読書『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる 経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)堀内勉著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる 経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)堀内勉著

先日の読書『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(ダイヤモンド社)に引き続き、今回も分厚いです。486ページ。師走に入り、仕事も立てこみ気忙しいさなか、時間を見つけて黙々と読んでいます。昨日アップした『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)もそうでしたが、2021年も最終月になってなお、この年のベスト本候補との出会いが続々。なんともありがたく幸せなことです。

さて 『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる 経済・哲学・歴史・科学200冊』 、タイトルが長いですね(笑)。個人的には「世界のビジネスリーダーが読んでいる」という部分は不要だったのではないかと思います。なぜなら、もっと普遍的に、読みたい本、おススメしたい本のオンパレードでしたので。

古今東西の200冊が紹介されている第2部が保存版であるのはもちろん、個人的にはその前にある「はじめに」と「第1部」の読みごたえに唸りました。「はじめに」では著者自身のことが語られているのですが、読書が我々に与えてくれるものについて考えさせられる場となっています。続く第1部では「人類の知の進化」と題し、「第1章宗教と神話」「第2章哲学と思想」「第3章経済と資本主義」と、それぞれの概要・歴史的流れが、わかりやすくまとめられています。かなりのボリュームですが、これらの前提があることで、第2部の選書が説得力をさらに増しています。

200冊のうち、読んだことのある本はどれくらいあるかしらと数えてみました。各分野とも、読んだことのない本が大半…。これはつまり、今後の読書の楽しみがまた増えたということです。

本書は図書館の選書ツアーでチョイスし、カメリアステージ図書館の蔵書として認められた本です。分厚くて、価格もそれなりですので、まずは一人でも多くの方が図書館で借りてみてくださるといいな、と思っています。わたし個人にとっては、借りて読むだけではなく、そばに持って置きたい本でした。というわけで、自分へのクリスマスプレゼントに購入です^^

読書『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)細尾真孝著

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読書『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)細尾真孝著

2021年度選書ツアーで蔵書に追加していただけることになった6冊のうちの1冊です。12月に入ってから、今年のベスト候補に上がりそうな本を立て続けに読んでいます。

京都は西陣織の12代目であり、国内外で伝統工芸を広める活動をなさっている著者の、初めての著書。「国内外で伝統工芸を広める活動」をしている人は、これまでにもたくさんいらっしゃいましたが、細尾さんの視野の広さ深さは、これまでの様々なアプローチとまったく違うというのが、読後の感想です。読みながら頷くこと多数。とても励まされる一冊でした。上の写真は藤吉憲典の展覧会図録で、伝統工芸・アートの担い手としての見解を書いているページ。考え方の重なるところがたくさんあります。

以下、備忘。


  • 工芸とは、上手い下手には関係なく、自らの手や身体を使って、美しいものをつくり出したいという、人間が本能的に持っている原始的な欲求に忠実であることなのです。
  • 「手で物をつくる」ことこそ人間の創造性の原点である
  • 本来、日本のものづくりは独自の美意識によって発展してきました。
  • 日本では、自然に近い状態こそが、最も美しいのです。
  • 美意識は育つ
  • 手の中に脳がある
  • 五感を総動員して体験することが、美意識を磨くことにつながる
  • 常識はすぐに変わる
  • 言葉にすれば、波紋は必ず広がっていく
  • 風呂敷は大きく、広く
  • やらなくて良いことを、やりたいからやる
  • 美意識を妥協してはいけない。
  • 対等なコラボレーション
  • 美への投資
  • 美しい物を使う/本物の美に触れる
  • 使う物に責任を持つ
  • 触れる
  • 美の型を知る/先人の美意識を身体化させる
  • 作品に対する美の気配なくして、作品を判断することはできない
  • (日本におけるアートは)鑑賞者と物が空間において調和するなかで、初めて成立
  • 美しいものを創造している人は幸せになれる
  • 自分の中に深く落とし込むためには、自らお金を払う必要がある
  • つねに日常で、仕事で、美意識を感じながら生きる
  • 創造にとって大事なのは、常に背伸びをして、挑戦を続けることで、自分の美意識を打ち破っていくこと
  • 創造の根幹は工芸にある
  • ゴシック様式には「精神の力と表現」がある/ゴシック様式の建築には、職人たちが自ら考え、手を動かした結果がある
  • 新しいルネサンス/「美意識を持った創造的活動」という原点に立ち返ること

『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社) より


伝統工芸に直接携わっている方はもちろん、伝統工芸を取り巻くお仕事についている方々にも、ぜひ読んでいただきたい本です。

また、上の「備忘メモ」には書きませんでしたが、本書中に現代アートの問題点を指摘する例のひとつとして、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」についての著者の感想・解釈が出てきます。騒動の最中からその後まで、わたしがずっと疑問に思っていたことが代弁されているような内容で、「そう!そのとおり!」とすっきりしました。少しでもアートに携わる人は、あの騒動でいろいろと考えたと思います。気になる方は、ぜひ読んでみてください。

観てきました:カメリアステージ図書館で『usao展』。

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観てきました:カメリアステージ図書館で『usao展』

つい先日、同じカメリアステージの歴史資料館で企画展『埴輪から見た津屋崎古墳群』を見てきたばかりでした。今回も、図書館に本を借りに来ての「ついで鑑賞」^^

usaoさん、存じませんでした。図書館エリアでの告知展示が可愛らしかったのと、多目的室を使ったスペースの雰囲気がとっても良かったので、引っ張られてじっくり観覧。イラスト+ことばで、漫画というか絵日記というか、を表現手段とする作家さんのようです。「夢はたくさんの人を幸せにすること」とありました。

正直なところを言えば、この手の緩い絵は、あまり好みではありません。が、図書館とのタイアップということで、その意味がしっかりと生きた素晴らしい展示になっていて、思わずしっかり見ました(読みました)。展示を担当した方の、作家さんと作品に対する愛情と敬意、一人でも多くの人に見に来て欲しいという気持ちが伝わってきました。

図書館での展示だからこそ、のひとつが、これ。

カメリアステージ図書館で『usao展』。

展示資料に関連する図書を一緒に紹介するというのは、オーソドックスな手法ではありながら、展示の仕方と本の選び方で印象が大きく変わるものでもあります。一つ一つじっくり読みたくなる展示になっていました。

カメリアステージ図書館での『usao展』は、12月26日(日)まで(※火曜休館)。お近くの方、図書館にお出かけの方は、ぜひ「ついで観覧」してみてくださいね♪

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第5回。

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2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第5回。

2021年度学芸員研修の6回連続講座の5回目でした。「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回と、第4回目の報告は↓こちら↓。

今回は「回想法」。わたしが初めて回想法の講座を受講したのは、2018年「博物館で回想法」でのこと。今回は宮崎県総合博物館での取り組みを学びました。これは、前回の講座で同じグループだった福祉施設関係のスタッフの方が宮崎県総合博物館と連携して取り組んでおられる事例であり、継続的な取り組みが発展・進化している様子を拝見することができました。

以下、備忘。



  • 博(博物館)福(福祉)連携。
  • テーマ別回想法(座学)、コース別回想法(展示室観覧)。
  • テーマ別では、一つの題材を中心に、座ったままで回想法を展開することが可能。
  • コース別では、解説委員による解説を入れながら、展示スペースを動きながらの回想法が可能。
  • 昭和時代のモノだけでなく、さまざまな所蔵品や資料が、回想法の題材として使える。
  • 参加者それぞれの思い出話につなげ、話題を盛り上げるには、題材からどのようなテーマを決定し導くかが大切。
  • 各コースは定期的に開催。年度ごとに開催スケジュールを作成→支援団体(サービス利用団体)を公募。
  • 博物館に来れない方に向けては「貸出キット」によるアウトリーチ。
  • 貸出キットの貸出先は、福祉施設・学校・図書館等の社会教育施設が中心。
  • 現状では「貸出キット」は資料・史料のみで、人材(解説委員・学芸員)の派遣は無し。
  • 昔の道具などは参加者である高齢者の方々から用途や使い方を教えてもらうことができる=相互学習。参加者がお互いに「役に立っている」と実感できる。

宮崎県総合博物館では、取り組みのためのマニュアルがすでに出来上がっており、また毎月定例で開かれる福博連携の会議で細かく状況を共有する仕組みができているのが秀逸でした。「連携」のためには、とにかく働きかけ続けることが大事であり、そうしているなかで、志を同じくする方々とつながり、事業を推進していくことができると教えられました。

読書『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(ダイヤモンド社)古賀史健著

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読書『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(ダイヤモンド社)古賀史健著

476ページ。分厚いです。重いです。上の写真は、思わず厚さを測ったところ(笑)。これ一冊で「ライターの教科書」に必要なものを網羅することを目指して書かれたのでしょう、内容的にもボリュームたっぷり。現役ライター、編集者、これからライターになりたい人に届くように!の想いが詰まっています。著者の古賀史健さんは、編著書累計部数1100万部を超えるライターさん。1100万部って、すごいですよね。福岡出身・九州産業大卒というプロフィールに、勝手に親しみを感じます。

「ライターとは」の定義からはじまり、「取材とは」「執筆とは」「推敲とは」と続きます。全編を通して読みとれるのは、小手先のテクニックではなく、ライターとしてあるべき態度への言及。文章術的なものはほとんどありませんので、技術論的なものをお求めの方は、別の本を選んだ方が良いかもしれません。

表紙裏に「『書くこと』で自分と世界を変えようとするすべての人たちに届くことを願っている」と著者の言葉があります。これはすなわち「書くことで自分と世界を変えることもできる」のだというメッセージでしょう。わたしも「書く力」を信じる末端の一人として、とても嬉しくなった一文でした。

読書『ミュージアムグッズのチカラ』(国書刊行会)大澤夏美著

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読書『ミュージアムグッズのチカラ』(国書刊行会)大澤夏美著

あちらこちらの美術館・博物館で、ミュージアムショップがどんどん魅力的になっています。正直なところ、わたしはミュージアムグッズをたくさん購入する方ではありませんが、展覧会や常設展示を見たあとに、ついつい立ち寄る場所でもあります。上の写真は、福岡市博物館のミュージアムショップで手に入れた絵葉書。

本書には、グッズの商品開発に関わる学芸員さんや研究員さんデザイナーさんなどへのインタビューが載っていて、そこが一番の読みどころだと思いました。どのような思い・使命感をもって取り組んでおられるのか、並々ならぬ熱量を感じました。本書を読み終わったとき、自分のなかでのミュージアムグッズの位置付けが大きく変わっていました。

ミュージアムショップはミュージアムの入り口であり出口である、ということが、本質的に理解できました。有料の展覧会であっても、ミュージアムショップに入るには入場料はふつう要りません。そういう意味では誰でも入りやすく、敷居の低い入り口です。そして展覧会を観覧した後に、その余韻を持ち帰るひとつの方法としてグッズが並んでいる場所ですから、ある意味展覧会の一番最後の展示スペースであり、出口。

「はじめに」にある一文が、とても響きました。いわく「ミュージアムショップはただの売店ではないですし、ミュージアムグッズはただの雑貨ではありません。博物館での思い出を持ち帰るための大切なツールであり、博物館の社会教育施設としての使命を伝える手段でもあります。」(『ミュージアムグッズのチカラ』大澤夏美)。

とくに「社会教育施設としての使命を伝える手段」であるというところに、ハッとしました。わたしはアートエデュケーターとして「美術の教育普及」を仕事にしていますが、その立場・役割の目線でミュージアムグッズを見たことが、これまでありませんでした。でも、思い返してみれば、たしかに教育普及として活用できる側面がものすごくあることは明らか。「アウトリーチ」の究極の形ともいえるかもしれません。ミュージアムグッズを見る目が、がらりと変わりました。

各館が力を込めた魅力的なミュージアムグッズが、写真と解説入りでたくさん載っています。「このグッズが欲しいからこの美術館に行ってみる」もありですね。それこそ美術館への入り口そのものです。

読書『人間の絆』(新潮文庫)サマセット・モーム

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読書『人間の絆』(新潮文庫)サマセット・モーム

カメリアステージ図書館の新刊棚に文庫を発見。令和3年11月1日発行となっていました。今更ながらではありますが、名作は何度も文庫で新刊として蘇るのですね。写真は、小説の舞台のひとつであるロンドン、テムズ川。

サマセット・モームの本は『月と6ペンス』を読んで以来です。『月と6ペンス』は、画家ゴーギャンがモデルとされるストーリー。個人的な読後感としては、たしかに衝撃は大きかったものの、「ゴーギャンだから」という前提(わたし自身の思い込み)が、プラスにもマイナスにも働いてしまった感じがしていました。

『人間の絆』は1915年に発表された長編で、自伝的小説とされています。『月と6ペンス』より後に出たのかと思っていましたが、『人間の絆』の方が先でした。分厚い上下巻に引き込まれて、どんどん読みました。ただ、ワクワクしてページをめくるのが楽しいという感じではありません。主人公の劣等感や、それと表裏一体となった自意識過剰、プライドの高さが生む滑稽さ無様さが自分自身と重なり、目を逸らしたいのにできない、という感じ。

モーム=月と6ペンス、という印象でしたが(というか、それしか読んでいませんでしたが)、どうやらモームの代表作と言えば、本書『人間の絆』なのだろうな、と思った読書でした。

読書『ロンドン・ナショナル・ギャラリー・アートコレクション』(COSMIC MOOK)冨田章監修

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『ロンドン・ナショナル・ギャラリー・アートコレクション』(COSMIC MOOK)冨田章監修

2021年カメリアステージ図書館選書ツアーの選書本から、第一読者としての一冊目は、大好きなロンドンナショナルギャラリーコレクションを紹介・解説したMOOK本。展覧会図録ではありませんが、出版のタイミング的には、2020年から2021年にかけて日本国内で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の関連かと。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」 は、コロナ禍でなんとも難しいなかでの開催でした。行こうと思っていたけれど行けなかった、自粛した、という方々も少なくなかったのではないかと思います。この本を通して、次回の国内展覧会(あるかはわかりませんが)や、現地への訪問に思いを馳せる時間を楽しむのもおすすめです。そういえば、わたしが前回ロンドン・ナショナル・ギャラリーに行ったのは、2年前の今頃でした。美術館前の広場で高所作業車がクリスマスツリーを設置していたのを思い出します。

さて本書。巻頭で「必見」マークを付けた名作を紹介し、そのあと年代別に5章に分けて、各年代ごとの必見コレクションを並べています。絵画の写真に添えられたそれぞれの作品解説が、長すぎず短すぎず、読みやすいです。一枚の絵のなかでも特に注目すべきポイントは、「クローズアップ」としてアップ写真で解説しています。巻末には掲載されている絵画タイトルのインデックスが載っているので、見たいものから逆引きで見ることもできます。

わたしはふだん美術館で絵を見るときは、キャプションをほとんど読みませんので、この本であらかじめ予習していると、また見え方が異なってきそうです。来年あたりはロンドンに行きたいなぁ、と思いつつ。

本書の監修の冨田章さんは、東京ステーションギャラリーの館長さん。そういえば、東京ステーションギャラリーにはまだ一度も足を運んでおりません。東京駅といえば辰野金吾。次回状況の際には必ず訪問したいと思いました。

選書ツアー本がやってきた!

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選書ツアー本がやってきた!

今年10月に参加したカメリアステージ図書館の選書ツアー。「選書が届きました!」とのお電話で、ワクワクと図書館に向かいました。選書ツアー参加のなにが嬉しいかといえば、選んだ本のなかから図書館の蔵書が生まれること。そして選んだ本の「第一読者」になれること。第一読者には、その本をおすすめする「ポップ」を書く使命も課せられますが、そこは「喜んで!」。

例年ですと、一人の選者から2冊か多くても3冊の本が図書館に入るのですが、今年度はなんと6冊も入れていただくことができました。書籍購入予算の都合などがあるのでしょう、詳しいことはわかりませんが、なんともありがたく嬉しいことです。貸出カウンターで選書の受け取りをする際、6冊もの新刊を前に思わず興奮状態(笑)で、司書さんにお礼を言いました。

選書ツアーからふた月も経っていませんが、自分がどんな本を選んだのかは、すっかり忘れていました。どういうわけか分厚い本ばかり選んでいたわたし。あらためて顔ぶれを見ると…すべて心あたりあり、読みたい本ばかり。本を入れようと持って行っていたエコバッグをパンパンにして帰路につきました。第一読者のあとには、新書を待ちわびている図書館利用者の皆さんがいらっしゃるので、サクサクと読まねばなりません。果たして貸出期限の2週間内で全部読めるのか!?

その顔触れは、上の写真の通りです^^…『世界の戦略図鑑』(宝島社)、『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』(SBクリエイティブ)、『ロンドン・ナショナル・ギャラリー・アートコレクション』(COSMIC MOOK)、『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(ダイヤモンド社)、『読書大全』(日経BP社)、『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)

教科書が2冊(笑)。ダイヤモンド社から2冊。小説がひとつもありませんね。実は今回一緒に選書ツアーに参加した息子が選んだのが、すべて小説でした。親子合わせてちょうどよいバランスです。ともあれ、これから2週間は読書三昧。また読後ブログを上げてまいります^^

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回。

九州産業大学美術館、地域共創学部の緒方泉先生が中心となって開催してくださる、文化庁事業「学芸員技術研修会」。学芸員技術のブラッシュアップの場であり、最新の知見を得ることができる貴重な場です。多様な立場で活動しておられる学芸員の皆さんと、さまざまな課題を考察したり意見交換できる機会でもあります。館に属さずフリーランスで活動しているわたしにとっては、ほんとうにありがたい機会で、2016年から毎年参加しています。

美術館等での研修の現地開催が悩ましい昨年から今年は、講座への参加に地域別の条件が付いたり、講座自体が中止になったりと、運営する事務局の皆様方のご苦労はいかほどかと頭が下がります。そんななか今年度は、オンライン開催による連続講座のご案内をいただきました。

「博物館リンクワーカー人材養成講座」では、美術館博物館をはじめとした社会文化施設が、地域住民の健康・福祉にどのようにかかわっていくことができるか、がメインテーマ。「博物館浴」の実現性と、そのための人材養成を探っていきます。思えば、2018年に受講した連続講座「2025年問題に向けた高齢者の健康と博物館の役割」から、「博物館浴」への動きはスタートしていました。

連続6回で構成される講座の3回目までが終了し、折り返し地点です。前半第1回から第3回までの、備忘的メモ。


第1回「博物館浴研究の最前線」

緒方先生のお話「博物館浴研究の最前線」。自分が漠然と考えていたよりも、ここ数年でエビデンス(医学的根拠)を積み上げていく取り組みが、世界各地でかなり進んでいるということがわかり、嬉しい驚き。英国、カナダなどが先進的なほか、3回目で報告のある台湾の取り組みも要注目。

グループワーク「オンライン語り場」では、全国各地からの参加者の皆さんのこのテーマに対する関心の高さが伝わってくる。どの地域でも同様の課題があることがわかる。またコロナ禍下で、課題の緊急度が高まっていることも伝わってくる。

個人的には「美術(美術館)はもっと使える」を実現する方法のひとつとして、具体的なアプローチが見えてくる予感大。「博物館健康ステーションのリンクワーカーとして働く」ことが、職業選択の際に現実的な選択肢として生まれる場になりそう。

第2回「オンライン博物館浴プログラムの実際」

身体を動かすことの意味・効果を、ふだんとは違った角度から眺める。2018年に参加した音楽療法講座での体験が、そのさらに先の展開につながっていることを理解できた。拝見した高齢者施設での事例はまだまだ発展途上の感があったものの、だからこそ今後どのように展開・進化していくか、期待が膨らむ。

実際にプログラムに合わせて体を動かしてみて、フィジカルなアプローチでの美術鑑賞法の可能性が広がることを実感。これまでは主に子ども向けのプログラムとして考えがちであった、美術と身体的エクササイズの組み合わせは、子どもに限らず楽しめるものであり、かつ心身のリフレッシュに有効であることが体感できた。例えば、エクササイズ×絵画、エクササイズ×仏像、エクササイズ×彫刻、エクササイズ×埴輪…など、組み合わせは資料により無限大。

第3回「台湾の博物館処方箋プログラムの動向」

台湾では既に手引書ができ平準化されつつあることに、嬉しい驚き。「処方箋に博物館と書く」動きがどんどん進んでいる。昨年来読んできた、台湾IT相オードリー・タン氏関連の著書にあったとおり、社会課題に対して国(政治)が真摯に市民の声を聞く仕組みができており、そのうえで官民共同があるからこそ(例えばコロナ対応しかり)、必要な施策をスピード感をもって実行できる。博物館浴への先進的な取り組みもまた、そうした成果のひとつであろうと思えた。

医療(医者)との連携、福祉(施設)との連携、行政の各分野(縦割り)との連携。どこを窓口として、いかに横のつながりを構築していくかが、実務を考えていくうえでの現実的な課題になるであろうとの共通認識。


後半のプログラムは12月。今からとっても楽しみです。