読書『血の魔術書と姉妹たち』(早川書房)エマ・トルジュ著/田辺千幸訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『血の魔術書と姉妹たち』(早川書房)エマ・トルジュ著/田辺千幸訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、表紙の雰囲気に惹かれて手に取りました。読み終わって出版社を確認したら、早川書房さん。思わず「やっぱりね~」と声に出ました。わたしのなかでは、すっかり「早川書房=海外の小説に強い出版社」のイメージです。

478ページですからまあまあの厚さの長編ですが、ぐいぐい引き込まれて読了。著者はSFやファンタジーの短編をいくつも出していて、長編は本書が初だったということでしたが、最後までドキドキしながら読みました。登場人物たちがその後どうなるのかとても気になり、なんなら続編も期待したいところです。

「魔術」「魔術書」というワードには、魅力があります。すぐに思い浮かぶのは「ハリーポッターシリーズ」ですが、ハリーポッターもそうであったように、おどろおどろしいシーンや残酷なストーリーとは切り離せないところもあります。こうした「闇」の部分を描くからこそ、読者が引き込まれるということもあるのだろうと思いつつ。

場面(舞台)も登場人物も生き生きと描かれていて、読みはじめてすぐに、頭のなかに鮮やかなイメージがわいてきました。引き込まれる小説は、そんなふうですね。あくまでもわたしの脳内の勝手なイメージですが、こんなふうにビジュアルイメージが容易に浮かぶ小説は、映像化もしやすいのかなぁと思いました。

小説の続編と、映画化があるのならば、必ず読みたい・観たいひとつです。

『血の魔術書と姉妹たち』(早川書房)エマ・トルジュ著/田辺千幸訳

2025年の1本目-映画『ゆきてかへらぬ』を観てきました。

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2025年の1本目-映画『ゆきてかへらぬ』を観てきました。

わたしにとっての毎年この時期の一大イベント(!?)「確定申告」が提出できたので、映画館に足を運んできました。2025年の1本目は、邦画『ゆきてかへらぬ』です。

「ゆきてかへらぬ」は、中也の詩のひとつに付けられたタイトル。

中原中也「ゆきてかへらぬ」

「中原中也」と聞いて、映画の中身をよく確認せずに観に行きました。ふたを開けてみれば、主役は中原中也ではなく、その恋人であった女優・長谷川泰子だったのかな、と。とはいえ、詩人・中原中也と、女優・長谷川泰子と、評論家・小林秀雄、ほぼこの三人による「三人芝居」でした。三人の熱量がそれぞれに素敵で、実に見応えがありました。なかでも泰子を演じた広瀬すずさんが、ものすごくよかったです。わたしはこれまで広瀬姉妹ではどちらかといえば「広瀬アリス派」だったのですが、この映画を見て「広瀬すず」の凄さに目を開かされました。

そして、画がとても美しかったです。京都の景色も東京の景色も、全編通して時代の空気感が漂うセピア調の色彩で、どっぷりとその世界観に浸ることが出来ました。登場人物三人の芝居がかった物言いも、いかにも時代を感じさせるもので良かったです。草刈民代、トータス松本、柄本佑ら、脇の名優たちが、「え?それだけ?」というような短い時間での登場であるのも面白く。深い余韻が残り、期待を大きく上回る素晴らしさでした。帰宅後はさっそく、中也の詩を本棚から引っ張り出し(笑)。

↑この詩集の帯の裏側に、角川ソフィア文庫から、長谷川泰子本人による『中原中也との愛 ゆきてかへらぬ』なる本が出ているのを発見。今まで、まったく目に入っていませんでした(汗)。そのうち気が向いたら読んでみようと思います^^

まずは今年の映画1本目。もともと映画館では洋画ばかり観ていたのですが、昨年あたりから邦画を観る機会が増えています。最寄りの映画館で上映される本数自体も、邦画>洋画という感じで、きっとハリウッドでのストの影響が続いているのだろうな、と思いつつ。おかげで邦画にも目が向いたので、これはこれで良いことですね。次はもう観たいものが決まっているので、封切りが楽しみです^^

映画『ゆきてかへらぬ』

読書『暗殺者たち』(新潮社)黒川創著

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読書『暗殺者たち』(新潮社)黒川創著

先月読んだ黒川創さんの『この星のソウル』がとても興味深かったので、図書館で著者名検索をかけて、本書を借りてきました。

本書は「日本人作家がロシアで大学生への講義として語っている」という形で成り立っています。最初から最後まで口語体。その文体のやわらかさが、わたしにとっては少し難解だった内容を、読みやすくしてくれました。前回読んだ『この星のソウル』は1890年代あたりを中心として、現代につながるお話。本書は1900年頃を中心としたお話で、やはり現代の語り手による近代史。発刊されたのは本書の方が早くて2013年発売となのですが、わたしとしては、『この星のソウル』を先に読んでいたことが、本書を読みやすくしてくれたと感じました。

伊藤博文暗殺、大逆事件の幸徳秋水とその周りにいた人物たち、夏目漱石などの名前が出てきます。本書もまた近代における日本と朝鮮半島・韓国との関係や、中国、ソ連との関係を、小説ならではの方法で覗き見ることのできるものでした。実際の事件を語るのに、文学作品を例に引き出しながら描かれるのが、興味深かったです。日本であれロシアであれ、本を書く人の政治的な思想や信条が色濃くその作品に反映される時代。その時代に限らず、そもそも「本を書く」というのは、フィクションかノンフィクションかを問わず、そういうことなのかもしれませんが。

新潮社のサイトでの紹介ページのなかに、著者・黒川さんと作家・四方田犬彦氏による対談が掲載されているのですが、そのなかで著者が「語られている個々の事実は、すべて資料的典拠を示せるファクト」とおっしゃっています。そのうえで「ここから大きな一つのフィクションをつくりだすこともできる」と。そういえば過去にNHK大河ドラマになった『西郷どん!』を書いた林真理子氏が、「事実と事実の間にあるもの、とくに何をどう言ったか、というセリフの部分は自由に作ることができるから、そこにいかに想像力を働かせることができるかが書き手の力量」というようなことをおっしゃっていましたが、まさにそういうことなのでしょう。

日本の学校教育では自国の近代史をおろそかにし過ぎているという議論はずいぶん前からあるものではありますが、今回も、自身を省みて、知らないこと理解できていないことがあまりにも多いと気づかさる読書でした。黒川創さんの作品、また少しづつ読んでいきたいと思います。

『暗殺者たち』(新潮社)黒川創著

郷育カレッジ「宗像の歴史巡り(宗像大社編)」に参加して参りました!

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郷育カレッジ「宗像の歴史巡り(宗像大社編)」に参加して参りました!

福津市民のための生涯学習システム「郷育カレッジ」。郷育カレッジの講座のなかでも、地元の歴史ものは、安定した人気があります。そのなかでもさらに人気の高い、松本肇先生による現地訪問型の講座に、久しぶりに参加することが出来ました。日本考古学協会員であり、世界遺産となった沖ノ島の調査メンバーであったレジェンド・松本先生の講座は、いつも大盛況です。

世界遺産 『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群

13時集合、市のバスで宗像大社まで移動した後は、宗像大社本殿、高宮祭場、二の宮、三の宮、神宝館とまわり、海の道宗像館を見学してお終いの、約3時間のコースです。当日は、空気は冷たかったもののそれほど風は無く良く晴れて、参詣日和となりました。それぞれの場所での史跡・史料に関する解説はもちろん、松本先生が実際に調査に入られたときのちょっとしたエピソードの数々がとても面白く、あっという間に時間が経ちました。何度も足を運んでいますが、やはり高宮祭場の静謐な空気感は圧巻です。

宗像大社 高宮祭場

わたし自身、久しぶりの訪問となった宗像大社神宝館は、前回訪問した時よりもさらに展示工夫が凝らされ、展示室が暗くなったような気がしました(気のせいかも…)。展示資料の一点一点に焦点を当て、スペースを広くとった展示方法は、それぞれの資料への注目を高めてくれますが、昔の、雑然と大量のお宝が並んでいた展示状態を知っているわたし的には、「国宝8万点」を擁する割には見れる数が少なくて残念、という感想がよぎってしまいます。ともあれ、金の指輪や、ミニチュアの織機や、ミニチュアの五弦の琴、唐三彩の欠片、奈良三彩の小壺など、目玉の役割を果たす資料の数々がわかりやすく見やすいのは良いことですね。何度見ても見応えがあり、館を出るときには満足感に満たされました。海の道宗像館では、大きな画面で沖ノ島の映像を観ることが出来ました。

松本肇先生の講座は、先生の軽妙なトークが、受講生への一番の贈り物です。人気講座なので参加は毎回抽選になっており、来年受講できるかどうかはわかりませんが、来年も必ず申し込みたい講座のひとつです。

令和6年度デザイン開発ワークショップ第5回目―PR動画と小冊子の完成に向けて。

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令和6年度デザイン開発ワークショップ第5回目―PR動画と小冊子の完成に向けて。

福岡県の新事業支援課の事業のひとつ「デザイン開発ワークショップ」。昨年11月からスタートしたワークショップも、昨日で5回目が終わり、来月が最終回となります。前回(4回目)から今回まで約ひと月の間に、サンプル制作していた小冊子の見直しをし、昨年から構想していたPR動画第一弾も編集の最終段階を残すのみとなりました。今のところ及第点の進捗具合(あくまでも自己評価ですが…)なのは、やはりワークショップの機会を最大限に生かしたいから、そこに間に合わせようという意識が働くからであり、「仕事を見てくれる人がいる」ありがたさを感じています。

おかげさまで、小冊子、動画ともに大枠は決定し、あとは細部を詰めて仕上げていく段階です。わたしにとって前年度のワークショップは、「考え方としてのデザイン」「デザイン思考」的な部分でのブレスト機会であり、考え方を煮詰めていくのが主目的となっていました。それに対して今年度は、商業デザインに強く、知識と経験の宝庫である専門家の先生方から、具体的実践的アドバイスを頂くことがメインになっています。これは先生方としてもおそらく最も腕を振るえる分野であり、惜しみなく微細にわたるアドバイスを頂いているので、ほんとうにありがたい限りです。

北九州のワークショップグループは、2時間の予定をほぼ毎回(ときに大幅に)超えてしまいます。それは、各参加企業の取り組みへのフィードバックをきちんとしたいという先生方の気持ちの表れであり、ほんとうにありがたいなぁと思います。帰り際にワークショップを統括する先生が「参加する企業さんの売り上げに結びつかなければ意味がないので、そこを目指して頑張りましょう」とおっしゃってくださったのが、とっても嬉しかったです。

来月は最終回。利益を呼び込む成果物をきちんと仕上げられるよう、頑張ります!

読書『ロブスター』(角川書店)篠田節子著

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読書『ロブスター』(角川書店)篠田節子著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、「あ!篠田節子さん」と、久しぶりの名前を見つけて手に取りました。篠田節子さんといえば『女たちのジハード』です。というか、冷静に考えてみたら、わたしはその一冊しか読んでいなかったかもしれません。ただその一冊が、当時の我々世代の働く女性にとっては、共感を誘いインパクトが大きかったのでした。

さて本書『ロブスター』。角川書店の公式サイトでの紹介文では「私は人生の終着点を見つけてしまった 生と死の尊厳に迫る優しく美しい一冊」とまとめられています。たしかに美しさが漂う一冊ですが、わたしにとっては、若い主人公と一緒に自らの未熟さを突きつけられるような、なんとも苦い読後感が残るものでもありました。紹介文の末尾にある「人生の本質や、生と死の尊厳を、外から判断できるのか」の問いかけが重い本です。

主人公は若いフリージャーナリストで、物語のところどころで、「古い時代の」ジャーナリストから投げかけられた「裏をとったのか」の問いかけが、彼女の脳裏によみがえってきます。それはそのまま、読者への問いかけとなり、自分の目で確かめることなく、二次情報三次情報を鵜呑みにすることの怖さと、その状態がまん延してしまっていることへの警鐘が全編に流れています。そして人がなかなか思い込みから抜けだすことが出来ない怖さや、何の得も無くても「話を聞いて欲しい」その一心だけで嘘をつけるという弱さも。現在わたしたちが生きているすぐその先、あるいは既に、本書の物語が警告する世界があることに、自らへの反省と無力感を感じました。

ポップで可愛らしさのある表紙の絵は、読後に見直すと、なんともシュールに映りました。

『ロブスター』(角川書店)篠田節子著

読書『人気建築家と考える50代からの家』(草思社)湯山重行著

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読書『人気建築家と考える50代からの家』(草思社)湯山重行著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、タイトル買い(買ってはいませんので、「タイトル借り」ですね)。久しぶりの実用書(?)です。著者は本のなかで「エッセイだと思って読んでください」的なことをおっしゃっていますが、実用に役に立つであろう本。

著者は1964年生まれということで、ほんのちょっぴり上の世代。だからこそ、「住まう」ことについて、年代的にそろそろ考えた方が良いことなど、とても刺さる内容が盛りだくさんでした。60代で建てる家を提案した「60ハウス(ロクマルハウス)」「TOFUハウス」「ぴっころハウス」など、著者がこれまでに提唱してきたという家のパターンの面白さはもちろん、実家じまいの話、二拠点生活の提案、持ち家と賃貸の考え方など、興味深いお話がいろいろ。

自営業者としては、生活の拠点としてだけでなく、仕事の拠点としての「家」をも念頭に、いろいろと考えさせられる問いかけがたくさんありました。これから10年後、20年後をどう生きるか、どう働くか。我が家は仕事と生活が密接なので、毎年立てている事業の経営指針書に、「家」の要素を取り入れていくべきだなぁと、気づかされました。ともあれこの手のことを考えるのは、未来への不安以上にワクワクが伴うものであり、この本に出合えたのは良いタイミングだったと思います。

『人気建築家と考える50代からの家』(草思社)湯山重行著

読書『地面師たち』(集英社文庫)新庄耕著

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読書『地面師たち』(集英社文庫)新庄耕著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から文庫を発見。昨年Netflixで配信されて大きな話題となっていた『地面師たち』。我が家は配信サービスに加入しておりませんので観ていないのですが、出演者の豪華な(というか癖のある)顔ぶれが気になっていましたし、ストーリーの元となっている事件は、当時新聞を読んで「あの積水さんが」と衝撃だったのでした。というわけで迷わず手に取り。

実は本書を読む前に、やはりカメリアステージ図書館新刊棚で、本書のスピンオフ版『地面師たち アノニマス』(集英社文庫)を見つけて、こちらを先に読んでいました。地面師たちが地面師たちになる前の物語の短編集。その巻末に、Netflixで「後藤」を演じたピエール瀧と新庄耕氏による対談が収録されていて、それがまた面白かったです。

さて本書。「地面師」という存在と、そのやり方に驚きつつ、こんな世界があるのね、と読みました。淡々と読んできた後に、思いがけないラストが用意してあって、ちょっとびっくり。現実の詐欺事件を報道で知ったときに「こんなに頭の回転がいいのだったら、犯罪ではない方面で生かしてもちゃんとお金が稼げるだろうに」と思うことがよくありますが、なぜ「良い方向」に行けないのか、の理由が小説の登場人物たちの背景から見えてくるような気がしました。

読み終わってから、あらためてドラマ版での配役を確認。なるほどあの役をこの人が演じたのね、とイメージが膨らんで面白かったです。配信サービスを利用していないから観ることが出来ないというのは残念でしたが、本書のあとがきで、なぜこの作品が地上波のテレビドラマや映画にならなかったのかの理由も書いてあったので、なるほどと理解(笑)。でも、これだけのヒットになったのですから、映画化の話があらためて出てくるかもしれませんね。

ところで気になっていたとはいえ、わざわざ探してまではいなかった一冊が、簡単に目に付き手に届く場所においてあるというのは、「読もう!」を後押ししてくれるとっても素敵な仕掛けですね。おかげで『地面師たち』を読めました。カメリアステージ図書館新刊棚、秀逸です^^

日本フィル in Kyushu 2025北九州公演を聴きに行って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

日本フィル in Kyushu 2025北九州公演を聴きに行って参りました。

今年は日本フィルハーモニー交響楽団の、九州公演50回の記念年なのだそうです。福岡県では、福岡市のアクロス福岡シンフォニーホールと、北九州市の北九州ソレイユホールの二か所で公演があるので、どちらに行こうかなと思案した結果、まだ足を運んだことのなかった北九州ソレイユホールのチケットを取りました。

当日は祝日で、1週間ほど続いた寒気がやっと緩んで穏やかな晴れのお天気。JR西小倉駅から歩いて15分ほどの道なりには、小倉城、図書館、文学館、松本清張記念館、広々とした勝山公園と続きます。なるほどこの辺りは小倉の文教エリアなのだなぁと、嬉しくなりながらお散歩の先に、北九州ソレイユホールが現れました。

14時からの開演に先立ち、ロビーにはウェルカムコンサートの音が聞こえて華やかな雰囲気。席に着くときにはすでに贅沢な気持ちになっていました。そして、コンサート。もうね、ほんとうに素晴らしかったです。1曲目のエルガー「威風堂々」第一番作品39は、いつかは生で聴きたいとずっと思っていたもので、最初から泣かされました。2曲目のショパンは、ピアニスト仲道郁代さん。これまた感動的でした。そして最後は組曲「展覧会の絵」。第1曲から第10曲まであるのですね。これをすべて聴くことが出来たというのが嬉しかったですし、演奏の迫力あること、圧倒されました。

パンフレットの曲目解説で、「威風堂々」や「展覧会の絵」について、少し背景を知ることが出来たのも良かったです。

日本フィル in Kyushu 2025北九州公演

終演後外に出たら、まだ明るく暖かくて、ゆっくり帰路を歩きながら余韻をかみしめることが出来て、最高に贅沢な一日となりました。

1月の九響のニューイヤーコンサートといい、大満足の公演が続いています。次がまた楽しみです^^

読書『降りていこう』(作品社)ジェスミン・ウォード著/石川由美子訳

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読書『降りていこう』(作品社)ジェスミン・ウォード著/石川由美子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。こちらも「初めまして」の作家さん(たぶん)。作品社さんという出版社も、初めましての出版社さんだと思います。すべての読書記録をブログにつけているわけではないので、定かではありませんが。1979年創立で「硬派であるが人文・日本文学・海外文学・芸術・随筆など幅広いジャンルで独創的出版物を刊行」(作品社公式サイトより)ということです。その通り、読み応えのある一冊でした。

奴隷制度をテーマにした本といえば、わたしは真っ先に思い浮かぶのが『ルーツ』、そして『風と共に去りぬ』です。『ルーツ』はテレビドラマで広まったのが先で、当時わたしはまだ小学生。「人種差別」や「奴隷制度」の存在を認識した、一番最初のものだったと思います。『風と共に去りぬ』は、直接的に奴隷制度をテーマにしたものではありませんが、主人公が奴隷ではない人種・階層のため、そうした立場に都合よく描かれているという議論もあると言われていて、そうした議論も含めて奴隷制度が大きな主題のひとつになっていると、わたしは感じています。

さて本書『降りていこう』。作品社公式サイトの紹介文を借りれば「奴隷の境遇に生まれた少女は、祖母から、そして母から伝えられた知識と勇気を胸に、自由を目指す」物語です。この一文だけを読めば、冒険物語のような雰囲気も感じられますが、実際にはそのようなものではありません。「奴隷として生まれる」残酷な運命を背負ったら、そこから真の意味で自由を目指す=逃げ出すことはできない現実が押し寄せてきます。

「あんたの武器はあんた」という母の言葉を信じ、「でもその武器は何の役にも立たない」と絶望させられるいくつもの場面があり、それでも「あたしの武器はあたし自身」と自らに言い聞かせるようにして生きていく主人公の姿は、単純には言葉に形容できない強さを感じさせるものでした。

訳者のあとがきは、読後に読むことによって、本書の背景を理解するのに役に立ちました。また巻末に、アメリカ文学研究者である青木耕平氏による「附録解説」が別添されていて、こちらも奴隷制度の歴史を知る手助けになります。この附録解説は作品社公式サイト内にもPDFでファイル添付されているので、本書を手に取る前に読むことも可能です。

『降りていこう』(作品社)ジェスミン・ウォード著/石川由美子訳