できることを少しづつ:花祭窯は福津市カメリアステージ図書館の雑誌スポンサーになりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

できることを少しづつ:花祭窯は福津市カメリアステージ図書館の雑誌スポンサーになりました。

「雑誌スポンサー制度」を導入している図書館は多いと思います。雑誌スポンサーとなった会社や個人が、寄贈(購入代金を負担)した雑誌や新聞の最新号のカバーに広告を表示することができる、というのがよくあるパターン。1年ごとの契約が多いようです。図書資料を充実させたいけれども、図書購入予算は年々減少傾向にある、というのが全国的な公立図書館の課題となって久しいなか、編み出された方法の一つでしょう。

新聞や雑誌を図書館で閲覧したいという要望は高く、雑誌のタイトルが一つでも増えることは、図書館にとっても利用者にとっても魅力的なことだと思います。わたしは今「福津市立図書館協議会委員」の末席におり、図書館運営の実際を数値データで拝見する機会があるのですが、そのなかで、わたしがいつもお世話になっているカメリアステージ図書館では、雑誌スポンサー制度をやろうとしているものの、まだ1社(者)も契約が出来ていないということを知ったのでした。

図書館常連(自称)のわたしが、制度を導入していること自体知りませんでしたので、それは告知不足に他ならないでしょう!ということで、まずは最初の1件目に名乗りを上げることに。タイトル選定の方法や基準をどうするか、図書館内での決裁ルート・手順はどうなっているか、まずは1軒目をモデルとしてその道筋を付ければ、広く告知をしてスポンサー募集をかけることが出来ます。

寄贈額としては、スポンサーとなる雑誌の年間購読料ですから、負担が大きすぎるものではありません。それに対して、雑誌カバーに会社名や事業内容のコピーを入れることで、地域の方々に知ってもらえる機会となります。ただ、わたしたちとしては、花祭窯の名前を知って欲しいというよりも、「こういう分野に興味を持ってくれる人が一人でも増えたら嬉しい」という、ちょっとした布教活動的な要素に、雑誌スポンサーのやりがいを見出しています。というわけで、スポンサーとなる雑誌のジャンルは、アート・デザイン・建築に関連するクリエイティブ系のものを選びました。

これまで花祭窯では、寄付や寄贈という形での貢献は、単発では行ったことはあるものの、継続的な取り組みをしたことはありませんでした。いつも使っている図書館の「雑誌スポンサー」になることは、とても身近で継続しやすく、わたしたちらしい方法だと思います。何か取り組みたいけど、思いつかない!という皆さまには、ぜひ地元の図書館に走っていただき、雑誌スポンサーの募集があれば手を上げてみることをお勧めいたします^^

福津市立図書館(福津市立図書館、カメリアステージ図書館)雑誌スポンサー募集

読書『デヴィッド・ボウイ読本 完全保存版 2017 EDITION』別冊ステレオサウンド

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読書『デヴィッド・ボウイ読本 完全保存版 2017 EDITION』別冊ステレオサウンド

いつものカメリアステージ図書館、貸出カウンター横の特集コーナー。今回の特集は、どうやら音楽関係。音楽の秋、というところでしょうか。2017年版ですので、7年前のものです。棚を見て真っ先に目に留まり、迷わず手に取りました。横に同発行元による『大瀧詠一読本』も並んでおりましたので、一緒に借りようかとも思いましたが、いっぺんに借りてしまっては棚が寂しくなりますので、まずはデヴィッド・ボウイから。

さてデヴィッド・ボウイ。わたしのスタートは1983年のアルバム「Let’s Dance」でした。そこから70年代に遡り大好きになった、という感じです。新婚旅行でロンドンに行ったときには、マダムタッソーで蝋人形のボウイとツーショットを撮りました(笑)。ずっと私のヒーローで、その死は早すぎました。

本書では、ボウイの歴史を読むことが出来ます。なかでも関係者のインタビューが一番の読みどころでした。トップは写真家の鋤田正義氏。これは当然ですね。鋤田さんのお仕事を、直方谷尾美術館での展覧会で拝見したのは、2018年4月のことでしたので、本書が発刊されたのとほぼ同時期ということになります。ボウイが亡くなったのが2016年でしたので、そのすぐ後に、このような動きがあったのだなぁということが、わかります。

そしてインタビューの二番手を飾っているのは、ファッションデザイナーの山本寛斎氏。これまた深くうなずくところであります。直方谷尾美術館での展覧会でも、KANSAI YAMAMOTOを着たボウイを鋤田正義氏が撮った写真のインパクトは感動的でした。

山本寛斎氏がインタビューの中に、当時のクリエイティブのエネルギーの凄さを物語るものがありました。曰く、

「この時期(1970年代初頭)のボウイにはとても深く関わったけれど、それが当時ビジネスとして成立していたかと言われると返事に窮します(笑)。よく憶えていませんが、採算度外視てやっていたことは確かです。」(『デヴィッド・ボウイ読本 完全保存版 2017 EDITION』より)

一番上の写真はレコードジャケット。このなかに、キース・へリングを発見。先日観に行ったキース・へリングの展覧会のなかでも、音楽・ミュージシャンとの関係が特集された展示がありました。

『デヴィッド・ボウイ読本 完全保存版 2017 EDITION』。「完全保存版」を名乗るだけあって、何度も繰り返し読み、確認したくなる内容がてんこ盛りでした。今更ながら買おうかな。

読書『ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら』(サンマーク出版)眞邊明人著

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読書『ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら』(サンマーク出版)眞邊明人著

先日映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を観て、少々物足りませんでしたので、原作を読むべし!と手に取りました。

本、良かったです。おかげで、映画のあとに感じた残念さが払拭されました。ありがちな感想ではありますが、これを映画化して、ああなったのは、まあ仕方がないのかなと。ただひとつ驚いたのが、映画のなかで個人的にヒットだった「聖徳太子」が原作にはおらず、映画用の登場人物だったということ。「紫式部」も映画のみの登場で、まあこれは時節柄の登用だと考えられます。こういうことがあるのが、面白さでもありますね。

ラストに、徳川家康による演説シーンがあるのは、本も映画も同じなのですが、話している状況と内容はかなり異なります。そして、映画では説教臭くて鼻白む感じがあったそのシーンも原作本のなかでは、なるほどそれが言いたかったかとうなずける感じでした。映画だけを見てがっかりしていた方には、ぜひこの原作本を読んで欲しいです。

ところで「ビジネス小説」とわざわざタイトルに書いてあるのがなんとなく気になっていたのですが、出版元のサンマークさんのサイトによると、それもまた意図したものだとか。歴史小説でもあり政治小説でもありミステリー要素もある、というところですが、どのジャンルにあてはまるのかは、読者に委ねられているようです。

『ビジネス小説 もしも徳川家康が総理大臣になったら』(サンマーク出版)眞邊明人著

郷育カレッジ講座「楽しい健口(けんこう)ボイストレーニング」に参加して参りました。

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郷育カレッジ講座「楽しい健口(けんこう)ボイストレーニング」に参加して参りました。

7月初旬の開講式を経てスタートした、2024年度郷育カレッジ。

今年のわたしの受講一発目は「楽しい健口(けんこう)ボイストレーニング」。講師は、口腔機能向上ボイストレーナーであり歯科衛生士である一世ひろみさんです。ゴスペルグループを率いる一世さんは、ボイストレーニングの方法論を取り入れた「歌トレ」による口腔ケアを提唱なさっています。楽しく学べる健康講座とあって、郷育でも毎年人気が高く、長年講師を務めてくださっています。わたし自身、今回で3回目の参加でした。

こちらは一昨年に参加したときのレポート。このときは「早口言葉」を中心としたトレーニングを楽しみました。

毎年の講座で、毎回新しい取り組みをしてくださるからこそ人気が高く、一度参加した人が「また次回も」と思うのですね。

今年もまずは口腔機能についての座学解説と歯磨きの仕方(=歯ブラシの使い方)からスタート。その後は身体をゆっくり動かす準備運動から、反射テスト、関節回し、リズムストレッチ、発声・ボイストレーニングと続きました。QUEENの名曲「We Will Rock You」を使ったリズムストレッチでは、手をたたき足を踏み鳴らし声を出して大盛り上がり。最後はゴスペルの手話歌にも皆で挑戦しました。

一世さんの専門知識と実践経験に基づいた指導の素晴らしさはもちろん、参加者を引き付けるユーモアあふれる語り口や心遣いに、今回も脱帽です。初めて聴く曲でも時間内に皆で盛り上がるところまで運んでいけるのは、選曲から伝え方までしっかり考えられておられるからこそで、すごいことだと思いました。講座が終わって帰るときには皆さん笑顔。とっても楽しくためになる講座でした。

読書『犯人に告ぐ2』(双葉社)雫井脩介著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『犯人に告ぐ2』(双葉社)雫井脩介著

ブログタイトルは『犯人に告ぐ2』ですが、その少し前に『犯人に告ぐ』を読んでいて、本書の後に『犯人に告ぐ3』も読みましたので、『犯人に告ぐ』シリーズの読書記録ということで。

今年6月にいつものカメリアステージ図書館新刊棚で発見してしまった、雫井脩介さん。そこからまだ2か月ほどしか経っていないのですが、このブログに上げているものも上げていないものも含めて、まあ、ハマっております。

あまりに読んでしまうので、意図的に「雫井脩介断ち」をしていました(笑)が、お盆休みの読書用にと、『犯人に告ぐ』の続編に手を出しました。なんとなく、元から構想にあったというよりは、人気が高かったためにできた続編なのかなぁと感じました。『犯人に告ぐ』と『…2』では登場する警察側の主人公をはじめとした顔ぶれが引き継がれ、『…2』から『…3』では、警察側だけでなく犯人側の登場人物もゆるやかに引き継がれています。さらに『3』では思いがけず最初のストーリーへのつながりが示され、ほう、そうきたか!という感じで楽しめました。

個人的に『犯人に告ぐ』がとても面白かったので、続編はどうなのだろう?と思ったのですが、連日読書の一気読み。読みごたえがありました。一番最初のストーリーでは、警察側の描写が強く印象に残りましたが、『…2』『…3』と、あとになるにつれて犯人側の描写がより細かくなっていると感じました。その結果、犯人側に感情移入しがちに。「オレオレ詐欺」をはじめとした現代的な詐欺犯罪が描かれ、なるほどそんな仕組みになっているのかと、興味深くもありました。

『犯人に告ぐ』シリーズ(双葉社)雫井脩介著

雫井脩介さん、まだ読んでいない既刊本がたくさんありますので、まだまだ楽しみは続きます。

読書『世界で一番美しいマンダラ図鑑』(エクスナレッジ)正木晃著

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読書『世界で一番美しいマンダラ図鑑』(エクスナレッジ)正木晃著

お盆休みの読書用に、仕事の資料としてまとめて借りてきた中の一冊です。

やきもの(肥前磁器)の仕事をしていると、文様の存在が常に側にあり、そうした観点からもマンダラはとても興味深い存在です。やきものに描かれる伝統文様を見たり調べたりしていると、そこには仏教文化の影響や、シルクロード文化の影響が色濃く残っています。わたしは博物館学芸員資格課程を京都の佛教大学で学びました。ふだんの勉強は通信でしたが、資格取得には一週間以上の博物館現地での実習が必要であり、そのときは京都へ。そのなかでどっぷりと仏教文化のシャワーを浴びることができたのは、とても幸せなことでした。

「曼荼羅(マンダラ)」は、ただ見るだけでも、やはりとても魅力的な題材です。そんな曼荼羅の魅力をカラー写真をたっぷり使って解説しているのが、本書です。見ているだけでも楽しい一冊ですが、曼荼羅の基本的な解説がわかりやすく、各章での視点が面白く、文字通り「図鑑」的に使えそうです。なかでも「第3章立体マンダラ・都市マンダラ」の観点は、わたしにとっては新鮮でした。これは手元に置いておきたい一冊です。

『世界で一番美しいマンダラ図鑑』(エクスナレッジ)正木晃著

かつてわたしは文様の面白さを皆さんに伝えたい一心で、『蕎麦猪口の文様小話』なる小冊子を自費出版で制作しました。今確認したら2004年に出していますので、ちょうど20年になります。本書を読んで、そろそろ改訂版を出しても良い頃かな、と思いました。

ところでエクスナレッジさんからは、「世界で一番美しい図鑑」シリーズが出ているということがわかりました。「世界で一番」と言い切ってしまう強さが素晴らしい。

エクスナレッジ「世界で一番美しい」を含む書籍一覧

読書『約束』(早川書房)デイモン・ガルガット著/宇佐川晶子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『約束』(早川書房)デイモン・ガルガット著/宇佐川晶子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。洋書で目に留まるものの多くが「早川書房」から出ているということに、なんとなく気が付いてはいたのですが、これもそんな一冊でした。

舞台は南アフリカ。この地のこともまた、わたしは「南ア=アパルトヘイト」的な世界史の記号として覚えているだけで、まったくわかっておりませんでした。アパルトヘイト以前から、以後の、移り行く時代を生きたある家族の物語。宗教、制度、戦争…価値観が大きく変わるなかでの生きづらさが、閉塞感を感じさせる一冊でした。

主人公の小さな女の子が少女となり、大人になり、その過程で彼女を取り巻く環境は大きく変わり、それでも彼女の持つ信念の1点はまったく揺るがず、最後には希望とも言い切れないような希望が灯って終わります。彼女がこだわり続けたものは、いったい何を象徴するものだったのか、わたしにはまだ理解しきれていないという思いが残る読書でした。

『約束』(早川書房)デイモン・ガルガット著/宇佐川晶子訳

それにしても早川書房さん、今年に入って読んだ本で、このブログで紹介したものだけでも、かなり濃い顔ぶれです。ありがたいことです。

↓こちらは洋書ではありませんが、洋書的雰囲気満載の一冊でした↓

↓わたしのフランス文学のイメージを変えた一冊↓

↓古典ミステリーの新版もありました↓

↓離婚した元夫婦の関係性が面白く描かれた名作↓

↓現代イタリアが舞台ながら普遍的なストーリーが心に刺さりました↓

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その2

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その2

原題は『YOUR BRAIN ON ART How the Arts Transform Us』。わたしにとっては、齋正弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』、元資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた『美 「見えないものを見る」ということ』、そして山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』に続く、アートエデュケーターとしての指針盆になりそうです。先日「その1」をまとめたところでした。

続き、本日は第3章から備忘。


  • 落書きやぬり絵、思いのままに絵を描くことは、いずれも前頭前野皮質を活性化させる。
  • 「絵を描いているときはいわゆる単調な状態になる。いつもとは違う頭の部分が働いているんです。普段はスイッチが入っているところがオフになります。そしてオフになったときは、自分の感情について、というよりあらゆることについて会話をしやすくなる。(後略)」
  • 絵を描くことは脳波の活動を変化させ、前頭部への血流を増やし、精神の回復力にプラスの影響を与えることが明らかになっている。
  • アートが瞑想に近い状態を引き出し、生理機能の自己調節を促す
  • アートを利用して瞑想に近い状態を育む
  • 創造しては手放すというこの工程のなかに(中略)、無意識へと入り込む道(がある)
  • (粘土)手でリズミカルな反復運動を行うと脳内でセロトニン、ドーパミン、オキシトシンの分泌が促されることが報告されており、そのため気持ちが少し楽になった
  • 年度は両手を同じように器用に動かして取り組む数少ない創作材料の1つであり、意識と無意識のどちらにも働きかけることができる。
  • 書くことで個人的で感情的な物語にあえて入り込むことは、心身の不調を軽減する効果がある
  • 書く行為を通して、自分の心の位置付けを把握する方法を学びとり、書き終えたときには自分がどのように感じ考えているのか、より多くの情報が得られるようになっている。
  • 肉体的な感覚を経験することにより、頭で考えることから抜け出し
  • アートが完成したら共有する場を設け、(中略)完成させたものの意味を説明できるようにする。
  • これはアートの「出来栄え」を評価することが目的ではない
  • 生活にアートを取り入れる機会が年に1、2回だとしても、死亡リスクは14%下がる。
  • 生涯にわたり美術館やコンサート、劇場に足を運ぶといったアート活動を行うと、加齢に伴う認知機能の低下を遅らせる効果もある。
  • 美やアートは高尚なものではない。人生の基礎である。
  • アートや美が教育や仕事、生活に統合されたとき、私たちの学ぶ能力が強化される
  • 持続的幸福
  • 「この絵のなかで何が起きているでしょう?」「ほかに気づいたことはありませんか?」
  • ただ目の前の柄を解釈すればよい
  • 好奇心は進化に必要なものとして、人の脳に織り込まれてきた。
  • 進化の目的は、予測不能な世界で最善の判断をできるように適応すること
  • アートは内省のきっかけとなり、それぞれが自分なりの洞察を得て、他者の視点を理解し
  • 人が普遍的に美しいと感じる現象がある
  • 美の認識の多くの部分は個人に依存する
  • 感嘆
  • 積極的に畏怖の念を経験している人々は、自主規制をあまり求めず、不確かさに対する耐性が比較的高い。
  • 創造性―「自分が大切にしているもの」を取り戻す
  • フロー
  • ある活動そのものに完全に没頭している状態。自我は消失、時間は飛ぶように過ぎる。そして新たなアイデアが生まれる
  • 内なる台本を書き換えるために舞台に立つ
  • 「正常」なものの外に出て、あっと驚く
  • 自分以外の誰かのケアにあたるときは、あなたには自分自身をしっかりと労わるための追加的な手段があり、自分の心身の健康を回復することは習慣になっている。そしてアートと美のツールキットは大いに頼りになる。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳 より


今回も十分に長くなってしまいましたね(笑)。わたしは「美術」の観点から読んでいるので、そちらに偏った備忘メモになっていますが、本書では美術以外の芸術…音楽や演劇やダンスやいろいろ、とのかかわりについてもたくさん述べられています。なので、ご興味のある方は、ぜひ本書を読んでみることをお勧めいたします。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳

キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

9月に郷育カレッジで講座を担当する「知識要らずの美術鑑賞」のために、福岡市美術館での打ち合わせ。打合せは午後からでしたので、午前中から足を運んで、開催中の「キース・へリング展」を見て参りました。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)

そもそもは、昨年の学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」でのこと。山梨県にある「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんによる「社会課題と向き合う美術館活動」の実践報告の発表を聴いてディスカッションするという、稀有な機会に恵まれました。そのときに「来年は福岡市美術館で展覧会があります」と聞いて、楽しみにしていたのでした。

キース・へリングが向かい合った(’80年代当時の)社会課題と、彼の社会活動の「いかに」がバンバンと伝わってくる展覧会でした。展示を通して響いてきたのは、思っていたよりも「もっと重く、もっと切実」な、キースの叫び。「イコンズ」と名付けられた、ポップでカラフルなアイコニックな作品が、キース・へリングを印象付けるものとして有名ですが、その奥にある危機感が迫ってきました。

会場は一部展示室を除いて、写真OK(フラッシュ撮影や動画はNG)でしたので、今回のわたしに響いた「これ!」を、以下にちょっぴりお裾分け。写真NGの部屋は、1988年来日の際の東京でのイベント資料を展示したものでした。ちなみにダンナは当時東京でグラフィックデザイナーをしていて、「生キース・へリング」をその時に見ていたとのこと。そんな話を聞くと、自分たちの少し先を走っていた方なのだなぁと、実感します。

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展@福岡市美術館

わたしは、表面的に社会的な課題をちりばめた「現代アート(コンテンポラリー)」と呼ばれているものに懐疑的なのですが、今回の展覧会を見て、これこそが「いわゆる現代アート」なのだと分かりました。考えさせられ、見応えのある展覧会でした。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)は、会期残すところちょうどあと一か月9月8日(日)です。おススメです。

山梨県にある「中村キース・へリング美術館」にも、そのうちぜひ行ってみたいと思います。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

原題は『YOUR BRAIN ON ART How the Arts Transform Us』。こんな本を待っていた!というところです。帯に『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』の著者・山口周さんが「答えは本書にあります」と推薦コメントを寄せていますが、まさに、科学的・実証的エビデンスでその答えを明示したと言えるのかもしれません。

400ページ越えを二日間かけて読了しました。わたしのアートエデュケーションの原点となる本ベスト3は、齋正弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』、元資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた『美 「見えないものを見る」ということ』、そして山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』なのですが、それに本書を加えなければなりません。

さっそく以下、備忘。


  • 神経美学
  • 感覚的に豊かな環境では学習の効率が高まり、記憶の定着率が高い。
  • 『20分間のアート』
  • あなたは脳だけでなく、身体全体で世界を取り込んでいる
  • 環境的経験に応じて動物の脳に構造的変化が生じる
  • 脳が生涯にわたって環境的な刺激に反応し、物理的に回路を書き換え、新たな経路を生成する
  • 究極に豊かな環境は自然である。自然は最も美しい場所であり、それはわたしたちが生まれた場所であるからにほかならない。
  • 文化、経歴、生きている時代や場所といったことのすべてが、物事をどのように受け止め、反応するかを特徴づける。
  • あなたが美しいと認識する経験がある。その経験は、あなたと、あなたの生物学的特質と環境に特有の要素が混ざり合ったものから成り立っているが、同時にあらゆる人々が美しいと思わずにはいられない普遍的な要素も含んでいる。
  • 「アートでも建築でも、人が創造したものはその形になってからほんの数千年しか経っていない」
  • 美しさはいかなるときも、見る者の目のなかにのみ存在している。
  • どこで生まれ、どのように育ち、それぞれどのような経験をしてきたのかといったことが重なり、なにを美しいと感じるかが決まる。
  • (アートと美は)人間のありとあらゆる経験に感情的に結びつくことを可能にする。
  • (アートは)本来ならば難解で不快な考えや概念に向き合うための媒体となる。
  • アートには(中略)感情を解放させる作用がある。
  • あなたの知覚は、あくまでもあなたにとっての現実にほかならない。
  • DMN(デフォルトモード・ネットワーク)はあなたが美しいと思うもの、記憶すべきだと思うもの、意味があると思うものを、それ以外のものと区別するフィルターであり、アートと美を私たち1人ひとりにとって、きわめて個人的な体験にする役割を担っている。
  • 「形は感情を模倣する」
  • 私たちが意識的に考えることと、生物学的な感覚は必ずしも一致しない(「オシャレ」と思った部屋が、本当に心地いいとは限らない)
  • 周囲に対する自分の美意識は、(中略)先入観や偏見、長年の考え方にとらわれていないか?
  • アートとは自分の身体状況あるいは感情の状態を変化させ、幸福感を高める活動である。
  • アートの創作に長けている必要も無ければ、得意である必要すらない。
  • わずか45分間アートの創作に取り組むだけで、田尾藩の人々において、スキルや経験の有無とは一切関係なく、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの低下が見られた。簡単な材料などを用意して、出来栄えを気にせずに取り組めば、誰でも自宅で同じことができる
  • 週に1回以上アート活動を行うか、少なくとも年に1、2回は文化的な催しに参加する人は、そうでない人よりも生活の満足度が優位に高い
  • ストレスとは気分屋感情ではなく、感情に対する生理的な反応だ。
  • 20分間ほど色をぬるという単純な行動によって不安やストレスが和らぎ、充足感が高まり、気持ちが落ち着く
  • ぬり絵は体系的な作業なので、混沌とした暮らしに秩序をもたらす効果がある。
  • 「小さな創造性」の活動
  • マンダラはひじょうに複雑なため、不安や頭に付きまとう思考から注意を切り替えなければならないほど高い集中力が求められ、それが気持ちを落ち着かせる構造と方向性を与える
  • マインドフルネス・アートセラピー
  • 自然は究極の美的経験
  • ストレス症状を和らげるには、自然の本質的な美に根差した空間を意識的に整えることが効果的
  • 「社会的処方」
  • 社会的処方では、(中略)ニーズに合わせて文化的活動を勧める。
  • こうした(文化的)活動は日常生活に取り入れられることが大切で、時間やコストが多くかかるものである必要はない。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳 より


ここまでで全7章のうちの第2章までです。わたし自身のアンテナがこの1-2章に特に集中したということでもあるのですが、思っていた通り長くなりましたので、続きはまた次にいたしましょう^^

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳