自身の在り方などに何らかの変化を及ぼすとしたら、美術鑑賞は今以上にぜいたくな時間になる
  • 美術館の最終目的は教育
  • 見る人が意味や価値をつくりだす
  • ものを思索的に見るということが大事で、それを美術鑑賞で育むことができる(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 思索的にものを見るということは、思索的に世界を見ること(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • そんな風に美術鑑賞をすることで、厚みのある多様な考え方や見方が身に付けられる。しっかりと思索して自分で考えられる有能な自分になれる。
  • 美術は文化として生み出された数多い社会的な実践の一つ

『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 より


読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)その1

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 著 その1

銀座に行くと、時間をみつけてはGINZA SIX内にある銀座蔦屋書店に足を運んでいます。このところ出版が増えているアート×ビジネス系の書籍をチェックするのに最適な場所です。関連書籍が増えると嬉しい一方で、自分の方向性と異なるものが増えてくるのも世の常。中身をちゃんと確認して、本書をゲットできました。

以下、備忘。書き留めておきたい内容のボリュームがあったので、その1(はじめに・1章~3章)と、その2(4章~)に分けてレポート。


  • まなざし:単にありのままを「見る」のではなく、何らかの予見や考え方などを含んで見る姿勢
  • 「問題を発見し、それを解決する力を身に付けるためには芸術は欠かせません。(後略)」(日立製作所フェロー小泉英明博士の話より)
  • 見えるというより、脳が受け取った情報から神経活動が始まるということです。(臨床心理学者 前田基成氏)
  • 美術というのは、大切なものは何かとかを見つける視点を持たせてくれるのではないでしょうか。 (臨床心理学者 前田基成氏)
  • 人間って、そもそも論理では解決できない能力を持っていて、それを直感や感性、創造性というんでしょうけど。実はそこをうまく鍛えられると現状打破する力が発現する。
  • 直観は論理
  • 生き残る可能性を高めるために創造性が必要
  • 大人も子供も、鑑賞は視覚だけの作業ではなく、全身の感覚を働かせる運動なのです。
  • 自分の経験から見る―鑑賞は経験の再構築
  • 美術鑑賞では目の前の作品に間違った要素はありません。
  • そのすべて正しい条件の中から自分の根拠になる条件を選び取り、それらを論理的に組み立てます。
  • 美術鑑賞では一人ひとりの「私の解」が求められます。

『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 より



アート・エデュケーターのお勉強@銀座。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

アート・エデュケーターのお勉強@銀座。

大型連休のど真ん中、東京出張に行って参りました。資生堂ギャラリーに行ったり、三菱一号館美術館に行ったり、黒田陶苑さんにご挨拶に寄ったりしていましたが、今出張のメインイベントは、こちらでした。

アート・アライアンスの宮本由紀さんが主催するアートのオシゴト座談会】アート・エデュケーター編 。学芸員資格を取得して以来、あちらこちらで学芸員技術研修を受けてきたなかで、今わたしが「最も深めていきたい」分野です。

宮本由紀さんの著書『英語でアート』をきっかけに、機会を見つけてはご指導を仰いでいます。今回3回目だったというアートのオシゴト座談会は、食事をしながら楽しく学べる場で、テーマが「アート・エデュケーター」とあって、これは行かねばと申し込んだのでした。

エデュケーターとは、日本の美術館等では「教育普及担当学芸員」といったところになります。アート・エデュケーターが活躍する最先進地域のひとつである北米で実際に仕事をしてこられた宮本由紀さんのお話は、ひとつひとつが腑に落ちるものであり、講座中ずっとうなずいておりました。

エデュケーターとして大切にすべきこと・存在理由を考えるところから、実際にエデュケーションの場面で活用できる具体的な方法論、今後エデュケーターとしてさらにスキルアップするために有用な情報源まで、包括的に学ぶことができました。

わたしは福岡からでしたが、関西方面・中部地方からも参加者があり、皆さんの意欲の高さが心地よい時間でした。質疑応答なども含めて、当初2時間の予定が、気がつけば3時間半。あっという間でした。

お会いするたびに、ご自身の持っているものを惜しげなく伝授してくださる宮本由紀さん。心から感謝申し上げます。ありがとうございました!

物書きの仕事。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

物書きの仕事。

花祭窯を創業して以来「つくる以外の仕事ぜんぶ」の担当をしてきた、わたくし。一番時間を割いてきたのが文章を書くこと、すなわち「物書きの仕事」ではなかったかと、最近振り返って思いました。

事業計画を立てるにしても数字と同様に文章が重要。ホームページ制作においても、コンテンツの要は写真だけでなく文章も。創業以来「メールマガジン」も大切なツールでした。媒体がブログやSNSへと進化してきても、やはり写真だけでなく文章に頼るところも多く。

紙媒体においてもしかり、事業案内や作品パンフレット等の印刷物に載せる文章があります。お客さまとのコミュニケーションにおいては「手紙」「メール」も重要な文章です。

ともあれ上手下手は別として、もともと文章を書くのは嫌いではありません。「写真を撮る」と「文章を書く」のどちらを選ぶかと問われたら、迷わず「文章を書く」を選びます。

おかげでなんとかこのブログも「ほぼ毎日」を目指して更新を続けています。そんななか、これまでにも単発で「物書き」の仕事を頼まれることはときどきあったのですが、このたび連載での物書きを初めてお受けすることになりました。嬉しいです♪

このブログは自分自身のための記録の側面が強いので、初めて読んだ人は「何が言いたいのかわからない」と思うかもしれないと自覚しています。でも、そんなブログの記事を読んで「この人に文章をお願いしてみよう」と思ってくださったことが、とってもありがたく。

今回文章を寄稿する媒体は「会報」的なものなので、どなたでもご覧いただけるものではありませんが、読者の方からどんなご感想が寄せられるか、楽しみです。

物書き仕事、テーマにより引き受けております。ご相談ください(^^)

あなたなら何を作りますか?

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

あなたなら何を作りますか?

先日開催した、福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!ルネサンス・バロック」講座で、スライドショーの解説を一通り学んだ後の意見交換テーマは、次のようなものでした。

「あなたが現在または近い将来に国家の有力者になったとして、政治的・経済的な面を考慮して何かの施設を作るとしたらそれは何でしょうか。これからの時代に向けて何をつくったらよいのでしょうか。」というものでした。

それぞれに思いついたことを好き勝手に話しながらも、「都市の分散」や「一定範囲内で生活・文化が充足する小さなコミュニティ」への期待は参加者に共通したところであることもわかり、とても興味深い時間となりました。

と思っていたら、先日手元に届いた『ナショナルジオグラフィック日本版』の特集は「世界の都市 輝く未来のためのアイデア」。写真にあるように、世界的な建築設計事務所に対して「どんな未来の都市を設計しますか?」という質問が投げかけられていました。

ナショナルジオグラフィック日本版2019年4月号より
ナショナルジオグラフィック日本版2019年4月号より

図らずもナショナルジオグラフィックと同じテーマを扱っていたのでした。福岡ACAD.の勉強会シリーズ、目の付け所の先見性も自慢です(^^)