6月9日ロックの日、花祭窯は開窯28年目に入りました―ありがとうございます!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

6月9日ロックの日、花祭窯は開窯28年目に入りました―ありがとうございます!

おかげさまで花祭窯は28年目をスタートいたしました。ここまで「やめる」という選択をせずに来れたのは、ひとえに独立前から今まで、近くで遠くで、さまざまな形で支えてくださる皆さまのおかげです。心より感謝申し上げます。

つい先日、創業地である佐賀の花祭から、当時のご近所さんである90代のお母さんと70代の息子さんがお二人で津屋崎まで遊びにいらしてくださるという、とっても嬉しい出来事がありました。30年近く前、既に「限界集落」の様相のあった里山に、縁もゆかりもない夫婦二人が越してきて、なにやら陶芸をやっているらしい…当時は今のように地方への移住がメジャーだったわけではなく、今考えると、地域の方々は「若い人が増えるのは嬉しいけれど、この人たちはいったい何者なのだろう??」というところからスタートしたはずです。当時からのことを思い出し、胸が熱くなりました。

さて28年目。ダンナ・藤吉憲典は、現在7月~8月の個展に向けて制作に全力投球中です。昨年は、ひと月以上の長期休みを確保したり、大理石産地であり彫刻の聖地であるイタリア・カッラーラでの研修に参加したり、まとまったインプットの時間(本人曰く、宝物のような時間)をとることが出来ました。今年は年の初めから、アウトプットへの注力が続いています。

まず器では、「向付十二種類」とテーマを掲げた新作が、続々と登場してます。肥前磁器作家・藤吉憲典のミッションは「伝統の継承を、生きた個性で形にする」なのですが、進行中の「向付十二種類」は、まさに古典へのチャレンジです。

そしてもう一つの新しい挑戦が、アップサイジング。

小さいものが得意なのは、藤吉ファンの皆さんならばよくご存じだと思います。でも、もう少し大きいものも作れるのです(笑)。それらにより積極的に取り組もうというタイミングが訪れているようです。

アート作品については、今年後半の課題になりますので、これからが楽しみなところ。書画についても、新しいテーマが生まれてきそうです。これらについては、また後日、新しい取り組みをご報告できる機会があると思います。

まずは7月13日からはじまる銀座黒田陶苑さんでの個展。黒田さんの新しい銀座本店ギャラリーでご覧いただけるのを楽しみに、鋭意制作中。

というわけで、花祭窯28年目スタート。今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

十二種類の向付(むこうづけ)、続々完成中―肥前磁器作家・藤吉憲典の仕事。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

十二種類の向付(むこうづけ)、続々完成中―肥前磁器作家・藤吉憲典の仕事。

制作における新しいチャレンジとして「十二種類の向付の新作制作」に取り組んでいます、とご紹介したのは約ひと月前のことでした。

やきものの制作工程は、ざっとこんな感じ

土こね→成形→素焼→下絵付(染付)→施釉→本窯焼成→上絵付(赤絵)→赤絵窯

で、現在は染付が出来上がった段階まで来ております。

※制作工程の詳しくは、以前にまとめた記事がありましたので、よかったらご覧くださいね↓↓

さて、向付12種類。すべて新作になるため、染付の呉須(ごす)と釉薬の種類の組み合わせがデザインと合っているか、確認する仕事も入ります。作家の頭のなかでは、窯に入れる前に完成イメージが出来上がってはいるものの、実際には「ほぼ思惑通りに上がった」というものと「ここは、こうした方がよかった」というものとが出てきます。「こうした方がよかった」の方は、呉須と釉薬との組み合わせなどを修正して、次回の窯にのぞみます。

向付とは、懐石料理に用いられる器のひとつで、お刺身など酒の肴(「お向こう」と呼ぶそうです)になるものを盛り付ける器です。お膳の向こう正面に置かれる、いわばメインの器。わたしたちも、食事をしに行くときには、料理人さんの器使いが楽しみのひとつですが、向付にインパクトがあると、やはり「おお!」となります。そもそもなぜ12種類と思ったのかといえば、和食では季節ごとに器を変えるから。ある料理人さんとお話をしていて、春夏秋冬の四季では実は足りなくて、12か月で使い分けたいし、もっと欲を言えば、1カ月に2種類あっても良いということを伺ったからです。

たしかに食材を考えても、半月違えば旬が変わってくるものもたくさんあります。ならば、ということで、まずは12種類の新作に挑戦しているのでした。ところが面白いもので、作り始めると次々に案が出てくるようです。結果、カタチだけでも12種類以上が出来上がっていて、そこに染付・赤絵・染錦と文様の組み合わせを加えたら、20種以上になりそうな勢いです。

実物をご覧いただけるのは、7月から。銀座黒田陶苑さんでの個展と、博多阪急さんでの個展がスタートになります。それぞれの個展のご案内は、またあらためて。ぜひ楽しみにしていてくださいね。

藤吉憲典の制作活動のようすは公式インスタグラムで!https://www.instagram.com/ceramicartist_kensukefujiyoshi/

花祭窯の磁器制作材料や道具は、佐賀県有田の陶磁器産業の方々にお世話になっています。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯の磁器制作材料や道具は、佐賀県有田の陶磁器産業の方々にお世話になっています。

花祭窯の独立以来ずっと、材料や道具は有田焼の産地である佐賀県有田とその近辺にある関連産業の事業者さんにお世話になっています。そしてその多くは、藤吉憲典が独立前に、有田の複数の窯元で社員として商品開発をしていた時からお世話になっていたところ。つまり窯元勤め時代を合わせると、30年を超えるお付き合いがあるところも少なくありません。

独立前から、伝統工芸である有田焼はバブル期の割烹食器需要をピークに衰退の一途をたどっていました。花祭窯を開いたのは1997年ですが、当時、産地の方々からは「よくこんな景気の悪い時期に独立するね」と言われたものでした。その後も多くの窯元・メーカーが廃業するのに伴い、関連産業の事業者さんも廃業に追い込まれたところがたくさんありました。そんななか、堅実なお仕事で産地を支えてくださっている事業者さんのおかげで、今も安心して仕事ができることは、ほんとうにありがたいことです。

さて久しぶりに、有田への仕入出張にダンナと一緒に行ってきました。ダンナは1‐2カ月に一度くらいの頻度で有田に足を運んでいますが、わたしはここ数年足を運べず。前回は2021年かな…コロナ禍があったとはいえ、ずいぶんご無沙汰してしまいました。

久しぶりの有田は、街並み自体はそれほど変わったようには見えませんでしたが、連なるお店や会社の名前がずいぶんと変わったところもあるようでした。釉薬やさん、絵具やさん、筆や機械などの備品を扱う陶芸材料やさん、化粧箱やさん、梱包材やさん…陶磁器産業を支えるさまざまな事業者さんが集積しているのを見ると、やはりここは一大産地なのだなぁと思います。

磁器土を扱う陶土やさんだけは、有田からほんの少しだけ離れた嬉野市塩田川沿いにありますが、これは有田泉山の磁器土が採石できなくなってから、熊本天草で採石された原料土が水路で運ばれてきたからという地理的な理由があるようです。

さて必要なものを買い揃えたあとは、古くからの友人であり、陶芸作家としての先輩でもある、陶房七〇八・豊増さんの工房へ。連絡無しにふらりとおじゃましても、いつも嫌な顔一つせず、中国茶でもてなしてくださいます。久しぶりにご夫妻とお会い出来て嬉しかったうえに、ちょうど北京に行ってこられたという豊増さんに、現地情報をいろいろとお伺いすることができました。

佐賀に行くと、独立以来ずっとさりげなくサポートしてくださっている皆さんにお会いできて、初心に戻ります。そういう場所があることのありがたさを、あらためて感じた一日でした。

アートの新しいプラットフォームArtStickerにKensuke Fujiyoshが参加。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

アートの新しいプラットフォームArtStickerにKensuke Fujiyoshが参加。

山口周氏の『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』を読んだのは2017年、刊行されたその年でした。「アート(美術・芸術)とビジネス」の動きが日本国内でも加速し出したのは、このころからだろうと思います。もう7年も経つのですね。

特にそうした動きをけん引した(している)のは、従来からのアート業界関係者というよりは、IT技術の有用性を理解し、それらを駆使して「つなげる」ことを得意とする若い世代の方々だと感じます。あちらこちらにアート系のプラットフォームが立ち上がってきているようなので、今どんなサービスが存在するのか、知らないことが多く情報に追いつけないというのが正直なところですが、運良くわたし自身のアンテナに引っかかったときにはチェックするようにしています。

アート・コミュニケーション・プラットフォーム ArtStickerの存在を知ったのは、つい先日。運営しているのは、株式会社The Chain Museum。2018年7月設立で、翌2019年2月に「アーティスト支援アプリArtSticker」として、iOSのβ版公開との記事を見つけましたので、すでにリリースから5年ほど経っているということですね。タイトルに「アートの新しいプラットフォーム」と書きましたが、わたしたちにとって新しい、というところです。

Artsticker : Kensuke Fujiyoshi のページ

現在のところ、まだ1点の作品掲載のみですが、1点づつゆっくり増やして参ります。藤吉憲典のアート作品はこれまで新作のほとんどがロンドンのSladmoreに送られ、そこでSoldとなっていましたので、国内でご覧いただいたり、ご購入いただいたりの機会がとても少なかったのですが、Artstickerを通じて一人でも多くの方の目にとまると良いなと思っています。

藤吉憲典の制作の様子は、Kensuke Fujiyoshi 公式Vimeoでご覧になれます。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

藤吉憲典の制作の様子は、Kensuke Fujiyoshi 公式Vimeoでご覧になれます。

初めて動画サイトVimeoを使ったのは2017年のこと。当時、特に国内では、動画サイト=YouTubeという認識が強かったので、Vimeoの存在は嬉しい驚きでした。

そもそもは、ロンドンの取引先ギャラリーSladmoreが使っている動画サイトを教えてもらったのがきっかけでした。アート系・デザイン系の利用者が多く、その特徴は、画像が美しいことと、なんといっても広告が入らないこと。これがYouTubeとの大きな違いです。アップロード容量に制限のある無料プランから、サービス内容の充実した有料サービスまで、すべての動画再生で広告が入りません。

久しぶりに動画をアップしました。これで6本目です。使いはじめてから7年ほど経っていると思うと、超スローペースですね。アップロード容量に制限がありますし、そもそも動画をバンバンとることをしておりませんので、このようなペースですが、ぜひ皆さんにご覧いただきたい良い動画が出来たら、Vimeoで紹介して参ります。

Kensuke Fujiyoshi公式Vimeo  https://vimeo.com/kensukefujiyoshi

ちなみに現在、Sladmoreで紹介されている藤吉の紹介ページにも、ロンドン個展の際に撮った動画がvimeoの埋め込みで公開されています。よかったらこちらもご笑覧くださいませ^^

2024年も再放送が決定しました:NHK 美の壺「青と白の粋 染付の器」。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2024年も再放送が決定しました:NHK 美の壺「青と白の粋 染付の器」。

美の壺「染付」の担当ディレクターさんからメールが届きました。「爽やかな染付の似合う季節になって参りました」で始まる文章で、今年も番組の再放送が決定したことをお知らせしてくださいました。

藤吉憲典がほぼ丸二日間撮影に協力し、2021年7月に初回放映があったNHK BSプレミアム 美の壺「青と白の粋 染付の器」。本放送の翌年から毎年この季節に再放送が決定し、四年目となる今年も、ご連絡をいただきました。撮影のときにも「人気の高い番組は、なんども再放送されることがあります」との説明を受けてはおりましたが、いやはや番組の完成度が高かったのだなぁと、今更ながらに制作チームの皆さんに感謝するばかりです。

今回はNHK Eテレでの再放送と、NHKプラスでの配信となります。


NHK 美の壺 File543「青と白の粋 染付の器」

6月9日(日)午後11:00〜11:29 Eテレ

NHKプラスでの配信(同時配信+放送後7日間)


藤吉憲典は、番組後半「三の壺」での登場となります。おかげさまで、皆さんに知っていただく機会が増えています。ありがとうございます。初回放送で見逃した、BS契約をしていなくて見れなかった、昨年までの再放送も見逃した、という皆さま、今年は地上波Eテレでの放送ですので、どうぞお時間がありましたら、ご高覧下さいませ。

NHKさんの放映情報解禁が1カ月前となっておりますので、この後の再放送情報は、その都度またブログやSNSでお知らせいたします。

そういえば、『美の壺 File543 「青と白の粋 染付の器」』のなかの映像を二次使用する形で藤吉がご協力した、日本文教出版株式会社が作る2024年度版小学校図画工作教科書に連動した「教科書QRコンテンツ」は、今年度からいくつかの小学校で導入・活用されているはずです。一人でも多くの子どもたちの心に響くといいな、と思います。

自分のなかに無意識にある「スケール感の標準」を突破するには、外からの働きかけが一番。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。このところなぜか、ブログのタイトルが長くなりがちです(笑)上の写真は、最近生で観て「でかっ!」と思ったラクダのはく製。この展覧会の会場で、このサイズのものに出会うと思っていなかったところに現れたので、かなりびっくりしました。

自分のなかに無意識にある「スケール感の標準」を突破するには、外からの働きかけが一番。

ダンナ・陶芸作家藤吉憲典の制作における話なのですが、このタイトルを書き終わった時点で、「これって何事においてもそうかも」と思いました。そもそもは、長年のお付き合いの料理人さんからご相談があったことがきっかけです。この方は昔から、いろいろなチャレンジを藤吉憲典に投げかけてくださってきています。

今回は、藤吉憲典がこれまで作ってきたものから考えると「かなり大きなもの」にチャレンジすることになりました。もともと「小さいもの」が好きだし得意な藤吉憲典。食器についても、尺皿・尺鉢あたり=直径30cm前後のものが最大かなぁ、というサイズ感が無意識に標準になっていたと思います。それだってしょっちゅう作るものではなく、文字通り「手のひらサイズ」の作品が多かった、というのがこれまででした。

ところが今回、藤吉作品としては珍しく大きな「尺越えサイズ」のものを作ることになり、手を動かして取り組んでみると、案外すんなりうまく行くことが判明。これまで磁器作家として、多様な技術と経験を積んできているのですから、それらを動員すれば当たり前といえば当たり前なのですが、それも実際に手を動かしてみないと分からないことです。結果、ほんの数日で、それまでは「大きくてたいへん」だと思っていたサイズが、作家にとって「作れるサイズ」の新基準になりました。要は単に、これまでやっていなかっただけということですが、嬉しい変化(進化)です。

先日作家が内覧してきた銀座黒田陶苑さんの新しい展示室が、かなり広く、大きなものが映える空間ということでしたので、グッドタイミングに七月の個展で「これまでよりも大きめの、藤吉憲典作品」をご覧いただける機会になりそうです。もちろん、大きなスペースに小さいものをたくさん並べたらどう見えるかも面白いところですから、これまで通りのサイズのものもたくさん並ぶ予定です。

結局自分の作るもののサイズにライン(制限)を引いていたのは、自分自身だったということで、本人が納得できる(そして面白がって取り組める)機会さえあれば、あっけなく取り払われるものでした、というお話。そしてそれは、誰にでも、なんにでも当てはまることがありそうですね。わたしも無意識の「要らん制限」は、どんどん取り払っていけたらいいなと思います。今回、ダンナに機会を提供してくださった料理人さんに、心より感謝です^^

長年のお付き合いの料理人さんのご活躍が、とっても嬉しい。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

長年のお付き合いの料理人さんのご活躍が、とっても嬉しい。

連休二日目は、遠方から長年藤吉の器をご愛顧くださっているお客様がお見えになりました。長年のお客さまも、はじめましてのお客さまも、連休中だからこそ足を運ぶことができたとおっしゃっていただくと、通常営業にしておいてよかったと嬉しくなります。

長年藤吉憲典の器を使ってくださっているお客さまの、器についての考えをお聞きする機会はとても貴重です。実際にお使いになるなかで、藤吉の器のどこを気に入っていただいているのか、料理の提供において「もう少しこうだったら」という点があるのか、それらを踏まえて次はどのような器をオーダーしたいと思っているのか。作り手に敬意を払いつつ、率直な意見を言ってくださるお客さまは、ほんとうにありがたいです。

今回は、新しい店舗オープンに合わせての、食器のご相談でした。花祭窯で器を見ながら、どのようなお店になるのかを教えていただき、そこで使いたい器のイメージを共有し、ときに骨董や古い書籍などの資料を持ち出して具体的にどのように制作していくかを検討するのは、とても楽しい時間です。SNSが便利に使える世の中ですので、写真のやり取りや、テキストのやり取りである程度のことは決めていくことが出来ますが、やはり顔をあわせて実際に一緒にモノを見ながらいろいろなことを決めていくことが大切だなぁと、あらためて感じました。

実際にお会いして同じ空間の中で検討していくからこそ、新しいアイデアが出てきたり、小さな疑問点をやり過ごさずに案を詰めていくことが出来ました。イメージの共有において思い違いを防ぐのにも、やはり対面での検討が有効だと思いました。お店の設えがあり、料理があり、器があり、その器の中でも何人もの作家さんが参加するなかでの仕事。染付磁器はすべて藤吉さんにお任せしますとご指名いただくと、作り手ともども意気に感じます。

新店オープンのお知らせは、まだ少し先のことになりそうですが、またこのブログでもご案内いたしますね^^

ダンナ、十二種類の向付(むこうづけ)を一挙制作中。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ダンナ、十二種類の向付(むこうづけ)を一挙制作中。

たまには、ダンナ=肥前磁器作家・藤吉憲典の仕事ぶりをご紹介。おかげさまで夏に向かって仕事が重なっています。七月は銀座黒田陶苑さんでの個展と、博多阪急百貨店さんでの展覧会、八月の北京個展への納品、その間に親しいお客さまへの大もの納品。そんなわけで年明けから三月のギャラリー栂さんでの個展をはさんで、怒涛の制作が続いています。

制作における新しいチャレンジもいろいろあります。何年キャリアを重ねても、チャレンジはずっと続きますね。作家自身の内側から湧き出てくるものと、お客さまとのコミュニケーションの中から生まれてくるもの。まさに「あれも、これも」の状態です。そのなかでも、今まさに取り組んでいるのが、十二種類の向付の制作。向付はこれまでにもいろいろと作ってきていますが、新作をまとめて十二種類一気に作るというのは、初めての試みですので、制作の様子を見ているだけでも、なかなか面白いです。

向付とは、懐石料理に用いられる器のひとつで、お刺身など酒の肴(「お向こう」と呼ぶそうです)になるものを盛り付ける器です。形やサイズはさまざまで、浅いもの、深いもの、いろいろあります。お膳の向こう正面に配置されることから、向付と呼ばれれているようです。お食事の最初の方に、正面にどんと登場する器ですから、その役割はなかなか重要です。

作り方としては、向付の完成イメージ(形)を粘土で形づくり、それをもとに石膏を流し込んで型を作り、出来上がった石膏型を使って生地をかたどり、ひとつひとつ削って形を仕上げ、足を取り付けるなどの加工を施し、生地が乾いたら素焼きし、下絵付(染付)を施し、釉薬をかけて本窯焼成し、赤絵(上絵)をつけて、赤絵窯で焼成して、ようやく完成です。赤絵は、文様により絵付と焼成(窯)の工程を複数回繰り返すこともあります。

下の写真は、現在制作している十二種類の中の一部。上に紹介した工程のなかで、削りで仕上げを施した生地の状態です。十二種類ぜんぶ並ぶと、なかなか壮観です。この写真を撮った後、素焼きの窯に入っています。

藤吉憲典 向付

藤吉憲典 向付

藤吉憲典 向付

工程が多く、手間と時間がかかる仕事ですが、それだけにイメージ通りに出来上がったときの嬉しさと満足感は大きいものです。そして実際に料理屋さんで使っていただいている場面を見るのも、とても楽しみです。完成形を見ることができるのはまだ先になりますが、ワクワクしています。

藤吉憲典の制作活動のようすは公式インスタグラムで!https://www.instagram.com/ceramicartist_kensukefujiyoshi/

ギャラリーオーナーの意図・意欲が伝わってくる大胆な展示空間。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ギャラリーオーナーの意図・意欲が伝わってくる大胆な展示空間。

肥前磁器作家・藤吉憲典の次の展覧会は7月、銀座黒田陶苑さんでの個展となります。黒田さんはこの4月11日に新しいビル・新本店がオープン。オープンに先駆けて、作家宛てに内覧のご案内をいただいており、過日ダンナがおじゃまして参りました。上の写真は旧本店、2016年の個展でお世話になったときのもの。

「これまでより展示スペースがかなり広くなっているから、ぜひ内覧に来てください」とのご連絡を受けて、足を運んだダンナ。帰ってきての第一声は、「黒田さんの覚悟というか、チャレンジ精神というか、意志がビシビシと伝わってくる空間で、ものすごくテンションが上がった!」でした。これまでの2倍かあるいは3倍かという広さに、全体のテーマカラーは黒。簡単に変更のできない内装を黒で決めるというのは、明確な意図と確固とした意志が無ければできないことのように思います。その展示スペースに並ぶモノづくりを任される作家が、どれほど意気に感じるか。内覧から帰ってきたダンナの表情を見れば、一目瞭然です。

オープニング展として開催中(5月7日まで)の「古今の名陶展」では、黒田さんがお持ちのお宝の数々をじっくりと拝見することが出来ます。作り手はその展示を見ながら、自分の個展での展示イメージをいろいろと思い描くことが出来たようです。小さいものの得意な藤吉憲典ですが、7月の個展では、大きいもの、高さのあるものもお届けすることになりそうです。壁面をどう彩るかも、楽しみですね。陶板作品・書画作品と、可能性が広がりそうです。

黒田陶苑さんでの展覧会は、おおよそ隔年で機会をいただいております。個人のお客様だけでなく、料理人さんをはじめプロのお客さまも多いのが黒田さんの特徴の一つだと感じています。目の肥えたお客さまが、心から楽しんでくださる展覧会にできるよう、すでにワクワクドキドキしています。

銀座黒田陶苑さんでの藤吉憲典個展は、7月13日(土)~7月18日(木)です。

銀座黒田陶苑さんの公式インスタグラム

銀座 黒田陶苑 新本店
東京都中央区銀座7-8-17-5F
虎屋銀座ビル5階
TEL.03-3571-3223
営業時間11:00-19:00 
毎週月曜日・定休