九響はじめ―「九響サンクス・コンサート2024」を聴いて参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

九響はじめ―「九響サンクス・コンサート2024」を聴いて参りました。

福岡県には九州交響楽団(九響)があります。と言いつつ、わたしが前回九響の演奏を聴きに行ったのは、2021年のこと。その前回も「サンクス・コンサート」=ご招待でした。

その後なかなか機会を作れずにおりましたが、九響のコンサート会員になって定期演奏会に足を運んでいるお友だちに影響を受けて、今年は九響を聴きに行こう!と思いついたのでした。調べてみたところ、会員の種類がいくつかありましたので、自分の行けそうなスケジュールをもとに、まずは一番回数の少ないタイプで入会。年に4回なら、時間を確保できるかな、いや、確保しよう!ということで。

九州交響楽団コンサート会員のご案内

チケットが一回ごとに購入するよりもお得である、ということに加え、「年間My sheet」すなわち自分の指定席が確保できるというのも魅力的です。その他にも特典がいろいろ。年4回のつもりが、初めて会員になった人には「サンクス・コンサート」のご招待があるということで、思いがけずプラス・ワンのラッキーでした。

さて「九響サンクス・コンサート2024」。九響が毎年福岡県内の中学生に向けて行っている「中学生の未来に贈るコンサート」でのプログラムを披露してくださいました。2005年以降、県内各地の中学校で、年間50公演ほども開催しているとのことです。馴染みのある楽曲が並び、わかりやすい解説が入り、来場者参加のサプライズ企画がありと、とても楽しい2時間でした。

九響はこの春から新たに、首席指揮者として太田弦さんを迎えたということで、今回のコンサートも太田弦さんの指揮によるものでした。30歳という若さのマエストロは、身体全体を使ったエネルギーを感じる指揮で、雄弁な動きとチャーミングな笑顔がとても魅力的でした。息の合った九響のメンバーのチームワークを強く感じる演奏会でした。

アンコールは、九響ならではの「いざゆけ若鷹軍団」、ソフトバンクホークスの応援歌です。つい歌いそうになり、誰も歌っていないことに気づいて口を閉じ(笑)。ともあれ全体を通して、自然と笑顔になるコンサートでした。次の演奏会も楽しみです♪

読書『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』(笑がお書房)展示会活用アドバイザー・大島節子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』(笑がお書房)展示会活用アドバイザー・大島節子著

わたしが勝手にブログの師匠と仰いでいる、せっちゃんこと展示会活用アドバイザーの大島節子さんが、初の著書を出版なさいました。展示会活用アドバイザー大島節子さんのブログはこちら。

著者の大島さんは、家業の什器レンタル会社を継いで若くして社長となり、2001年26歳の時に売上の95%以上を占めていた得意先の倒産を経験なさっています。その後、連鎖倒産の危機を回避するために家業を立て直していくなかで、同様の悩みを抱える中小企業の展示会出展をサポートする仕事を生み出した方です。「展示会活用アドバイザー」の仕事は、まさにご本人が現場で積み上げて来られた経験そのもの。彼女のブログには、中小企業が新規顧客を開拓するために「展示会」を活用するための情報が、てんこもりです。

本書はそのブログの情報を一冊にまとめたもので、エッセンスがギュッと詰まっています。まず序章で本書がサポートする「展示会」の定義が書かれています。そこには「アート作品や工芸品、ハンドメイド作品を見てもらう展覧会は含みません」と明記されていて、文字通りに受け取れば、我が花祭窯はサポートの範囲外ということになります。たしかに、本書でいう「展示会」と、アート作品の展覧会はまったく異なりますので、そこは混同できません。が、本書のなかに記されている考え方、方法論のなかには、実はわたしたちにも役立つものがたくさんありました。

展活サイトからダウンロードできるBtoBtoC型の「コンセプトワークシート」や「チラシフォーマット」は、要素を置きかえれば、そのまま多様な業種・場面で使えます。また「キービジュアル」の重要性と使いまわし術、展示会用動画を無料で作る方法と効果的な動画制作のための注意点など、「この方法、いただきます!」というテクニックも盛りだくさん。本書では、原則として「目的はここにありますよね、そこに進むためには、こうしましょう」というスタンスが通底しているので、それを自分ごとに置き換えると、「うちの場合は、こうしよう」という応用法が見えてきます。

「展示会」を活用することをお考えの中小企業・個人事業の方々に、とってもおススメの一冊です!

『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』(笑がお書房)展示会活用アドバイザー・大島節子著

福岡県産業デザイン協議会の特別講演「創造性を組み立てる」を聴いて参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福岡県産業デザイン協議会の特別講演「創造性を組み立てる」を聴いて参りました。

今年初めから3月までお世話になった、福岡県産業デザイン協議会の「デザイン開発ワークショップ」。

そこからのご案内で、特別講演「創造性を組み立てる」を聴いて参りました。

お話は、北九州のお土産として人気拡大中の「ネジチョコ」を開発した、オーエーセンター株式会社・代表取締役社長の吉武太志氏。ネジチョコはその開発経緯などをあちらこちらで耳にしたことがありましたし、実際に食べてみたこともありましたので、面白いなぁと興味を持っておりました。そこにご本人のお話が聞けるとあって、即申し込みました。

NTT西日本の特約店としてスタートした会社が、二代目になってどのようにスイーツショップの展開に到り、ネジチョコのメーカーとなったのか。そのストーリーが、とても面白かったです。特に多種多様な組織団体との協業(コラボレーション)による展開や、NPO法人として取り組んでいる地域との連携・活性化のお話には、現代の、そしてこれからのビジネスに必要不可欠な要素を強く感じました。もちろんたくさんのご苦労もあったはずですが、実に楽しそうに軽やかにお話なさる姿が印象的でした。コラボと地域連携。うちとしては、ずっと頭の片隅にありながら、なかなかうまく取り組むことが出来ずにいるところであり、大きな課題をいただいた講演会となりました。

会場は、福岡大名ガーデンシティ・タワー内の大名カンファレンスでした。スタートアップ拠点として知られ、福岡県・市の産官学の様々なイベントが開かれている場所であり、リッツ・カールトン福岡が出来たことで、ますます注目度が上がっているエリアです。気になりながら足を運んでいませんでしたので、これ幸いと当日は少し早めに到着して、エリア内を歩き回り、カフェでお茶しつつ、行き交う人々をウォッチ。こちらも刺激になりました。

読書『映画館を再生します。』(文藝春秋)小倉昭和館・館主 樋口智巳著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『映画館を再生します。』(文藝春秋)小倉昭和館・館主 樋口智巳著

タイトルに「小倉昭和館、火災から復活までの477日」とあります。福岡県北九州市は小倉旦過市場の、二度目の火災で焼失した映画館「小倉昭和館」再生のドキュメント。

小倉旦過市場では、2022年4月に商店街を焼く火災が起こり、ようやく復興に向けて動き始めようかという同年8月に、二度目の火災が起こりました。古い建物が密集しているエリアで、いずれの火災でも何店舗もが消失しています。小倉昭和館は、福岡最古の映画館と言われ、創業83年を目前にしたところでした。

三代目映画館主である樋口智巳氏の気持ち、言葉、行動が、火災後間もない時点から記録されています。なかには著者自身が、「わたしはよく覚えていないのですが」というような記述もあります。物理的にも心理的にもとても大きなダメージを受けた状態で選択を迫られるなかで、「再生するにしても、再生しないにしても本にしましょう」という編集者によって、かたちになったものだということがわかります。著者が再生を決意するまでには、かなりの時間がかかっており、本書が「映画館の再生ありき」でスタートしたものではないということが、伝わってきます。

それにしても、80年を超える歴史のなかで、小倉昭和館がたくさんの映画人にどれほど愛された場所であったのかを、本書で初めて知りました。今回の再生にあたっても、リリー・フランキー、光石研、仲代達矢、秋吉久美子、片桐はいり、笑福亭鶴瓶など、そうそうたる顔ぶれが様々な形で館主を支えています。火災があるまで、わたしは小倉昭和館の存在は知っていましたが、「小倉にある老舗の単館映画館」というほどの認識でした。火災以降のローカルニュースでの報道内容を目にしながら、その存在に興味が湧いてきて、本書を読んで、これはぜひ一度足を運ばねばと思いました。再生したのは昨年冬、2023年12月。そこから魅力的なイベントを次々に開催なさっています。

小倉昭和館の公式サイト

『地球の歩き方』の北九州市版をブログで紹介したのは、つい先日のことでした。

このところ北九州市に足を運ぶ理由がどんどん増えています^^

読書『落日』(角川春樹事務所)湊かなえ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『落日』(角川春樹事務所)湊かなえ著

わたしが「湊かなえ著作を読む」デビューしたのは、今年の三月のことでした。その後、図書館の「湊かなえ」さんの棚にずらりと並んだなかから、ときどき借りてきては読んでいます。まだまだ今から読める既刊がたくさんあるので、嬉しくなります。

『落日』は2019年発刊の書下ろし。『告白』を読んだときと同じような、ざわざわした感じが、読みながら胸の内に広がりました。幾重にも張り巡らされた伏線がどこにつながるのか、推理しながらの読書は、頭の体操にもなったような気がします。半分以上読んだあたりで、「真実はこうなのではないか」とつながったあとは、それが正解かどうかを確かめるための読書となりました。

主要な登場人物が脚本家と映画監督であり、フィクションとして事件を描くために、事実をできるだけ明らかにしていくというスタンスが、読んでいるわたしにとっては新しい視点でした。事実と真実との違いというのは、最近よく耳にしたり目にしたりするテーマですが、言葉での説明というよりも、このストーリー全体を通して、なるほどと理解できたような気がします。

ところで一番上の写真は、わたしの夕方散歩コース・津屋崎浜から海に沈む夕陽。『落日』のなかでは、「海に沈む夕日」が象徴的なイメージとして登場します。わたしにとっては、海に沈む夕日はここ津屋崎に住みはじめて以来、日常的に見ることができる当たり前の景色となっています。当たり前ではあっても、毎回その美しさに感動するのには違いありませんが。それでもこの場所から離れることになったとき、離れたあとに、自分にとってもっともっと特別な景色になるのかもしれないなぁと、思いながらの読書となりました。

『落日』(角川春樹事務所)湊かなえ著

読書『化学の授業をはじめます。』(文藝春秋)ボニー・ガルマス著/鈴木美朋訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『化学の授業をはじめます。』(文藝春秋)ボニー・ガルマス著/鈴木美朋訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。少し前に新聞の書評欄で見て気になっていた本です。文藝春秋のサイトで「全米250万部、全世界600万部。2022年、最も売れたデビュー小説!」と紹介されている、話題の書。AppleTVでドラマ化もされたそうです。

舞台は1950~1960年代のアメリカ。半世紀以上も前の設定ですが、本書を読みながら、2017年に始まった「#MeToo」運動や、それに続くジェンダー論争につながっていることをひしひしと感じました。だからこそ、今、全世界で読まれているのだと思います。半世紀以上も経っているのに、未だ世の中は…という現状に対する怒りと反発が、読者のなかにあるのではないでしょうか。

主人公は、研究職=保守的な男社会で奮闘する才能ある化学研究者エリザベス。彼女と一緒になって憤り、失望し、喜び…と、感情の起伏の激しいの読書時間となりました。エンタメ小説として面白かったのはもちろんですが、それ以上にいろいろなことを考えさせられた一冊です。

日本で男女雇用機会均等法が成立したのは、1986年。わたしが社会に出た頃には、「男女雇用機会均等法第一世代」と呼ばれる方々が、少し先を切り開きつつある時代でした。幸いわたし自身の就職先は、性別学歴関わらず機会が与えられ評価される会社でしたので、その手の理不尽からは守られていました。が、法人営業職として多くの会社の「人事の現実」を目の当たりにするなかで、「男女雇用機会均等法」の存在価値を疑うことは数知れず。そんななかでキャリアを切り開いた女性たちの姿、能力と勇気と責任感と我慢強さを思い出した読書となりました。

『化学の授業をはじめます。』(文藝春秋)ボニー・ガルマス著/鈴木美朋訳

映画『劇場版「鬼平犯科帳 血闘」』を観てきました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

映画『劇場版「鬼平犯科帳 血闘」』を観てきました。

行こう行こうと思いながら、久しぶりの映画鑑賞。いつものご近所TOHOシネマです。前回観た『ジャンヌ・デュ・バリュー』からふた月も空いてしまいました。2024年の三本目です。

フランス映画の次は邦画、それも時代劇です。池波正太郎生誕100年企画で新たに復活した鬼平犯科帳。

『鬼平犯科帳』といえば、わたしの頭に浮かぶのはもちろん中村吉右衛門。テレビで観たことのある世代です。今回は吉右衛門の甥である松本幸四郎が長谷川平蔵を演じることに加え、その青年時代を幸四郎の実息である市川染五郎が演じるという、話題性たっぷりの作品。気になっていたところに、観た人からの「よかった!」という感想があちらこちらから聞こえてきましたから、これはもう観に行くしかありません。

約二時間の上映時間、自分の記憶にある鬼平犯科帳のイメージ・世界観を損ねることなく期待以上で、見終わったときに「良かった!」と思わずつぶやきました。松本幸四郎さんは、この役のために体重を増やしたかしら?と思しき貫禄が出ていました。吉右衛門さんに比べると、遊び人らしい風体というか色香が少し足りないかなぁという感じもしましたが、やや堅物っぽい雰囲気の鬼平も、個人的には好みでした(笑)染五郎さんの演じる、青年時代の平蔵も、良かったです。

映画館で時代劇もいいなぁと思わせる一本でした。まず思いがけず、画的にとても見応えがありました。ストーリー的には、どんなふうに話が展開するかなんとなくわかっているのだけれど、それでも手に汗握りドキドキする。そんな予定調和の醍醐味を、久しぶりにたっぷり満喫いたしました。エンディングで次作への伏線が張られていましたが、こちらは時代劇専門チャンネルでの番組になるようですね。劇場版ならぜひ観に行きたいところでしたが、ちょっぴり、いやかなり残念です。上の写真は、フリーペーパー「TOHOシネマズマガジン」に載っていたインタビュー記事より。このインタビューで松本幸四郎さんがおっしゃっていることもなかなか素敵でした。

劇場版「鬼平犯科帳 血闘」

約ふた月ぶりの映画館での鑑賞は、やっぱり良かったです。大きな画面に好い音響、映画上映のために作られた空間ですから、その違いは大きいですね♪

読書『いちばんの願い』(新潮社)トーン・テレヘン著/長山さき訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『いちばんの願い』(新潮社)トーン・テレヘン著/長山さき訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、既視感のある本を無意識に手に取っておりました。既視感があるはず、過去に同著者の「動物もの」を読んでおりました。著者のトーン・テレヘンさんはオランダ・アムステルダムで開業医をしつつ、ご自身のお子さん向けに、動物を主人公とする本を50冊以上発表してきた作家さん。

『キリギリスのしあわせ』を読んだ時に感じた、翻訳された日本語の絶妙な「いい感じ」は今回の『いちばんの願い』でも健在で、翻訳者である長山さきさんにありがとうを言いたくなりました。

上の写真は「目次」。目次がそのまま、本書に登場する動物たちの顔ぶれとなっています。その数63。それそれの持つ「いちばんの願い」は、当人にとってはそれぞれにちょっぴり(あるいはとても)切実で、やさしい言葉で書いてあるものの、読み手にはそれぞれにちょっぴり(あるいはとっても)考えさせられるものでした。

それ(考えさせられる)は著者が特に意図したものではないと思います。けれども何十年も生きてきた今読めば、それぞれのストーリーに比喩的に重なる(勝手に重ねてしまう)ものがあり。だからこそ、大人が読んで心に響く本になっているのだと思います。

装丁のイラストレーションはDaisuke Soshiki氏で、トーン・テレヘン著では本屋大賞を取った『ハリネズミの願い』からずっと続いています。やわらかい雰囲気の画が本の内容とピタッときていて、最初に思わず手が伸びたのは、この表紙に惹かれたから、というのも大きいです。

『いちばんの願い』(新潮社)トーン・テレヘン著/長山さき訳

読書『サロメの断頭台』(講談社)夕木春央著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『サロメの断頭台』(講談社)夕木春央著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で発見。こちらも初めましての著者さんです。書評サイトをのぞくと、どうやらコアなファンがぎっしりついていらっしゃる人気作家さんであられるご様子。こんなふうに、まだ読んだことのない作家さんがいくらでもいらっしゃるのだと思うと、読書時間がいくらあっても足りませんね。「サロメ」の文字におどろおどろしいイメージが浮かびましたが、そのイメージの上を行く、重い読みごたえのある一冊でした。

主人公である画家が描いた絵の盗作品の存在が見つかったことに端を発し、贋作ビジネスの発覚、連続殺人事件と次々に不穏な出来事が立ち現れます。ストーリーの中には、時代背景の説明めいた文章は見当たりませんでしたが、明治から大正あたりだろうと違和感なく理解しながら読めたところが、著者の力だなぁと思いました。時代設定は大正時代だったようですが、わたしには、鹿鳴館から大正ロマンといったイメージが、読みながら自然と浮かんできました。

最後の方で主人公が犯人たちに投げかける「君たちはきっと、(中略)、崇高な、自分たちだけに許されたことだと勘違いしていたんじゃないかな?まるで芸術家の特権のようにだ。」というセリフが、とても刺さりました。実のところ程度の差こそあれ、そのような「勘違い」が、令和の今もなお根強く残っていることを、芸術の現場にいると感じることは少なくありません。そういう自分だって、勘違いしていることが無いとは言えないのではないかと、ヒヤリとさせられました。

ともあれ登場人物が画家をはじめとした芸術家たちであるということを別にしても、非常に絵画的な小説だと思いました。映像にしたら、とても怖くて美しいものが出来上がりそうです。ちなみにわたしの頭のなかには、ややセピア色がかったほの暗い画が、読書の間中浮かんでいました。

巻末に参考文献として、ワイルドの『サロメ』のタイトルが挙がっているのはもちろんのこと、その他の書籍も、興味深いタイトルがずらりと並んでいました。本書では、大正時代の文化の担い手(自称を含む)と彼らを取り巻く雰囲気がなんともいえず良かったのですが、著者がどんな世界観から紡ぎだしてきたのか、その「元」の一端が参考文献に並んでいました。これらも読まねばと思わせられました。

ちなみにわたしが過去に読んだ『サロメ』は、オスカー・ワイルド著と、そのオスカー・ワイルドを描いた、原田マハ著です。

『サロメの断頭台』(講談社)夕木春央著

読書『競歩王』(光文社)額賀澪著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『競歩王』(光文社)額賀澪著

ゴールデンウィーク中に読んだ『鳥人王』が面白かったので、借りてきた一冊です。『鳥人王』が2024年2月の刊行、『競歩王』が2022年6月の刊行となっておりました。上の写真は競歩ではなく800m走の様子ですが、陸上競技つながりということで。

『鳥人王』がなかなか芽の出ないお笑い芸人と大学生アスリートだったのに対して、『競歩王』はスランプに陥っている小説家と大学生アスリートのお話。本書の一文目「ひどく矛盾した競技だった。」が、わたしの持っていた「競歩」のイメージそのもので、「だよね~」と引き込まれました。

作家である主人公とともに、競歩がどのような競技であるのかを学びながらの読書となりました。どんなスポーツもそうだと思いますが、少し知識が増えるだけで、見え方がずいぶん変わってくるものですね。正直なところを言えば、これまでまったく競歩の試合を観たいと思ったことがありませんでした。それが読後は、機会があれば見てみたいな、という思いに変わっていますので、すごいことだと思います。

と同時に、小説家という仕事についても、なるほどそういうものなのかと、のぞき見したような気持になりました。主人公の設定は、高校生のときに受賞デビューした天才(と言われた)小説家。もちろんフィクションであるとはいえ、昨今の出版業界の事情が垣間見えてくるような感じで、これまたとても興味深かったです。小説を書き続けていくというのは、きっとたいへんなことなのだろうな、と。

1990年生まれという著者。サイトを拝見したところ、スポーツ小説、青春小説を主に書いていらっしゃるようです。まだ読んでいないものばかりですので、ちょっと追っかけてみようと思います。