読書『土偶を読む図鑑』(小学館)竹倉史人著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『土偶を読む図鑑』(小学館)竹倉史人著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から借りてきたのは『世界の土偶を読む』(晶文社)でした。借りてきて読んで、気に入って、これは買わねば!というパターンで手に入れました。昨日ブログにアップした『せかいのカワセミ』と同じ流れ(笑)。ちょっと違うのは、実際に買ってきた本は、同著者による同じ説を説いたものではあるものの、まったく同じ本ではなかったところ。というのも、博多の丸善さんで『世界の土偶を読む』を探したところ、その前に出版されていた『土偶を読む』(竹倉史人著・晶文社)と本書『土偶を読む図鑑』の三冊が揃い踏み。最初の一冊としてどれを手に入れるべきかと迷い、カラー写真満載の「図鑑」にしたのでした。

これまでの土偶解釈を、まったく新しい視点で展開した「土偶の解読方法」は、『世界の土偶を読む』の最初の数ページを読んだだけで「おお~!」となりました。本書は、いまや「竹倉新説」と呼ばれているらしいその解読方法を、図説で学ぶことができる本です。それにしても、考えてもみなかった解釈。研究者の方々にとっても、これまでの諸説をあらためて検討し直す大きな機会になったのではないかしらと思いました。「はじめに」には「縄文人を神秘化して、土偶に勝手な幻想を投影するのはもうやめよう。土偶は縄文人の生業と結びついた、生活の道具である」とあります。土偶好きの方、縄文好きの方は、すでに読んでいらっしゃることだと思いますが、『土偶を読む』シリーズ、おススメです^^

『土偶を読む図鑑』(小学館)竹倉史人著

読書『せかいのカワセミ』(KANZEN)小宮輝之監・ポンプラボ編

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読書『せかいのカワセミ』(KANZEN)小宮輝之監・ポンプラボ編

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で発見。あまりにも美しい表紙に手が伸びました。ちょうどAnimal Boxesシリーズの制作をしているダンナの資料としても最適♪ということで借りて帰ってページをめくり、これは保存版!ということで即購入した1冊です。「図書館で借りる→気に入る→購入する」は、よくあるパターンで、いつも素晴らしい新刊書を紹介してくださる図書館スタッフの皆さんに感謝です^^

花祭窯の創業地である佐賀県・花祭に住んでいたときは、愛犬の散歩コースにある溜池で、よくカワセミを見かけていました。色が美しくて、パっと目につきます。が、すぐに飛び立ってしまって近くに寄ることが難しく、ふつうのデジカメではぜんぜん撮れなかったのを思い出します。本書では、さすがプロですね。素晴らしく美しい写真が、これでもかというほどにてんこ盛りです。

それにしても「カワセミ」の種類が、世界中にこんなにもたくさんいるということに驚きました。そしてそれぞれに美しいこと。英語名は「Kingfisher」で、藤吉憲典のカワセミ陶箱も「Kingfisher」のタイトルで出しているのですが、それが「魚捕りの名手」であることを語源としたものだとは、本書の公式サイトでの解説で知りました。そんな名手の「捕食の瞬間」をとらえた写真もたくさんです。良い資料を手に入れることができました^^

『せかいのカワセミ』(KANZEN)小宮輝之監・ポンプラボ編

インプットツアー in 小倉-リバーウォーク北九州が素晴らしい―その1。

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インプットツアー in 小倉-リバーウォーク北九州が素晴らしい―その1。

1月の九響ニューイヤーコンサート、2月の日本フィル、5月の九響定期演奏会「オペラトスカ」のあと、しばらく間が空きましたが、九響の北九州定期演奏会に足を運んでまいりました。今回の会場は、北九州市小倉にあるJ:COM北九州芸術劇場大ホール。商業施設「リバーウォーク北九州」の中にあります。そういえば2月に日本フィルを聴いた北九州ソレイユホールはここから歩いて15分ほどのところ。北九州市内には、オーケストラの演奏会ができるホールがいくつもあって、市民の文化芸術活動への関心の高さ・培ってきた歴史を感じます。

今年3月までN響のコンサートマスターをお勤めだったという「まろ」こと篠崎史紀氏の指揮とヴァイオリンを初鑑賞できるとあって、ドキドキしながら出かけました。九響のミュージック・アドバイザーも務めておられる篠崎氏、そういえば氏が登場するのは、北九州での定演が多いなぁ、と思っていたら、北九州市のご出身なのですね。クラシック素人のわたし、ほんとうに知らないことばかりです(汗)いわばお膝元である会場は、ほぼ満席でした。驚いたのは、マイクを握った「まろ」氏の気さくさと、サービス精神の旺盛さ。大御所感を全身から放ちながら、ファンサービスをさらっとこなす大人の余裕。すごい人はやっぱりすごい!ですね。

北九州芸術劇場には初めて足を運んだのですが、3階の一番上の席を押さえたところ、これが大当たりでした。というのも、ソリストとしてピアノの谷昴登さんが登場したのですが、高い位置の席から、グランドピアノの蓋を開けた中がとても美しく見えたのです。そして、ピアノを弾く鍵盤の上の手の動きがまたよく見えました。高い位置の席=舞台から一番遠いので、もちろん細かいところは見えませんが、全体をすっぽりと俯瞰で拝見することができて、耳と目とで満喫する、至福の時間となりました。

ピアニスト・谷昴登氏の演奏をお聞きしたのも、初めてでした。ピアノを弾く姿と音の、優雅でありながら入り込んでいる様子に、力を感じました。その谷昴登氏も、北九州市のご出身だということです。北九州のポテンシャル、すごいですね。演奏に感動し、谷さんが出演なさる公演のチラシが目についたのをいいことに、帰りに劇場内のチケット販売窓口に寄ってさっそくゲット。次もまたわたしにとっては「初めまして」のホールになりますが、北九州市内での演奏会になります。今回の成功体験に味を占めて、一番高い位置にある席を取りました♪

これまで何回も足を運んだことのあるリバーウォークでしたが、そのほとんどは夕方から夜にかけてのビジネス系勉強会でしたので、文化施設としてのリバーウォークを楽しむ初体験となりました。「その2」に続きます^^

読書『島原リバティ』(文芸社)タケチオサム著

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読書『島原リバティ』(文芸社)タケチオサム著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。両親が長崎出身で、わたし自身も中学高校と諫早市で過ごしたので、「島原の乱」や「天草四郎」は、子どもの頃から聞き覚えのあるものです。そういえば高校の体育祭での仮装行列で「天草四郎役」だった!と、思い出しました。

1637年に島原(長崎県)と天草(熊本県)で起こった「島原・天草一揆」を描いた力作。史実に忠実に出来事をちりばめ、フィクションとしてストーリーを紡いでいます。巻末の参考資料やフィールドワークの跡を拝見すれば、かなりの時間をかけて本作に取り組まれたことがわかります。おかげで、なんとなくわかったようでいた島原の乱や天草四郎が、実際どのようなものであったのか、立体的に見えてきました。百姓一揆とキリシタン弾圧への反発が結びついたこの事件は、著者があとがきに書いていたように、一揆が全国各地で頻発していた時代にあっても、地理的・歴史的に特殊な事情が重なった結果だったのだと思います。最終的に九州全域から藩主が鎮圧に参加しているのですから、すごいことです。

作中には雲仙を中心にした島原半島の地図が載っていて、長崎と熊本の間にあるその場所の様子がわかりました。もしかしたら、わたしはもともとその地理を知っているので、すんなり理解できただけかもしれませんが。上の写真は、日の出のときの写真なので暗くてわかりにくいですが、長崎本線から有明海をながめたところ。有明海沿いにもう少し西に進むと、海の向こうに雲仙普賢岳が見えてきます。海の向こうの半島をぐるりとその裏側まで回ったところに、本書の舞台である原城跡があるはずです。

出版社の文芸社さんは自費出版の会社として有名ですね。なので、もしかしたら本書も自費出版なのかな、と思いつつ読みました。著者のタケチオサムさんは、本書が最初の書籍だそうです。どのような出版形態だったのかはわかりませんが、ぜひ文庫化して生き残って欲しい本だと思いました。

『島原リバティ』(文芸社)タケチオサム著

読書『世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー』(パイ・インターナショナル)海野弘解説・監修

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読書『世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー』(パイ・インターナショナル)海野弘解説・監修

久留米市美術館での「ビアズリー展」に行ってきました!のブログを書いたのは昨日のこと。そのミュージアムショップで入手したお宝資料です。ダンナがさっさと展覧会図録を購入していたので、図録が一冊あればよいかなとも思ったのですが、図録サイズで並んでいた魅力的な表紙に思わず手が伸びました。上の写真がその表紙。帯に「待望の作品集!」とあり、今回の展示には含まれていない資料も載っているのに加え、ビアズリーの生涯と作品、取り巻く人々との関係性など、読み物としても興味深そうでしたので、手元資料としてこちらもゲット。

解説・監修を手掛ける海野弘氏は、評論家・作家とありました。平凡社で『太陽』の編集長を経て独立なさったと読み、なるほど納得です。わたしがこの分野で仕事をすることになってから、『別冊 太陽』にどれだけお世話になったことか。そして出版元の「パイ・インターナショナル」の名前も存じ上げなかったのですが、その刊行一覧を拝見していると、デザイン・アート・文化のジャンルに力が入っていることがわかります。さらっと見ただけでも「これ欲しい」な本がいくつも。注目していきたい出版社さんです。

さて『世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー』。図版も文章も、ボリュームたっぷりです。ビアズリーの活動期間であった19世紀最後の10年間。短くも濃厚な10年間に生まれた作品の数々と、その背景にあるものの解説は、読むのにエネルギーが必要でした。もちろん本書のメインは作品のビジュアルですので、文章の占める割合は多くはありませんが、それでも重厚。読みながら、展覧会を見てきたあとにちょうど良いと思う気持ちと、お腹いっぱいになってしまうという気持ちとが交錯しました。

ともあれ、本棚に久々に超お宝本が追加されました。ビアズリーの絵は好き嫌いもあると思います。ビアズリーの絵が好きだという方、ビクトリア朝の時代に興味があるという方にはおすすめの一冊です。

『世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー』(パイ・インターナショナル)海野弘 解説・監修

インプットツアー in 久留米-鳥類センターと久留米市美術館で大満足♪

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インプットツアー in 久留米-鳥類センターと久留米市美術館で大満足♪

5月下旬から久留米市美術館中の「ビアズリー展」。これは絶対に観に行くぞ!と思いながら気が付いたら8月31日の会期末まで残り僅か…ということで、久留米ツアーを敢行しました。といっても、花祭窯から車で高速道路を使って約1時間ですので、さほど遠くはありません。上の写真は、久留米市美術館の公式サイトからお借りした、美術館正面入り口のビジュアル。

久留米市美術館のある石橋文化センターと、道路を挟んだ位置にある、久留米市鳥類センターを含む久留米市都市公園管理センターは、いわば久留米の文教エリア。市街地にかなりの面積を使ってこのような場所が維持されているのは、すごいことだなぁと思います。

まずは朝9時オープンの鳥類センターへ。藤吉憲典のアート作品の中でも「鳥」を主題にしたものは人気が高いです。野鳥もたくさんモデルになっていますが、なかなかじっとしてくれないのが難点です。12月のクリスマス・ショウに向けて新作を制作中の今日この頃、動物園に行こうと話していたところ、久留米に鳥類センターがあるじゃん!ということで。昔からあるのは知っていたのですが、実は今回が初訪問でした。

向かう道中、まぁまぁ激しいにわか雨に振られましたが、鳥類センターに到着したとたんにピタッと止み、程好く暑すぎない中で回ることができました。まずはキジの種類の多さにびっくり。ツルを間近で観ることができたのにもびっくり。そしてフラミンゴが隣に並んでも逃げて行かないのにびっくり。おかげさまで、じっくり観察&写真に撮ることができました。

園内をぐるっと回って、ちょうど1時間。10時オープンの久留米市美術館へと向かいます。石橋文化センター内にある久留米市美術館までのアプローチとなる庭園には、サルビアの花とバラの花がたくさん。暑さにも関わらず、色とりどりに、そしてほのかに甘い香りを漂わせて、出迎えてくれました。念願の「異端の鬼才 ビアズリー展」は、平日朝一番にもかかわらず、まぁまぁの人出。わたしたち同様、駆け込み観覧というところでしょう。

展示内容、素晴らしかったです。その多くは、英国のヴィクトリア&アルバート博物館の収蔵品でした。ロンドンに行ったときには、必ず足を運ぶ場所のひとつです。よくぞ福岡・久留米にこれだけの資料を借りてきてくださったと、学芸員さんの熱意と力量に感謝しつつ、2周かけてじっくり鑑賞。鑑賞後はミュージアムショップへ。ビアズリーの作品集をゲットしました。

眼福で胸がいっぱいになったところで、ちょうどお昼時。久留米といえば「肉の中津留」ということで、ランチメニューをいただき、お腹もいっぱいになって帰途につきました。鳥類センターも、ビアズリー展も、素晴らしかったです。大満足の久留米ツアーとなりました^^

読書『受難』(KADOKAWA)帚木蓬生著

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読書『受難』(KADOKAWA)帚木蓬生著

帚木蓬生さんの追っかけ継続中。いつものカメリアステージより借りて参りました。1冊1冊のボリュームが、質・量ともにあるので、ついつい手が伸びそうになるところを我慢して1冊づつ借りています。2週間の貸出期間のうちに読める分、ということです^^

これまでわたしが読んできた「帚木蓬生著作」もほとんどがそうでしたが、実際に起こった事件・出来事や社会問題をもとにしてストーリーを展開している、という点で、フィクションながら現実的な引っ掛かりが大きくて、考えさせられます。本書は、2014年に韓国・珍島沖で起きた客船の沈没事故に対する、著者の憤りが感じられる一冊。テレビの報道などで見た記憶がよみがえってきますが、約10年前のことだったのですね。

一方で、3Dプリンターで人体の生きたレプリカをつくる、というストーリーでもあります。これがSFではなく実際にそこまで進んでいるのかもしれないと思わせられるのは、昨今広範な分野で3Dプリンターが活用されていることに加え、著者が医師であるという事実によるものだと思います。

社会問題に対する目線と、医師であるが故の知識や経験が、帚木蓬生さんの著書の深みになっているのだろうな、と思いつつ。次回は何を借りようか、まだまだ楽しみが続きます。

『受難』(KADOKAWA)帚木蓬生著

夏の恒例展示「想い出の宮地岳線展2025」@津屋崎千軒なごみ。

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夏の恒例展示「想い出の宮地岳線展2025」@津屋崎千軒なごみ。

ここ数年、夏の恒例行事となりつつある、ご近所観光案内施設・津屋崎千軒なごみでの鉄道ミニチュアの展示。鉄道マニアであり市の職員さんでもあるF氏と、そのお友だちでやはり鉄道マニアのM氏による、ボランティア展示&運営です。展示は見るだけでなく、もちろん、走らせることもできます。

わたしはふつうに電車が好きです。電車に乗るのはとにかく楽しく、この手の展示にはテンションが上がります。プラレールとかもずっと見ていて飽きません。なので、そんな展示がすぐ近所で毎年ある!というのは、とっても嬉しいもので^^

想い出の宮地岳線展2025

↑廃線により販売会に出されたという駅の表示看板。ちゃんと電気が付いた状態で展示してくれるのが、素晴らしいです。

想い出の宮地岳線展2025

わたしが観に行ったときは、先客の小学生がいて「運転席」に陣取っていましたので、大人なので、運転は遠慮しました。その代わり「あの電車走らせて!」とその少年に操作を任せ、走る様子を存分に楽しみました。

想い出の宮地岳線展2025

車庫や操車場の景色は、実物も壮観ですが、こうしてミニチュアで眺めるのもなかなか嬉しいものです。

そして一番上の写真の切符のサービス。ちゃんと駅員さんの改札鋏で切ってもらいました^^

毎年ありがとうございます!来年も楽しみにしてます♪

読書『水棲生物 水の底のアフリカ』(講談社)オズヴァルド・ルワット著/大林薫訳

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読書『水棲生物 水の底のアフリカ』(講談社)オズヴァルド・ルワット著/大林薫訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。アフリカ・カメルーン生まれの著者による物語。アフリカのどこかの国が舞台になっているのだろうな、と思いつつ、読了しても舞台となっている場所がよくわからなかったので、講談社の公式サイトを覗いたところ「家父長制と因習に縛られ、権力闘争が渦巻く国ザンブエナ」とありました。ところがアフリカの地図をさがしても「ザンブエナ」の国名を見つけられず…どうやら架空の国名のようです。

貧富の格差、階級差別、女性差別、家父長制と因習、性的マイノリティへの弾圧、その背景にある宗教の教え。様々な要因が「差別のもと」となって、人々をがんじがらめにしていく様子が、寒々しく伝わってきました。著者はジャーナリズムを学び、新聞社に勤めたのちに、ドキュメンタリーの監督や写真家として活動しているとのこと。このような本を書かなければと、著者をかきたてるものがあったと思うと、息苦しさを感じます。架空の国名であったのは、そうでなければ本書を世に出すことができなかったということかしらと、頭をよぎります。

最近、思いがけずアフリカテーマの本をたびたび手に取ります。図書館の司書さんが、アフリカ関連の良書を蔵書に選んでくれているから、ということですね。自分のもともとも興味の範囲外にあるものも、「新刊書」というくくりで選択肢として目の前に提示してもらえるおかげで、こうして手に取る機会が増えて視野を広げることができます。ありがたいことです。

『水棲生物 水の底のアフリカ』(講談社)オズヴァルド・ルワット著/大林薫訳

読書『水神』(新潮社)帚木蓬生著

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読書『水神』(新潮社)帚木蓬生著

帚木蓬生さん追っかけ継続中。いつものカメリアステージ図書館の蔵書から借りて参りました。本書を開いてまず文体でおや?と思いました…時代ものもお書きになるのですね。上下巻にわたる、長編歴史小説です。新田次郎文学賞受賞作ということで、賞の説明を確認したところ「小説・伝記・エッセイなど形式を問わず、歴史、現代にわたり、ノンフィクション文学、または自然界(山岳、海洋、動植物等)に材をとったもの」ということでした。現在、上巻を読み終えたところ。

舞台は筑後川流域の村々。江戸時代の久留米藩、稲田の渇水に苦しむ百姓たちのために、治水事業に命を懸けた庄屋の物語です。今だけの対処療法ではなく、将来の子々孫々にも恵みをもたらす事業。そうわかってはいても、人手もお金もかかり、村々のなかには事業に反対するところもある困難のなか、これを貫くことは並大抵のことではありません。

静かな筆致のなかに、登場人物たちの事業に賭ける熱い思いがあふれていました。帚木蓬生さんの著書をよく読んでいる友人が「文章がとてもきれいな人」と評していましたが、ほんとうに、目線がやさしくて、慈愛にあふれているのを感じます。だからなのかわかりませんが、気が付いたら、登場人物に感情移入しています。

「暴れ川」の異名も持つ筑後川は、もちろん現在も福岡県民にとって大切な水源の一つ。花祭窯のあるここ福津市は、地理的に近いとは言えませんが、上水道の一部は筑後川水系の恩恵によるものです。本書内に登場する地域の名前には聞き覚えのある所が多く、他人ごとではなく読み進めました。下巻も楽しみです。

『水神』(新潮社)帚木蓬生著

追伸:8月17日、下巻読了。小説を読みながら涙が流れたのは久しぶりでした。