今年最初の九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年最初の九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。

九州国立博物館は、新年の展示で徳川美術館の「初音の調度」をするのが恒例になっていました。毎年、ポスターやウェブサイトで展覧会情報を目にしては「すごいなぁ、観に行きたいなぁ」と思いながらも足を運べずにおりましたが、今年ようやく観に行くことが出来ました。会場は常設展示フロアの4階「文化交流展示室」内。「九博は常設がすごい!」は、わたしが常々感じ、言いふらしていることです^^

さて「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。美しい!のひとことです。なかでもわたしが一番惹かれたのが、こちら。

九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」

大きな箱の中に、小さな箱が12個おさめられているというもの。その一つ一つが精緻で美しいのですから、蒐集心がくすぐられるといいましょうか、なんとも欲しくなりますね。展示されている小さな箱は11個で、ひとつ紛失したようだとの説明書きがありました。

いつもの「田中丸コレクション」の部屋でも美しいものをたくさん拝見。古伊万里は長年いろいろなところで現物や資料を見ているので、見覚えのあるものが多いのですが、今回「これ初めて見たかも」というものを見つけて嬉しくなりました。特別展の会期中では無かったので、来場者数もそれほど多くなく、ゆっくり楽しむことが出来ました。眼福眼福。

そして、今回の九博訪問で何が一番嬉しかったかと言えば、長らく空き店舗となっていたスペースに、ようやくレストラン&カフェが登場したことです。わたしが行ったのは特別展の無い平日の午後でしたが、そこそこ賑わっていました。これまでこのようなくつろげるスペースが無い状態だったことが、美術館愛好家としては懸念すべき状態だと感じていましたので、関係者でもないのにホッとしました。

昨年度は3階特別展示室のリニューアルのために販売が停止されていた「九博メンバーズプレミアムパス」が、今年は特別展「はにわ」から再開するという嬉しいニュースも。九博開館20周年記念の年なので、2025年度の特別展にも、大いに期待しているところです。

九州国立博物館

読書『耳に棲むもの』(講談社)小川洋子著

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読書『耳に棲むもの』(講談社)小川洋子著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で発見した、久しぶりの小川洋子さん。わたしのなかで、小川洋子さんといえば『妊娠カレンダー』です。小川洋子さんといえば『博士の愛した数式』とおっしゃる方も多いですね。読んでいて日本語のやさしさとか美しさを感じる本でした。が、わたしにとってはやはり『妊娠カレンダー』の印象の方がずっと大きいままです。

さて『耳に棲むもの』。まず目を引いたのは、その表紙の不思議な絵でした。そして手に取ったら、小川洋子さんの著書だった、ということで。前情報無しに読みはじめました。最初の2編を読んでいるときは、短編集なのね、と思いました。たしかに、講談社のウェブサイトにも「作品集」と説明されています。が、独立しているように見えたそれぞれの物語はつながっていました。こういうのを何と呼べばよいのでしょうね。一つ一つ別のものとして読んでも、通してひとつのものとして読んでも、無理なく成立するしなやかさを感じます。

物語のトーンは全体的に淡々と落ち着いていて、日本語のやさしさが響いてくる感じがあるのですが、内容はちょっと不思議で、紙一重で気持ち悪さもある…という読後感です。読みながら「ああ、小川洋子さんの小説の雰囲気ってこんなふうだった」と思いました。単純に「いいお話だった!」とはならないのが、魅力なのかもしれません。

あらためて巻末の作家情報を読み、小川洋子さんの著書で読んでいないものがたくさんあることに気が付きました。遅ればせながら、遡ってみようと思います。

『耳に棲むもの』(講談社)小川洋子著

九州交響楽団のニューイヤーコンサート2025が素晴らしくて大満足♪

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九州交響楽団のニューイヤーコンサート2025が素晴らしくて大満足♪

「ニューイヤーコンサート」なるものに出かけたのは、初めてかもしれません。九州交響楽団のニューイヤーコンサートは、華やかでサービス精神にあふれ、素晴らしい時間でした。これから定番行事にすること決定です。

昨年一年足を運んだ定期演奏会は、空席が目につくことも少なくありませんでしたが、たくさんの人出でした。いつもはそれほどドレスアップした人を見かけませんでしたが、着物姿の方々が何人もいて、まず観客席から雰囲気が違いました。ロビーで開演を待つ人々の様子もなんとなく嬉しそうに見えます。

開演時間になると、今度はオケの女性陣のドレスの華やかさに気持ちが浮き立ちました。いつもはブラックで統一されていて、それはそれで格好良いのですが、色とりどりのドレスで楽器を抱える皆さんの姿の美しいこと。思わず観客席のあちらこちらから、控えめながら歓声が上がりました。

曲目は、ワルツやポルカが多めで明るく楽しい雰囲気。ソプラノの小川栞奈さんの歌声も美しく、見応え聴きごたえがありました。個人的には、ジャック・オッフェンバックの「ホフマンの舟歌」を聴くことが出来たのが、とっても嬉しかったです。もうずいぶんと前のことですが、映画『ライフイズビューティフル』のなかで流れてきたこの曲が耳に残り、YouTubeで歌劇の映像を探して繰り返し聴いていた時期がありました。生のオーケストラで聞く機会があると考えてもいませんでしたので、ご褒美を頂いた気分でした。

ひとつひとつの曲について、指揮の太田弦さんがわかりやすくユーモアを交えて解説してくださるのも、素人のわたしにはとてもありがたく、ちょっとした演出もたのしく。圧巻はアンコールでした。手拍子で客席がオケに参加できた一体感は、感涙もの。「絵をかけなくても、知識が無くても、美術愛好家」を掲げるわたしにとって、「楽器が出来なくても、知識が無くても、音楽愛好家」を全面的に受け入れてもらえたような嬉しさがありました。

最後は、ホールの舞台を飾ったお花が当たるサプライズ付き。プログラム冊子に「当選シール」がある人は、お花の鉢植えを頂いて帰ることが出来ます!ということで、50ほどあったのでしょうか、なんと当選。そのお花がこれ。

九州交響楽団ニューイヤーコンサート2025

とってもとってもとっても豊かな気持ちになって帰途につきました。九州交響楽団最高です。

冬らしい寒さのなか、今年も初釜茶会@南方流円覚寺に参加できた嬉しさ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

冬らしい寒さのなか、今年も初釜茶会@南方流円覚寺に参加できた嬉しさ。

新年のお稽古のスタートは、初釜茶会から。前日のお茶室の準備・お掃除で、お茶会がはじまります。当日の天気予報に雪マークがついていましたので、少し心配していましたが、なんとかお天気がもってホッとしました。着物を着るので、雨やら雪だとちょっとたいへんで、やはり晴れてくれた方が嬉しいのです。

南方流の初釜は、師匠である和尚さんのお点前をじっくり拝見することのできる、貴重な機会です。今年はコロナ禍下前までの初釜の習慣=薄茶を頂いた後にお屠蘇をいただきお弁当とぜんざいを頂く、が復活しました。そういえば、こんな風にしていたなぁと、思い出しつつ。

今年は参加者が50名ほどおられたようで、1席20名超で二席。「広間の茶会」とでもいうのでしょうか、大勢で楽しむお茶会もまた楽しかったです。わたしの席は、和尚さんのお点前がすぐ近くに見える場所でしたので、その幸運にも感謝。手の動き、身体の動きの美しさに、我が身を反省しつつ拝見しました。

久しぶりの方々にお会いできることも、お茶会の嬉しいところ。お稽古の曜日が異なると、会いする機会も年に数回となりますので、お元気そうなお顔を拝見してホッとしたり、それぞれに近況報告して時間の流れに驚いたり、ということができるのも、嬉しく貴重な機会です。

初釜に限らず、お茶会ではいつも「写真を撮る」という気持ちの余裕が生まれず、そのことに気づいて、帰り際に玄関で撮った写真がこちら。

南方流初釜茶会2025

このように、門から玄関から廊下、待合、お茶室に至るあちらこちらに、お花やら縁起物が飾られています。このようななかでお茶会に参加できることのありがたさ。今年も精進いたします。

読書:季刊誌『AXIS 2025.1 winter』株式会社アクシス

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書:季刊誌『AXIS 2025.1 winter』株式会社アクシス

いつものカメリアステージ図書館の雑誌スポンサーとなり、提供誌として『AXIS』の定期購読を選んだのは、昨年夏のことでした。

その後、図書館のカフェで読もうと思いつつ、実際はカフェでゆっくりする気持ちの余裕が無くて借りてきて読むことになり、読むほどに「これは手元に置いておきたい」の欲求が高まり、という感じで、ついには花祭窯でも定期購読することに。手元にずっとあることで、気になったときにページを開けるのが、やはりいいですね。

写真も文章も、興味をそそられるものがたくさんで、この一冊で、自分の視野がだいぶ広がったのがわかりました。わたしは昨年『AXIS』の存在を知ったのですが、ダンナはもともとキャリアのスタートが「グラフィックデザイン」なので、当時から手にしていたようです。AXISがスタートから40年と書いてあって、ダンナのデザイナー業のスタートとほぼ重なっていたということがわかりました。

今回気になったキーワード&テキストを備忘。


  • 情報が少なかったことが、美意識を形成するのにはすごく尊い時間
  • その1着が誰かの人生をどれだけ豊かにできるか。
  • 「つくり手半分、受け手半分」(三宅一生のことば)
  • プロセスの最適化
  • 歴史的な思考から新たな創造を始める
  • coconogacco(ここのがっこう)
  • 芸術教育の場「アルスシムラ」
  • 日本の教育環境には、美大や芸大以外で「美を育む教育」の場が不足し、そのため多くの人が「美」を特別扱いし、自らが関われるものではないと捉えているのではないか。
  • 自然に負けながら、自然をつくる
  • 3Dプリント建築
  • ラグジュアリーを再定義する
  • 「価値を後世に残す」という意思を持って見守る活動に取り組んでいる人たち
  • 真の意味での豊かさや人間性を取り戻すこと
  • 精神的に豊かさを求める暮らし方というのが一周回ってラグジュアリーと呼べるのではないか。
  • 質的なリサーチ

季刊誌『AXIS 2025.1 winter』より


今号では「持続可能性」「サステナブル」が中心テーマのひとつになっていました。昨今、あちらこちらでSGD’s関連で語られるものには、マーケティング的に「乗るべき流行」としての位置付けのものが少なからず、食傷気味なところがありましたが、本誌では違いました。上っ面な偽善的提案ではなく、しっかり考えるべきこととしての位置付けが示されていると思いました。また美術や伝統工芸について、ものづくりの作家性について、本気で心配して教育活動をスタートしている方々がいることが記事にいくつも見受けられ、とても嬉しい気持ちになりました。次号も楽しみです^^

デザイン誌『AXIS』

読書『おとなのOFF 絶対見逃せない2025年 美術展』(日経TRENDY)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『おとなのOFF 絶対見逃せない2025年 美術展』(日経TRENDY)

2025年読書記録の一冊目は、本というか雑誌ですが、毎年恒例の美術展情報。この手の美術展情報誌は毎年初めに数種類出ているのですが、比較的近所の本屋さんで手に入るのが「おとなのOFF」ということで、ここ数年の定番になっています。

さっそく中身を見ていきますと、まず気が付くのは、今年は京都・大阪など関西方面の美術館博物館で力が入っているなぁ、ということ。ここ数年、大阪の美術館でリニューアルのための休館をしているところが多いな、と思っていましたが、万博開催に合わせていたのですね。と、今頃気が付きました。関西に日本の国宝が大集結するようです。

今年はゴッホやら印象派やらの展覧会が目白押しのようです。日本に限らないことかもしれませんが、ゴッホも印象派も、根強い人気ですね。そんななか、本書で紹介されていたなかで個人的に気になった展覧会ベスト5(順不同)は次のとおりです。

  • 西洋絵画、どこから見るか?-ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館vs国立西洋美術館(国立西洋美術館、京都市京セラ美術館)
  • 異端の鬼才-ビアズリー(三菱一号館美術館、久留米市美術館)
  • ブルックリン博物館所蔵特別展 古代エジプト(森アーツセンターギャラリー)
  • 絵金(サントリー美術館)
  • 九州国立博物館20周年記念 特別展 九州の国宝 きゅーはくのたから(九州国立博物館)

そして、展覧会内容に関わらず、個人的に今年こそ足を運びたい館ベスト5(順不同)はこちらの顔ぶれ。

  • 泉屋博古館京都本館
  • 大阪市立東洋陶磁美術館
  • 大阪中之島美術館
  • 大阪市美術館
  • 福田美術館

足を運びたい館は、みごとに関西方面に集中しました(笑)今年は大阪での藤吉憲典の個展がありますので、それに合わせてひとつでも回ることが出来たらいいな、と。それから九州国立博物館が20周年なので、こちらもきっといろいろと企画があるはずで、楽しみです。2025年も素晴らしい展覧会と出会えますように^^

『おとなのOFF 絶対見逃せない2025年 美術展』(日経TRENDY)

今年もまぁまぁたくさん読むことが出来ました~2024読書ベスト10!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年もまぁまぁたくさん読むことが出来ました~2024読書ベスト10!

まだ本日を含めてあと4日ありますが、おそらく今読んでいる本のシリーズが年内ラスト読書になるかな、と思います。今年はうっかり上半期のベスト5を出すのを失念していましたので、一気に年間ベスト10を上げていきたいと思います。

と書いたものの、困りました。振り返ってみたら、どれもこれも面白かったもので、とても10冊におさまりません。が、なんとか絞り込んでみましょう。ベスト10ですが、順不同の10件ということでご了解ください。読んだ時期の早い順に並べてみました。


『新古事記』(講談社)村田喜代子著

『犬のかたちをしているもの』(集英社)高瀬隼子著

『家庭用安心坑夫』(講談社)小砂川チト著

『バッタを倒すぜアフリカで』(光文社新書)前野ウルド浩太郎著

『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』(早川書房)高殿円著

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳

『犯人に告ぐ』シリーズ(双葉社)雫井脩介著

『関心領域』(早川書房)マーティン・エイミス著/北田絵里子訳

『哀しいカフェのバラード』(新潮社)カーソン・マッカラーズ著 /村上春樹訳/山本容子銅版画

『真珠王の娘』(講談社)藤本ひとみ著


それぞれの本はもちろん、高瀬隼子さん、小砂川チトさん、雫井脩介さんという作家さんを知ることが出来たのが、今年の一番の収穫だったように思います。とくに雫井脩介さんは、既刊本がたくさんありましたので、図書館で借りることができ、かなり読みました。上の10冊に入っていないものもブログに上げています。『アート脳』と『バッタ…』の2冊を除いて小説。我がことながら、近年その傾向が強くなってきているなぁ、としみじみ。

来年もたくさん読めますように^^

読書『真珠王の娘』(講談社)藤本ひとみ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『真珠王の娘』(講談社)藤本ひとみ著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、印象的な表紙に手が伸びましたら、久しぶりの、藤本ひとみさんです。前回、藤本ひとみさんの著作追っかけをしたのは、2021年~2022年ごろのこと。そのときは、藤本ひとみさんといえば、のイメージそのまま、ヨーロッパが舞台の歴史ものが中心で、どっぷりとその世界観に浸ったのでした。

本書は日本の近現代を背景としているので、わたしとしては新しい世界を覗き見るような期待感がありました。そして結論から言ってしまうと、その期待以上に読み応えのある一冊でした。写真でお分かりになりますでしょうか、557ページとけっこうな厚さです。が、引き込まれて数日で読破。

読書『真珠王の娘』(講談社)藤本ひとみ著

主人公の女性が強く生きていく姿、というのは、藤本ひとみさんの小説の特徴の一つで、毎回それが楽しみです。本書の主人公もそうでした。が、とても切ない物語でした。登場人物それぞれが魅力的で、映画で観たいような気もします。そして、続きを読みたいという気もします。しばらく読後の余韻に浸れそうです。

それにしてもこのところ、第二次世界大戦前夜から大戦中を題材とした新刊小説がよく目に留まります。わたし個人的には、そのような意図を持って選んでいないのにもかかわらず、たまたま新刊棚で目に留まって、借りてきたら、そうだった、という感じ。それも邦書洋書を問わず、というところが、いまの世界の状態を表しているような気がします。ぱっと思い浮かぶだけでも、『リスボンのブックスパイ』『関心領域』『女の子たち風船爆弾をつくる』と並びます。

藤本ひとみさんの、日本近代史を舞台とした小説がもっと出てくると嬉しいな、などと思いつつ。

『真珠王の娘』(講談社)藤本ひとみ著

読書『ターングラス 鏡映しの殺人』(早川書房)ガレス・ルービン著/越前敏弥訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ターングラス 鏡映しの殺人』(早川書房)ガレス・ルービン著/越前敏弥訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。あれ?表も裏も表紙?と気になって手に取りました。ただそのときは、それがどういう意味を持つのか、想像もしませんでした。そのままふつうに読み出し、本の真ん中あたりでお話が終わり、まだまだページが残っているところで、おや?となり。その先に進んだら「訳者あとがき」となっていて、頭のなかが???となりつつ、訳者あとがきの解説でようやく「仕組み」に気が付きました。

表と裏の両方から、二つの独立した物語を読むことができるのです。二つの独立した物語ですのでどちらから読んでもOKですが、それぞれの物語が、もう一つの物語の伏線になっている、という凝った作り。上の写真は、早川書房さんの本書紹介ページからお借りしました…どういう作りかをわかってもらうのに、一番良い写真だと思いましたので。そのページ第一声は「ミステリ界騒然!? こんな翻訳ミステリ見たことが無い!」で始まっていますので、わたしが初体験だっただけでなく、業界的にもチャレンジングな試みだったようです。

いろいろな意味でドキドキしながら読みました。1881年のエセックスにあるターングラス館を舞台にした物語と、1939年のカリフォルニアのターングラス館で起こった事件の物語です。いずれも当時の社会的・政治的背景が伝わってきてイメージしやすく、読後に著者がもともとはジャーナリストであるという解説を読んで、なるほど納得しました。ガレス・ルービン氏の著作に、興味が湧いてきましたので、また探してみようと思います。

『ターングラス 鏡映しの殺人』(早川書房)ガレス・ルービン著/越前敏弥訳

読書『蔦屋重三郎 江戸を編集した男』(文春新書)田中優子著―江戸文化の専門家による解説本。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『蔦屋重三郎 江戸を編集した男』(文春新書)田中優子著―江戸文化の専門家による解説本。

来る2025年のNHK大河ドラマの主役が「蔦屋重三郎」だということで、ここ1-2年で関連本が続々と刊行されている感があります。わたしがこれまでに読んだのは、小説二冊。いずれも「そんな人がいたんだ!」という驚きをもたらしてくれるものでした。

小説世界で面白さに浸ったあとは、実際のところどうだったの?の検証とまでは言いませんが、専門家のお話を聞きたくなりました。ということで、江戸の文化といえば、田中優子先生。2017年に、当時「法政大学総長」であった先生の講演会を聴きに行くことが出来たのは、思い返すほどにとてもラッキーなことでした。

本書は2024年10月20日刊行です。小説とはまた異なったアプローチでの「蔦屋重三郎の生きた時代」を読むことは、面白いばかりでなく学びになりました。「編集」の意味、「アバター」としての筆名や芸名など、現代のわたしたちの仕事につながるヒントがたくさんです。

『蔦屋重三郎 江戸を編集した男』(文春新書)田中優子著