2026年3本目の映画は、マーゴット・ロビーが美しい『嵐が丘』。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2026年3本目の映画は、マーゴット・ロビーが美しい『嵐が丘』。

ここ2年ほど、観たい!洋画がなかなか最寄りの映画館で上映されずに、うーん…という感じでしたが、2026年はスタートからいい感じです。『ダウントン・アビー』『モディリアーニ!』に続く3本目は、原作エミリー・ブロンテの『嵐が丘』。主演マーゴット・ロビー、原作は名作古典という、素晴らしい組み合わせです。2年前の『バービー』でも、マーゴット・ロビーの美しさにほれぼれしていましたので、これは観るしかない!ということで、楽しみにしていました。

「読んでいなかった名作を」シリーズ読書で、わたしが『嵐が丘』の上下巻を読んだのは2020年。6年前です。実は、主人公キャサリンとヒースクリフが出会う少女時代・少年時代のころの描写と、「愛憎劇」であった!という印象は記憶に残っていたものの、『嵐が丘』のストーリーをほぼ覚えていませんでした(汗)。まあでも、映画見るうちに思い出すんじゃないかしら、と思いつつ、ストーリーの復習はしないまま映画館へ。そして、観終わった後の感想は、こんなお話だったかしら???でした(笑)。

長いお話ですから、簡潔に要点をまとめて脚色すると、このような脚本に仕上がるのかもしれません。映画の予告チラシをあらためて眺めると、「Introduction」の部分に「誰も観たことの無い『嵐が丘』が、この2月、いよいよ幕を開ける!」とありました。誰も観たことの無い、というところで、ちゃんと予防線が張られていますね。映画紹介サイトあたりでも「新解釈」という言葉が飛び交っています。新解釈なのねと思いつつ、個人的には、原作のどこがどうなってこうなったのか確認したいという思いもあり、あらためて本を図書館で借りることに。これから再読して確認します(笑)。

と、このように書いてきましたが、映画自体は映画館で観て良かったです。映像の美しさ、マーゴット・ロビーの美しさは期待通り、そしてヒースクリフを演じたジェイコブ・エロルディの暗い目と声がなんとも魅力的でした。ジェイコブ・エロルディさん、わたしはお名前を初めて聞きましたが(というか、見たり聞いたりしてもすぐ忘れてしまうのですが)、オーストラリアの俳優さんなのですね。『007』の新ジェームズ・ボンド役のオファーがあったというニュースもあり、これからが楽しみな俳優さんなのかもしれません。

このあとは4月に『ハムネット』、5月に『プラダを着た悪魔2』の公開を楽しみにしているところです。最寄りの映画館で上映するかな、上映しますように!と期待しつつ^^

読書『異文化理解力』(英治出版)エリン・メイイヤー著/田岡恵監訳・樋口武志訳

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読書『異文化理解力』(英治出版)エリン・メイイヤー著/田岡恵監訳・樋口武志訳

先日参加した「福岡市の海外展開支援プログラム」で、「グローバルコミュニケーション講座」を担当してくださった講師のSPRINK株式会社の元美和氏がおススメしていた本です。原題は「THE CULTURE MAP」。タイトルになっている「カルチャー・マップ」で、国による文化の傾向(違い)を地図化(というか図表化)した説明が、単純化されたビジュアルでわかりやすく示されています。

出版元公式サイトにある本書の紹介文「本当に大切なのは、英語力よりも、「異文化理解力」だった!」が、本書の内容を端的に表しています。著者はビジネススクールの客員教授で、ビジネス場面視点での本です。監訳者の方も、ビジネススクールであるグロービスの方。すなわち、ガッツリビジネスマン向けであり、なかでもマネジメントにおける事例が盛りだくさんになっています。ですので、本文内に登場する事例の解説は、そのような立場ではない人にとっては、少々わかりにくく、過剰に思えるかもしれません。

本書内でも仮定されている疑問のひとつに、「国や文化の違いはもちろんあるだろうけれど、それだけではなく、個人の傾向もあるのでは?」というものがあります。著者はそのような意見が出るのを当然と受け入れながらも、しっかり論破していて、なるほどそれだけの事例を体験してきた方なのだとわかります。ただわたし個人としては、本書で述べられている内容すべてを額面通りに受け取らなくても良いかも…という気もしました。

とはいえ、カルチャー・マップはなかなか興味深く、役に立ちそうです。「こういう傾向があるのね」ということを知っていることで、戸惑う場面を減らすことができるだろうことは確か。ビジネスにおける「説得」「対立」「交渉」という概念が少々古いような気がしたので、あらためて確認したところ、日本国内で2015年の発刊でした。「本当に大切なのは、英語力よりも「異文化理解力」」というのは普遍的な真理だと思いますが、ビジネスにおける人間関係の在り方は、この10年で大きく変わっているような気がするので、著者の最新版の知見を聞いてみたいな、と思いました。

『異文化理解力』(英治出版)エリン・メイイヤー著/田岡恵監訳・樋口武志訳

読書:フェルディナント・フォン・シーラッハ著『禁忌』、『カールの降誕祭』、『犯罪』(東京創元社)。

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読書:フェルディナント・フォン・シーラッハ著『禁忌』『カールの降誕祭』『犯罪』(東京創元社)

月初めに読んでいた、フェルディナンド・フォン・シーラッハの『午後』が、読みごたえがあり興味深かったので、いつものカメリアステージ図書館で著者名検索。思いのほか揃っていましたので、まずは3冊借りてきました。気になった本がすぐに探せて手に取ることができる有難さ。いずれも東京創元社さんからの刊行です。ちなみに東京創元社さんの公式サイトで著者名検索すると、ずらりと15冊ヒットしました。

今回読んだ3冊は、いずれも弁護士である著者の経験が、ストーリーの元になっていることがうかがえました。主人公はいずれも弁護士ですが、その弁護士に「弁護される人」のストーリーがメインです。『禁忌』は長編、『犯罪』は主人公が同じの連作短編集、『カールの降誕祭』は短編集でした。主人公を通して、著者の弁護士としてのスタンス、「犯罪」との向き合い方が、じわじわと伝わってきました。『犯罪』は、本屋大賞翻訳小説部門で第1位を取ったそうです。

特に印象深かったのは『禁忌』でした。「緑」「赤」「青」「白」の章分けで進むストーリーは、読み始めてしばらくは「???」という感じでした。これが中盤を超えて「青」の章に入ると、一気に、著者がこの物語を通して言いたかったことが明らかになってきます。特に「青」の章の後半に向かっての法廷での緊迫したやり取りは、凄みを感じさせるものでした。最終的に弁護側(=主人公側)が勝つ、というか、被告は無罪となるのですが、そこに晴れがましさはなく、重苦しい印象だけが残りました。

ご近所図書館の蔵書にあるものだけをみても、未読本がまだ何冊もあります。ただ、一気にまとめ読みすると、少々重いというのが、正直なところ。ここからは、ぼちぼち参ります。

フェルディナント・フォン・シーラッハ著 『禁忌』『カールの降誕祭』『犯罪』(東京創元社)

読書『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書)エマニュエル・トッド著

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読書『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書)エマニュエル・トッド著

『西洋の敗北』を読もうと思いながらそのままになっていました。一度は図書館で借りてきたのですが、返却期限までに読み切れず。たまたま本屋さんの新書コーナーで本書を見つけ、ラッキー♪とゲットしたのでした。『西洋の敗北』が2024年1月刊行で、本書は2025年9月が第一刷になっていましたので、1年少々で新書版で日本向けに増補して出版されていることになりますね。そのスピード感に、著者と出版社の熱意あるいは危機感の大きさを感じます。

本書内で繰り返し触れられていますが、『西洋の敗北』は25か国で翻訳出版されているにもかかわらず、そのなかに「英語版」が無いという事実。そのことこそが、本書の内容の価値(真実味)を上げているという見方は、あながち間違いではないように思いながら、読了しました。特に「なるほど」と思ったのは、ロシアとウクライナの問題について書かれた部分。以前に読んだ『オリバー・ストーン オン プーチン』で語られていた内容と重なって、当時からブレていないロシア(プーチン)を確認する結果となりました。『オリバー・ストーン オン プーチン』は、2015~2017年のインタビューをもとに書き起こしたものでしたので、それから10年後の今、当時懸念していたことが現実化している、ということなのだなぁ、と。

著者の言う「西洋」が主張する見解だけを見てしまいがちな環境にあって、視点を変えて眺め直し、自分の頭で考えることがいかに重要であるか、危機感を感じさせられる読書でした。新書版ですので、比較的読みやすくボリュームもさほどありません。「興味はあるけれど、1冊読むのは面倒」という方には、本編の前に書かれた「日本の読者へ」だけでも読むことをお勧めしたいと思いました。

『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書)エマニュエル・トッド著

宗像の新たなスポット「伊豆本店」さんの見学に行ってまいりました。

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宗像の新たなスポット「伊豆本店」さんの見学に行ってまいりました。

1717年創業で300年以上の歴史ある酒蔵が、2026年伝統ある歴史を礎に酒蔵を再興した!というニュースは、その経営に久原本家が入った!というニュースとともに、宗像・福津エリアではちょっとした話題でした。酒蔵といえば、ここ津屋崎にも豊村酒造さんがあり、豊村さんの旧醸造場施設が国の重要文化財に指定されたのは2024年1月のこと。その保存・活用が課題になっていることは、昨年末にお世話になった、藤吉憲典の個展を通じても理解していましたので、伊豆本店さんの再興は、個人的にもとても気になるニュースでした。

以前、10年くらい前だったと思いますが、宗像エリアの経営者の集まりでツアーをしたときにも、伊豆本店さんには足を運んでいました。そのときも、趣のある雰囲気でとても良い場所だと映っていましたが、当時に比べてどのように変わったのか、期待たっぷりで訪問しました。

伊豆本店さん

レンガ造りの外観がインパクト大の煙突は、前回訪問時に、地震等に備えてどうするかが課題になっているとお聞きしていたスポットでしたが、見事に周りに支えを施して遺されていました。「煙突をどう遺すか」は、津屋崎の豊村酒造さんでも同じことで、ここに一つの事例を発見。

伊豆本店さん

主屋では、久原本家・茅乃舎さんの代名詞的な景観ともいえる「かやぶき屋根」を、内外から見ることができます。見事な梁や柱がしっかりと調和していて、どこまでが古いもので、どこからが新しく加わったのか、ほとんど違和感を感じませんでした。古い建物の美しさを、あちらこちらに拝見することができます。

伊豆本店さん

新しくなった設備を、ガラス越しに酒蔵見学できる楽しみは、プログラムを作りこむことによって、大人の社会科見学需要にばっちり応えてくれるでしょう。学芸員実習の際に、京都でビール工場の工場見学ルートを学んだことを思い出しました。規模はもちろん異なりますが、同様の活用ができることが、ばっちりイメージできました。

伊豆本店さん

季節の設えとして、奥の和室にはお雛様が飾ってありました。酒蔵見学や酒蔵BAR、小さいながらも歴史資料室もあり、そしてもちろん茅乃舎さんのショップもあります。今回はお酒の試飲はしませんでしたが、茅乃舎の「出汁」をたくさん試飲しました(笑)。敷地内では、ふかしたてアツアツの酒饅頭も販売しています。

全体としての感想は、見事な地域資源であり歴史資源の活かし方!という感じで、津屋崎のご近所でも参考にできる要素がたくさんありました。宗像方面の旅は、宗像大社・鎮国寺・道の駅むなかた、というのが、これまでのおススメルートでしたが、これからは伊豆本店さんもありますので、さらに旅の楽しさが増えそうです^^

福岡県中小企業ステップアップ支援事業「サッシン・ベース」最終報告会(ピッチ)に参加してまいりました。

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福岡県中小企業ステップアップ支援事業「サッシン・ベース」最終報告会(ピッチ)に参加してまいりました。

福岡県の商工部スタートアップ推進課からご案内をいただき、8月から参加している支援事業「サッシン・ベース」。あっというまに半年の(とはいえ月1ペースでしたが)プログラムが終わり、無事最終報告会=ピッチの日を迎えました。

わたしにとっては、生まれて初めてのピッチ(無意識に、それに相当することをしたことはあったかもしれませんが)。花祭窯のことをまったく知らない人たちを想定して、4分間で事業概要と現状の課題を説明し、課題解決のための新規事業を紹介してそこへのサポートを呼びかける。なかなか盛りだくさんで、時間内に収めるのは悩ましく。ピッチ資料を作っては、担当してくださったトーマツのコンサルさんに2度3度と投げかけて、そのたびに腹落ちする的確なダメ出しをいただき、なんとか完成させたのでした。担当コンサルYさんに心より感謝です。

さて当日は、ぜんぶで21社がそれぞれ4分のピッチを行うということで、サクサクと進みました。時間が限られていましたので仕方がないのは十分理解しつつも、個別のフィードバックは一切無くて、そこはなんだかな~という感じがしないでもなく。自分のピッチへのフィードバックだけでなく、ほかの方へのフィードバックからも学ぶことは多いので、そういう時間が少しでもあったらと、勝手に期待していたのでした。まあ「ピッチ資料をつくる」が初めてだったわたしとしては、その過程で得たものが大量にありましたので、それで良しなのかもしれません。

「得たもの」のひとつとしては、昨日アップしていた「福岡市海外支援プログラム」の情報も、サッシンに参加していたからこそ届いた情報のひとつであり、やはり自分が動くことで変わることや集まってくるものがあるなぁと、今更ながらに思ったのでした。そういえば、昨日はピッチの最終報告会とあって、主催である福岡県からも、新規事業や中小企業支援の職員の方々が何人もいらしていました。福岡県による海外展開支援策には、「福岡アジアビジネスセンター」だったときは長年頻繁にお世話になりまくっていました。が、体制を変えて「グローバルコネクト福岡」になってからは、すっかり足が遠のいていましたので、これを機会にまた活用したいと思います。

福岡市海外展開支援プログラム Day4「グローバルな表現力を身につける」に参加しました。

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福岡市海外展開支援プログラム Day4「グローバルな表現力を身につける」に参加しました。

福岡県中小企業ステップアップ支援事業「サッシン・ベース」でお世話になっているトーマツさんからご紹介いただいて、「福岡市海外展開支援プログラム」に参加しています。昨日はそのDay4でした。といっても、わたしは前回のDay3「海外市場の解像度を上げる」からの参加でしたので、二回目。「英文ピッチ作成講座」「グローバルコミュニケーション講座」のコース別で、実践型ワークショップに参加いたしました。わたしは「グローバルコミュニケーション講座」を選択。

前回グローバルコミュニケーション講座でお話してくださった元美和氏が、おススメの本『The Culture Map(異文化理解力)』エリン・メイカー著(英治出版)を、入手はしていたものの、ようやく読み始めたところ(つまりほとんど読んでいなかった^^;)でしたので、会場に向かう電車のなかで少しでも読み進めようと悪あがき。前回からの宿題に「1分でご自身のビジネスまたはアイデアを日本語で説明できるようにしてください」とありましたので、その宿題だけは準備して臨みました。

当日のプログラムは次のとおり。

  • オープニング
  • NY派遣企業による公開ピッチ(英語)&フィードバック
  • コース別実践型ワークショップ
  • ネットワーキング

以下、「グローバルコミュニケーション講座」より、備忘。


  • WHAT ではなく WHY を語る。
  • CONNECT NOW 不完全でOK。「今の自分」の状態でつながる。
  • Context/Value/Human/Ask
  • C:なぜ私はあなたと話がしたいのか。
  • V:わたしの価値(足りないこと・困っていることも含む)
  • H:(組織ではなく)わたしは何を考えているのか、どうしたいのか。
  • A:具体的な願いはなにか、相手に何を期待しているのか。
  • 30秒~1分の自己紹介のなかで、話のネタになりそうなことをいくつ盛り込めるか→話の糸口。
  • 短い時間のなかでも「WHY」をいかに伝えることができるか。何をしているかよりも、なぜそれをしているのか。
  • 相手に「Yes」と言ってもらえるポイントを、いかにたくさん入れ込めるか。
  • PASSION。

活育財団 Raiki Machida氏のお話より


グローバルコミュニケーション講座ももちろん面白かったのですが、なんといっても、来週からNYに派遣されるという起業家さん3名のピッチが、とってもすごいと感じました。面白かったです。今回は皆さん本番で使うのと同じ英語でのピッチということで、ひと月前にお聞きした日本語版から、さらにブラッシュアップなさっていたようです。海外からの投資家の方々が5名ほど最前列に並んで、登壇者への質問を投げかけ応答する様子も、なるほどこんなふうなのね~と思いながら拝見しました。来月は、そのNY派遣企業の皆さんの成果報告会が開催されるということで、こちらもぜひ聞きに伺いたいと思いました。

今後の海外向けアプローチの際に、そのまま使える考え方がいくつもあって、学びの多い二時間半でした。

読書『消失』(集英社)パーシヴァル・エヴェレット著/雨海弘美訳

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読書『消失』(集英社)パーシヴァル・エヴェレット著/雨海弘美訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から借りてきた一冊。「パーシヴァル・エヴェレット」の著者名に既視感があって、著者プロフィールが載っているかなと裏表紙をめくったところ、『ジェイムズ』の文字が目に入り、そっか!去年読んだ『ジェイムズ』の人ね!と納得。即借りです。

読み始めるとすぐに、今度はストーリーに既視感。あれ?と思い、もう一度裏表紙をめくったところにある著者プロフィールを確認して、読み直しました。そこには「本書を原作とした映画『アメリカン・フィクション』が2023年に公開され」とあり…昨年末、飛行機の中で観た『アメリカン・フィクション』の原作小説であることが判明。映画を観た後の備忘ブログに、わたしは「観はじめてすぐに頭に浮かんだのは、少し前に読んだ、小説『ハックルベリー・フィンの冒険』を皮肉った(?)『ジェイムズ』でした。」と書いていたのですが、それもそのはず、原作者が同一人物だったのですね(汗)。

というわけで、思いがけず面白い感じでつながった読書。映画では、人種差別・貧困格差・LGBTQなど現代の社会問題を主題としながら、社会派コメディという感じに単純化されて描かれていました。それはそれで、とても分かりやすく面白かったのですが、原作本は、知的ユーモアで皮肉な笑いをふりまいているとはいえ、とてもじゃないけれど「コメディ」と片付けることはできない深刻さを感じさせるものでした。タイトルも原作は『消失(原題:ERASURE)』ですので、まったく異なりますね。映画はなんとなく光が見えるような終わり方をしていましたので、そういう映画のつくり方を含めて『アメリカン・フィクション』だったのかな、と。

本書は、2023年の映画化で脚光を浴びたことと、『ジェイムズ』のヒットを経て実現したのでしょう。邦訳が出たのは今年2026年ですが、本国では2001年刊行と書いてありましたので、『ジェイムズ』よりも前だったことになります。巻末にある訳者の「あとがき」にもありましたが、本書の舞台は1990年代半ばで、それを2001年に書いたものが本国で共感を持って受け止められたのは、15年経ってもまったく同じ問題を抱えていたということなのだとわかります。さらに10年ほどあとの映画化のときも、邦訳となった2026年の今でも、「今の問題」として認識させられるものであり、その間(約四半世紀!)の人種差別的な環境・風潮・意識の「変わらなさ」を考えさせられました。

映画で観たものを小説で読みなおす楽しさは、限られた時間内に収めるために単純化されたものの後ろに、どれほどの複雑なものがあるのか(原作者は書いていたのか)を、知り直せるところにあると思います。今回、思いがけずそんな「読み直し、知り直し」ができて、良かったです。パーシヴァル・エヴァレット著作、未邦訳のものがあるようですので、これから遡って日本でも刊行されると嬉しいです。

『消失』(集英社)パーシヴァル・エヴェレット著/雨海弘美訳

読書『物語化批判の哲学 〈わたしの人生〉を遊びなおすために』(講談社)難波優輝著

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読書『物語化批判の哲学 〈わたしの人生〉を遊びなおすために』(講談社)難波優輝著

講談社の現代新書です。著者の難波優輝氏は「分析美学とポピュラーカルチャーの哲学」を専門とする研究者。日本国内約30万人の研究者が登録しているという「researchmap」の該当ページを拝見したところ、美学・哲学関連の学術論文をいくつも発表なさっているようです。執筆なさっている書籍もたくさん。

「物語を愛するがゆえに、物語化を批判する」との立ち位置で書かれている本書は、文章には学術的な難解さを感じる部分もありましたが、わたし的には「著者が感じている気持ち悪さは、なんとなくわかる」という感じで、面白かったです。ここ数年、個人的に少々辟易していたのは、事業活動・マーケティングを論じる場などで語られる「ストーリー」の「重要性」。言いたいことはわかるけど、本質とはズレている感じがぬぐえないものも目につくなど、少々濫用気味ではと違和感がありました。

さて本書。面白かったです。個人的には、第1章の「物語批判の哲学」が最も刺さりました。第2章以降は「探求編」ということで、第2章「ゲーム批判の哲学」第3章「パズル批判の哲学」第4章「ギャンブル批判の哲学」と続きます。わたし自身が、ゲームにもパズルにもギャンブルにも夢中になったことがないため、「ほうほう、なるほど」という感じで拝読。ゲーム・パズルの章では、「一つの正解があることを大前提にゴールを目指す」という単純化された思考・行動パターンの背景にあるものと、そのパターンに対する危惧が生まれました。またギャンブルの章では、「依存症」が何に対する依存なのか、という考察が、これまで自分がイメージしていたようなものではなかったことに、考えさせられました。

もうひとつ、第1章の物語批判のなかで取り上げられていた「MBTI」に関する記述が、面白かったです。実のところ、30年以上前から心理学の学術的な位置付けでMBTIを理解していた者としては、ここ数年、MBTIが「占い」のような形で一般化していることを、「そういう公開の仕方になったのね」という感じで、軽い驚きを持って受け止めていました。なので、本来のMBTIと、現在一般化されて流行っているものとの差異、現在流行っているものが、どのような文脈で利用されているのかを本書で垣間見ることができたのは、思いがけず大きな収穫でした。

わたしの持っていた、個人的ないろいろな違和感に、本書がすべて答えを出してくれたわけではありません。けれども、モヤモヤとしていたものの幾ばくかが、本書によって言語化されて、説明可能になったことは、嬉しいことでした。哲学的なので「サクッと読む」とはいきませんでしたが、このテーマに興味のある方には、とっても面白い内容だと思います。新書、ふだん使わない頭を使うのがいいですね♪

『物語化批判の哲学 〈わたしの人生〉を遊びなおすために』(講談社)難波優輝著

2026年コンサート一発目は、九響定期演奏会「マーラーの第九」。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2026年コンサート一発目は、九響定期演奏会「マーラーの第九」。

今年も九響を楽しみにしています。1月のニューイヤーコンサートに足を運び損ねてしまったので、この日をとっても楽しみにしていました。会場はアクロス福岡シンフォニーホール。朝までの雨も上がり、会場に到着したころには気持のよい青空。開演まで少し時間がありましたので、アクロス山を眺めながら日向ぼっこを愉しむことができました。

開演10分前に、指揮者の太田弦さんによるステージでの「プレトーク」がスタート。「マーラーの第九」と言われても、クラシック素人のわたしはピンときません(汗)が、このプレトークで、今日の演目がどのようなものなのかを、優しくかみ砕いて話してくださいました。こういうサービスが、とてもありがたく嬉しいです。いわく、演奏時間が(第一楽章から第四楽章までで)1時間半にわたるので、本日の演奏会には「途中休憩」がないということ。そして「マーラーの第九をやると言ったら、何人もの方から『太田さん、辞めるんですか!?』と聞かれた」というエピソードを、その理由と共に説明してくださいました。ちなみに辞めるということでは全然ないということで、安心しました。

すごい体験でした。鑑賞する側にも、ほのかに心地よい緊張感のただよう1時間半。壮大で激しい変化のある曲を演奏し続ける演者の皆さんの集中力と体力・精神力のすごさを思いました。わたしはといえば、第一楽章の変化の激しさに「訳が分からなくてついていけない」感じになり、第二楽章で一転したテンポに気持ちが良くなって思わず眠くなり、第三楽章でようやくなんとなく既視感(既聴感?)のある雰囲気に安心し、第四楽章の音のかたまりにミツバチの大群が押し寄せるイメージを抱き、最後の静寂に向かう迫力を堪能…と、勝手に楽しんでおりました。

今回は万雷の拍手にもかかわらず、アンコール曲の演奏がありませんでしたが、もちろん納得です。あれだけの演奏を成し遂げた後には、もうきっとアンコールに応える余力は残っていないのではないかしら、と思いました。

というわけで、今年も九州交響楽団を微力ながら応援致します♪