読書『フランスから届いたパンのはなし』(産業編集センター)酒巻 洋子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『フランスから届いたパンのはなし』(産業編集センター)酒巻 洋子著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。表紙の魅力的なパンの写真に引っ張られて手に取りました。その場でパラパラとページをめくれば、さらに魅力的な写真がたくさん。近所に、オープン以来お気に入りのパン屋さんがあるのですが、そこのお仕事を彷彿とさせる写真の数々です。美味しいパンの写真を見て、味をイメージするだけで、幸せな気持ちになります。

さて本書、ページ構成は、写真6:文章4といったところでしょうか。文章も楽しくて、サクッと読めます。パンにまつわるちょっとした雑学を知ることができるのは、マニアでなくても嬉しいものですね。大好きなパン屋さんでは、最初お店の名前が読めなくて、パンの名前も覚えにくいという難点を感じていたのですが、なるほどフランス語だったのよね、と、今更ながらに納得しつつ。

個人的な「フランスの、パン」に対する認識は、かれこれ30年ほど前の新婚旅行にさかのぼります。ロンドンからパリへと移動するユーロスターのなかで出てきた軽食のパンに感動して、パリではパン屋さんにばかり足を運んでいました。ふつうのパン屋さんだけでなく、屋台のような感じでサンドウィッチなどを売るお店が川沿いにたくさん出ていたのが印象的で、どこで買って食べても美味しかったという至福の思い出があります。

今は、ありがたいことに、自転車でぱっと行ける場所に美味しいパン屋さんがあります。これは実はとっても贅沢なことなのだと思います^^

近所の美味しいパン屋さん boulangerie pomme de terre ポムドテール福津

『フランスから届いたパンのはなし』(産業編集センター)酒巻 洋子著

読書『皇后は闘うことにした』(文藝春秋)林真理子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『皇后は闘うことにした』(文藝春秋)林真理子著

引き続き、遅ればせながらの林真理子著作追っかけ。なにしろ図書館に行けば、林真理子さんの既刊本は大量にありますので、気軽に手に取ることができます。ありがたいですね。今回の本書は新刊。

ちょうどひと月前にブログにアップしていた『李王家の縁談』が、とっても面白かったので、本書もそのような感じなのかな、と思って予約を入れた一冊。こちらは短編集でした。上の写真はそのタイトル目次です。読後にあとがきを見たら、本書はいわば『李王家の縁談』のスピンオフ版だという解説があり、なるほどなるほど。

現代でもなにかと大きな話題になる、皇室の婚礼をとりまくニュース。その根っこにあるものが、単に野次馬的な興味だけでなく、政治に大きな影響を与える要素だからなのだということを、あらためて思わされる読書となりました。「政略結婚」というのは、戦国時代だけのものではなく、その前後もずっと続いてきているのだよな、と。

皇族とか華族とか呼ばれる仕組みが、明治維新以降どのように政治利用されてきたかが垣間見える本でしたが、短編になっている分、わたしにはそれぞれが分離してしまって、つなげるのが難しかったです。各ストーリーの前に家系図が付いているので、それを参照すればよいということなのですが。短編でつづられたすべての物語が一つのストーリーで展開される小説が、いつか出来上がるのを待ちたいと思います^^

『皇后は闘うことにした』(文藝春秋)林真理子著

5月の九響定期演奏会は、演奏会形式の「オペラ トスカ」でした。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

5月の九響定期演奏会は、演奏会形式の「オペラ トスカ」でした。

1月の九響ニューイヤーコンサート、2月の日本フィル以来、久しぶりのコンサートは、九響の定期演奏会。昨年来ずっと、3階席を指定席にしていましたが、いろいろ試してみようと思い、今回は1階に席をとってみました。演奏会形式のオペラで1階だったのは、わたし的には観やすくて良かったです。

さてプッチーニの歌劇「トスカ」。タイトルは聞いたことがありましたが、どんなストーリーなのだか、まったく知らないままに会場へ向かいました。演奏の内容がどんなものなのか、よく知らないというのはいつものこと。毎回会場でいただく九響の冊子に、プログラム詳細と解説が載っているので、演奏会の概要を自分が知りたいと思えば、それを開けば大丈夫という安心感があります。素人のわたしにとっては、ものすごく助かります。

いつもはあまり事前にプログラム情報を入れないのですが、開演を待つ間にちょっと解説を読んでみました。なるほどなるほど。そして、今回は開演前に指揮者の熊倉優さんによるプレトークがあり、そこで「なぜ今年プッチーニなのか」の解説もあって、気分が盛り上がってきました。この「プレトーク」、わたしは初めての経験だったのですが、指揮者の方と聴衆との距離が近まるような感じがしました。とてもいいファンサービスですね。

演奏会形式のオペラは過去に数回観たことがありました。オーケストラと、演者、そして舞台両側には字幕のディスプレイ。目に見える派手な舞台装置も道具もなく、そのことが余計に、これだけで世界観を作り上げる力のすごさを感じさせます。歌劇「トスカ」全3幕で、すべてをフルで演奏するのはあまり無いことのようですね。プレトークでそのことを知り、貴重な機会なのだとわかりました。

休憩時間を含め2時間半を超える演奏会は、夢中になっているうちにあっという間に過ぎました。「人の声ってすごい!」というのが、率直な感想です。主役のトスカを演じた高野百合絵さん、すごく迫力がありました。昨年11月の定期演奏会のときにも高野さんのソプラノがあって感動したのですが、そのときよりもさらに迫力が増していたように思いました。

それにしても、これだけの舞台を数千円のチケットで観ることができたというのは、ものすごく贅沢でした。九響の定期演奏会は、とってもお得だと思います^^

九州交響楽団

読書『ヒール 悪役』(日経BP)中上竜志著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ヒール 悪役』(日経BP)中上竜志著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。「ヒール」の単語を見て「プロレスのヒールになぞらえた小説かな」と思いながら借りてまいりました。読み始めてすぐに、そのまま「プロレス」のお話だと判明。ストレートなタイトルでした。

著者の中上竜志さんは、本書の前作となる『散り花』で第14回日経小説大賞受賞なさっているのだそうですが、それも「プロレス小説」だったとのこと。日経BPの公式サイトによると “「プロレスを書きたい」という強い思い” が「プロレス賛歌」の受賞作を書かせたということで、それに続く本書『ヒール』もまた、その「強い思い」の延長線上にあるといえそうです。

さてストーリーは、章ごとに何人もの登場人物の視点から描かれます。それぞれの立ち位置からの葛藤が語られ、章を読み進めるほどに全体が見えてきました。本書に限らず、プロレスを語る時に必ずと言っていいほど出てくるのが、エンターテインメントであるプロレスを、「真剣勝負」と呼べるか否かについての議論。わたしが小学生の頃には「プロレス=八百長」というような話題は、子どもたちの間でも熱く交わされていました。それをひとことで八百長と呼んでしまうのは少し違うと思っても、ちゃんと説明する言葉は持っていなかった頃のこと。

小学生の頃にテレビでプロレスを見ていた者としては、とても興味深く入り込めるお話でした。当時わたしが好きだったスタン・ハンセンやタイガー・ジェット・シンは、そういえば「ヒール」だったんだよなぁ、などと思いつつ。プロレス小説では長いこと、中島らも著『お父さんのバックドロップ』が、わたしのなかでは一番で、1993年に出た文庫版が今でも手元にあります。

遡って『散り花』も読もうと思います。

『ヒール 悪役』(日経BP)中上竜志著

サントリー美術館での展覧会『酒呑童子ビギンズ』を観てまいりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

サントリー美術館での展覧会『酒呑童子ビギンズ』を観てまいりました。

サントリー美術館の良いところは、数々のお宝を所蔵しておられるのはもちろん、立地が便利なこと、朝10時から開いていること、火曜日が休館日で月曜日は開いていること。ギャラリーのオープンはほとんどが11時か12時のため、そのオープン前にひとつ展覧会を見ることができるのは、とてもありがたいのです。また今回行ったのは金曜日でしたが、多くの美術館博物館施設がお休みをとる月曜日に開館しているというのは、美術館好きにとって救世主的であり、とても嬉しく助かります。

というわけで、今回の宿泊場所から歩ける場所ということもあって、展示内容を確認する前にサントリー美術館に行くことは決めていました。直前にウェブサイトで展覧会を確認したところ「酒呑童子」のタイトルが。実は酒呑童子の物語を知らないわたしには、いまひとつピンと来ていなかったというのが、正直なところでした。が、そこは美術館に対する信頼感があります^^

サントリー美術館公式サイトによると “酒呑童子は、日本で最も名高い鬼です。平安時代、都で貴族の娘や財宝を次々に略奪していた酒呑童子が武将・源頼光とその家来によって退治される物語は、14世紀以前に成立し、やがて絵画や能などの題材になって広く普及しました。” ということで、サントリー美術館が所蔵する「サントリー本」と呼ばれる絵巻物を中心とした展覧会でした。

修復が終わったばかりのお披露目展覧会となったサントリー本は、色彩が美しく、見事でした。絵巻物の絵が楽しいのはもちろん、物語を語る筆文字がまた素晴らしかったです。字の姿もまた饒舌ですね。サントリー本だけでなく、それに続く模本、類本の数々がまた面白く、絵の描かれ方の違い、文字の書き手による違いが、とても興味深かったです。気が付けば、観覧に予定していた1時間があっという間に過ぎていました。

個人的には、酒呑童子の物語を遡る「エピソードゼロ」の存在に興味を惹かれました。「はじまりの物語を描く」というのは、近年に始まったことではないのだと知りました。酒呑童子のルーツを日本神話に結びつけ、「スサノオノミコトによって酒に酔わされ退治されたヤマタノオロチの息子として生まれたのが酒呑童子」というストーリーが存在していた、というのがとても面白かったです。

展示室では、能の演目としての「酒吞童子」が演じられている様子の動画を観ることもでき、酒吞童子事態をよく知らなかったわたしにとっては、お話を理解するのに役に立つ仕掛けでした。絵巻物ばかりの展示は飽きることも多いのですが、今回のサントリー美術館さんの展示は、わたしにとっては時間が足りなかったくらいで、圧巻でした。

会期は2025年6月15日(日)まで。

サントリー美術館で開催中の展覧会『酒呑童子ビギンズ』

読書『手ぬいでかんたん!ほどかずそのまま着物をリメイク』(ブティック社)高橋恵美子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『手ぬいでかんたん!ほどかずそのまま着物をリメイク』(ブティック社)高橋恵美子著

久しぶりに「縫い物」をしています。「あの人は着物を着るらしい」ということが知られると、不思議と着物が集まってくる、という経験を、着物を着る人はしたことがあると思います。お母さまやお祖母さまから受け継いだ着物がたくさんあるけれど、着ないし捨てることもできなくて…という方からいただくのです。きちんと仕立てられた良いもの、ほとんど袖を通していないものも多く、ありがたくいただき、着させていただいています。

自分のサイズに合わないものは、状態が良ければ、アップサイクルのきもの屋さんに差し上げていますが、生地が劣化していたり、ほんのちょっぴり虫食いがあったり、「そのままでは着ることができない」ものも。そういうものもなんとか生かしたいと取っておいた結果、着物箪笥が少しづつ混みあってきました。このままではイカンと、ようやく手を動かす気になったところで、この機を逃さずにハウツー本を探しました。

ネットで書籍情報を探してある程度目星をつけてから、博多の丸善へ。実際にページをめくってわかる情報も多く、最終的には売り場でこの本に決定。なんといっても「手縫い」「かんたん」「ほどかずそのまま」です。わたしにとって、これ以上に魅力的な単語があるでしょうか(笑)。ここからまずは一着でも完成させることが、最初のミッションです^^

↓下のリンク先は、ブティック社・高橋恵美子さん著の『手ぬいでかんたんに 着物をほどかず素敵にリメイク』です。わたしが入手したのは『手ぬいでかんたん!ほどかずそのまま着物をリメイク』なので、微妙にタイトルが異なり、中身も異なるのですが、このシリーズの最新版のようです。

『手ぬいでかんたん!ほどかずそのまま着物をリメイク』(ブティック社)高橋恵美子著

約30年越し?今更ながら「林真理子」著作を遡って読んでみる。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

約30年越し?今更ながら「林真理子」著作を遡って読んでみる。

きっかけは2023年に読んだ『私はスカーレット』でした。林真理子氏のお名前は、彼女の作家としてのデビュー作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』の頃から知っています。この初版が1982年だったということで、当時わたしは中学生。コンプレックスの裏返しが攻撃的な毒舌(というイメージ…)の彼女は、まさに社会現象的な存在で、ずっと気になりつつも、実は著書はほとんど読んではいませんでした。小説を初めてきちんと読んで脱帽したのが、『私はスカーレット』の上下巻。そこから軽く「追っかけ」をしています。

遡ろうと思いはしたものの、1980年代、1990年代、2000年代…と、その著作の膨大なことと(笑)。とりあえず図書館の「林真理子」の棚で1-2冊づつ借りてくる感じです。この連休中に読んだのは『不機嫌な果実』『下流の宴』(いずれも文春文庫)。初版はそれぞれ1996年、2009年となっていますが、どちらにも「ああ、こんな人いたわ(いるわ)」という、時代を代弁するような登場人物が無遠慮に描かれています。この、登場人物に対する無遠慮さが、林真理子さんならではの愛情だったりするのだろうな、と思いつつ。

そろそろ、林真理子版『源氏物語』にも手を伸ばそうかというところです。近著の『李王家の縁談』もとても面白かったです。

読書『日本一わかりやすい 革靴の磨き方』(山と渓谷社)杉村祐太著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『日本一わかりやすい 革靴の磨き方』(山と渓谷社)杉村祐太著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。実は、靴を磨くのが好きです。高校生になって通学靴が革靴になったときに、父親から靴の磨き方を教えてもらい、それからずっと革靴を磨く習慣がついています。が、父親から習っただけですし、その父親も誰かに習ったわけではありませんでした(と思う)ので、我流でなんとなく磨いてきたわけです。ずっと、ちゃんとした磨き方があるのだろうなと思いながら、我流で困ったこともなく、そこまでこだわる方でもなく、今に至っておりました。

目に飛び込んできたタイトルを見て、そうか、今がそのタイミングなのだと思い、迷わず手に取りました。表紙に「休日はお気に入りの革靴を磨こう!」という一文があり、まさにサラリーマン時代は毎週末のルーティーンとして靴磨きをしていたわたしは、うんうんと頷きました。112ページ、薄い一冊で、写真がたくさん載った実用書ですので、さっと読むことができます。著者の杉村祐太さんは、2019年度靴磨き世界選手権で優勝した「シューシャイナー」さん。シューシャイナーという呼び方があるのですね。

タイトルの通りわかりやすく、実際にやってみようと思える内容が載っていました。驚いたのが「靴クリームは手指で塗り込む」ということと、磨く際に指に布を巻くのにも「巻き方」があるということ。そうかぁ、そうなのかぁ、と思いながら読みました。さっそく次の靴磨きには「指で塗る」を実践してみようと思います。靴磨きの楽しいところは、磨いていると無心になることと、比較的短時間で目の前にその成果が表れること。本書のおかげで、靴磨きがより楽しくなりそうです。

『日本一わかりやすい 革靴の磨き方』(山と渓谷社)杉村祐太著

ところで出版社が「山と渓谷社」だということに、「おお!」と思いました。サイトを見てみたら、「ライフスタイル」のジャンルでさまざまな本を出しておられるのですね。

読書『天までのぼれ』(ポプラ社)中脇初枝 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『天までのぼれ』(ポプラ社)中脇初枝 著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。本屋さんで、たまーに「本に呼ばれる」ことがあるのですが、今回は図書館で呼ばれました。なぜ「呼ばれた」と感じたかといえば、ふだんあまり「時代小説」に目を留めないのに、表紙見るからに時代小説と思しき本書に手が伸びたから。時代小説だと思わずに手に取ることはあって、読むと面白いので、決して時代小説が嫌いというわけではないのですが。出版元のポプラ社サイトによると、本書は「評伝小説」というジャンルのようです。

たまたま「呼ばれた」本でしたので、中身はまったく知らずに読み始めました。物語にぐいぐいと引き込まれ、ずいぶん(半分ぐらい?)読み進めた後に、「退助」という名前が出てきて、さらにしばらく読むうちに「ん?板垣退助???」となり、そこで初めて幕末から明治にかけての倒幕から明治政府の成立、そして自由民権運動につながる話だ、ということに気が付いたという次第。

そこからは、史実をなぞる面白さも加わり、そうすると「知らなかった!」ことも多く出てきて、興味津々でした。物語の舞台は土佐高知であり、幕末の高知といえば坂本龍馬、の一つ覚えでしたので「板垣退助も高知だったのね!」と驚きつつ。主人公・喜多のセリフに「女も住むこの国のことを、女抜きで決めないでほしい」というものがあって、それが本書の中心にあったことなのだと思います。が、登場人物がそれぞれに魅力的であり、その人間模様がまた面白かったです。とくに板垣退助、素晴らしかったです。

先日読んだ『李王家の縁談』は明治天皇以降の物語で、『天までのぼれ』は時代的にはその前の物語です。こうして小説を通して歴史がつながっていくと、江戸時代から現代までの時代の「近さ」を強く感じます。ほんとうについ最近の出来事だったのだ!と気づかされることの多い今日この頃です。

これは、映画で観たいなぁ、と思いました。実のところ、配役を思い浮かべながら読んで楽しみました^^

『天までのぼれ』(ポプラ社)中脇初枝 著

読書『李王家の縁談』(文藝春秋)林真理子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『李王家の縁談』(文藝春秋)林真理子著

正直、林真理子さんにハマる日が来るなんて、思ってもいませんでした。きっかけは『私はスカーレット』でしたので、約2年前からのことです。20代のころから知っているお名前ですから、その間ずっと文章を書き続けていらっしゃって、しかも第一線を突っ走っているということ。あらためて、すごい方ですね。

さて『李王家の縁談』。新刊の時に何かの書評欄で見て、読みたい!と思ったまま、忘れていました。先日図書館をぶらぶらしていて唐突に思い出し、「林真理子」の棚で見つけて借りてきました。「皇室の縁談」がテーマとして押し出されていますが、わたし個人的には、明治・大正・昭和の戦後までの近代史、特に朝鮮半島とのかかわりを描いたものだという印象が強かったです。それを「結婚」という視点から描いたもの。

皇族・華族という制度が、戦前から戦後でこのように変わってきたのだということ、日本における身分や階級の話は「昔の話」のイメージがあったけれど、実はつい最近まであった(あるいは現在も続いている)話だということが、迫ってきました。文藝春秋サイトでの本書の紹介では、歴史学者の磯田道史氏との対談や、著者へのインタビュー記事が載っていて、時代背景や皇室制度の補足的な知識を仕入れることができました。

第一次世界大戦から第二次世界大戦へという時代の、朝鮮半島とのかかわりでは、今年に入ってから黒川創さんの『暗殺者たち』を読んだところでした。これは「たまたま手に取った」偶然でしたが、同時代の本を続けて読むことによって、近代日本と朝鮮半島・中国大陸との関係を、少しだけ知ることができたように思います。

それにしても、やはり林真理子さんの描く「気の強い女性」は、とってもいいですね。そんな主人公の小説を、もっと読みたいと思いました。

『李王家の縁談』(文藝春秋)林真理子著