読書『小林一三 逸翁自叙伝』(日本図書センター)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『小林一三 逸翁自叙伝』(日本図書センター)

ご存じ阪急グループの創始者であり宝塚歌劇の生みの親、小林一三氏の自叙伝です。30年近く前のことになりますが、会社員として大阪に勤務していたころ、阪急宝塚線沿線の石橋(池田市)に住んでおりました。まさに逸翁のお膝元。さらに会社では法人営業職で阪急グループを担当する機会に恵まれ、そのころはしょっちゅうグループ各社の本社におじゃましていました。そのようなわけで、勝手に親近感を持ち続けている小林一三氏。

ところがその当時は「忙しい」を言い訳に、住処からすぐ近くにあった逸翁美術館にはついに足を運ぶことなく。今考えるとなんてもったいないことを!です。仕事で阪急さんを担当していたので、法人のこと、創業者のことを知っておくべきであり、それなりに資料は読んでいたつもりでしたが、本をしっかり読む時間はとれず、これまた今思えば継ぎ接ぎの情報集めでした。若かったとはいえ、恥ずかしい限りです。

ともあれ、そんな継ぎ接ぎの情報から垣間見えた創業者像と、実際にその会社で働く方々の姿を通して感じた阪急さんの社風が、わたしは好きでした。大阪で仕事をしていた当時、すごい経営者・創業者の存在をたくさん知りましたが、なかでもわたしにとっての一番は、日清食品の安藤百福氏と、阪急の小林一三氏だったのです。そんなわけで、ずいぶん経った今になって、ゆっくり時間をかけて逸翁自叙伝を読むことが出来たのは、とても幸せな時間となりました。

さて本書を開けば、なんともまぁ、時代とご本人の気質を感じる風雅な文章です。私小説的な、とても個人的な記録に読みました。正直に言えば、今のご時世でこのような内容を公に文章にしたら、批判されかねないであろう要素も盛りだくさん(笑)。けれどもすべてが「そんな時代だったのだなぁ」というほかはありません。ビジネスの人というよりは、文化芸術の人であることが明らかな小林一三氏の、随所に見え隠れする気骨が魅力的です。

学校を出てから、阪急を作るまでが綴られています。個人的には、そのもっと先までを読みたいと思ったのですが、自叙伝ゆえの難しい部分もあったかもしれないな、と思いつつ。ご本人による「結び」=あとがきの日付が昭和27年で、御年80の寿の年。そう考えると、やはり途中で終わっている感はぬぐえません。これはこれとして、別の方が書いた伝記というか、ノンフィクションを読みたい気持ちが、読後に沸々とこみあげてきました。

ちょっと探してみようと思います。

読書『I’ll Drink To That』(集英社)ベティ・ホールブライシュ&レベッカ・ベイリー著/野間けい子訳

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読書『I’ll Drink To That』(集英社)ベティ・ホールブライシュ&レベッカ・ベイリー著/野間けい子訳

日本語タイトルは『人生を変えるクローゼットの作り方』。今どきの流行り要素がばっちりと組み込まれたタイトルに、なるほどヒットさせようと思うとこうなるのね…と驚きつつ。I’ll Drink To Thatを訳すと「乾杯」とか「一杯やろうか」というような感じです。確かにこれでは本の内容は伝わりにくいですね。そこで原著のサブタイトルが『A LIFE IN STYLE, WITH A TWIST』。「波乱万丈の人生」とでもいったものですが、「with a twist」で「波乱万丈」や「ひとひねり(ひと工夫)」的な意味になりますので、LIFEを生活ととるならば「ひと工夫ある生活」でもいいですね。

実際に読んでみると「波乱万丈の人生」であり「ひと工夫ある生活」でもありました。ニューヨークの高級デパートで、富裕な顧客へのファッションアドバイスを40年以上続けている、ベティ・ホールブライシュの自叙伝です。90歳になってもパーソナル・ショッパーとしての仕事を続ける彼女は、映画にもなっているそうです。わたしはそんなことはまったく知らず、いつものカメリアステージ図書館で見つけ、緑色のカバーとご本人の魅力的な表情に惹かれて手に取ったのでした。

結論からいえば、この本を読んで、邦題となっている『人生を変えるクローゼットの作り方』を実現できるのは、ファッションに資金を十分に投入できる方、という限定付きのお話になります。実も蓋もない言い方になってしまいますが。実際本書のなかでも、彼女のサービスの恩恵を受けることが出来るのは「富裕層」であることが大前提になっていることは、文中に何度もストレートに出てきます。そういう意味でも、邦題からイメージされるようなノウハウ供与の本では、まったくありません。さらに邦題サブタイトルが「あなたが素敵に見えないのは、その服のせい」となっているのですが、刺激的な文言ではあるものの、これまた本書の内容とはリンクしていません。

本を読み終わっての感想は、まずこの邦題タイトルと、内容とのズレの大きさ。著書『人生がときめく片づけの魔法』で大成功を収めている「こんまり」こと近藤麻理恵さん的なタイトルは、売るためのマーケティング戦略ゆえでしょう。なんだかなぁと思いつつも、この本を読んで良かったと思えたのは、ベティ・ホールブライシュご本人の生き様が興味深かったからに他なりません。ご本人がとってもチャーミングで素敵な方であろうことが、ビシビシと伝わってきました。なにより90代にして販売の第一線で仕事を続けているというのは、とても魅力的です。『ニューヨーク・バーグドルフ 魔法のデパート」(2013年)で、動く彼女を拝見することが出来るようですので、ちょっと見てみたいと思います。

『I’ll Drink To That 人生を変えるクローゼットの作り方』(集英社)

映画『エリザベス 女王陛下の微笑み』を観てきました。

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映画『エリザベス 女王陛下の微笑み』を観てきました。

2022年の決意のひとつ「月に1本は映画を観る!」。5月はうっかり映画館に行き損ねてしまいました。その分6月中に2本観ようと思いながらも、すでに後半。まずは絶対に見ておきたい、エリザベス女王の映画に行って参りました。上の写真は3年前に観た展覧会「英国ロイヤルスタイル」のもの。

英国ではこの6月に、女王在位70年を祝うプラチナ・ジュビリーの一連の行事が行われていました。この映画もそのお祝いに合わせての公開でしょう。1930年代から2020年代までのアーカイブ映像を、様々な視点でつなぎ直したドキュメンタリー。これだけの映像や音声が残っていることがすごいなぁと、まずはそこから感嘆。

現代史を生きてきた女王の姿に圧倒されました。編集意図があるのは重々承知のうえでも、「記録映像」そのものの持つ力、被写体となっているエリザベス女王の存在感。とにかくすごい人だなぁ、と。語彙が貧弱ですが、ほかに適当な言葉が見つかりません。歴代首相が女王と定例で意見交換をする習慣がずっと続いていて、それが単なるご挨拶の時間ではないことが、映像やインタビューから伝わってきました。チャーチル首相からはじまっているのですから、政治家にとっても、女王はまさしく国のかじ取りの生き字引的存在。単なるシンボルではない王冠の重さを垣間見ました。

また「開かれた王室」の在り方を、あらためて見せつけられました。あくまでも映像のイメージではありますが、国民との関係性も、政治とのかかわり方も、日本の皇室とは全く異なるように感じました。ひとことで言うと、近い。市民へのインタビューで「お母さんのような存在」というのが、文字通りの印象で伝わってきました。だからこそ、王室に対して愛情いっぱいに親しみを込める一方、間違っていることをしていると感じると、遠慮なく怒る。

エリザベス女王のアーカイブでは、プラチナ・ジュビリーに合わせてBBCが特集した「写真で見る」記事も、見ごたえがあります。日本語になっているので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてくださいね。

BBC News JAPAN【写真で見る】 在位70年、96歳のエリザベス英女王 写真で96年を振り返る

読書『はじめての越境EC・海外Webマーケティング』(WAVE出版)徳田祐希著

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読書『はじめての越境EC・海外Webマーケティング』(WAVE出版)徳田祐希著

先日お世話になった、中小機構さんのEC活用支援アドバイス。

担当してくださったアドバイザー・世界ヘボカン株式会社 代表 徳田祐希さんの著書があると聞いて、遅ればせながらゲットし拝読しました。面談前に読んでおくべきだった…と思っていたのですが、面談後に読んだのは、今回わたしにとっては正解でした。理由のひとつは、わかったつもりにならず、まっさらな状態で面談に臨めたから。そして、面談のなかでは理解が不十分だったところを、文字で確認し直し復習できたから。

以下、備忘。


  • 強い覚悟。
  • ニッチャー:独自市場・オンリーワン・価格は高く設定・独自の価値を切り出す。
  • ローカライズ:赤。余白が大きくシンプルなデザイン。
  • ドメイン:サブドメイン+手動翻訳で多言語展開。en.〇〇〇.com
  • コンテンツSEO。
  • トップページ:あらゆる検索意図をカバーできるような、ナビゲーションに近いページを目指す。
  • 商品カテゴリページ:具体的にどんな商品が並んでいるのかイメージが湧くタイトルで、カテゴリ分け。
  • 商品詳細ページ:お客様が商品を探すときに基準となる情報を漏れなく記載。トップページや商品一覧で狙っているワードは、無理のない範囲で商品詳細ページでもそのまま使う。
  • ブログ記事:トップページや商品一覧・商品詳細でカバーできなかったキーワードは、ブログ記事をつくることでカバー。
  • 「検索ユーザーが知りたいことは何か?」
  • メルマガ・ブログ・SNS運用:マニアックな質問に対してマニアックな回答を返す。
  • 人気コンテンツ=顧客が知りたい情報。
  • 投稿に一貫性を持たせる(少なくとも9つ)。
  • MATCHA
  • メールマーケティング。
  • オフライン流通。
  • オリジナルハッシュタグ。
  • Webサイト上に写真を多く掲載:使ってみた様子は?/どんな人が購入?/どのように梱包配送?
  • 実店舗の住所や写真を掲載:実店舗・取引先
  • カテゴリーページに説明コンテンツを挿入:カテゴリー上部に、特徴・選び方・おすすめアイテムを端的に説明するショートコンテンツ(100words程度)。
  • 商品価格に配送料を組み込む。
  • 送料・関税・配送日時などが海外顧客に最適化されているか細かく確認。
  • 限られたリソースを今どこに投資(投入)すべきか?
  • 資料請求:自社の価値を伝えるよう設計。
  • トップページでは企業モットーではなく「どんな課題を解決できるのか」を事例とともに訴求。
  • PR動画(5~10分):どのような会社なのか/代表はどのような人なのか/日本での販売状況は/商品の特徴や強みは/どうしてこの商品を作ったのか。
  • アウトバウンドの営業資料:顧客は誰か/顧客にどのような価値を提供できるのか。を、言語化できるようにする。
  • 役に立つホワイトペーパー。
  • 専門性の高さ:自社にとっての「当たり前」は、その業界や海外顧客にとって「当たり前」ではない。
  • 階段設計:問合せの一歩手前に資料請求のステップ。
  • 認知・情報収集→興味関心・課題形成→比較検討→商談・購買

『はじめての越境EC・海外Webマーケティング』より


「マーケティング」がタイトル前面に押し出されていますが、最後に「法律・制度」の章があり、越境EC事業の実際をたくさん扱っておられるボカンさんならではの知見と心遣いを感じました。と同時に、主に本の前半で語られるウェブマーケティングノウハウについては、越境に限らず国内ECにも同じことが言える部分が多く、広くECに取り組む事業者に役立つものだと思いました。

巷にあふれる動画のノウハウレクチャーはわかりやすい半面、個人的にはスピード感についていけないところも正直あります(汗)。なので、手元でたくさん書き込んだり付箋をつけたりしながら辞書的に使える本は、とても助かり。ボカンさんもYouTubeですごい数の動画を上げておられ、ノウハウを惜しげもなく公開なさっていますので、困ったときは関連動画と本を組み合わせつつ自分に理解を促す、という形をとることが出来ます。

面談していただいて、本も読んで、あとは実行。頑張ります!

はじめての越境EC・Webマーケティング(WAVE出版)徳田祐希著

読書『恐るべき子供たち』(角川文庫)ジャン・コクトー 著/東郷青児 訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『恐るべき子供たち』(角川文庫)ジャン・コクトー 著/東郷青児 訳

久しぶりに引っ張り出してきた『恐るべき子供たち』。あらためて表紙を見て驚愕しました。なんと翻訳が、東郷青児。洋画家の東郷青児です。思わず出版年を確認したところ、昭和28年初版となっておりました。20代の頃7年間フランスに滞在し、絵画、デザインなどを幅広く学んだといいます。コクトーが生まれたのが1889年、東郷青児が生まれたのは1897年となっていますから、まさに同時代を生きていたのですね。この文庫本はずっと家にありましたが、今回読んで初めて気がつきました。これだから読書は面白い。

さて『恐るべき子供たち』。読んでいる間の、切なく苦しい痛みは、何十年か前(!?)に読んだ時と変わりませんでした。細かい描写はまったく覚えていなかったものの、ぜんぶ隠してしまいたくなるような恥ずかしさと、キリキリするような痛さはそのまんま。ここまで極端ではないにしても、自分の子ども時代を思い返したときに、彼らの言う「(放心によって)出かけた」とか「宝物」とかのイメージは共感できるものが多く、それでも20代になる頃には、そのようなものとも折り合いをつけてきたと思います。本書を書いたのがコクトー40歳の時ですから、いかに生き辛かった人生かと思いました。薬物中毒になりながらの人生。でも巻末にある年譜によれば没年齢は74歳ですから、早逝というほどではないのが、意外といえば意外でした。

先日読んだ中原中也といい、コクトーといい、「生まれながらの詩人」の人生には、思春期がずっと続くような痛みを伴うのだろうと想像しつつの読書でした。中也の人生が1907年から1937年。コクトーが生きている間の半分に、中原中也も存在していたということになります。ここでも時代が重なっていた不思議を感じました。

「津屋崎千軒なごみ」で一人朝活。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。上の写真は津屋崎千軒のなかに数ある路地のひとつ。人一人やっと通れるところに、アジサイがきれいに咲いています。

「津屋崎千軒なごみ」で一人朝活。

2022年4月から指定管理者が変更となった「津屋崎千軒なごみ」。福津市津屋崎エリアの観光案内拠点です。運営者が変わるとこんなに変わるのね、な改革ぶりが目に見えて面白い今日この頃。オーナーは「市」なので、公的施設故の制約はもちろんありながら、そのなかでどこまでできるか!?公的施設だからこその利点をどう生かすか!?の気概を感じます。

さて地元民として「なごみ使い倒し」を企んでいます。花祭窯から徒歩3分にあるせっかくの施設、有効に活用したいもの。そのひとつとして試してみたのが「なごみ de 一人朝活」。なごみのオープンが朝9時なので、朝活と言うほど早朝ではありませんが。

月曜の朝、さほど人の気配がいたしませんでしたので、悠々と使えました。好きな場所に陣取り、スマホ片手に頭のなかのウォーミングアップ。公的な場所でのフリーWi-Fi環境整備が大幅に遅れている福津市内にあって、貴重で快適なWi-Fi空間です。現在のなごみスタッフの方々は、地元観光ビジネスについてのアンテナがとても高いうえ、グローバルな視点をお持ちの逸材揃いでおられます。おしゃべりをしつつ情報交換&意見交換&事務連絡。そうしているうちにカフェサービスがオープン(10-16時)したので、お茶タイム。この日は「桃のハーブティー」をいただきました。メニュー数は多くは無いものの、お茶も珈琲もさりげなくこだわりが感じられます。

席を立つ11時頃まで、人の出入りはさほどありませんでしたので、フリースペースでゆっくり一人ブレストできました。もし密閉空間が欲しいときは、和室を貸切ることも可能です。公的施設ゆえ、1時間当たりの賃料は数百円ととってもお得。平日午前中はそれほど混んでいないようなので、実際に出かけてみてから、気分や状況に応じて借りるのもいいな、と思いました。もちろん、複数人でのミーティングにも良さそうです。和室=畳ですので、ふだん椅子と机で仕事をしている方にとっては、目先が変わる効果もありそうです。

わたしにとって、ちょうどよい距離のところに、ちょうどよいスペースが出来ました。これからちょこちょこお世話になります。

読書『中原中也全詩集』中原中也(角川ソフィア文庫)

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読書『中原中也全詩集』中原中也(角川ソフィア文庫)

久しぶりに中原中也。初めて中原中也の詩にふれたのは、小学生低学年の頃だったと思います。おそらく教科書に詩が載っていたのだと思うのですが、今となっては定かではなく。ただただ「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」にノックアウトされたのが、最初の出会いです。

その後、中也に執着していたわけではありませんでしたが、進学した大学が「湯田温泉」にありましたので、どうしたって「中原中也」の影が見え隠れするのです。まあ、それを言ったら「種田山頭火」もそうなのですが。30年ほど遡る当時「金子みすゞ」は実は現在ほどメジャーではなく。これは、金子みすゞについての本を読むとどういうことかすぐにわかりますので、また別の機会に。とにかく湯田温泉の街を歩いていると、中也や山頭火の気配がするというのは、面白いものでした。山口という場所はとても不思議なところで、わたしは大好きです。

さて大学を卒業後はまたしばらく中也のことは忘れていましたが、思い出させてくれたのが、息子の誕生。『にほんごであそぼ』です。NHKのEテレ子ども向け大人気の同番組。そのなかに「サーカス」「よごれちまった悲しみに」など、中也の詩がいくつも出てきて久しぶりに再会したのでした。

と、個人的に十数年周期で中原中也の詩を読んできたところへ「全詩集」があるという話を聞いて、飛びついたのがつい先月のことでした。上の写真は、中也の写真としてはあまりにも有名なもので、本書の表紙です。それにしても、いつ見てもアップに耐える美形ぶり。肝心の「全詩集」は厚さ3センチを超えるずっしりとした文庫で、まあ、読みごたえもばっちりです。

ざっと全編読んでみて思ったのは、わたしにとって響く詩は、昔も今もあまり変わらないということ。「サーカス」「汚れちまった悲しみに…」「生ひ立ちの歌」「早春の風」「湖上」「一つのメルヘン」「また来ん春…」「月夜の浜辺」。

未発表の詩もたくさん載っているのですが、これはどうなのかな、と思いました。この手のモノを読むときにいつも思うのですが、故人には選択権が無く、ただ、まだ出すべきでないから未発表だったのではないかしらと思うと、読んではいけないような気がするのです。と思いつつ、目を通してしまいましたが。

巻末の大岡昇平による「中原中也伝」が読み応えありました。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその4。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその4。

先日張り切ってアップした「わたしの読書ベスト30-小説編。」。3回にわたって各タイトルへの「ひとことコメント」を書いて参りましたが、ついに今回ラスト30位までです。


24.ミザリー(スティーヴン・キング)
25.ハプスブルグの宝剣(藤本ひとみ)
26.イタリア・ルネッサンス(塩野七生)
27.手袋を買いに(新美南吉)
28.おおきなかぶ(ロシア民話)
29.蜘蛛の糸(芥川龍之介)
30.ジキルとハイド(スティーヴンソン)

『ミザリー』といばキャシー・ベイツ。映画が先でした。小説で読み直したのは、ずいぶん後になりましたが、映画で抱いたイメージが変わることはなく、違和感なく読み終わりました。ストーリーがわかっていても、小説は怖かった。小説の方が自分の脳内でイメージが膨らむので、怖さが倍増するということもあるかもしれません。

勝手に「藤本ひとみ祭り」と称して読んだここ数年でした。どれもこれも面白かったのですが、どれか一つと言われたときにパッと浮かんだのが『ハプスブルグの宝剣』。藤本ひとみさんの数ある著書のなかで、「男性が主役で格好良い」的なパターンが少ないなか、やや異彩を放つ一冊。個人的にはぜひ映画化してほしいと思っています。

そして、やっと塩野七生さんの本を読了できた!わたしにとって記念すべき『イタリア・ルネッサンス』シリーズ。シリーズ4冊「1 ヴェネツィア」「2 フィレンツェ」「 3 ローマ」「4 再び、ヴェネツィア」全部通して読んで欲しい本です。とにかく美しく、時間と空間を超えて旅をしたような読後感がたまりません。

続いて『手袋を買いに』『おおきなかぶ』と絵本2冊。絵本は自分が小さいときに読んだもので、息子が生まれたときに読み聞かせたいと思い、実際に再読したものがたくさんあります。『ぐりとぐら』だったり『ミッフィー』だったり、挙げはじめればきりがありません。そんななか、登場人物(と、狐)と一緒になってものすごくハラハラして、ラストにグッとくるのが『手袋を買いに』『おおきなかぶ』なのです。

ベスト30の最後に近くなって、『蜘蛛の糸』を思い出しました。これはわたしにとっては小説というよりは、お説教的なものでありました。最初に読んだのは小学低学年の頃だったと思います。「本を読んですごく考えさせられた」体験のかなり初期にあったものでした。芥川龍之介の本は、ほかにももっとあったはずですが、パッと思い出せませんでしたので『蜘蛛の糸』一択です。

最後に『ジキルとハイド』が滑り込み。「ジキルとハイド」的なものは、10代後半から20代前半のころ、個人的にかなり関心の高かった分野でした。ドロドロとして根源的なもの、人の本質を感じさせるテーマであり、当時も今も「あるよなぁ」と思わされるのです。


いやぁ、面白い振り返り。ちょっとした、自分の棚卸になりました。また何年後かに、ベスト30出し直してみたいと思います。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその3。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその3。

先日張り切ってアップした「わたしの読書ベスト30-小説編。」。その後、あれも入ってない、これも入れ忘れたと続々とベスト30候補のタイトルが思い出され、心のなかで謝罪している今日この頃です。一度書き出したことによって、記憶の奥底にあるものがのそのそと出てくる面白さを感じています。

本日はひとことコメント16位から23位まで。


16.サロメ(原田マハ)
17.サロメ(オスカー・ワイルド)
18.恋(小池真理子)
19.バックミラー(星新一)
20.妊娠カレンダー(小川洋子)
21.変身(カフカ)
22.15の夏(佐藤優)
23.蟹工船(小林多喜二)

同じタイトルの『サロメ』、わたしは原田マハさんの『サロメ』を読んでから、続けて本家本元のオスカー・ワイルドを読みました。この順番は、わたしにとっては正解でした。マハさんのストーリーでオスカー・ワイルドその人への興味が高まったところで本人の書いた本を読むことで、行間の深読みが出来たような気がします。

小池真理子さんの本は、実はほとんど読んでいません。最初に(たぶん最初だったと思います)読んだ『恋』のおどろおどろしさに、もういいかな、と思っちゃったのですね。一冊で、小池真理子ワールドお腹いっぱい。ただ、読んでいる最中は本を閉じることが出来ずに、一気に読んだのを覚えています。

星新一さんにハマったのは小学生の時。学校の図書室にあったのだと思います。短編集を読み漁っていました。彼の描くSF的世界観は、ときにコメディチックで面白く読めるものがほとんどであった印象なのですが、ときに振り返って空恐ろしくなるようなものもありました。数あるショートショートのなかで心に残っているのが『バックミラー』。この世界観のイメージは、いまだにカラー版で脳内再生されます。

つづいて小川洋子さん。『博士の愛した数式』ももちろん読みましたし、興味深いお話ではありましたが、わたしのベストは『妊娠カレンダー』。ママレードを大量に作り続けるくだりがなんとも気持ち悪く、それでいてなぜかわかるような気もして、そんな自分をも気持ち悪く思いながら読んだのでした。

カフカの『変身』を初めて読んだのは、10歳ごろだったと思います。「朝起きたら巨大な虫になっていた」という設定は、比喩的なストーリーとしてではなく、奇妙なリアリティをもって迫ってきました。とても他人ごととは思えず、「自分がそうなった時」を想定しながら読んでいました。大人になったあとも何度か読んでいますが、初めて読んだ時のような恐怖は無く。

『15の夏』は、私小説と位置付けて良いのかな、と思いつつランキングに入れました。知の巨人・佐藤優氏の本は何冊も読んでいますが(読んでも読んでも追いつきませんが)、実用書が圧倒的に多いなかにあって、一層この本の輝きを感じます。いろいろな意味で新鮮さを感じた本でした。

そしてなぜかここにランキングした『蟹工船』。「日本のプロレタリア文学の代表作」とされますが、プロレタリア文学のなんたるかは、わたしにとってはよくわかりません。ただただ、蟹工船の吐き気をもよおすような痛み・苦しみだけが印象に残っています。あ、そういう意味では『あゝ野麦峠』も同じです。こう考えると、日本の文学作品からのベスト30入りがもっと出てきそうです。


さあ、次回で30位までのコメントが揃います!

↓1位から5位までのコメントはこちら↓

↓6位から15位までのコメントはこちら↓

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその2。

先日張り切ってアップした「わたしの読書ベスト30-小説編。」。ベスト30をアップしてから、こうして数日たってくると、さらに『注文の多い料理店』が入ってなかった!『雨ニモマケズ』も失念してた!となり、自分に呆れております。実のところ『注文の多い料理店』は、必須でした。

とりあえず、1位から5位までのひとことコメントその1を出しましたが

本日は、6位から一気に15位まで。


6.グレート・ギャッツビー(フィッツジェラルド)
7.神の火(高村薫)
8.黄金を抱いて翔べ(高村薫)
9.照柿(高村薫)
10.人間失格(太宰治)
11.お父さんのバックドロップ(中島らも)
12.優しくって少しばか(原田宗典)
13.ひとまねこざる(H.A.レイ)
14.風にのってきたメアリー・ポピンズ(P.Lトラヴァース)
15.超老伝-カポエラをする人(中島らも)

『グレート・ギャッツビー』も、わたしのなかの「読んでいなかった名作を」シリーズです。この切なさ、狂気、登場人物の「ダメさ加減」への共感は、先述の『アンナ・カレーニナ』に近いものがあります。

7.神の火8.黄金を抱いて翔べ9.照柿高村薫。大阪でサラリーマンをしていたころの上司が「このハードボイルドがおすすめ!」と教えてくれたのをきっかけに、はまりました。このあと『マークスの山』や『レディ・ジョーカー』などが出てくるのですが、わたしのなかでは、特に初期の『神の火』『黄金を抱いて翔べ』の2冊が最高傑作です。ひとつには、当時法人営業職で歩き回っていた大阪のビジネス街のこと細かい描写と、大阪の特定のエリアがもつ陰鬱で怪しい雰囲気が、まさに日々目にしていたそのままで、たまらなかったのですね。

『人間失格』。ほんとうはこの本は1位なのかもしれないのですが、1位に入れるのが癪なので、10位にもってきました。小学校高学年から大学生の頃までほぼ毎年、繰り返し読んでいたと思います。読むたびに自分の受け取り方が変わるのが面白かったのです。太宰=ダメ男のイメージはずっと変わりませんが(笑)。

中島らもは『お父さんのバックドロップ』『超老伝-カポエラをする人』。らもも一時期読みまくりましたが、わたしにとってのベストはこの2冊です。切なくて涙が出てくる前者と、笑い過ぎて涙が出てくる後者。どちらも「らも」そのものです。

30年ほど前によく読んでいた原田宗典が、ここ数年読みまくっている原田マハと兄妹であるという衝撃の事実を知ったのは、つい先日のこと。わたしにとって原田宗典といえば『優しくって少しばか』なのです。

絵本『ひとまねこざる』は、シリーズがたくさん出ていますね。わたしが幼少期読んでいたのは『ひとまねこざる』『ひとまねこざるときいろいぼうし』『じてんしゃにのるひとまねこざる』の三冊。単純に「カワイイ」とだけ言ってはいられないおさるのジョージのキャラクターが好きでした。

実のところ『風にのってきたメアリー・ポピンズ』は、わたしにとってオカルト的な本でした。ちょっと怖い、気持ち悪い、だけど目を離すことが出来ない…という感じ。指をポキポキと折って、飴として子どもたちに与える場面など、とても恐ろしく。挿絵は素敵なのですが、頭のなかでイメージする場面は生々しかったものです。


今回は同じ著者のものが複数含まれましたので、一気に15位までコメントで振り返ることが出来ました。30位まであと2回くらいでできそうかな、と思います♪