読書『ウィーン近郊』(新潮社)黒川創 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ウィーン近郊』(新潮社)黒川創 著

図書館新刊コーナーにて、表紙に釣られて手に取った一冊です。その表紙、装画に使われていたのは、エゴン・シーレの「死と乙女」。

そういえば「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」(英題:VIENNA ON THE PATH TO MODERNISM)のタイトルのついた展覧会を観たのは、ちょうど2年前のことでした。もともとクリムトは好きでしたが、エゴン・シーレの絵に惹きつけられたのは、このときが初めて。シーレの描いた「ひまわり」は、ゴッホやクリムトの影響を受けていることは明らかでありながら、対極的に暗く寂しく、それでいて見る人を嫌な気分にはさせず、特異な存在感を放っていたのでした。上の写真はその展覧会で訪問した国立新美術館。

さて『ウィーン近郊』。150ページ足らずで分量的にはサクッと読めます。でも、考えさせられる内容でした。文中に「新型コロナウィルス」が登場するほどに直近の現代の話でありながら、二つの大戦の影がついてまわっています。そこからウィーンと日本が、それぞれどのようにふるまい、「今」の立ち位置を作ってきたかを、読者に考えさせようとする意図を感じました(深読みしすぎかもしれませんが)。

「死と乙女」は1915年のシーレの作品。第一次世界大戦は1914年から1918年です。その終戦の年に、シーレは28歳で亡くなっていて、死因は「スペイン風邪」だとも言われています。コロナ・パンデミックの今と、約1世紀前のスペイン風邪・パンデミックの時代とをかぶせつつ紡いだストーリー。黒川創さんの著書を読んだのは今回が初めてでしたが、ちょっと興味が出てきました^^

読書『世界を知る101の言葉』(飛鳥新社)Dr.マンディープ・ライ著/鹿田昌美訳

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読書『世界を知る101の言葉』(飛鳥新社)Dr.マンディープ・ライ著/鹿田昌美訳

世界101か国各国の特徴が「ひとこと」で理解できるという書評に釣られてゲットした一冊。当然、たったの「ひとこと」でその国を理解できるはずはありませんが、それぞれの国を動かしている価値観、国民性の一側面を知る手掛かりにはなるかと思い、手に取りました。

そもそもわたしにとっては、世界の国々のほとんどは「よく知らない国」です。「行ったことがある国」を数えれば片手でお終いです。旅が思うようにできない今だからこそ、この本をきっかけに「行ってみたい国」が増えたら楽しいだろうな、というほどの気持ちで読み始めました。

ところが実際に読んでみると、その国を代表する「ひとこと」は、それぞれの国の抱えている(抱えてきた)問題、辛い歴史を乗り越えるなかから生まれていることも多く、唸らされること多々。各国について(著者が感じた)特徴が、コンパクトにそれぞれ3~4ページでまとめられています。少し読み始めてから、まずは著者がどのような視点を持っているかを理解した方が良いと考え、先に「日本」の項目を読んでみました。

いわく、日本を「ひとこと」にすると「敬意」でした。日本の文化・国民性に端を発する欠点や議論すべき課題があるとしつつも、日本の「敬意」から学ぶべきことがあるというスタンス。この著者のスタンスが、すべての国についての論述にも生きていました。

「はじめに」で述べられている、「なぜこの本が生まれたのか」が、とても大切だと思いました。本文に入る前に、ここをしっかり読むことをお勧めします。本書では「国を動かしている価値観」にスポットを当てていますが、個人においても「価値観」が人生の様々な場面で自分を後押ししていることに気づけば、本書をより深読みできるでしょう。マーカーを引きながら読んでいます。

令和3年度郷育カレッジ開校式がありました。

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令和3年度郷育カレッジ開校式がありました。

福津市の生涯学習の仕組み「郷育カレッジ」。郷育(ごういく)カレッジとは、福津市民と福津で働く人のための生涯学習の仕組みです。運営するのは、福津市役所の郷育推進係と、ボランティアスタッフの郷育運営委員。毎年100講座近くを開講する、他に類を見ない市民カレッジで、本年度19年目に入ります。講座運営をサポートするボランティアスタッフとして、わたしも参加しています。

過去記事:福津市には「郷育カレッジ」があります

昨年はコロナ禍で開校式は中止、7月と8月に予定されていた全講座が中止になり、9月以降も感染症防止対策の観点で中止となった講座がたくさんありました。令和3年度は、コロナ禍でも開催できる形式での講座を増やすなど、カリキュラム編成の初期段階から「いかに休講を回避しつつ、安全に開催するか」の議論を重ね、準備いたしました。

先週末7月10日(土)の開校式は、会場・スタッフとも感染症対策を万全にして臨みました。2年ぶりとあって、参加する皆さんの晴れやかなお顔が印象的でした。学びの場所に集う喜びがあふれていて、とても嬉しくなりました。開校式記念の公開講座は、放送大学さんとのコラボレーションが実現。郷育カレッジとは規模はまったく違いますが「生涯学習」推進を標榜する点では志は同じです。

令和3年度郷育カレッジ開校式 放送大学コラボ公開講座『地域でゴー!自分の健康づくり 生活習慣病とお口の健康』福岡歯科大学客員教授樗木晶子先生のお話より、以下備忘。


  • 成人病ではなく、生活習慣病→一次予防(未病)。
  • 健康寿命。
  • 肥満度判定(BMI)はあくまでも参考。理想体重=身長が止まったころの体重。
  • 「よく噛む」の効用。
  • 定期的な歯科検診の効用。
  • 歯ブラシの選び方、歯ブラシの当て方・動かし方、歯磨きの順番とポイント。
  • 顎関節症→歯科医院。

90分ほどの講演でしたが、先生の語り口のわかりやすさと実践的な内容で、参加者の皆さんが熱心にうなずきながら聴いておられる姿が印象的でした。歯磨きの仕方についての図解が配布資料に含まれていたり、家に帰ってすぐ実践できる学びとなりました。

個人的には、上に書いたような本題に入る前に、自己紹介で樗木晶子先生が語られた医学部のこと、大学研修医のこと、女性医師の社会的立場やキャリア形成の実際、現場での実態などのお話が、とても興味深かったです。大学病院という男性社会で長くキャリアを積んでこられたご本人だからこそ、おっしゃることのできる内容だと思いました。

ともあれ、令和3年度の郷育カレッジもスタートです。来年3月末までに84講座が開講されます。開校式の開催で素晴らしいスタートが切れたことが、スタッフの一人としてとても嬉しい週末でした。

九州EC勉強会「コロナ禍で小さい会社が本気でやるべき未来への挑戦」に参加しました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

九州EC勉強会「コロナ禍で小さい会社が本気でやるべき未来への挑戦」に参加しました。

九州ECの2021年度2回目の勉強会でした。今回もZoom開催。九州EC=九州ECミーティングは、EC事業者が集い、事業運営に役立つ情報交換・提供を行う会です。2005年1月に、「九州でも東京並みの情報が得られる場」を作る目的で結成されました。自ら経営者でありECに取り組む方々が幹事となり、ボランティアで続けてきている勉強会組織です。

今回の講師は、北海道で昔ながらの製法によるハム・ベーコンの製造販売を行う株式会社エーデルワイスファーム代表である野崎創(のざきはじめ)さん。野崎さんの九州ECでの講座は今回が2回目です。数年前に開催された1回目も、とても勉強になったのでした。今回は、変化の激しい時代にあわせた未来へむけての経営戦略・行動について、リアルな失敗談も交えながらのお話を伺うことができました。

以下、備忘。


  • コンクールで賞を取る意味。そのうえで持論を持つ必要性。
  • →「お客さまが喜んでくださる」が一番(ex.口コミしやすさ)。
  • ファンのためのイベントは、自分だけでなく仲間と一緒に。
  • 卸→通販→直販。
  • 通販がいくら伸びても直販(=お客さまと顔を合わせる)の大切さは変わらない(むしろ、より重要になる)。
  • お客さまとのコミュニケーション。
  • 独自の世界観(=ブランド)←その世界観にたどり着いた背景・経緯にこそ「自分にしかできない」を支える独自性がある。
  • 「自分たちにしかできないこと(=他社が真似できないこと)」を徹底して追及する。
  • 目の前のお客さまに楽しんでいただくには。
  • 友人や仲間たちを楽しませたいときに、自分はどうするか?
  • 熱中したくなる非日常体験。
  • 具体的には、2時間で1万円程度のアクティビティ。
  • 口コミ≒現代の紹介制・会員制。
  • 商品があり過ぎると選べない←リコメンド。
  • リスク管理:困りそうなとき、困ったときは「動く」。
  • 「自分自身の世界観」を構築する=誰かの威を借りることに意味はない(ex.巷にあふれる隈研吾建築)。

九州EC勉強会「コロナ禍で小さい会社が本気でやるべき未来への挑戦」株式会社エーデルワイスファーム代表・野崎創氏より。


野崎さんのおっしゃる「独自の世界観」の重要性が、あらためて響きました。個人的には、それ(「独自の世界観」の重要性)をわかりやすく説明するために挙げられた「隈研吾建築」の話がとても腑に落ち、思わずZoom画面の前で膝を打ちました。

九州ECは自ら経営者でありECに取り組む方々が幹事となり、ボランティアで続けてきている勉強会組織なので、「今ほんとうに学びたいこと・学ぶべきこと」が学べます。2021年度は、あと2回計画があるとのことで、早くも次回が楽しみです。今回もたいへんお世話になりました。ありがとうございました!


映画『グーニーズ』の記憶。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

映画『グーニーズ』の記憶。

今朝、ラジオから、映画監督のリチャード・ドナー氏がお亡くなりになったというニュースが流れてきました。映画は「観るだけ」のわたし、リチャード・ドナー氏と名前を聞いてもわかりませんでしたが、『スーパーマン』『リーサルウェポン』『グーニーズ』などの監督をした方だと聞いて、「あ!」と思ったところでした。

最近、なぜか息子が『グーニーズ』にハマり繰り返し観ているので、一緒になって懐かしく観ていたのでした。まさに先週末も観たところ。そういえばテレビでも、ひと月ほど前に放送されていたようです。グーニーズは「スティーブン・スピルバーグ製作」と知っていましたが、監督がリチャード・ドナー氏だったのですね。

グーニーズと言えば、主題歌を歌ったシンディ・ローパー。息子から「これいつ頃の映画なの?」と聞かれて「お母さんが中学生ぐらいの時」とすぐに返事ができたのは、洋楽を聴き漁っていた当時、数々のプロモーションビデオのなかでもシンディ・ローパーのインパクトは強烈だったから。正確には1985年公開、36年前の映画だそうです。

ストーリーは、こういってはなんですが、子どもたちを主役としたありがちな冒険ものという感じで、特別面白い感じではありません(あくまでも私見です!)。ただ子どもたちそれぞれのキャラクターが素晴らしい。なかでもわたしがずっと一番気に入っているのは、ふっくらとして食いしん坊でいたずら好きのチャンク。とにかく見ていて笑わせてくれるのです。その笑わせ方が、ビジュアル的なインパクトはもちろんありながら、そこに頼るのではなく、きちんと演出されている知的なものを感じさせるのです。そして、優しさも感じます。とにかくチャンクの登場するシーンは見逃せません。

今朝のニュースを受けて検索してみたら、「シネマトゥデイ」に、2021年6月にアップしたばかりの『グーニーズ』関連記事がありました。その記事によると、わたしのお気に入り「チャンク(本名ジェフ・B・コーエン氏)」は、現在なんと弁護士として法律事務所を経営しているとか。

映画もまた、後々までたくさんの人を楽しませることができる仕事ですね。すごいことだな、いい仕事だなと、あらためて思いました。リチャード・ドナー氏のご冥福をお祈りいたします。

2021上半期読んだ本、ふじゆり的ベスト5。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2021上半期読んだ本、ふじゆり的ベスト5。

昨年に続き今年も引きこもり気味なので、読書時間が確保できている実感はありました。先ほど数えてみたら、1月から6月末までの半年で40冊以上。「たくさん本が読める幸せ」をあらためて感じています。大げさ!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、わたしにとって「睡眠時間」と「読書時間」がたっぷりとれることは、とても大切なことなのです^^

さっそくベスト5をご紹介!

第5位『リアルビジネス3.0 あらゆる企業は教育化する』(日経BP)日経トップリーダー編

「事業の教育化」の流れと実例を示したビジネス書です。自分のしている仕事の可能性をとらえ直すのに、「教育化」は役に立つ考え方だと思いました。「ビジネスの教育化」と言われてピンと来なくても、事例が載っているのでわかりやすいです。ビジネス書は、年間通して何冊も読んでいる割には、あまり「ふじゆり的ベスト5」に入ってこないので、これはヒット!と言えると思います。

第4位『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)オードリー・タン

時の人、台湾IT相オードリー・タン氏の自著。彼女に関する本をこれまで4冊読みました。いずれも「オードリー・タン」を主人公としていますので、重なる内容はもちろん多いのですが、視点が変われば着眼点も変わるところがあり、それぞれに面白かったです。何冊も読むことで内容の相互補完ができるので、興味のある方はいろいろ読んでみるとお良いかもしれません。が、どれか一冊だけ選べと言われたら、わたしは本書をお勧めします。

第3位『シャネル CHANEL』(講談社)藤本ひとみ

『一人で勝手に藤本ひとみ祭り』開催中です(笑)。半年で著書10冊以上読破していました。藤本ひとみさんの著書は、なんといっても『皇妃エリザベート』『王妃マリー・アントワネット』など、女性を主人公にした歴史小説!と思っていましたが、マリリン・モンローや本書シャネルを主人公にした近現代ものも、読みごたえがありました。

第2位『起業の天才!江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)大西康之 著

リクルート社や創業者江副さんに関する本はたくさん出ていますし、何冊も読んでまいりました。本書は居並ぶ「江副本」の最新版にして470ページに及ぶ大作です。見るからに分厚く、読むのに何日かかるかと危惧していましたが、ストーリーに熱中して数日で読了。視点が変わるとまた新たに理解できることがありますね。著者のジャーナリスト魂が感じられる一冊でした。

第1位『小説 イタリア・ルネッサンス 』シリーズ(新潮文庫)塩野七生

2020年から読み始めた『1 ヴェネツィア』『2 フィレンツェ』『 3 ローマ』『4 再び、ヴェネツィア』のシリーズが今回もランキング入り。余韻が深く、その世界観にいつまでも没頭していたくなる塩野七生ワールドでした。塩野さんの本は、これまで何度も読みかけては挫折していましたが、本書はコンパクトなうえストーリーにスピード感があって、全部読むことができました。ルネッサンス時代のイタリアを旅するように読める本でした。

振り返ってみれば、「藤本ひとみ」「塩野七生」「オードリー・タン」な上半期でした。これまでになく「人物」に関心が向いていたようです。毎回そうなのですが、読書を振り返ることで、自分の「今」を垣間見ることができますね。

英文書類作成に追われていました…。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

英文書類作成に追われていました…。

このようなタイトルでブログ記事が上がること自体、いかに英語力が足りていないかを表してしまっていますね(笑)。当たり前にできるようになったら、「それをブログのネタにする」こともなくなるはずです。そんな日が来ることを願いつつ。ともあれここ数日、提出締め切り間近の書類作成にかかりきりになっていました。ようやく目途がつきましたので、ちょっとだけブログ執筆に逃避。

上の写真は、今回の英文書類作成に際し、中心となって活躍してくれた参考書の皆さん。いつもおおよそ同じ顔ぶれではあります。ダンナ・藤吉憲典の仕事について書くこと=美術・芸術系のことを英語で書くときは、なんといっても宮本由紀さんの『英語でアート!』(マール者)が力強い味方です。それから英語の本ではないものの、今回は用語などの確認に『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)を参照。言い回しについては、ずっと使っているマヤ・バーダマンさんの『英語のお手本』(朝日新聞出版社)と最近手に入れた『英語の品格』(インターナショナル新書)に倣います。

もちろん翻訳サイトにもガンガンお世話になりながらの英作文です。そのうえでも重宝するのが「紙の辞書」。アナログです。和英・英和ともに、紙の辞書の特徴である「前後左右の情報が無意識に目に入ってくる」のが、わたしにとっては使い勝手の良さにつながっています。ただ、今回使いながら和英の「例文」に古さを感じ、発行年を確認したら2013年でした。これは最新版に買い替えねば!新しい英英辞典も欲しくなってきました。

市販の参考書類のほか、最近一番良く使い参照・引用するのは、実はこれまでに自分が作った英文書類なのです。仕事を英語で説明する機会が増えてきたのは2013年から。以来8年あまりで、使いまわせる英文のストックが、ずいぶん増えてきました。間違っていたり、稚拙な文章で使えないものも多々ありますが(笑)。そのまま使えるものもありますし、ちょっと単語を入れ替えたり、言い回しをブラッシュアップしたりして使えるものも。自分が実際に使った英文=自分用にカスタマイズされていますから、とても便利。過去の自分が今の自分を助けてくれる感じです。

そうしてある程度文章が出来上がったら、最後は(わたしにとっては一番肝要な!)ネイティブチェックです。英会話レッスンでお世話になっているトラヴィスさんと一緒に、伝えたいニュアンスを確認しながら修正していきます。これももう長くお願いしているので、美術的なニュアンスや、うちならではの表現を汲み取っていただけるのが、なにより助かります。もちろん、文法ミスやスペルミスなど基本的なチェックも。このネイティブチェックがあるからこそ、素案としての文章を安心して作ることができます。ありがたいことですね。

続・読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著

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続・読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著

読書『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)をブログにアップしていたのは、先週のこと。実は中身があまりにも濃かったので、一度読んだだけでは消化しきれず、2周目に入っていたのでした。前回も書きましたが、本書タイトル『まちの魅力を引き出す編集力』は、『○○の魅力を引き出す編集力』と「○○」部分を多様に置き換えて考えることができるのです。つまり業種を問わず、活かせる要素がてんこもり、ということ。

実際に桜井さんとお話しすると、ユーモアあふれる話題展開のなかに、たくさんの、文字通り「鍵(キー)」となる「言葉(ワード)」が出てきます。そしてそれらのキーワードの背景を探ると(あるいは解説してもらうと)、腑に落ちることがたくさんあって、自分の事業に置き換えて考えるとどうなるか!?を考える最高のエクササイズになります。そんな珠玉のキーワードの数々が本書にもたくさん出てきますので、ご紹介。


  • 「何を面白く感じるか」はまったくの自由
  • 愛をもって「ひたすら見る」
  • 民俗学的アプローチ
  • 図書館で文献をあたる
  • 魅力の「本質」は専門家から探り、本物から学ぶ
  • はまっている人=専門家
  • 「日常」が違う=文化の違い=固有の文化
  • 「自分の価値観」と対峙する
  • 名前をつける(固有名詞化する)
  • 「BEFORE→AFTER」で考える
  • 誰とやればうまく行くか?
  • ボランティアはしない、させない
  • 三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)と四大要素(食・もの・体験・人)
  • 「今だけ」「ここだけ」「あなただけ」
  • 「笑い」「驚き」「誘い」
  • ハッピートライアングル(三方よし)
  • 最初の一人
  • 愛している者にだけ見えるものがある

『まちの魅力を引き出す編集力』(同友館)桜井篤 著より


それぞれのキーワードの意図するものは、とても深いです。ぜひ本書でじっくり読み取ってみてくださいね。

やっと!久しぶりのコンサート「古澤巌 ヴァイオリンの昼と夜」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

やっと!久しぶりのコンサート「古澤巌 ヴァイオリンの昼と夜」

音楽も演劇も再開しているのはわかっていましたし、魅力的な催しに心惹かれることが増えてきてもいましたが、なかなか足を運ぶに至っていませんでした。今年(2021年)5月に発表された文化庁長官・都倉俊一氏の「文化芸術に関わる全ての皆様へ」のメッセージを読んで勇気を得ていたところに、タイミングよく演奏会の案内が届き、個人的に「やっと復活!」した週末でした。

出かけたのは、隣町にある宗像ユリックスハーモニーホールでの「古澤巌 ヴァイオリンの昼と夜」。古澤巌さんの演奏会は、宗像でほぼ毎年開催されています。宗像ユリックスハーモニーホールは、全部で600席ちょっとのコンパクトなホールで、いわく「どの席で聴いても音が好い具合に響く」のが人気です。コロナ対策で座席がひとつ置きに設定されるなか、後方中央の席をゲットできました。わたしは昼の部でしたが、はじまってみたらほぼ満席でした。

ヴァイオリンとピアノのシンプルな構成。はじまってすぐにその音色の美しさに涙腺崩壊。わたしは音楽は「聴くだけの人」なのでまったく詳しくありません。でも自分の好きな音、そうでない音はわかります。古澤巌さんのヴァイオリンも、金益研二さんのピアノも、生で触れるのは初めてでしたが、とても心地良くすんなりと入ってきました。

一緒に行ったダンナはダンナで、ソナタがはじまるとすぐに舟をこぎはじめました。第1楽章が終わると目を覚まし、第2楽章、第3楽章がはじまるとその都度また舟をこぎ…(笑)。でもコンサートで眠くなるのは、音楽の効果で深いリラックス状態に導かれているから=音楽が脳にも体にも届いている証なので、悪くないことなのだと聞いたことがあります。周りに迷惑をかけることが無ければ、これもまた良しです。

途中休憩を挟んでの約2時間。全体的には小品中心の選曲で、カジュアルに楽しめました。曲の合間に入る古澤さんのトークもさりげなく示唆に富んでいて、大満足。足を運んでよかったと、心から思いました。むしろ、今まで「ヴァイオリンの昼と夜」に行かなかったことが悔やまれるくらい。来年以降必須のイベントとなりそうです。

読書『預言者ノストラダムス』より、「預言」と「予言」の違い。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『預言者ノストラダムス』より、「預言」と「予言」の違い。

先日アップしたブログ「読書『預言者ノストラダムス 上・下』(集英社)藤本ひとみ」で、『「預言」と「予言」は違い、その違いはとても大きいのだということも、本書内のノストラダムスのセリフによってわかりました』と書いていたところ、「どう違うの?」というご質問をいただきました。そうですよね、気になりますよね。

一般的にはどのような理解なのかをいくつかの辞書で調べてみたところ、おおよそ次のようなことが書いてありました。

  • 【預言】神からの啓示を受けた人が「神の言葉」として伝えるもの。
  • 【予言】未来のものごとを予測して伝えるもの。宗教的な意味合いは無い。

「預」は「預(あず)かる」で、神さまから預かった言葉、ということですね。主に一神教のユダヤ教やキリスト教で用いられる概念のようです。それに対して「予」は「予測」であり、「科学的推論や統計学的推論により」というような前提が入ると考えると、その違いが分かりやすいと思います。例えば天気予報は科学的推論に基づく予言、占いは統計学的推論に基づく予言、と言い換えることができそうです。

『預言者ノストラダムス』のなかでは、ノストラダムスの時代における「預言(者)」と「予言(者)」の違いが意味するものは、当人の命にかかわることでした。当時の宗教観のもとでは「神(キリスト)の言葉を伝える預言者」であれば(そしてそれがちゃんと当たっていれば)大切に重用されますが、「(科学的・統計学的に)予言」できるとなると、神の存在を否定するものとして異端視されかねないということになります。

そのような背景があっての、読書『預言者ノストラダムス』での登場人物たちの駆け引きでした。こうしたちょっとしたこと(でも、大きなこと)を知ることが、歴史小説の面白さを倍増させていきますね。